●終活のイギリス式赤道儀--その後2018/02/21 06:27

◆最近の健康状態
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両足の激痛で歩けなくなることはなくなりました。 JILVA-170は、日本仕様の試作品の受注を再開して順次製作していますが、その他の特殊な機材が遅れて申し訳ありません。
 左眼は調子が悪いと かなり歪んで暗く見え、メールなどの文字列を見ると嘔吐して、頂戴したメールになかなか返信できず、大変失礼をしております。 深く お詫び申し上げます。
このブログは代打ちしてもらって作っています。
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笠原隆樹さんのリストアで蘇ったイギリス式赤道儀
前回ブログの笠原さんにもらわれていった、宇治天体精機スカイマックス赤道儀をベースに改造した「イギリス式赤道儀」は、なんと! 1ヵ月ちょっとで錆びて動かない部分やベアリングなどを直して実用されています。 笠原さんの技術(←クリック)に感服! 下の写真は撮影中の様子です。 バッテリーなど全て込みの重量250Kgを移動してお使いです。

鏡筒は口径30.5cm F4 ニュートン式の市販品ですが、笠原さんの改良/強化により全くの別物になっています。 自動導入システムは大きめな5相ステッピングモーターを用いた大型用E-ZEUSⅡ(←クリック)。 ワゴン車に積んで移動します。

●津村光則さんのイギリス式赤道儀
星爺がイギリス式を作ったのと同じ頃、『天文ガイド』誌の彗星コーナーでおなじみの津村光則(←クリック)さんも偶然同じような赤道儀を作られたのには、顔を見合わせて笑ってしまいました。
天体ドームに納められていて、鏡筒は宇治天体精機の35cmカセグレン望遠鏡です。
津村さんのイギリス式
ベースの赤道儀は同じくスカイマックス。 イギリス式の極軸は星爺のよりもずっと長くて、北端の軸受けはφ100の巨大なピローブロックベアリングです。
イギリス式は、このように南端と北端の軸受けの強度/精度の役割分担を同じくらいにする設計もあれば、南端の軸受けが主役で北端は小さかったり、さらに略して「支えられればOK」という感じの設計もあります。 極端に言えば南端でがんばれば北端は極軸の丸棒をVブロックで受けるだけでもOKです。 研究者用の大きなイギリス式赤道儀も、南端と北端の軸受けは様々な仕様があります。
津村さんの自動導入システムは、かなり昔に『天文ガイド』誌の自作記事でご紹介した、ビクセン製スカイセンサー2000PCのモーターの信号を利用して、別の大きなステッピングモーターを回す手法。
カセグレン望遠鏡は主鏡35cm F3.5、 副鏡:10cm 合成焦点距離5000mm F=14 (田阪鏡)。
彗星を観測するときは、冷却CCDカメラSTL11000M(3x3ビニングで使う)で、1フレーム60~180秒で撮影しておられます。

●高橋製作所のMeridianシリーズ
イギリス式の利点は圧倒的に頑丈なことと精度の高さです。  もう一つ見逃してはならない大きな利点が、望遠鏡が子午線を通過してしばらく経っても架台や脚にぶつからないことです。 昨今の星野写真では「超多数枚コンポジット」する手法が流行して、同じ被写体を一晩中撮影することが多くなりました。 その場合は、鏡筒をどこに向けても架台などとぶつからない赤道儀が便利です。
タカハシのMeridian(メリディアン=子午線)赤道儀は、同社の赤道儀の極軸を長くして、子午線から東西にかなり離れた方向でも下側を回っても、鏡筒がぶつからないようにしたもの。 星野撮影用に想像以上に快適な赤道儀です。 このように極軸が北側に長い赤道儀を「エルボータイプ」と呼ぶこともあります。 さすがにタカハシさんは対応が早いですね!
画像をクリックすると拡大されます。 左から、EM11、EM200、EM400のメリディアンタイプ。 これを見ていると、極軸を北側に継ぎ足してイギリス式にしたくなるのは星爺だけでしょうか?(笑)

※株式会社輝星の運営する「SB工房」はこちらです。
※星爺のフェイスブクはこちらです。

コメント

_ ムササビ ― 2018/03/02 07:39

いいことづくめ・・・のようなイギリス式赤道儀ですが、実際に移動してお使いになる方は稀だと思います。
やはりセッティングのやりにくさ、持ち運びのしにくさがあるからだと思います。

ポタ赤仕様の小型のイギリス式赤道儀はいかがでしょうか?

三脚や雲台(赤緯軸)まで含めてデザインされた小型のイギリス式赤道儀。

小さい故に極軸望遠鏡も組み込めると思います。

長時間露出対応のポータブル赤道儀。

ぜひ開発してください。

_ 坊主 ― 2018/03/05 21:23

ブログの記事とは直接関係はないのですが、天体望遠鏡の絞りについて、体調がよろしければ教えていただけないでしょうか。

先日、トーコルさんの組立式のスマホ天体望遠鏡にて、絞りをつけると収差だけでなくシーイングまで改善される事象が動画で紹介されていました。

PalBeans(絞り機能)
https://youtu.be/9qrC_CJRMxc

動画をみると明らかに改善されているので、絞りの効果があるのはわかったのですが、原理がよくわかりませんでした。
被写界深度が深くなることが効いているのでしょうか?
もしご存知でしたら、体調と時間があるときにでも教えていただけたら幸いです。

_ ●星爺より ― 2018/03/06 02:50

ムササビ様 コメントをありがとうございました。

笠原さんのように本格的なものでなくても、小型のドイツ式赤道儀の極軸を北に延長して北側に別の三脚か一脚を立てて、V溝で極軸を支えるだけの簡易型でも、強度は圧倒的に増すと思います。簡単なものならテストしてみた経験はあります。
赤道儀の極軸と延長する極軸の「芯出し精度が心配」と思いがちですが、南端の赤道儀部分にほとんどの役目を押し付けて北側は支えるだけと考えれば、あんまり関係ないみたいです。

ポタ赤のPanhead EQ をイギリス式やヨーク式に改造したいという、お問合せはいただいています。撮影レンズをとっかえひっかえするのではなくて、ツアイスやシグマの135mm望遠やキヤノンの300mmなど、一生使いたいほど他のレンズは不要なほど優れたレンズを、望遠鏡の鏡筒のように取付けっぱなしにしたイギリス式は便利そうですね。
時間ができたらぜひやってみたいです。
http://www.ne.jp/asahi/sky/bird/pheq.html

_ ●星爺より ― 2018/03/06 04:26

坊主様 
コメントをありがとうございました。

この望遠鏡は古巣の出版社も関係している組み立て式の望遠鏡ですね。こういうキットは教育的で大好きですが、価格があまりにも高いですね。せいぜい5000円にしてほしいし、モノの価値もそんなものでしょう。
https://shop.kodomonokagaku.com/products/list.php?category_id=1785

ご質問については、以下のように考えていますが、もう少し深く考えてみて結論が変わったら、またコメント欄にUPさせていただきます。
①絞ると諸収差が減る(シャープに見える)
②絞ると分解能が落ちる(甘く見える)
③絞ると焦点深度が深くなる(ピンボケになりにくい)

以上の効果があるわけですが注目すべきは②だと思います。
①で収差が減っているけれども口径の理論分解能は悪くなり、結果として惑星像は絞っても同じくらいの見え味になっているという状態でしょうか?

この望遠鏡は口径40mmなので理屈の上での分解能は3″角ほど。口径15mmに絞るとすれば分解能は8″角ほどです。 木星の視直径は40″角ほどなので直径の1/5の分解能だと、ちょうどこのサイトの作例くらいの像になると思います。
通常のシーイングの乱れは3″~4″角ほどと仮定します。
高校の物理で習うように「別の要因が重なる場合」すなわち分解能不足でボケてシーイングでもボケる場合。両方が足し算されるのではなく、各々の2乗を足し算した結果の「平方根」がボケになるはずです。すると、片方が1/2以下のボケの場合は影響がうんと少なく、1/3以下にもなれば影響は無視できるほどになります。

ボケは像のブレと同様と考えると、口径40mmではシーイングの影響をまともに受けて像が激しく動くのが、口径15mmだと分解能の1/2以下のシーイングの影響を受けにくくなる、と考えられると思います。
そのうえで、③で焦点深度が深くなれば、揺れる大気のレンズ効果による一瞬のピンボケも少なくなると考えています。大口径望遠鏡はシーイングの影響を受けやすい現象に通じる理屈ではないかと?
素人判断なのでわかりませんけどね(笑)

_ 坊主 ― 2018/03/06 08:34

早々に返信いただきありがとうございます。

絞ると分解能が落ちる➡︎シーイングが目立たなくなる
は自分では考えつきもしませんでした。
まさに「目から鱗」って感じです。

動画を見てみると絞りを入れた方がキレイに見えているので、何事もバランスなのかなぁ、と考えてしまいます。
分解能が悪くても動かない方が、動画として圧縮された時に崩れにくいのか、人が頭で補完してしまうのか、、、仕事を忘れて色々と考えてしまいます。

自分の好奇心からの質問にお付き合い頂き、ありがとうございましたm(_ _)m

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