●胎内星まつり は断念しました2017/07/25 04:55

●「胎内星まつり」 と 「アメリカ日食」は行けません
星爺はこの2周間ほど体調不良で歩くことができない状態でした。 また 片方の眼が良く見えなくなって細かい作業ができません。 前回のご報告より更に悪化して健康が大ピンチです。
JILVA-170をはじめ納品が遅れて多大なご迷惑をおかけしています。 謹んでお詫び申し上げます。

幸い回復傾向にあり、望遠鏡メーカーOBの人にも手伝っていただいて、8月の第一週までには、全てのJILVA-170は完納させます。 ユニテック社のSWAT-350も逐次納品します。
お客様からは「納品はいつでも良い健康が大切」とのメールや励ましのお電話をたくさん頂戴して、涙が出るほど嬉しく思いましたが、アメリカ日食やこの夏の新月にお使いの人も多いので、甘えるわけにも参りません。
そんなこともあり、7月28日から新潟県胎内市で行なわれる『胎内星まつり』の(株)輝星・SB工房の出展と、8月21日の『アメリカ日食』の遠征は断念いたしました。
お盆の頃までには必ずゾンビのように復活して、生産や新製品の開発に邁進いたします。


●日食観察について、星爺なりの見解です
皆既日食には7回しか遠征したことはありませんが、幸い すべて快青下で観察できました。 他のご見解もあろうかと存じますが、星爺なりの見解を掲載します。 年初に書き留めておいた原稿があったので、以下に素の原稿のママ掲載します(今は文面を打つのも片眼で苦労する状態です)。

●皆既の開始まで目隠しのお勧め
肉眼はとりあえずの暗順応には約5分。 完全な暗順応は30分かかると言われます。 暗い映画館などに入ったときに誰しも経験しますね。 星空を見るときはもちろんですね。
アメリカ日食の皆既継続時間は2分ちょっとです。 これでは眼が暗順応して外側の淡いコロナや周辺の惑星や明るい恒星が見え始める前に皆既が終了してしまいます。 そこで、皆既の開始まで「目隠しをすることをお勧めします。
 50年ほど前くらいまでは天文学者も皆既日食を観測することがあり、目隠しをして待機した思い出話をお聞きしたこともあります。

●皆既日食の写真は誰でも撮れて誰にも撮れない?

 太陽の近くの内部コロナは非常に明るく(満月よりも明るい)、外部コロナは薄暗い空に溶け込むほど淡いものです。 ISO感度100で絞りF8では、内部コロナはだいたい1/2000秒露出、外部コロナは2秒露出が適正で、全体像の適正露出はあり得ません。 つまり、どんな露出で撮影しても写真の雰囲気が変わるだけで失敗は皆無です。 言い方を変えると どんな露出で撮影しても失敗です。

●内部コロナ~外部コロナまで適正露出にする工夫
皆既日食の写真の逆版(ネガ)のような感じで外側に行くにしたがって淡くなるフィルターをカメラボディのフィルム直前に入れるのが、ニューカーク博士が1960年代に発明した「ニューカークフィルター」です。 内部~外部コロナまで適正露出で撮るには広いダイナミックレンジが必要なので、濃くて厚いガラス製のNDフィルターを光学旋盤で削って作りました。 アメリカ日食用に昭和機械製作所が同様なフィルターを開発中との情報もあります。
1980年2月16日のインドでの皆既日食では、塩田和生さんがダイナミックレンジの広い特殊な銀塩感材でニューカークフィルターを作って、素晴らしい写真を撮影されました。  星爺は製作法の原稿を編集した覚えがあります。 塩田さんは最近は画像処理で日本一(世界一?)の日食写真を撮り続けています。
1991年7月11日のハワイ---メキシコ皆既日食では、当時Sky&Telescope誌の編集者だったデニス・チコさんが、フィルム直前で風車のような形状の小さなプロペラを回して、ニューカークフィルターと同様な効果を狙いました。 星爺は現地で装置を見せていただいた覚えがあります。

画像処理が簡単に行えるようになった昨今、内部~外部コロナまで適正露出の写真を得るには、1/2000~2秒程度の露出で多数枚撮影して適正露出部を画像処理で合成します。 その上でコロナの流線を強調する様々なテクニックを用います。 かなり手間もかかるので、 いっそ「記念写真程度」の撮影に甘んじて、大自然のスペクタクルを眼視で楽しんだほうが得策とも言えますね。
※勇気をもって乱暴に適正露出を定めるなら、1/125秒内外が無難なところでしょうか?

1995年のタイでの皆既日食です。 口径8cm 焦点距離640mmの望遠鏡の直焦点撮影。 ラチチュードの広いISO100のカラーネガフィルムにて1/30秒で撮影し、プリント時に内部コロナを焼き込み外部コロナは覆い焼きをして、少しでも全体が適正露出に近くなるようにしています。 もちろん、それでも適正露出にはほど遠いです。 コロナはもっともっと外側まで広がっています。 左の縁に見えるピンクのプロミネンスは、露出オーバーのコロナに埋もれています。 (画像をクリックすると大きくなります)。

1994年の南米ボリビアでの皆既日食です。 口径80mm 焦点距離640mm望遠鏡。 1回シャッターを押すと8秒~1/2000秒を順番に撮影し続けるコシナの一眼レフ改造カメラボディ使用。 カラーネガフィルムの画像をスキャナーで読み取って、内部~外部コロナの適正露出部を重ね、全体的に適正露出の画像を得てから輪帯的なアンシャープマスキング処理を施して、コロナの流線を強調しています。 右側の写真は4秒露出で写った月面の地球照も上乗せしてあります。
コロナを望遠鏡で見ると、絹糸を放射状に流したような細い細い乳白色の流線が見事です。 上の写真のような粗い流線ではありません。 当時の技術背景と星爺の下手な画像処理では これが限度でした。
デジタルカメラは当時のフィルムよりも圧倒的にシャープに写るので、アメリカ日食では画像処理を工夫してもっともっと詳細なコロナの流線を現すことができると思います。 ただしカラーネガフィルムがオーバー側に5絞り程度の広いラチチュードがあるのに対し、デジカメのラチチュードはかなり狭いので、内部~外部コロナまで細かく多数枚を合成する必要があると思います。

左はタイでの皆既日食。 1/2000秒露出でプロミネンスを狙いました。 プロミネンスはもっと超望遠で拡大して撮影したいですね。 今夏は太陽活動が活発ではないので、大きなプロミネンスが見えるかどうかはわかりません。 星爺が『天文ガイド』誌でインストラクターをしているときは、プロミネンスアイピースを持参して、直前のプロミネンスの様子をツアー参加者に確認してもらいました。 右は皆既終了時のダイヤモンドリングです。

●連続オートブラケット装置
カメラによっては「オートブラケット」と称する、設定したシャッター速度の前後数枚を露出を変えて写す機能があります。 例えばキヤノンEOS6Dなら設定した露出の前後3枚ずつを任意の露出差で撮影できるので、適正露出のないコロナの1枚ごとに露出を変えた撮影に便利です。 本当は前述のコシナのカメラのように全速のシャッターを切り続けてくれると更に重宝なのですが…。
オートブラケットは1回しか撮影できないので、1回スイッチを押せば連続してオートブラケットで撮影し続ける装置を作りました。 SB工房での頒布を計画していたのですが体調不良で叶わないので、今回は遠征する身内のスタッフや関係者の皆さんが使用することになりました。

●溶接面用の色ガラスフィルター
部分日食を見るために濃い色の下敷きやフィルムを使うのはヤメましょう。  眼では減光しているように見えても危険な紫外線や赤外線がノーガードで透過している場合があります。  望遠鏡メーカーなどから供給されている「日食グラス」は多くが ミラーグラスで、短波長の紫外線から長波長の赤外線(熱線)までまんべんなくガードする安全なものと思われます。
星爺は以前から溶接作業用のお面に使う「色ガラス」を使っています。 これはドイツのDIN規格や日本のJIS規格に則った極めて安全な減光フィルターで、紫外線と赤外線もガードしています( 最も透過する色の緑色に見えます。 レイバンのサングラスと同じですね)。 大きさは50mm×100mm。 平面精度は不明ですが、以前に天文学者の先生が「小さくな円形に切って太陽観測用のアイピースに入れる」とおっしゃっていたので、たぶん撮影に用いても問題ないと思われます。
「溶接、遮光ガラス」などで検索してみてください。  色の濃さは薄いもの(ガス溶接用)から濃いもの(電気溶接用)まで数種類あり、肉眼で見るにはDIN規格なら最も濃い目の12番か13番が適すると思います(晴れ間に太陽を見て10番を校正しました。眼鏡のサングラスとの併用は10番が良いです)。 安価な物は1枚200円以下です。 偏光フィルターを2枚用いた調光式もあります。

●その他の情報
写真に撮るとダイヤモンドリングは皆既の始まりも終わりも似たように写りますが、皆既の始まりのは本当はダイヤモンドリングとは言わないらしいです。 皆既の終わりのダイヤモンドリングは、暗順応した眼にピカーッ! と強烈に輝いて見えて感激します。 皆既の始まりのは漫然と暗くなって、太陽の1部が未だ月に隠れていない…といった感じです。 これはこれでスーッと現れるコロナに感激しますが…。

皆既日食撮影の望遠鏡や望遠レンズは、焦点距離500mm~700mmくらいが適すると言われます。 画角的にはまったくその通りです。 しかし、コロナの流線の詳細を撮影するためには1000mm以上が有効です。 外部コロナは狙わないので、適正露出に悩まされることも少なくなります。

一般写真派の人は望遠レンズやズームレンズにテレコンを用いる人が多いです。 しかし、皆既日食は強烈な「逆光」の被写体なので、 レンズ枚数の多い光学系はゴーストが心配です。 とくにダイヤモンドリングはゴーストが出やすいです。 カメラレンズでは長めの露出は諦めて、1/60秒以上の手持ちで撮影するのも妙案です。 自ずと太陽の位置が安定しないので、ゴーストの出ない構図で撮影できることがあります。 満月ころの明るい月を撮影するとゴーストの傾向がわかることもあります。
※本気で撮るにはカメラレンズ(とくにズーム)は避けるべきと思いますが、どうでしょうかね?

天体望遠鏡は単純なレンズなのでゴーストが出にくく、シャープで流線が鮮明に写るので、過去に見事な写真を撮った人達は、ほとんど天体望遠鏡を用いています。
カメラレンズと比較した欠点は、 焦点距離に反比例して像面の凹弯曲が強くなるので、小型の天体望遠鏡ほど周辺の外部コロナがピンボケになりやすいことです。 小型の望遠鏡はド真ん中でピントを合せないでやや端で合せたほうが良いです。 像面平坦化レンズ(フラットナー)を併用すべきかもしれませんがゴーストが心配です。
また、天体望遠鏡は望遠レンズのようなテレタイプの光学系ではないので、入射光が平行光線に近くなるため撮像素子上のゴミが写りやすいものです。 撮影前に撮像素子の清掃をしましょう。 カメラボディ内フィルターはゴミの写る元になるので避けたほうが無難です。

天体望遠鏡や望遠レンズは赤道儀に載せると快適ですが、500mm程度までの望遠で1/8秒露出以上なら日周運動で流れて写ることはありませんから、カメラ三脚に固定するだけも良いですね。
広角レンズによる固定カメラの連続撮影は赤道儀の追尾は無用です。 が、太陽の動いてゆく方向をシミュレートして構図を決めるためには、赤道儀に載せて回してみるとわかりやすいです。

皆既日食の観察には双眼鏡が必携です。 天体望遠鏡で100倍以上の倍率で見るのもお勧めです。 内部コロナがシューッと音を立てて吹き出している感じに見え、太陽に近いコロナは渦を巻くように乱れて見えることもあります。 大感激すること請け合いです。

皆既日食の前後は晴れれば当然カンカン照りなので、ノートパソコンの画面が非常に見にくくなります。 詳細なディスプレイほど見にくいです。 ディスプレイのまわりを囲ったり黒い布をかぶるなど、事前にいろいろ試してみてください。
当日はどこも快晴に恵まれることを期待しています。


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※星爺のフェイスブクはこちらです。

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