●赤道儀の追尾精度2016/04/06 00:17

●赤道儀の回転の仕組みと必要な精度
写真は20cm赤道儀用のウォームホイールとウォームネジ、それと極軸を支えるベアリングです。その下の図はピリオディックモーション(以下PM)の原因を示した図です(以前の記事の再掲載)。
このように赤道儀はウォームホイールを、ウォームネジ(ウォームはWarmでイモムシの意味)で1日約1回転の超低速かつ超高精度で日周運動で動いて行く星を追尾しているわけですね。

赤道儀に使用されるウォームホイールとウォームネジは、一般品の高速でガンガン回すための減速ギヤとは似て非なる物で、精度が一桁も優秀な専用品ということを念頭に置いてください。
30~40年前の 「赤道儀を購入する人の90%は星野写真撮影に使う」 と言われた時代。星野写真撮影に使える追尾精度がない赤道儀の量産メーカーは姿を消したように思います。それが理由で手を引いたメーカーばかりではないでしょうが、高精度のビクセンさんとタカハシさんだけ残ったのかな?
両社にギヤの精度や製作法をお聞きすると、それはもう通常の機械加工のレベルではなく、夢の様な匠の技や精密加工機械を結集して素晴らしい高精度を達成していることに驚きます。
ビクセンさんは独自の装置でウォームネジの偏芯をテストして合格品を極軸に使っています。それを星爺も真似してウォームネジを数百本作り偏芯テストをして、良い物だけを合格品として極軸に用いるようにしています。※不合格品はこれから作る赤緯軸や微動雲台などに用います。


●追尾精度=追尾の進み遅れの幅=ピリオディックモーション
赤道儀のモーターは通常は水晶発振で動くので、クォーツ時計のように正確に回転します。しかし、モーターだけ正確に回っていても、ギヤなどの精度不足で追尾速度は「速くなったり遅くなったり」を繰り返します。望遠鏡の視界の星(撮影中の星)が、ゆっくり西に動いて行ったら いったん止まった感じになって、今度は東に動いて行って再び西に動く振る舞いを繰り返すわけですね。
この周期的な動きをPM(Periodic Motion)と称し、 PE(Periodic Error)とか、たんに「追尾精度」とも言われます。PMのデータは東西(日周運動方向)の振れ幅の角度で±○″と示します。原理的にふつうはウォームネジ1回転の周期で、ほとんど同じPMの振る舞いが繰り返されます。
PMの振れ幅が星を撮影するレンズの 「最小星像±○″」 より大きいと、そのレンズを追尾できる精度は無いわけですから、PMは星野写真撮影に使う赤道儀のもっとも重要な性能です。

PMの原因には主に上の図と下記に示した4種類があります。各々がウォームネジ1回転の周期を持ち、これらが赤道儀に組み上げた際に全部重なってPMとなって現れます。
信じられないかもしれませんが、長い望遠レンズの星野写真撮影に使用できる追尾精度の赤道儀には、各々の原因になる加工精度に計算上は1/1000mm以下の、一般的な機械加工精度をはるかに超越したものすごい精度が必要です。

①ウォームネジのピッチ誤差(乱れ)によるヨロメキ運動
ウォームネジのピッチが乱れていると追尾速度の進み遅れが生じます。たとえば小型赤道儀の直径70mm程度で歯数144枚のウォームホイールでは、ウォームネジに1/100mmのヨロメキがあると1回転10分の周期で±30″程度のPMとなって現れます。50mm標準レンズの追尾許容誤差は±40″ほどなので追尾可能ですが、長い望遠レンズを追尾できる赤道儀のウォームネジは突拍子もない高精度なのです。

②ウォームネジ軸受けの精度によるスラスト方向のブレ
ウォームネジを支える軸受け部が図の左右にブレると、ネジのピッチ誤差と同様にPMとなって現れます。ピッチ誤差や軸受けの誤差は、慣らし運転(エージング)をしてもほとんど良くなりません。

③ウォームネジの芯出し誤差による1回転毎のトルク変動
これがもっとも強烈なPMの原因なことが多いです。非常に繊細なウォームネジに芯出し誤差(偏芯)が僅かでもあると、ウォームホイールへの押し付けは強くなったり弱くなったりを繰り返します。
強く押し付けられる部分では回転が渋くなるため、モーターは定速回転していてもウォームネジに達するまでのギヤヘッド他のたくさんのギヤの隙間などが縮んでトルクを吸収して回転が遅くなります。弱く押し付けられる部分にさしかかると吸収が反発して速くなって1回転毎のPMが生じます。
トルクの吸収と反発は主にギヤヘッド部で生じますが、モーターの取付部のたわみや伝達ギヤ部でも生じます。ベルト駆動は反対側のベルトとの張力差が大きなPMとなって現れます。

④ウォームネジに付けたスパーギヤの偏芯による速度変動
ウォームネジに付けたスパーギヤが偏心していると、1回転毎にスパーギヤの直径がほんの少しですが大きくなったり小さくなったりを繰り返すので、やはりウォームネジ1回転毎のPMが生じます。
また、スパーギヤ以外のピニオンギヤなどが偏心していると、ウォームネジ1回転のPMとは別に そのギヤの周期のPMが生じます。ギヤ同士の噛合せがキツ過ぎるとトルク変動も発生します。

参考=※バックラッシュを嫌ってウォームネジの押し付けを強くする人がいますが、強くし過ぎるとPMを増長させてしまいます。極軸のウォームネジは優しく緩めに押し付けるべきです。
PMの原因はモーターからウォームネジ/ウォームホイールの摺動部間にあるので、ウォームホイールの大きさに比例してPMは少なくなり  「ウォームホイールの大きさは七難隠す!」 のです。

このようにPMは主に4種類の原因が重なるのですから、偶然に原因同士が相殺されるように赤道儀が組立てられれば、PMは各々の原因の加工精度よりずっと 良くなる場合があります。逆に原因が相乗されて悪くなってしまう場合もあります。なので、PMは設計段階やパーツの加工精度から類推することは難しく、どうしてもアタリ/ハズレが出てしまいます。赤道儀に組立ててからPMの測定をしてみないと追尾精度はわかりません。「追尾精度は赤道儀に聞いてくれ!」って感じですね。
時間をかけて組立てとPMテストを繰り返し、各々の原因をうまく相殺する組立てをすれば、かなり良い精度に追い込むことは可能です。メーカーさんはそれをやっているのかな??
※このようなことから、調子の良い赤道儀は調整やオーバーホールはしない方が無難です。

昔はあり得ないほどの高精度のPMを標榜するメーカーもありましたが、最近はカタログにPMを明記する大手量産メーカーはほとんどなくなりました。根拠の無いデータを出さないのは良心的と言えますが、PMを明記しないのは星野写真撮影の機材としては、いかがなものかとも思いますけどねぇ。

●PMを撮影してみよう!
星野写真を撮影する赤道儀のユーザーさんは、PMを撮影/測定してどれくらいのレンズをガイディング無しのノータッチで使用できるかを確認してみましょう! その結果、あまりにも追尾精度が悪かったらクレームの証拠写真にもなりますし、あり得ない高精度を喧伝するメーカーが出て来て初心者が翻弄されないようにするためにも、天文ファンはPMの測定を常識にするべきと思います。
今回は難しい話は一切省略します。 PMを撮影するレンズでそのまま追尾撮影をしたら、星がちゃんと点像に写るかどうかの簡単な確認だけしてみましょう。 PMの写真が撮れたらぜひ見せてください。ユーザーがPMの写真をたくさん発表すれば、赤道儀の精度向上に寄与すると思います。

上の図はPMの様子をグラフにしたものです。赤道儀の極軸をわざと東西のどちらかにズラして南の天の赤道付近の星空を10分程度露出をすると、星は赤緯方向(図の上下方向)に流れて、このグラフと同じような星の軌跡が写ります。下の上のPMの写真はそんな軌跡を描いていますね。
PMを撮影するレンズは、できるだけ望遠が望ましいです(弊社では1200mmで撮影しています)。 でも、今回は標準レンズでもズームレンズでも望遠鏡でも何でも構いませんので、とにかくPM撮影を体験してみましょう。光害も月明かりも関係ありません。北極星が見えなくてもなんとかなるでしょう。
-------------------------------------------------------------------
・露出時間が長いのでカメラの感度はISO100~ISO200にする。
・絞りは光害に応じてF5.6~F11くらいにする。
・極軸を東西のどちらかに2~3°ズラして赤道儀を設置する。
・星の動きの速い真南の天の赤道を付近を写す。地上高度なら55°くらいのところ。
・夏や冬の天の川の中なら、適当にどこを撮影しても星がたくさん写る。
・今の季節は真南に星が少ないので、他の場所の明るい星を写してもまぁOK。
 ですが、星の動きの速い赤道を離れると測定結果がどんどん甘くなります。
・露出時間は10分程度。光害で露出オーバーならもっと短くする。
-------------------------------------------------------------------
極軸の東西のズラシが大きすぎると、星は赤緯方向にうんと流れて写るので、適宜に調整してみてください。極軸の東西のズレに加えて上下のズレがあると、それが追尾速度に反映されて下の写真の様に星が正しく上下(赤緯方向)に流ず斜めに流れて写りますが、これもまぁOKとしましょう。
◆ウォームホイール歯数144枚の赤道儀はPM(ウォームネジ1回転)の1周期は約10分です。歯数が180枚なら8分、288枚なら5分、360枚なら4分。 1周期分以上の露出でPMを撮影したいです。

300mm望遠で写した普及品のドイツ式赤道儀のPモーション。10分露出で歯数144枚のウォームホイールなので、ちょうどウォームネジ1回転分が写っている。300mm望遠は追尾できない精度であることが一目瞭然。85mm程度ならガイディング無しのノータッチ撮影ができそう。PMは±35″程度。

300mm望遠で写したポタ赤 SWAT-200のPモーション。完全に直線ではなく少し乱れているので、200mm望遠ならば完璧にノータッチ撮影できそう。測定するとPMは±10″以下で公称値のとおり。

このようにPMを撮影してみると、所有する赤道儀の追尾精度の悪さにガッカリする人の方が多いと思います。 安価なポタ赤は標準レンズでもPMが写るほど精度の悪い場合もあると思います。
でもまぁ、上下の星の流れが完全に直線に写らなくても、星の軌跡の太さの2倍程度のPMなら明るい星は滲んで大きく写り、うんと暗い星は流れて淡くなって写らないので、案外使えてしまうものですよ。 もちろん北の方向を写す場合は、日周運動の動きが少ないのでPMの影響はだいぶ減ります。

実際の星野写真の撮影では、ISO1600ならば光害の少ない星空でF2.8で適正露出は1分くらいでF4では2分くらいです。したがって、露出中にうまい具合に上のPMのグラフの星の移動方向が反転する部分に当たれば、追尾精度の良くない赤道儀に望遠レンズを載せても星は点像に写ることがあります。短めの露出で何コマも撮影すると、流れたカットと流れないカットが得られます。なので、追尾の成功率が50%以上あるなら 「それで充分に実用になる!」 という考え方はアリですよね? 
ポータブル赤道儀と露出時間が短くて済む高感度なデジカメの登場で、星野写真はずいぶん気楽なものになりましたね。 感材にお金がかからないことも大きな利点です。

●最後に諸々の補足です
ウォームホイールは高精度なギヤに見えても、実際はそれほど精度は必要ありません。しかし、極軸を取付ける際にウォームホイールが偏心して、1日1回転の間にウォームネジに強く押し付けられる部分と弱く押し付けられる部分が生じ、強く押し付けられる部分でPMを増長することがあります。
そこで弊社では、ウォームホイールの母形を極軸に取付けて赤道儀のダミーに組み込み、実機さながらに極軸を回して歯切りとエージングをするので、ウォームホイールの偏芯はほぼゼロです。

前回の拙稿http://tentai.asablo.jp/blog/2016/03/27/8058123)の補足。
「追尾精度の良くない赤道儀にオートガイダーを常用するのもアリ」と書きましたが、赤道儀の追尾精度があまりにも悪いとオートガイダーが働きにくかったり、ガイド星を雲が通過したりするとガイド星を見失うなどのトラブルが出てしまいます。 やはり赤道儀は追尾精度が命です。

オートガイダーを使う場合は極軸設置もある程度は正確でないと、露出時間が長い場合はガイド星を中心に画面が回転して写ってしまいます。広角でも望遠でも回転角は同じなので厄介です。

三脚などの強度(これが見過ごされていることが多い)が完璧で、追尾精度が完璧で、極軸設置が完璧でも、大気差による天球の歪で長い望遠レンスの追尾が完璧にできるわけではありません。オートガイダーの適宜な投入は面倒ではありますが とても有効な手段です。
 
北極星は歳差で動くので極望のスケールパターンには、2000年、2010年、2015年などの北極星の導入位置のマークが印されていることが多いです。では、古い極望は2016年以降の北極星の位置マークが無いからダメかというと、過去の位置マークが直線的に印されている場合は、その延長上にだいたいの見当で歳差の分だけズラせば、実用上は問題ないと思うのですが、いかがでしょうか?
北極星以外の星も使うスケールパターンの場合も、プラネタリウムソフトの「視位置」で各星の位置を検証してスケールパターンに印すか、だいたいの見当でズラして使うことは充分可能と思います。

コメント

_ トッパー ― 2016/04/07 12:48

星爺様
追尾精度についての解りやすい解説をありがとうございます。
本来ならこのような解説を読んで十分理解した上で実際にウオームネジの調整等をすれば、より正しい方向へ調整できるのでしょうが、私の様に勉強嫌いで、十分理解しないうちから下手な調整を始めると泥沼にはまってしまい、何度もやり直しをする羽目にあうのだと反省しきりです(汗)
ギヤ周りの調整ですが、ある程度の精度がでてくると、目的(長焦点撮影なのか、惑星眼視観測なのか等)によって最終的な追い込み方は変わってくるものなのでしょうか?それとも精度を上げて行けば、自ずとそれぞれの目的にかなった動きをしてくれるのでしょうか?

_ ●星爺 ― 2016/04/07 17:55

トッパー様 コメントをありがとうございました。

タカハシNJP、90s、P型。ビクセンSP、SPD、GPD赤道儀などは、ウオームネジのハウジングが押し引きネジ式になっているので、かなり微妙な押し付け調整が可能です。しかし、最近の各社に赤道儀は赤経・赤緯のモーターを赤緯軸ハウジングに入れてあり、それに伴って押し付けの微調整がやりにくかったり、押しネジだけ(微調整ができないので意味が無い)や、または撤廃されてしまいましたね。残念なことだと思います。
もっともウオームネジの押し付けだけで原因の4種類が調整ができるわけではないので、コストダウンのための撤廃は悪いことではないと思います。

惑星用と星野用との違いですか? う~む、私にはよくわかりません。
各パーツがとことん高精度にできていれば、ウォームネジを押し付け気味にしても追尾精度は保つのではないでしょうかね。

ところで、拙ブログ記事ですが、下書きに近いものをアップして、後から読み直して校正や加筆をしているので、だいたいアップから2~3日以内に10回以上は訂正しています。最新の記事も読んでみてください。

_ ムササビ ― 2016/04/07 22:57

最近のオートガイダーはST4の頃よりも遥かに使い易く
安くなりました

もう赤道儀の追尾精度をうるさく追求するのは意味が無いのでしょうか?

ST4のトラウマかもしれませんが
最近、華奢なポータブル赤道儀に2軸のオートガイダーを付けて販売することに違和感を感じてしまいます

オートガイダーは 構造のしっかりしていて強度もあってバランスもしっかりとれているけど
追尾精度が 光学系の能力を引き出すのに十分でない場合に有効なのではないでしょうか?

JILVAやSWATなどのしっかりしたポータブル赤道儀にオートガイダーを付けて使うのはわかりますが
もっと小型のポータブル赤道儀に赤緯軸を追加して
2軸でオートガイダーを使うのは
本末転倒な気がします
赤道儀のガタを追尾しているように思えます

コンスタントに成果を出すには
JILVA-170のように 多少大きくてもしっかりしたポータブル赤道儀が必要だと思います

_ ●星爺より ― 2016/04/08 07:24

ムササビ様 コメントをありがとうございました。

オートガイダーは手動ガイドと同じで精度の悪い赤道儀をなんとか実用するための便法ですが、大気差などの影響を受けにくい300mm~400mm望遠までは便法のお世話にはなりたくないですねぇ。面倒くさいですよ。安価で軽量で高精度の赤道儀があれば、固定写真と同じように簡単に撮影できるわけですから…。

今回の赤道儀の精度の話も中学生向けですが、あるニッチな高級機のメーカーさんのホームページのPモーションを記事を見たら、なんとも奇天烈な解説をしていて最後にはPMをモーターのせいにしていたので、基本的なことをまとめてみました。機械加工の精度を上げてもPMをゼロに出来るわけではないし、モーターの特性も含めた総合的な設計をしないと意味がありませんので…。

今回の記事で省略しているのは、ウオームネジの摺動部のサイクロイドカーブの振る舞いと、グリースの界面活性化学の説明です。界面活性の話は省略したというよりも難しくて星爺には理解できていません。でも、弊社のグリースはユニテックさんと共同開発した数種類を使い分けているんですよ。モノによっては1缶が数万円もするグリースです。

_ ムササビ ― 2016/04/16 21:03

昔のポータブル赤道儀と 今のポータブル赤道儀は 微妙に使い方が違うような気がします
70年代のポータブル赤道儀は 使うレンズは長くても200ミリでしたが 一コマあたりの露出時間は10分から30分くらいではなかったでしょうか?
手動ガイドから始めるユーザーが多かったために
ピリオディックモーションよりも セッティング精度が求められ
どこのメーカーも極軸望遠鏡付きの赤道儀を発売するようになりました
ところがモータードライブが普及すると
赤道儀のピリオディックモーションが問題になって、精度の伴わないメーカー製品は姿を消したのではなかったでしょうか?

それがデジタルカメラの性能向上と普及により
短時間でもそこそこ良く写るようになりました

今日のポータブル赤道儀は正直に使用可能な範囲を
赤道儀の性能として 表示して良いと思います

ピリオディックモーションの精度と
セッティング精度から どのくらいまでの焦点距離のレンズに適すると表示するべきだと思うのです

SB工房さんは 複数のポータブル赤道儀をラインナップされていますが コンセプトが明快でわかりやすいと思います

_ ●星爺 ― 2016/04/19 16:15

ムササビ様 いつもコメントをありがとうございます。

昔は好き勝手?と思われるほど高精度を標榜した赤道儀もありましたが、組立ててから測定しないと追尾精度(Pモーション)はわからないので、量産品で本当の追尾精度を公称するのは無理な話ですよ。
各部を精一杯の精度で作ればOKではなくて、精一杯の精度で作っても全然不足だし、各部の工作精度の因子が重なって赤道儀の追尾精度になるのですから。
それで最近は「Pモーション○″」と公称するメーカーがほとんど無いのでしょうね。ウソを書かない良心的な表記ともいえますね。
今でも「Pモーション○″保証」なんて、とんでもない表記もありますが、ユーザーが購入後にすぐさまPモーションを測定する習慣がつけば、赤道儀の精度向上に寄与するのではないでしょうか? そういうサイトが出来ないかなぁ(海外にはあります)…と思います。
光学系の精度も以前は、ずいぶん怪しいことがありましたが、いろいろなレンズや反射鏡のロンキーとナイフエッジテストの結果を公開しているサイトはあるようですね。様々な精度の測定結果を公開するサイトが増えれば、すぐにバレるような大げさな精度の標榜はなくなると思います。

それと、初心者の人が追尾撮影に失敗するのが極軸設置のせいにされがちなようですが、肝心なのは赤道儀の追尾精度です。それと三脚などの強度ですね。一般写真ファンから天体写真ファンに転じた人達は、どうも三脚などの強度に無頓着で、カーボンなら性能が良いと思い込んでいるフシがあります。一般写真は短時間露出/高速シャッターで、星野写真は超長時間露出ですから、要求される強度は全く違います。

_ ムササビ ― 2016/04/20 01:31

ご説明ありがとうございます。
私も今のデジカメの時代では、赤道儀のセッティング精度よりも、追尾精度の方が大切だと思います。

逆に言えば、○○mmレンズで、○○分露出なら、極軸のセッティング精度は、このくらいで大丈夫なので、極軸望遠鏡でなくても素通しの穴で大丈夫・・・のような、表記がもっと浸透すべきだと思います。

それと、私も三脚まわりの強度が大切だと思います。
市販の小型のポータブル赤道儀は、昔からカメラ三脚を使うという暗黙の前提があったように思います。

カメラ三脚の一点のネジ止めは、汎用性に優れていると思いますが、必ずしもポータブル赤道儀には向いているようには思えません。
締め付けやバランスが悪かったりすると、長い露出時間に少しずつ回転してしまう恐れがあると思います。

営業上は汎用性の高いカメラ三脚のネジが良いのはわかりますが、夜間の暗闇での長時間露出には必ずしも向かないと思います。

もちろん、市販の小型のポータブル赤道儀で、カメラ三脚に一点のネジ止めであっても、赤道儀本体と雲台で上手く合体して、不用意な回転を防止している製品もありますよね。

いっそのこと、小型のポータブル赤道儀からカメラ三脚取り付けのネジを省いてしまい、専用の三脚に取り付けるしかない仕様にしたらいかがでしょうか?
過激かな?
不安定なカメラ三脚を使う人はいなくなるかもしれませんが、売上も心配かもしれないですね~。

_ ●星爺 ― 2016/04/22 05:02

ムササビ様 いつもコメントをありがとうございます。

追尾精度の良い赤道儀は造るのが非常に難しいです。構造自体は非常に簡単で中学生でも自作できるようなモノなんですけどね。星爺の中学生時代に隣の中学校で、20cm用クラスのドイツ式赤道儀を作った奴もいたくらいです。
機械加工屋さんはどこも、
「オレが作れば心配なんていらねーよ!」
「Pモーション? 何だそれは? ちゃんと作れば そんなものゼロにできるよ!」
なんて言います。匠の自信に溢れています。
しかし、赤道儀のギヤの精度は機械加工精度の10倍は必要です。計算上は“ナノ”の精度になるので、しっかり作って組み上げれば大丈夫なんて、甘いものではないんですよ。
ビクセンさん、タカハシさん、大型用では昭和機械さんや宇治天体精機さんなど、それはそれは魔法のように高精度な赤道儀を作っています。中国製は精度が低いと言われますが、それでも精一杯の精度を実現していると思いますよ。

ポータブル赤道儀は安価にしなくてはならないので、精度の良い物を作るのは難しいです。
たとえばJILVA-170のウォームギヤセットを歯車メーカーに作ってもらったら1セットで20万円もかかると思います。それでも赤道儀に供する精度を出すことは難しいでしょね。
弊社のウォームギヤは、昔、アリゾナにあったBayerという直径1メートルのウォームホイールまで作っていたメーカーの社長から教えてもらった技術を下敷きにして、自前の機械で歯切りをしていることがキモです。

ポタ赤の三脚は、本当なら本体から「三脚が生えている」または、「三脚の先端がポタ赤」みたいにした方が良いのですけどね。なかなかそうも行きません。

_ やまね ― 2016/05/22 04:52

※星爺より。
「JILVA-170出荷しています」のブログに頂いたコメントですが、最新のこちらのブログにも転載させていただきました。
-------------------------------
こんにちは。
自分のところに嫁入りしたJilva-170、
大切に使っております。
遠征に大活躍と報告したいところですが、
あいにくの天候不純で晴れ間に恵まれず
その性能を生かしきれていないです。
ぜひ、ビリオティックモーションも
計測したいのですが… (笑)

話は変わりますが、
自分は赤緯軸を追加して時に鏡筒を載せて
普通の赤道儀としても活用しています。

使用していて微妙なガタを感じていて
いろいろと調べた結果の判明した原因を
フィードバックさせて下さい。

当初、他社(大手量産メーカー)製三脚が
剛性が低く三脚付け根のガタもあったので
改良・改善をしたところ見えてきました。
(BT三脚が最良かと実感しました)

それは、極軸高度調整用親子ネジ部分です。
外側ネジと台座ブロックとの間にガタがあり、
そこがネックとなっていました。

ブロック側のネジ切り精度を向上させるか、
外ネジとブロックを固定するネジを追加して
親子孫ネジ?!にすると良いかもしれません。

また極軸回転方向のガタもありますが、
コレはスムーズな追尾には必須との理解で
よろしいでしょうか。

国内仕様に向けてより一層の
ブラッシュアップを期待しております~!

_ ●星爺 ― 2016/05/22 05:47

やまね様 コメントをありがとうございました。

JILVA-170やPanhead EQ、ユニテック社のSWAT-300/350は実際の星によるPモーションテストをして合格品を出荷していますが、昨年から今年にかけてのあまりの天候の悪さに困惑しています。テスト待ちのポタ赤が目の前にずらりと並んでいて、精神状態にも支障をきたしそうです。このところ2日ほど晴れたのですが…。
Panhead EQは一発でほぼ100%合格するので、テストをしないで出荷したいと思っています。もちろん公称の±15″より悪かったら即時交換させていただくことにしてですね。
JILVA-170は公称値の±4~±5″よりも厳しく測定していることもあって70%ほどの合格率です。出荷が遅れて ご迷惑をおかけしていますが、Pモーションテストを省略するわけには参りません。

JILVA-170のフォーク式上下方位微動の上下微動親子ネジのガタのご指摘をありがとうございました。
親子ネジは、押し押しネジと違って親ネジのハンドルのみで微動ができるので便利です。ガタは子ネジを締めると解消するはずですが、いかがでしょうか?

極軸回転方向のガタはウォームホイールのバックラッシュのことだと思います。ウオームネジとのクリアランスを0.3mmほどにしてあるので、クランプを締めて極軸を東西に動かすとガタが感じられます。
クリアランスは多めにしておかないとPモーションを増長します。市販の赤道儀もクリアランスはけっこう多いのですが、回転部の渋さやグリースのダンピングでわかりにくくなっているのですね。
クリアランスが多いと、極軸まわりのバランスが子午線通過で東側から西側に移るときに追尾が乱れますが、クリアランスを思いっきり小さくしても追尾の乱れは必ず発生するので、スムーズな回転と追尾精度を優先した組み立てになっています。

やまね様も赤緯軸を取り付けて、普通の赤道儀のようにお使いなのですね。
普通の赤道儀としてお使いのユーザー様が多いのは想定外でした。フォーク式赤緯軸をのせる人もいます。それで日本仕様ではSWAT-350の粗動回転が別体で2個のベアリングが受け持つ、頑丈なフローティングウォームホイール式のターンテーブルにいたします。輸出仕様をお使いのユーザー様には、実費の改造を受け賜るようにします(近々ブログでご案内します)。
一方で輸出仕様をさらに簡素化した超軽量のJILVA-170-Ultra Lightは、写真用ポータブル赤道儀の本命として鋭意試作中です。

_ やまね ― 2016/05/24 22:24

星爺さま

早々にコメント頂きありがとうございます。
JILVA-170UltraLight 楽しみですね🎵
そちらも欲しくなってしまいそうです。

赤径のクリアランスの件、
分かりやすい説明をありがとうございます。

もう一方の高度調整のガタの件ですが、
親子ネジの親ネジの外周雄ネジ部分と
マウントのアルミブロックに加工した
雌ネジ部分の間にガタが発生しています。
赤緯軸を付けることで微少なガタが増幅され
感じやすくなっているのかもしれません。

親ネジの外側に薄い大径ナットのプレート
加工品を装着してアルミブロックとの固定
をすれば良いかと思っています。

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://tentai.asablo.jp/blog/2016/04/06/8065995/tb