●眼視用長焦点で星野撮影2018/04/09 17:20

◆最初に最近の健康状態
------------------------------
左眼は調子が悪くてメールなどの文字列を見ると嘔吐して、頂戴するメールになかなか返信できず大変失礼をしております。 順次返信いたしていますが、 深く お詫び申し上げます。
両足の激痛は弱まって歩けます。が、右肩が痛むようになって荷物を持てません。 とくに特注品の納品が滞っていて申し訳ありません。
このブログの記事は代打ちしてもらって作っています。 説明図が描けないので、文面だけでわかりにくいですがご勘弁ください。

------------------------------

●デジタルカメラはFが暗くても大丈夫! なので眼視用を使う

フイルム時代は「低照度相反則不規」という大きな問題がありました。 一般写真の被写体の明るさが半分になれば露出を2倍かけて適正露出(当たり前!)という相反則が、星野のように暗い被写体の長時間露出では当てはまらないのす。 フィルムの相反則不規は数秒露出から始まって、露出をすればするほど顕著になります。 だんだん感度が減ってゆく感じですね。 F4よりも暗くなると1時間以上の露出をしても満足に写らなくなり、とても非生産的な撮影作業でした。
しかし、デジタルカメラには相反則不規は皆無で、撮影レンズのFがいくら暗くても、それに応じて露出時間を長くすればちゃんと写ります。 がんばって長い露出時間に挑戦する価値があります。

●口径の分解能やFの明るさは無関係、焦点距離で写りが決まる
極限等級や細部の描写力は焦点距離に依存するので、長い露出をすることさえいとわなければ、眼視用の長焦点望遠鏡は細部まで描写した見ごたえのある写真が得られます。
暗いFが多い眼視用望遠鏡は自ずと焦点距離に比べ口径が小さいです。 しかし、大口径や高性能な望遠鏡の余りある分解能は直焦の星野写真には必要ありません。 撮像素子がそこまで解像しないからです。 小口径であっても、眼視の高倍率ではシャープに見えない性能の良くない望遠鏡であっても充分使用できることも多いです。

以上の理屈や、眼視用を星野写真に転用する際の収差の問題などは、今回は体調が悪く代打ちのため図示できないので、とりあえずは作例をご覧ください。

●セレストロン製C14型口径35cm F10シュミットカセグレンの作例
おおぐま座のM101回展花火銀河(画像をクリックすると拡大されます--以下同)
中古で15万円で買った鏡筒に凹みありのボロボロのC14シュミット・カセに、自作4枚玉補正レンズを付けて口径35cm F7 焦点距離約2700mmで撮影。 十数年前の写真なのでデータは忘れましたが、冷却カメラはたぶんSBIG社のST8で3色分解撮影です。
今の高性能のカメラなら、この半分くらいの大きさの望遠鏡で同様な写真を撮れるはずです。

おおぐま座のM51子持ち銀河
子供の銀河の周囲の淡い部分も描写しています。 Fが暗くても相応の露出時間をかける(一般写真の絞りと露出時間の関係と同じ)ことで、淡い部分も星野写真用のFの明るい望遠鏡とまったく遜色なく写ります。
子供銀河の左上に渦巻銀河を真横から見た小さな銀河(NGC4565と似ている)があります。 星爺はこの銀河の写り具合を評価の基準にしています。 まったく写らないことも多いですが。

りょうけん座のM106 右上はNGC4248で眼視光度12.59等 視直径 2.0′×0.9′
中央部の暗黒帯の分解が難しい被写体です。メインの銀河だけでなく、周辺の小さな銀河の写り具合を見るのも、眼視用長焦点の醍醐味です。

●眼視用30cmクラスのニュートン反射による作例
昔々、反射望遠鏡の定番だった口径が大きくF6~F7との暗めのニュートン反射は、長くて邪魔だと今ではあちこちで敬遠されているみたいです。 でも、光学系の精度が高く惑星の観測には最適。 星野写真の性能も露出さえかければ非常に素晴らしいです。

下の写真は、兵庫県は淡路島の「鳴門タクシー天文台」の台長 沼田浩孝さんが愛用する口径30cm F6ニュートン反射望遠鏡。 赤道儀はアスコ260型。 星野写真から月面惑星まで撮影されています。 ワンちゃんが飛び上がった瞬間を撮る飛行犬やドローンでも著名なプロの写真家さんです。
鳴門タクシー天文台は一般公開もされていますのでお問合せください。
https://www.narutotx.com/

オリオン座の馬の暗黒星雲
口径30㎝F6反射望遠鏡 カメラはAPS-CサイズのEOS Kiss X3改造機 ISO 3200 露出2分x30枚合成 鳴門タクシー天文台にて2年前に撮影したものを再処理。
小ぶりなAPS-Cサイズのためか、周辺までシャープで非常に解像度の高い馬の首です。 焦点距離1800mmの威力と言えます。

下の写真は、竹内 康さんの豪華な別荘の観測所です。 弊社の自動導入装置E-ZEUSⅡが装着されたミカゲ光器製210B赤道儀を中古で入手され、手を加えて実践に投入する準備中です。
鏡筒は口径30cm F6 です。 ニュートン反射は周辺のコマ収差がFの2乗に反比例して増え、焦点距離くらいの凹像面弯曲があります。  計算上は、30cm F6はフルサイズカメラの周辺で、許せる範囲のやや甘い星像になります。 そのため補正レンズは強いて使う必要はないでしょう。
焦点距離が長いとシーイングの影響が大きくなるので、少しの試写では判断しにくいですが、下のM1の写真で皆さんはどう思われますか?

おうし座のM1カニ星雲
テスト撮影なのでキヤノンEOS6Dを直焦に取付けてISO3200で30秒露出。 眼視用望遠鏡はふつうは斜鏡が小さいので、この望遠鏡も斜鏡の大きさ不足とマウントと思われる周辺減光が生じています。上の黒い影のケラレは跳ね上がったミラーの裏面。 明るい視界の中心が右側に寄っているのは、斜鏡を偏心取り付けしていないためと思われます。
このまま周辺のトリミングを前提にフルサイズのEOS6Dを使うか、ひと回り小さなAPS-Cにするか? もっと小さな冷却CMOSか? 大きな斜鏡に交換すべきか? テストでいろいろわかります。

※直焦の写真に必要な斜鏡の大きさを図で簡単に求めるには…。
底辺が主鏡直径で高さが焦点距離の二等辺三角形を描き、次に斜鏡の中心から焦点までの距離を実測して、その距離を高さにした相似三角形を描きます。 その三角形の底辺が 「視界の中心にのみ100%の光が来る」 斜鏡の大きさ(短径)です。 この短径に撮像素子の大きさ(画面の対角)を加えたのが周辺減光の無い斜鏡の大きさになります。
思いのほか大きな斜鏡が必要なので、多少の周辺減光には眼をつぶるべきと思います。

※株式会社輝星の運営する「SB工房」はこちらです。
※星爺のフェイスブクはこちらです。

コメント

_ ●星爺より ― 2018/04/10 03:18

このブログが4月8日に突然表示が遅くなって、描画に2分以上あかかるようになってしまいました。原因は不明です。
異端削除して作り直しましたが解決しません。
削除のときに☆男さんのコメントが消えてしまったので、下記に再掲載させていただきます。

_ ☆男 ― 2018/04/10 03:22

こんにちは。
これらの望遠鏡とほぼ同じ30cmF6.5が家にあるのですが、
流石に移動用にはなりません。
観て良し、撮って良しな鏡筒だと思いますから、是非とも復活させたいところです。それにしてもM106の淡い外周が見事に表現されて
いますね! やはりモノクロCCDの方がDRも高そうで悩みどころ
です。ラッキーイメージングなら、断然CMOSなのですが。

_ ●星爺より ― 2018/04/10 03:36

☆男さま コメントをありがとうございました。

過日はボロボロのイギリス式赤道儀をもらっていただき、見事に復活させてくださり、ありがとうございました。
30cmF6.5こそイギリス式の出番では? でも鏡筒は80キロほどありますかね? 鏡筒回転も付いていて便利ですが。

ニュートン反射は計算上は、だいたい焦点距離2000mm以上で像面弯曲が無視できるくらいタイトになります。 コマ収差の方もF6.5くらいから無視できるほど小さくなります。 30cm F6.5は星雲・星団撮影用として、理想的なスペックだと思います。

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://tentai.asablo.jp/blog/2018/04/09/8822451/tb