●本年もよろしくお願い申し上げます2017/01/02 09:00


年末のオーストラリア遠征の直前に2人めの孫が生まれました。上の大マゼラン雲が2歳の長女、下の小マゼラン雲が次男のように見えました。祖父としての責任をひしひしと感じます。
キヤノンEOS KissX5 ISO1600 シグマ17mm~50mm F2.8~F4ズーム 17mm F4で撮影。
オルゴール赤道儀(←クリック)MusicBox EQⅡにて露出各2分を3枚コンポジット合成。
超広角~標準の星景写真はオルゴール赤道儀で充分です。電動のポータブル赤道儀やドイツ式赤道儀を使うのも面倒なので、星景写真にはもっぱらオルゴールを使っています。

●JILVA-170の出荷が遅れて大変申し訳ありません
JILVA-170やユニテック社のSWAT-300/350は、全品のPモーション・テストをして合格品だけ出荷しています。合格するのは全体の70%。念のために公称の精度よりも厳しく測定しています。
しかしながら、一晩に数台までのテストしかできず、昨年に引き続きこれほど悪天候になるとは予想していなかったため出荷が遅れに遅れて皆様にご迷惑をおかけしています。本当に申し訳ありません。最近は天候が良くなったので、逐次テストをして出荷をしております。ご注文をいただいたお客様には進捗を個別にメールでお知らせしています。今少しお待ち下さい。

JILVA-170BT38三脚(←クリック)の格安販売期間を延長します
今年はJILVA-170を常に在庫するようにいたします。3月までは今までどおりパーツの余ったバーゲン品や試作品の受注生産といたし、格安販売の期間を延長しますのでお問合せください。

【格安販売の価格】
・JILVA-170輸出用バーゲン品----90,800円(税別)
・JILVA-170日本仕様試作品-----108,000円(税別)
・BT38-1三脚(直脚)------------18,200円(税別)
・BT38-2三脚(2本つなぎ)--------21,000円(税別)
(株)輝星 (←クリック)のホームページの 「ご購入とお問合せ」 からお問合せください。

JILVA-170の日本仕様試作品とは、大きな望遠鏡を搭載されるユーザー様も多いことから、その対策として15kg程度の搭載まで耐える、SWAT-350(ユニテックでOEM)の頑丈なフローティングウォームホイール式のターンテーブルに換装したモデルです。
専用のBT38三脚は三脚の欠点である「開く」機構を省略し回してたたむようにしたため、小型軽量なのに驚くほどの強度があります。普通のドイツ式赤道儀を搭載されるお客様も多いです。
左がSWAT-350のターンテーブルに換装した「日本仕様試作品」、右が「輸出用バーゲン品」です。

BT38三脚に左はSWAT-350を搭載。右はふつうのドイツ式赤道儀を搭載(ユーザー様の例)

●ポータブル赤道儀(ポタ赤)のコンセプトはノーガイド撮影
ポタ赤の誕生と経緯は過去のブログ「ポータブル赤道儀という用語」に書かせていただきました。
星爺は12年前まで天文雑誌の編集を30年ほどやっていて、レンズテストの記事などで大量の星野写真を撮影していました。撮影失敗は許されないので、本来は据付用の30~50キロもある赤道儀に手を加えて高精度化したり、極軸のみにした架台を何台か運搬して使っていました。もちろん400mm望遠レンズ程度まではシャッターを切って「ほっぽりっぱなし」するノーガイド(ノータッチガイド)撮影です。書籍を執筆される著者の先生方も、大型の赤道儀にカメラを搭載してノーガイド撮影をしていました。

「エッ? 小型の赤道儀にカメラを搭載してガイド撮影するのではないの?」 と思う人もいるかもしれませんが、そのような撮影法は元々は天文雑誌の対象読者である小学校高学年から中学生用に考えられたもので、大量に撮影する仕事に使える手法ではありません。雪原に穴を掘ってその中でガイド撮影をしている表紙の写真が大ウケしましたが、天文少年に向けた夢のある演出ということですね。
しかし、大きく重い赤道儀の運搬は大変なので、同様な追尾精度を保ったまま運搬しやすいポータブル赤道儀に仕立てたのが大きめなJILVA-170で、φ162のウォームホイールを使っています。135mm望遠以下用にはデジタル一眼レフボディと同程度の大きさのPanHead EQをご用意しています。
追尾精度の命であるウオームギヤセットをギヤメーカーに依頼すると、JILVA-170と同じくらいの大きさは10万円以上かかります。それでも満足な精度のギヤはなかなか作れません。そこでウオームギヤは特殊な製法で自製して安価に高精度を達成しました。

今回ご紹介するユーザーの皆さんはノーガイドで撮影されています。もちろん弊社は世界で初めてポタ赤にオートガイダー端子を設けたくらいで、ほっぽりっぱなしノーガイドばかり推奨するものではありませんが、ノーガイドでもかなり使える追尾精度を有することはポタ赤の必須条件と考えています。

◆ぎょしゃ座中央の散光星雲 IC405とIC410◆ JILVA-170で撮影:加藤 利仁さん
ペンタックスSDUF天体望遠鏡(口径100mm  焦点距離400mm F4) キヤノンEOSKissX5カメラ(天体改造) ISO3200 露出4分と2分 ノーガイドで22枚撮影してコンポジト合成。

フィルム時代の中判カメラ用のこのレンズは、色収差が激しくて強調処理をすると明るい星の周囲にリングができます。
しかし微光星はずいぶんシャープなので正確な追尾がよくわかります。 ノーガイドでも400mm望遠が撮影できるのはとっても楽ですよね?
JILVA-170にビクセンGP赤道儀の赤緯軸を付けてお使いです。上の写真に搭載しているのは作例写真のペンタックスSDUF 天体望遠鏡ではなくカメラレンズの300mm F4 です。


◆オリオン座の馬の首暗黒星雲付近◆ JILVA-170で撮影:大野 浩之さん
BORG 77ED2 天体望遠鏡 0.7×レデューサ使用(口径77mm 焦点距離357mm F4.6) フジX-T1カメラ(ノーマル) ISO感度不明  ノーガイドで2分露出を4枚コンポジット合成。
望遠レンズよりもシャープな大きめのED天体望遠鏡をお使いです。全面に見られる赤いモヤモヤはカブリではなく淡い分子雲です。このカメラはノーマルでも赤いHα星雲がよく写るようです。
JILVA-170にベンチバーを取り付け、タカハシの赤緯軸パーツを取り付けてドイツ式にしています。


◆ケフェウス座のガーネット・スターとIC1396◆ PanHead EQ PH-1sで撮影:桐山 伸一さん
BORG 36ED 天体望遠鏡 1.1×フラットナー(口径36mm 焦点距離220mm F6.2) キヤノンEOSM3カメラ(天体改造) ISO3200 ノーガイドで露出6分を8枚コンポジット合成。
135mm望遠レンズをノーガイドできるというPanHead EQの公称値よりも長い焦点距離の望遠鏡での撮影ですが、比較的長い6分露出でも追尾エラーが見えないので、製作者としてはヒヤヒヤした後でホッとしています。この星雲は非常に淡いのでかなり難物ですが素晴らしい描写ですね。
PanHead EQ PH-1“s”は、軽量化に留意して単3形乾電池2本(またはUSB電源)で動くモデルです。アルカスイス互換プレートで大きな鏡筒を載せておられますが、ちょっと荷が重い感じもします。今後は左側に見える小型のオートガイダーを使ってさらに長焦点長時間露出を目指すそうです。
PanHead EQでもオートガイドさえすれば1000mmクラスの望遠鏡も使用可能なので、ご要望にお応えして頑丈なターンテーブルに換装したPanHead EQも計画しています。

◆南十字とコールサック付近◆ PanHead EQ PH-1で撮影:村松 俊和さん
70mm F2.8 カメラレンズ 絞りF3.5 キヤノン6Dカメラ(天体改造SEO-SP4) ISO1600 ノーガイド露出3分を12枚コンポジット合成。
南半球に遠征して撮影した南十字星付近の星野です。光害のない夜空での撮影はとくにバックグランドが美しいですね。 虫の這った跡のように見える暗黒星雲の筋が見事です。

●2017年の生産計画
◆PanHead EQ ポータブル赤道儀 PanHead EQ (←クリック) PH-1は隠れた人気のある超小型のポータブル赤道儀です。雲台の感覚で使えるのでパンヘッド EQ(Equatoria)です。 ベテランの人のご購入が多く、上の写真のようにターンテーブルにアルカスイス互換クランプを搭載したモデルや、極軸を強化したモデルなど特注にお応えします。今年はそれらの特注品を標準品として機種を増やします。

◆JILVA-170ポータブル赤道儀 JILVA-170は、Pモーションテストの能率を向上させて、たくさん作り置きして常に在庫を持っておくようにします。

◆オーソドックスなドイツ式赤道儀 JILVA-170のウオームギヤの調子が良いので、同じパーツを使って圧倒的に強度を高めた普通のドイツ式赤道儀を発表する予定です。自動導入対応やそうでないシンプルなモデルも作ります。

◆オートガイダーセットと電子極望 もうすぐポータブル赤道儀に適したオートガイダーセットや電子極望のPoleMasterも取扱を開始します。

◆JILVA-300 ポータブル赤道儀 ウォームホイールφ300で歯数540歯のJILVA-300を発表する予定です。ウォームホイールの自社生産の研究はJILVA-300用で始めたのですが、やっとお披露目できます(下はテスト用の極軸)。

●汎用自動導入モータードライブE-ZEUSⅡ
年末はJILVA-170のPモーションテストで多忙だったため、ご自分で装着されるユーザー様に自動導入装置のE-ZEUSⅡ(←クリック)を何台か出荷しました。皆さんうまく装着されて快調に動いています。
左はタカハシJ型赤道儀に取付けた標準型寒冷地仕様のE-ZEUSⅡ。右は昭和機械製作所 SHOWA25E 赤道儀に取付けた標準型寒冷地仕様のE-ZEUSⅡ。

左は宇治天体精機スカイマックスに取付けたドライバが特別仕様のE-ZEUSⅡ。右は昭和機械製作所SHOWA20E 赤道儀に元々内蔵されていたドライバ回路を流用した標準型E-ZEUSⅡ。

左は宇治天体精機スカイマックスに取付けた標準型E-ZEUSⅡ。右はミカゲ光器の大きな360N型赤道儀に大型用E-ZEUSⅡを取付けるために整備をしているところ。

※株式会社輝星の運営する「SB工房」はこちらです。

コメント

_ ムササビ ― 2017/01/05 07:16

あけましておめでとうございます。

昔、大学に入学したのを機会に「星の広場」に入会して驚きました。

ベテランの彗星観測者の方たちは、誰もガイド撮影などしていませんでした。

撮影はあくまでも手段であり、目的は彗星観測でした。

当時、6.5cm屈折赤道儀をせっせと手動ガイドしていた私にはカルチャーショックでした。

80年代初めのことです。

当時のカスタムクラフトの記事も、足まわりががっちりした赤道儀でノータッチガイドする・・・というものでしたよね。

あの記事は面白くて、毎月楽しみにしていました。

今年の新製品、楽しみにしています。

_ ●星爺より ― 2017/01/05 08:46

メールありがとうございました。本年もよろしくお願いします。

初代の『天文ガイド』のT編集長がライカ使いで、ライカのフルシステムが家一軒と言われた時代から自然科学写真で名を馳せていました。で、中学生くらいの天キチ(不適切な表現なので今は天文ファン)に追尾撮影をやってもらうにはどうしたら良いか? を戦前から天体写真の名手だったH先生と考えたのが、当時は玩具のような赤道儀の鏡筒に35mm判(=ライカ判)のカメラを搭載する「手動ガイド」なんです(変な言葉ですよね?)。まぁ、それまでも似たような撮影法はあったと思いますが。

原理的に焦点距離が長いほど暗い星が写るので、狩猟も趣味だったH先生は「そんなのはピストルでライオン狩りをするようなものだ!」と、35mm判カメラも反対された逸話があります。しかし、小さな35mm判フィルムを拡大プリントすると星が拡大されて派手に見えるので大いにウケて、手動ガイド+35mm判カメラが大流行したのは皆さんご存じの通りです。35mm判ならガイドも甘くてOKだし、手動ガイドの名人芸は精度の悪い赤道儀でも使え達成感もあり趣味性を高めたということもあるでしょう。

『天文ガイド』は、あくまでも小学校高学年から中学生以上を読者対象をしていたので、安価な入門者用向けの赤道儀で撮ることを前提にしていて、それは星爺も賛成して雑誌を作っていました。でも、自分達は撮影用の高精度の赤道儀を使ってノーガイド撮影しているのも妙な話ですよね?
渡辺さんのおっしゃる通り撮影法は手段にすぎません。やはり高精度な赤道儀を用いて、何にもしないノーガイド(ほっぱりっぱなし)で撮影するのが本来の姿だと確信しています。むしろ入門者向けは高精度なポータブル赤道儀です。
それを目指して作っているのがJILVA-170なんです。あまりにも市販の赤道儀を使う手法を普及させてしまった反省から作っています。

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