●長らく更新していませんでした2016/03/12 00:42

●ピリオディックモーションのテストで体調を崩していました
超高性能ポータブル赤道儀JILVA-170は、1台ごとにピリオディックモーション(以下PM)の測定をして±4~±5″以下を合格品として出荷しています。PMのベンチテスターも所有していますが、現実的な性能を見るために実際の星空を1200mmレンズで撮影して測定しています。
JILVA-170を発売してから未曾有の悪天候が続いて、毎晩徹夜態勢で準備をしても全く晴れません。還暦をとうに過ぎた身にはきつい作業で、とうとう体調を崩してしまいました。
製品の出荷の遅れたことを深くお詫び申し上げます。このところやっと生産が納期に追いつき健康に戻りました。4ヶ月更新していなかったこのブログも精力的に更新してまいります。

輸出用バーゲン品のJILVA-170は早々に完売となり、後半はターンテーブルに次期国内用モデルのパーツを前倒しで投入した中間的な仕様のモデルを供給しました(在庫もあります)。下の写真の左側がそれで、極軸の強度が中型ドイツ式赤道儀の赤緯軸並みにアップされています。
       輸出用バーゲン品のターンテーブルは、ユニテック社のSWAT-200と同じベアリング
       無しの簡単な仕組みです。ポタ赤としては軽量で背が低いので適してますが、重い
       機材を載せると粗動回転の使い心地が悪いので、国内用の試作品は粗動回転部
       に大きなベアリングを2個用いた大型赤道儀と同じ仕組のターンテーブルに換装し
       ています。※輸出用のターンテーブルを国内用に交換するサービスは検討中です。
       
PMとは、赤道儀の日周運動追尾がギヤの精度不足などの複数の要因が重なり 「進み遅れ」を繰り返す現象です。 PMの1周期はウオームネジの1回転になります。±○″と角度で表記します。
たとえば100mm望遠レンズで星を点像に写す追尾エラー許容は約±20″なので、PMがこれに収まっていないと100mm望遠は追尾できません。JILVA-170のPMが控えめに±5″あったとすると300mm望遠レンズ(±7″のエラー許容)をガイディング無しで追尾できます。この性能がポタ赤としてはもちろん、高級な据付式大型赤道儀をも凌駕するものであることは、ベテランの人はよくご存じと思います。
下にPMの図と実際に撮影したJILVA-170のPMのテスト写真を掲げます。
       ウォームホイール歯数144丁のウォームネジが10分で1回転する様子のPM図と、
       右は市販の赤道儀の歯数144丁のPMの写真です。極軸をわざと狂わせて星が
       赤緯方向に流れるようにして得られる写真です。 PMは±20″程度でなかなか
       優秀ですが、ギヤ面の乱れと思われるギザギザが写りました。
       この図からわかるように、2~3分の露出で運良く 「進み遅れ」 が反転するところ
       に当たると、精度の悪い赤道儀でも望遠レンズの追尾ができることもあります。
  
       左はJILVA-170の今までの最低のPMで±8″あります。当然作り直ししました。
       右は今までの最高のPMで±2″以下の滅多にないお宝の個体です。
       なお、JILVA-170は個々にPMの測定写真を添付する予定でしたが、不公平にな
       ったり、「一番良い個体がほしい」とのお客様も多いため、PMの写真は添付しない
       ことにしました。データは保存してあるので、ご要望があればお見せします。

JILVA-170ご愛用者様のブログ 
ご愛用者のブログをお二方ご紹介します。みなさん300mm望遠(エラー許容±7″程度)をガイディング無しのノータッチでコンスタントにお使いいただいています。PM±4~±5″以下を合格として出荷しているのですから当然なのですが、とりあえずほっとしています。
「300mm望遠程度まではノータッチで固定撮影並みに気楽に撮影できる」 そうでなくては星野写真撮影装置としてのポータブル赤道儀の意味が無い…というコンセプトは達成されました。


五藤光学研究所のMARK-X
五藤光学研究所製のマークX赤道儀といえば現在でも人気の高い名機で星爺も所有しています。先日はMARK-Xの極軸のみを愛用している友人のインドネシア日食遠征のために、JILVA-170用の部分微動付赤緯軸の試作品を急遽MARK-X用に仕立てて持って行ってもらいました。
       この赤緯軸は改良を施してJILVA-170用として発売予定です。手動式とオートガイド
       のためのステッピングモーター付きの2種類です。ユニテックのSWATとはコンパチな
       ので使用できます。 マークXやビクセンさんのポラリエ用も作っちゃいましょうか?
       この他、自動導入にも対応するウォームホイールの全周微動も試作中です。

◆MARK-X赤道儀用2軸モータードライブ(期間限定募集)
天体望遠鏡 天体観測機器等の製造・販売、天体望遠鏡ドームの保守・修理、五藤光学研究所製 小型天体望遠鏡の修理・サポート業務を行なっている「五藤テレスコープ株式会社」から、30年以上前に販売され今でも名機の誉れ高いMARK-X赤道儀用の赤経・赤緯2軸モータードライブ装置の「期間限定募集」が行なわれています。http://gototelesco.co.jp/md_for_mx_2.html ←〆切になったそうです。
一昨年に販売されたものと同じで、価格は少しアップしたようですが、予定価格 68,000円(送料込・消費税別)と非常に安いです。
旧来のPM型ステッピングモーターではなく、最新の2相ハイブリッド型ステッピングモーターのマイクロステップ駆動です。そのため50倍速でも回ります。普通に五藤光学さんや他のメーカーさんが作ったら、間違いなく15万円以上はするでしょう。 JILVA-170用にも使わせてもらえませんかねぇ?
----と書くと、「最近は中国製と思しき駆動回路が2000円程度で出まわっているからねぇ」 「ギヤヘッド無しのモーターならバッタ品で1000円くらいだよねぇ」 と電気に詳しい人は思うかもしれませんが、このシステムがどこの研究所でどう作られたか等、蛇の道は蛇で星爺にはだいたい分かるんですよね(笑)。
赤道儀用に完全に新設計された国産の駆動回路で、モーターもマイクロステップ間隔の優秀な物が採用されています。モーターハウジングの中身は、五藤光学さん お家芸の能率の良い減速ギヤが組み込まれています。
不思議なほど安価で優秀な、この「MARK-X赤道儀用2軸モータードライブ」、期間限定募集は3月までなので必要な人はお早めに!

●JILVA-170の進捗2015/11/11 11:54

●たくさんのご注文をいただきました
輸出用の余剰パーツを使った特別価格のJILVA-170は驚くほど好評でした。多数のご注文に対して出荷がまったく追いつかず、大変ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。
必需品の上下方位微動台座が付いて税込み98,000円が安価なのかもしれませんが、「大きなウォームホイールは正義!」 「ウォームホイールの大きさに比例して強度も精度も向上する」 という、実にシンプルなJILVA-170のコンセプトを理解していただいたからと思います。
余剰パーツはすぐに無くなって2回も増産しました。増産したモデルはユニテックのSWAT-350のターンテーブルに換装したさらに頑丈な設計です。年末に発表する 「国内仕様」 を鑑みた量産試作で、少し割増料金を頂戴しています。このモデルなら現在もご注文を受け付けています。

       お名前を貼って出荷を待つJILVA-170。個体ごとに実際の星でPモーションを
       測定して、毎日2台ほど仕上げて出荷しています。ご注文をくださったお客様に
       は完成をメールでご連絡の上、逐次出荷させていただいております。
       取説の一部です。クリックすると拡大されますので仕組みの概要をご覧ください。     
       ユーザー様のJILVA-170です。このくらい丈夫な三脚に搭載すると快適です。
       微動付の自作赤緯軸を取り付けて立派なドイツ式赤道儀にされて、星野写真
       だけでなく普通の赤道儀として太陽観測などにも使用されているようです。
       大きな画像をアップしましたので、クリックして拡大しシャープな星像と追尾精度
       の完璧なことを確認してください。とも座のM46とM47(NGC2242)です。
       JILVA-170に自由雲台一つで200mmF2.8望遠レンズを載せて4分露出しました。
       JILVA-170にはオートガイダーの端子もありますが、大きなウォームホイールで
       バランスの崩れにはことのほか強いので、「雲台一つをポンと付け」 てガイディ
       ングはしない、固定撮影並みのお手軽撮影も得意です。


●国内用のモデルは2種類作ることにしました
下左の写真は輸出仕様(Export Version)のJILVA-170です。右はターンテーブルをSWAT-350用に換装した国内仕様の試作モデル(モックアップなので電装品などは付いていません)です。
SWAT-350のターンテーブルは外見からはわかりにくいですが、大型の据え付け式赤道儀と同様のベアリングレイアウトで過剰品質なほど頑丈です。かなり重くなるのが欠点ですが実際に使用するととても快適で、赤緯軸や大きな望遠鏡を搭載する目的にはとくに適しています。
       右は国内仕様のJILVA-170のモックアップモデルにSWAT-350のターンテーブル
       を載せ、ベンチバーに雲台を取り付けてバランスを確認しているところ。

一方、ザックにポータブル赤道儀を詰めて遠征する天文ファン用に、輸出仕様をベースに徹底的に軽量化したモデルも年末の発表に向けて鋭意開発中です。現行JILVA-170の約半分の重量です。
  (1)国内仕様のJILVA-170--Japanese Version
  (2)軽量仕様のJILVA-170--Ultra Light
新製品は以上の2種類になります。
量産試作の最中なので、今のうちにご希望などをお寄せいただければ幸いです。
       Ultra Lightのパーツです。現行JILVA-170の本体円盤の厚さ23mmに対して13.2
       mmで、周囲に衝撃吸収のためのゴムリングが付き((赤いリングにするかも?)、
       外形は10mm小さくなります。極軸は同じですが薄型ベアリングを使います。
       市販のアルカスイス互換のキャッチャーは強度不足なので、「3点トラス締め」 の
       頑丈なアルカスイス互換キャッチャーを作り(写真は黒アルマイト無しの試作)、
       これを標準装備します。
       上下方位微動台座を取外し式の別売にすることで、低価格と現行JILVA-170の
       半分の重量を目指します。


※株式会社輝星の運営する「SB工房」はこちらです。

●JILVA-170出荷しています2015/10/02 21:03

●頑丈なBT三脚の試作が完成しました
(株)輝星が新発売する天文用三脚は、BT (Breakthrough…障壁となっていた問題の突破)) 三脚と称します。 直脚がBT38-1で 2本つなぎがBT38-238はアルミパイプの直径38mmのことです。
非常に頑丈で三脚の根本のヨジレが少ないことが大きな特長。JILVA-170用にも最適です。

天体望遠鏡は観測地で移動や設置を繰り返すことはないので、三脚の開脚/折りたたみは頻繁には行ないません。しかし、天体望遠鏡の三脚は測量用やカメラ用が起源のため(?) 三脚の根本がヒンジの開脚式です。このヒンジ部が大きな障壁(Break)となって強度不足でヨジレが発生します。
BT三脚には開脚のヒンジはありません。三脚パイプの斜め断面を直接強固に固定するため、ヨジレに対する強度は圧倒的です。カメラ三脚とは比較にならず望遠鏡三脚よりも頑丈です。脚の1本を固定しておき、他の2本をくるりと回してたためるので可搬性も良好。約2.5kgと軽量です。
石突(スパイク)を上下微動スパイクと交換すれば、ポータブル赤道儀などの極軸上下調整も接地部分で簡単に行なうことができます。
※トップディスクに左右(方位)微動をつけたモデルも近日中に発表します。南側の脚に上下微動スパイクを付けて併用すれば、極軸上下左右微動台座の無いポータブル赤道儀用にも便利です。
       ●画像をクリックすると拡大します。
       φ40パイプのビクセン互換三脚との比較。互換三脚の地上高は650mm、
       左の2本つなぎ式のBT38-2は600mm、BT38-1は870mmの地上高です。
       BT三脚の重量はビクセン互換の約5kgに対して半分の約2.5kgと軽量です。
       脚の1本だけ固定しておき、他の2本をくるりと回すと3本の脚が平行になります。
       BT38-2のパイプつなぎは想像以上に頑丈で直脚と大差はありません。
       φ38アルミパイプの楕円の縁がトップディスクに押し付けられて安定します。
       中心の止めネジはM8キャップボルトで横に補助のM4止めネジ穴があります。
       脚の1本を2本のネジで固定しておき、脚2本を回してレンチで締め付けます。
       石突(スパイク)はコストダウンのため袋ナットと高ナットで、約20mmの高さ調
       節ができます。右は上下微動付きスパイクに交換したところで、ポタ赤の極軸
       設置用上下微動として(地面に近く少々使いにくいですが)強度はピカイチです。
       スパイクのネジはGITZO互換の3/8インチです。左はGITZOのスパイクを付けた
       ところ。中央が標準品の袋ナット+高ナットのスパイク。右が上下微動のスパイク
       でハンドルでスムーズに動きます。脚3本とも上下微動をつけるのもお勧めです。
       別売の「スタビライザー」を併用すると、トップディスクと一体の強固なトラス・
       ラーメン構造になります。BT三脚は元々が頑丈なので小型ポタ赤には強いて
       必要ではありませんが、大きな赤道儀を搭載する場合はとても有効です。
       左は数年前の試作の原型に試みにタカハシEM200赤道儀と127mmの屈折望
       遠鏡を搭載したところ。脚パイプの太さは強度にはあまり関係がないので快適
       に実用できました。右はJILVA-170とSWAT-350を搭載したところ。

●BT三脚のモニター募集!
量産試作を兼ねて先着10名様のモニターを募集します。下記予定価格の30%引きでご提供します。
ご購入後に「厳しいお叱りやご意見」 を一言賜ることを条件とさせていただきます。
モニターは(株)輝星 のホームページの 「ご購入とお問合せ」 からお申し込みください。
納期は11月中旬になります。
モニター様のご意見を参考に脚の長さやスパイクの規格を最終決定することが目的のため、モニター用のご注文分は脚の長さはオーダーで承ります。

JILVA-170はそのまま取付けられます。他の赤道儀にはアダプターで対応します。アタプターはサービス価格で添付させていただきます。多くの赤道儀用に量産試作をしてみたいです。

BT三脚の予定価格とスペック(モニター様には予価の30%値引きでご提供)
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BT38-1----予価:26,000円 (直脚、長さ指定870mm以下)
BT38-2----予価::30,000円 (2本つなぎ脚、トータル長さ指定870mm以下)
上下微動スパイク----予価:3,000円、3本セットは7,000円。
スタビライザー---------予価:3,000
重 量:BT38-1、BT38-2とも約2.5kg
外 観:φ38脚アルミパイプはサンドブラスト+化学研磨+白アルマイトの美品。
     高ナット以外のネジはステンレス。トップディスクとスタビライザーは削り出しママ。
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●JILVA-170の出荷状況
超高性能ポータブル赤道儀JILVA-170は実際の星空でPモーションを測定するため、未曾有の悪天候で出荷がずいぶん遅れています。たいへん申し訳ありません。
このところの晴天で、ご注文分のPモーション測定はほぼ完了いたしました。ご注文をいただいた順番に、メールでご連絡させていただいた上で逐次発送を行なっております。
※今回の輸出用JILVA-170のバーゲン品は完売となりましたが、2~3台の余剰部品が出ましたので、なお若干のご注文を承れます。ご入用のお客様は早めにお問合せください。    

JILVA-170は歴史的名機である三鷹光器GN-170やタカハシNJP赤道儀の 「大きなウォームホイールの極軸部だけ切り取ったような高性能ポタ赤があったら良いな」 「300mmくらいの望遠レンズまではガイディング無しで撮影したい」 という天体写真ファンの夢を実現した、ウォームホイールがφ162mmもある大型のポータブル赤道儀です。
今回のJILVA-170は、今年初めに生産した輸出用の余剰パーツを利用して組み立てます。そのため、かなりのバーゲン価格になっています(98,000円)。 年末にデビューする国内用JILVA-170のモニター用でもあり、ユーザーの皆様のご意見を反映して製品開発をして参ります。 
      JILVA-170をBT三脚に搭載したところ。ターンテーブルの上の東西にカメラを
      搭載したアルミバーは 「ベンチアーム」という名のアクセサリーです。 必需品
      なので、ご注文されたお客様には標準品として添付させていただいています。
      外付け極望は、弊社のナンチャッテ正立極望、ユニテックさんのSWATシリーズ
      用極軸望遠鏡ポラリエタイプなどを付けられます。取り付け位置は4箇所。
      電源は標準添付の単3型乾電池6本で一晩動きます。DC-DCコンバータ内蔵
      で、入力は4V~12VなのでUSB電源やカーバッテリーも使えます。

すべての個体を実際の星でPモーションの撮影をして、±4~5″以下を合格として出荷しているため、納期が天候に左右されることをご了承ください。±5″は詳細画素になったデジカメにかなりシャープな300mm望遠レンズを搭載して、ある程度長い時間をノータッチ追尾できる精度です。
ユニテック(株)様のポタ赤 SWAT-300/350も弊社の製作で、同様に全ての個体でPモーションテストをして±7″以下を合格品としています。10月13日のブログに、SWAT-350による焦点距離540mmを3分間ノータッチ追尾した作例がありますのでご覧ください。
※撮影する天空により、極軸設置や大気差による追尾エラーが発生することはあります。

それにしても今年の夏の天候の悪さは、23年前にペルセウス座流星群が極大の8月13日のたった1日しか晴れなかった夏以来ではないでしょうか? 9月を過ぎて昼間は晴れても夜になると曇って星の見えないのは、もしかしたら数十年ぶりのことかもしれません。

●JILVA-170の同軸親子ネジ式上下微動
輸出用のフォーク式上下左右微動台座の上下微動は、左右の押しネジと引きネジで行なっていました。これは三鷹光器さんが好んで採用する方式で、低コストで頑丈な良い仕組みなのですが、その構造から軽量化を図ると上下だけでなく左右も少し動いてしまう欠点がありました。出荷中のJILVA-170は、オリジナルの親子ネジを使った同軸の微動装置で、大きなハンドルが押しネジで内側の小さなハンドルが引きネジになっています。このため、きわめてスムーズな極軸設置が可能になりました。
      ステンレス製フォークの形状をリメイクし、左右一対だった上下微動の押し引き
      ネジを同軸の親子ネジにしました。中央の小さなハンドルの引きネジは最終固定
      用で、通常は大きなハンドルの操作だけでスムーズに上下調整ができます。

●望遠鏡三脚と専用三脚
JILVA-170はカメラ用三脚に取り付けられるようになっていますが、あくまでも“臨時”のためのものです。実力を発揮させるには、BT三脚や望遠鏡用の頑丈な三脚をお使いください。
フォーク式上下左右微動台座の下側の円盤は、フランス製GITZOシステム三脚の3型に嵌合できるようになっています。カメラ用三脚をお使いになる場合は同形式のGITZOをお勧めします。 GITZOの5型や他の望遠鏡三脚に搭載するには、ご注文に応じてアダプターで対応いたします。
      左は市販品のビクセンコンパチ三脚でパイプの太さφ50mmのもっとも頑丈なも
      のに取り付けたところ。 この程度の三脚だと中型赤道儀並みの強度になります。
      右はこの記事の先頭でご紹介した JILVA-170に最適なBT三脚と上部のトップデ
      ィスク構造。BT三脚のアルミパイプはφ38mm t1.5mm。

※株式会社輝星の運営する「SB工房」はこちらです。

●アポクロマートという用語2015/09/05 06:50

早起きしてこのページの文字校正をしていたら大失態! 全部消してしまいました。
ブログの画面に直書きしているので元原稿はありません(泣)。
とりあえず思い出しながら書き直してみます。いただいたコメントも一緒に消えました。思い出してお返事したいと思います。
半日経って----おかげさまで何人かの読者の方から本文を送っていただきました。書き直したのと一部を一緒にして新原稿としました。どうもありがとうございました。

●吉田正太郎先生の訃報
天文学者で光学設計や歯車の理論でも日本の技術の発展に多大な功績を残された、吉田正太郎(よしだしょうたろう)東北大学名誉教授が、7月30日に永眠されました。享年102歳でした。心からご冥福をお祈りいたします。
吉田先生は1934年に東京帝国大学(現東京大学)理学部天文学科を2年飛び級で進級して卒業後、東京帝国大学、東北帝国大学(現東北大学)を経て、1960年から東北大学教授として、天体測定や光学、歯車などをご研究されました。
「日本の光学の父」 とも言える吉田先生は 「明るい単玉非球面レンズ」 も発明され、CDやDVDの読み取りレンズとして世界中で使われています。星爺が「特許を取っていたら大金持ちでしたね!」と不遜なことを申し上げると 「税金で研究させてもらっている国立大学の研究者にとって特許は国民のものなので取得しません」 と言われました。光学設計の基礎や裏話も教えてくださり、『天文アマチュアのための望遠鏡光学』『光学機器大全』(誠文堂新光社)などの書籍を作らせていただきました。
今回は吉田正太郎先生のご遺志でもあるアポクロマートのお話です。

●3色色消しレンズがアポクロマート
若人の皆さんは、屈折率と分散が異なる硝材(しょうざい--レンズの材料)を組み合せると色収差の少ない 「色消しレンズ」 ができることはご存じと思います。
凸レンズと凹レンズ1枚ずつの2枚玉では、紫色~赤色までの白色光に含まれる光のうち2つ(2色)の波長で結像位置を一致させることができ、このようなレンズが「アクロマート色消しレンズ」ですね。双眼鏡や望遠鏡の対物レンズに多用されています。
通常は赤いC線と青いF線のC/F色消しで、入射する光線の球面収差の平均が最小になるように、中心から70%付近で正と負の球面収差を交差させます(下の図を拡大してください)。
下の設計例の図を見ると補正されていない紫色の g 線が ずいぶん後方にずれていて、このためアクロマートは像にボケた青~紫色がまとわりついて見えます。
       赤いC線と青いF線で2色色消しにした一般的なアクロマート対物レンズ。
       紫色のg線が取り残されたように後方に2mmほども離れていてます。
       口径10cm F10の例で黄色のd線が基準です(以下、収差図は同様)

アクロマートをもっと進歩させて、3つ(3色)の波長で色収差が補正され、2つの波長で球面収差とコマ収差が補正される等の条件を満たす高性能なレンズを3色色消しの 「アポクロマート」 と言います。3つの波長で色収差が補正されているだけでもアポクロマートと言うことがあります。
光学理論は奥が深い(吉田先生によると天文学並みの数学が必要らしい)ですが、通常は2色色消しは2枚のレンズ、3色色消しは3枚のレンズでないと補正できません。
 ・2色色消し=アクロマート
 ・3色色消し=アポクロマート
今は知りませんが、昔の工業高校の教科書には色消しレンズの定義は載っていて、常識とされる知識ですから、アクロマートとアポクロマートの違いを覚えておいてください。

●2枚玉でもアポクロマート
2枚玉の対物レンズでもフローライトやいわゆるED硝材を使ったアポクロマート天体望遠鏡というのが多数販売されています。3色色消しアポクロマートではないので、これらのレンズが登場したころ星爺は 「これはマズイなぁ」 と思ったのですが、カタログなどをよく見ると必ず 「フローライト・アポクロマート」「ED・アポクロマート」 と記されています。これは“○○硝材を使ったアポクロマート並みの高性能レンズ”という意味であり、商品名に含まれる冠称のようなものと解釈しました。
吉田正太郎先生にご相談すると、異常分散硝材を使用した2枚玉の対物レンズは、2色色消しではあるが通常の硝材を使った3枚玉のアポクロマートよりも色消し性能は高いほどなので、アポクロマートの表現は許しましょうということになりました。それからの記事では必ず「いわゆるEDアポクロマート」などと、いわゆる付きで記載することにしました。

2色色消しのアクロマートは一般的に凸レンズにBK7硝材を凹レンズにF2硝材を使います。他の硝材でもっと色消し性能の良いのはできないのか? と誰しも思いますが、ほんの少し良くなる例はあってもそんなに好都合な硝材はありません…というところに登場したのが異常分散硝材なのです。2枚玉でも一 足飛びに総合的な色収差補正が通常の硝材の3枚玉アポクロマートに匹敵またはそれ以上になるのですから、こんなに好都合でウマイ話はありません!
     左が古いタイプのED硝材を使ったEDアポクロマートで紫色のg線が過修正の球面
     収差を伴って後方にズレています。右は3枚玉のフローライトアポクロマートです。
     左のEDでもアクロマートに比べると色収差は1/5、右の3枚玉は1/10くらいです。

●断然すごい異常分散硝材の2枚玉

凸 レンズに使われるフローライトやEDは 「部分分散性をもった異常分散硝材」で、設計者は異常分散と言うことが多いです。カタログに 「特殊低分散ガラス」 などと書かれることがあるのは“異常”のイメージを嫌ったからでしょうか? 異常なほど個性的な硝材で相反する個性的な硝材の凹レンズと組み合せると、2色色消しでも総合の色収差はアポクロマート並で、問題のg線は中央は結像位置に近く過修正の球面収差を伴うため少しだけずれる高性能な対物レンズになります(上左の図)。
眼視ではこのg線が他の色と混ざって、青緑がかった独特の色収差が少し見えます。ほんの少しなのでかえって濃く見えます。このことが本来は2色色消しの悲しさと言えるかもしれません。
Fの明るめの望遠鏡を望遠レンズの代用として直焦点で星野写真を撮影すると、青い色の明るい星が少しにじんだ雰囲気の良い(と思っているのは星爺だけ?)写真が撮れます。

フローライトはガラスではなく螢石(ほたるいし、ケイセキ、CaF2)の結晶です。理科で習うモース硬度は4で方解石よりもやや硬い程度のとても柔 らかい硝材です。そこで代替品として登場したのが、いわゆるEDガラスです。いわゆると書いたのは、EDは製品になった時の商品名であり、UD、 LD、SDなどと記されることもあるからです。さらに、いわゆるEDにはおおまかに2種類があります。
フローライトと同等の性能のED硝材は、日本のオハラでは FPL53、HOYAでは FCD100と言いドイツのSCHOTTには同等品は無いようです。これらはスーパーEDとかSDなどと称されることもあります。
過去にたくさん使われたのが性能がやや劣るタイプのED硝材で、オハラでは FPL51、HOYAでは FCD1、SCHOTTでは PK52Aと言います。たとえば同じ口径のFPL51系でFPL53やフローライトのF8と同等の色消し性能を得るにはF10程度に暗くしないとなりません(ざっくりとした比較ですが)。

いわゆるEDアポクロマートの黎明期に、ニコンの10cm EDアポクロマートはセオリー通りに暗くして余裕を持ったF12でした。ペンタックスが 口径75mm~125mmまで全部 F6.4にしたのは(P.S.読者の方からご指摘をいただきました。75mmと105mmはF6.7でした。書きなぐってアップしてから校正して何度も手直しするので完成原稿は数日後になってしまいます。すみません)、望遠レンズとしても使用するため F5.6とF8の中間のF6.4にしたくて、承知のうえで高倍率の眼視性能を犠牲にしたのではないでしょうか。しかし、天下のペンタックスがやったからOKと思ったか? その後の他メーカーのいわゆるEDアポクロマートが、Fの明るいものばかりになるという悪影響を与えたかもしれません。
2枚玉EDを検討する際には、FPL51か? FPL53 か? とF値に注目する必要があります。

●3枚玉アポクロマート
いわゆる2枚玉アポクロマートは、上記のようにg線の色収差が少しだけ残っていますが、価格の安いことや軽量なこと、製品にバラツキが少ないことや温度順応が早いことなどから見直される傾向にあるようです。タカハシさんや五藤テレスコープさんからもFの暗めの新製品が出ましたね。
星爺はビクセンさんが20年以上前に販売していたフローライトの9cmと10cmで F9と暗めの天体望遠鏡を2本、今でも愛用しています。 凹レンズに理想的なKzF5硝材を使用した名機です。
9月4日にタカハシさんから口径10cm F9のFC-100DLが発売されました。凹レンズの硝材は未発表ですが、わかりやすい収差図が発表されています。眼視に特化させるなら球面収差が総合的に交差する場所をもっと中央に寄せて、g線をもっと離して淡く見えにくくしてしまう味付けもアリです。が、FC-100DLはその逆でレンズを少し厚くして(推測ですよ。色収差はわずかに広がります)g線をできるだけ寄せているので青紫のニジミがかなり少なく、星野や月面写真などが相当シャープに写りそうなことが読み解けます。FC-100DLは純然たる眼視用望遠鏡ですが、F9と暗めな恩恵もあって各色の球面収差が非常に少なく高性能なので、写真撮影用にも味付けする余裕があったのでしょう。

正真正銘の3枚玉のアポクロマートにも異常分散硝材が投入されるようになりました。3枚玉になると他の硝材の選択など設計の自由度が大きくなるのでFPL51とFPL53の差はあまりなくなります。硝材の選択肢が多いので設計を推測することはまず不可能になります。
3枚のレンズをオイルで貼り合せたタイプは貼り合せ面が無反射になるのでクリアーな視界で温度順応も早いです。しかし設計の自由度が少ないためか近年は姿を消して分離式(エアースペース)がほとんどになりました。設計上の性能はどの望遠鏡も素晴らしいはずですが、とくにFの明るいものは研磨や組立調整に敏感なので信用あるメーカーの製品を選びたいものです。

3枚玉の間隔を離すとさらに設計の自由度が増して、もっと高性能な天体望遠鏡を作ることができます。アストロフィジックスの製品やタカハシさんのTOA、ビクセンさんのAX103Sがそれです。収差補正に敏感になるので組立調整はものすごい精度が必要になると思います。
      タカハシさんのフラッグシップ機TOA150。口径150mm F7.3 焦点距離1100mm。
      3枚のレンズ間隔を離していて同社では「TOA型アポクロマート」と称しています。

●眼視/写真兼用のペッツバール
眼視/写真兼用(フォトビジュアル)のペッツバールタイプの望遠鏡も高性能で人気です。原型は日本は江戸時代の190年も前にオーストリアのペッツバールが発明したもので、望遠鏡が像面の平坦性が重要なカメラレンズに進化する第一歩と言えるレンズです。2枚玉が前後に配置された4枚玉です。なんと! 星爺が小学生の頃までダルメヤー3Bなどのペッツバールが使われていました。像面を平坦化したと言ってもまだまだ不足なため、かなりの大判で人物のポートレートを撮ると 「周辺がきれいにボケる」 ため、写場では重宝されたのです。モノクロ専用で人像玉とかバカ玉と言われていました。

天体望遠鏡に採用したのはテレビュー社が最初だと思います。現代の設計なので当然3色色消しアポクロマートでFも明るくできます。視界の中央しか撮影しない天体写真には像の平坦性は充分で、ほとんど望遠鏡に近いので眼視性能も優れた二刀流の高性能望遠鏡になります。
タカハシさんのFSQはペッツバールタイプのフォトビジュアルです。昔のペンタックスさんのSDP望遠鏡も(色収差がけっこう残っていた2枚玉+フラットナーのEDHFやSDHFから一挙に進化した)ペッツバールです。たいてい原型とは大きく異なる設計なので、独自の設計とするメーカーさんもあれば、先達に敬意を表してペッツバールと称するメーカーさんもあります(後者のほうが好感が持てますねぇ)。
      ペッツバールタイプの原型。望遠鏡レンズが写真レンズ寄りに進化したもの
      高橋製作所のFSQ106型 口径106mm F5(FL530mm)のペッツバールタイプは
      FPL53系の硝材を2枚採用した贅沢な設計で、天体写真ファン垂涎の望遠鏡

P.S.専門家の方から情報をいただきました。ビクセンさんの 「ネオアクロマート」 という望遠鏡は、異常分散硝材でないペッツバールですね。設計を推測して検証したら高性能なフォトビジュアル望遠鏡ですね! 口径140mmで焦点距離が長いのに一世代前の高級な300mm F2.8望遠レンズ程度のかなりのシャープさです(青ニジミは出ますが)。低倍率専用ということでアクロマートのFを無理に明るくした廉価品とは全然モノが違う! ネオアクロマートという誠実な名称で損をしたかも? 生産中止になったようなので、異常分散硝材のお手頃価格のペッツバールが登場するのでしょうか?

●便利なレデューサー
アクセサリーとして人気のある「レデューサー」についても簡単に説明しておきます。焦点距離を縮めるレデューサーは結像全体を小さくするので、星像は縮めた分だけシャープになる傾向があります。周辺減光や像の平坦性は縮めた分だけ悪くなりますが最近のレデューサーは平坦性もある程度は保ちます。無理なく縮める限度は0.7倍くらいです。2枚玉との組合せが良いですね。
望遠鏡は口径が大きくなると比例して収差も増えます。鏡筒の断面図を拡大コピーする感じをイメージしてください。たとえば口径50mm F10が口径100mm F10になれば収差は2倍になります(本来は口径が大きいとFを暗くする必要がある)。凹面の像面弯曲は2倍ゆるやかになります。設計にもよりますが、屈折望遠鏡は焦点距離が1000mmを超えれば35mm判フルサイズでも平坦化レンズはほぼ不要です。平坦化レンズは小口径(像面弯曲の強い短焦点)ほど良い物が必要になります。
たんなる平坦化レンズ(フラットナー)ならば、パワーのない(少ない)分厚いメニスク単レンズが収差に影響を与えないので良いです。タカハシさん等には別売のフラットナーがあり、ビクセンさんのAX103Sや昔のペンタックスさんのEDHFなどは最初からこの類のフラットナーが入っています。

黎明期のレデューサーは双眼鏡の対物レンズを使った「ナンチャッテ」がありました。対物レンズの焦点距離が長ければ充分実用になるので、まがい物と言うわけでもありませんが、平坦性が悪いものも散見されました。最近のレデューサーは本物が多いですが、あんまりしっかり設計されたレデューサーは、指定の望遠鏡以外に装着すると周辺像が悪くなることもあります。周辺像が悪くなる原因はコマ収差と思われることが多いようですが、屈折望遠鏡は非点収差のサジッタルとメリディオナルが重なって星像に尾が生えたり三角形になったりすることが多いです。

ナンチャッテ・レデューサーでよければ、双眼鏡の対物レンズやカメラ用のクローズアップレンズでも適当に代用は可能です。Rの強い面を望遠鏡の対物レンズに向けてください。光学設計をして平坦性や非点収差を確認すれば、かなり良いものを自作できます。
本気で設計するなら前群と後群に分けて間隔を広げます。そんなのを作ったら望遠鏡より高価だろう…と思ったら、あったのですね! BORGの EDレデューサーF4DG。今は生産中止ですが。

●最後に諸々を箇条書き
・ペッツバール望遠鏡が人気なので、さらに写真レンズ寄りに進化したエルノスタータイプなどの天体望遠鏡も当然のように登場してきました。ただし、とくに眼視性能はまだ様子見の段階と思います。高詳細になったデジカメに対応するシャープな星像を結ぶかどうかも注目ですね。

・アポクロマートでもFが暗い方が高性能なことは変わりません。口径が大きいほどFを暗くする必要があります。色収差以外に、焦点像が大きい(アイピースで強拡大しない)、光線の角度が小さい、組立て誤差などの影響が少ない等、Fが暗いと様々な面で有利で 「Fの暗さは七難隠す!」 。

・メーカーのインフォメイションに 「優れたレンズ設計が云々」 と記されていることがありますが、単純な2枚玉の場合は硝材を決めたらレンズ設計はたんなる幾何学計算なので答えは同じですから、味付け程度の違いしか出すことはできません。設計云々は宣伝文句ととらえるべきでしょう。

・デジカメ用の高性能ズームなどはすごい設計ですが、望遠鏡用対物レンズの設計はけっこう簡単です。2枚(3枚)玉の無限遠だけの設計ですからね。しかし、実際の生産現場と連携した精度の維持やテスト法、さらにコストを鑑みると多くのノウハウがあり、設計だけ優秀でも片手落ちです。

・アクロマートでも高性能品は良く見えると言う人がいますが、上記のように設計は同様なので粗悪品でなければアクロマートの性能は全部同じと考えてください。色収差については、いわゆるアポクロマートとは雲泥の差です。Fの明るいアクロマートはがっかりする見え味のことが多いです。

・アクロマートでも小口径で Fが暗ければ星像はずいぶんシャープに見えて、とくに二重星の観測は満足できます。しかし、月面や惑星はシャープに見えるからと倍率を上げると、強拡大された像が薄暗く見えて不愉快です。シャープさ以前に口径が大きいと像が明るくて見やすいです。

・アクロマートの紫色のg線の色収差は、はなはだしく後方にズレてピンボケで拡散して薄れるので、暗い天体を見る場合には気になりません(怪我の功名?)。昼間に遠くの樹の枝などを見ると青紫色がものすごく不愉快に感じます。星野写真を撮ると青い星が“巨大”に写ります。

・反射望遠鏡は入射した光の角度が倍になって反射しますが、屈折望遠鏡は入射した光は屈折率(BK7硝材なら1.51633)の分しか曲がらないので、研磨の精度は圧倒的に寛容です。なので屈折望遠鏡は 「匠の研磨した○○鏡」 と言われることはありません。そう言う人がいたら勘違いですね。

・クルマで望遠鏡を観測地まで運搬したら、レンズを外気温になじませるため、すぐに外に出しましょう。気温の違いでレンズが微妙に変形するだけでなく、フローライトやEDは温度で屈折率も変わる性質があります。レンズの離れた分離式やレンズ枚数の多い望遠鏡はとくに要注意です。

※いただいたコメントは消えてしまいました。覚えている範囲でまとめて書きたいと思います。

●JILVA-170の進捗です2015/08/19 16:34

JILVA-170をご注文のお客様へ
6月に3台のJILVA-170を納品させていただいて以来2日間しか快晴の夜に恵まれず、Pモーションのテストが滞っていました。まだご注文の半分に満たない数ですが、晴れ間を見つけて10台ほどの合格品が出ましたので、遅ればせながら来週から仕上げを再開してご注文順に納品させていただきます。お客様には納品前にメールを差し上げますので、よろしくお願い申し上げます。

JILVA-170は下の写真のように極軸の主要部だけでPモーションテストができるようになっています。これから合格品に周辺パーツを装着して仕上げとなります。
なお、納期が遅れたお詫びとして、ターンテーブルの上にカメラを2台搭載する 「ベンチアーム」 を贈呈いたしますので、どうぞお使いください。
      実際の星のピリオディックモーションテストで合格となったJILVA-170の極軸主要部
     ベンチアームで東西にカメラを載せたところ。東西のバランスも合せられます。

Pモーション測定器とSTAR-TREC
弊社ではPモーションのベンチ測定器は製作済みで、天候に左右されずに室内でPモーションを測定できます。しかし、実際の星空でユーザー様が使用されるようなカメラ機材でPモーションを撮影して測定した方がトラブルも見つけやすく確実なので、今のところはベンチ測定器を使用しないで頑張ろうと思います。下がPモーションをベンチ測定した結果のグラフです。

なお、個体ごとのPモーションを測定したら、逆の位相をマイコンにメモリして相殺し精度を向上させることができます。Pモーションはウオームネジまわりで決まることから、搭載重量やバランスやウォームホイールの摺動箇所が変わっても使用年数が経っても、ほとんど変化しない性質があるからです。ユーザーがガイディングして設定するPECと呼ばれる手法ではなく、出荷時に設定済にする手法です。同様なシステムはビクセンさんのAXDという高級な赤道儀に搭載されているようです。
このシステムはSTAR-TREC(STrict ARchived TRackiong-Error Correction)として、まずは新型のPanHead EQに搭載します。Pモーションの精度は3倍程度は向上する見込みです。

●赤道儀には超高精度のウオームギヤセットが必要
この機会にブログの趣旨のとおり中学生向けに簡単にご説明します。
下の図は一般的な小型赤道儀用の半径35mm程度のウオームホイールとカメラを重ねた図です。ウオームネジとの摺動部は撮像素子の位置に描いてあるので動きを想像してください。
通常の機械加工のギヤの精度は良くて20~30μm(ミクロン)程度であると考えてください。 なので、ウオームネジのネジ部に20μmの乱れがあれば、撮像素子上の星は20μm動いてしまいます。ウオームネジ1回転の周期で乱れが繰り返されるのでピリオディックモーション(周期運動)と言われます。20μmはちょうど35mm広角レンズの追尾の許容量になり、Pモーションの表記では±60″(1′)になります。
広角レンズしか追尾できないとは、ずいぶん悪い値ですよね?
市販の赤道儀には、メーカーさんがそれはそれは大変な努力と技術で成し遂げた超高精度のウオームギヤセットが使われています(そうでもないメーカーさんもありますけどね)。夢のような高精度と言っても過言ではありません。それに比べてギヤメーカーから販売されているウオームギヤセットは、通常の加工精度のたんなる減速ギヤですから10倍も精度が悪く、赤道儀用とは似て非なるものです。

もちろん前々回のブログでお話ししたようにPモーションの主な原因は、
  ①ウオームネジのピッチ誤差(乱れ)によるヨロメキ運動
  ②ウオームネジ軸受けの精度によるスラスト方向のブレ
  ③ウオームネジの芯出し誤差による1回転毎のトルク変動
  ④ウオームネジに付けたスパーギヤの偏芯による速度変動
以上の4種類あって、各々から振る舞いの異なるPモーションが発生し、それらが重なって最終的なPモーションになるため、精度の悪いギヤでも①~④が偶然(または何度も調整して)相殺されれば、そこそこ良い精度になることはあり得ます。逆に高精度のギヤでも悪くなることもあります。
①~④の重なりがどうなるかは予測不能なので、赤道儀の精度は個体ごとに大きくバラツキます。そのため全ての個体でPモーションを測定しないと「Pモーション±○″」 と発表はできません。
JILVA-170だけでなくPanHead EQとSWAT-300/350も全機のPモーションを測定して合格品のみを出荷しています。

●弊社ではウオームホイールを社内生産しています
JILVA-170のウオームホイールとウオームネジのセットをギヤメーカーに依頼したら1セット10万円以下では作れないでしょう。そのうえ赤道儀用には不十分な精度になってしまうので、独自の手法で高精度のウオームホイールを生産しています。PanHead EQSWATシリーズも同様です。
直径162mmのウオームホイールはジュラルミン製で厚さが3mmしかありません。ジュラルミンにしたのは加工性が良いことの他に、ボディなどのアルミ合金部と同じ膨張係数にして厳寒地で膨張率の違いから回転が渋くならないようにするためです。厳寒地ではグリースの硬化で回転が渋くなると思われていますが、それよりも金属同士の膨張率の違いの方が大きな原因です。
ウオームホイールは上下をアルミ合金でサンドイッチして、-30℃まで硬化しないオリジナルのグリースでべったり貼り付けています。これにより  「極軸にベアリングを入れなくても大丈夫かな?」 と思われるほど頑丈でしっくりと精度よく回転します(もちろんベアリングはちゃんと入れていますよ)。この手法を社内ではGDFWと呼んでいます(Grease Dumped Floating Worm wheel)。

まずレーザーカットでモジュールに応じたサイクロイドカーブの288歯のウオームホイールの母型を作って、それをJILVA-170と同じボディに組み込んで(これが肝心!)、独自のホブ盤で時間をかけて歯切りをします。次にウオームネジと同じ形状にしたS55Cの研磨用ネジを強烈に(煙が出るほど)押し付けて歯を研磨します。これでジュラルミン鍛造のウオームホイールが完成します。そして実機に組み込んでから実機のウオームネジを毎分2000回転で回して最終的なエージングを行ない、仕上げは日周運動の26倍の速度でゆっくりエージングを行なっています。1個作るのに5時間ほどかかります。
ウオームホイールはそれほど高精度の歯面に仕上げる必要はないのですが、ウォームホイールの極軸の芯出しを正確にして、どの場所でもウオームネジに安定して摺動させるためと、ウオームネジを軸受けになじませるために、実機でのていねいなエージングが必要です。
     JILVA-170の本体部分。左上は直径40mmの極軸に圧入するベアリング    
     右はS55Cのウオームネジにモリブデングリースを塗布して歯を高速研磨中

●ウオームネジユニットを低コストで作る手法
もっとも大切なウオームネジユニットは、タネ明かしをするとひじょうに安価な手法で作っています。JILVA-170と同程度のウォームホイールの赤道儀を生産するあるメーカーさんは、この部分に5万円のコスト(ウオームネジは別で) をかけているそうですが、とてもそんな手法は採用できません。
心臓部のウオームネジは精密な加工のできる快削黄銅で超精密加工専門の会社に特注しています。軸受けはボールベアリングでは精度に限界があるので、メタルベアリングを用いてウオームネジのハメアイ軸は研磨で仕上げます。反対側はニゲを得るために樹脂のドライベアリングです。モーターのピニオンギヤとウオームネジのスパーギヤも特注品で、軸挿入部は現物合わせで研磨しています。
ここまで徹底するのは、上記の①~④個々のPモーションの発生を少しでも抑えるためです。

ウオームネジユニット本体は一転して安価な手法で、下の写真のL字型の金具をを2個組み合せてユニットを作ります。軸受部は2個組み合せて旋盤加工しますが、調整機構などは一切ありません。各部を研磨しながら“勘”で組み立てて 「こんなにスムーズに回る回転部は経験がない」 ほどのタッチになるまで何度も組み直して、良いタッチにならない場合は破棄処分にします。精度の高いウオームネジユニットを作るためコストに苦しんだ末に生まれたコロンブスの卵的な職人技の手法です。
※下の写真はPanHead EQとSWAT用でJILVA-170はウオームネジやユニットが少し異なります。
     PanHead EQとSWAT用のアルミ合金製のL金具と組み上がったウオームネジユニット
      SWAT-300/350には、これにグリースバス(グリース溜め)のカバーが装着されます

このような手法で弊社のポータブル赤道儀は作られています。JILVA-170は±4~5″以下のPモーションの個体を出荷するため、Pモーション測定は省略するわけには参りません。ブログを見ていただいた方やJILVA-170のお客様には、なにとぞ厳しいお叱りやご指導をいただき、より完成度の高いポタ赤に発展させて行くことにご協力いただければ幸いです。

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●ペテン師がデジカメの性能を変える!2015/08/03 02:17

●最初に業務連絡です。天気予報では今日は一晩中快晴ということだったので、JILVA-170をずらりと並べてPモーションテストのために待機しましたが、明け方の薄明前に少し晴れただけでした。残念です。少しでも晴れ間があればテストできますので、ご注文をくださったお客様は、申し訳ありませんが今しばらくお待ちください。


「星爺から若人へ」は中学生くらいを対象としています。
●オリンパス光学がWindows95時代に販売していた画像処理ソフトに、
フォトジャグラーというのがありました。ジャグラーとは魔術師とかペテン師の意味ですが、画像処理の意味を考えると的を得た傑作な命名と思います。

……最初に歴史をさかのぼって、
戦後の日本は軍事産業や重工業を規制されたこともあって、平和産業の光学機器とりわけカメラは大発展を遂げました。日本製のカメラは世界一と言っても過言ではないでしょう。
1960年台前にはA~Zまでの頭文字では足りないほどのカメラメーカーが群雄割拠し、そこから淘汰されて残ったのが現在のカメラメーカーです。高性能なのは当然かもしれませんね。

「どのメーカーのカメラも同じように優秀」 な時代を経験したオジサンや爺さんは、若人の皆さんに好みのメーカーのカメラを買えば良いとアドバイスするかもしれません。昔の経験ではみんな同じように高性能だったのだから当然です。また中古のカメラを勧めるかもしれません。カメラのメカ部分は1960年頃から1990年台までほとんど変わらなかったのだから、これも当然です。

しかし、昔はカメラが写真を撮っていたというよりも 「フィルムが撮っていた」 のです。デジカメ時代は写真を撮るのはカメラそのものなので、カメラによってとくに星野写真に対する性能は驚くほど違います(違いました、ですね。後述参照)。そして常に変遷しています。星用には使い物にならないデジカメも過去にはたくさんあり、新型ほど高性能なことがほとんどなのでデジカメの中古は敬遠するべきです。
富士フイルムのカメラが一番良く写った時代もあり駄目になった時代もあります。星野写真はキヤノンの独壇場だった時代もあります。時代と言ってもせいぜい2~3年の期間なのですが…。
その時代を経験したオジサンや爺さんは、その時代に良く写ったメーカーを勧めるかもしれませんが、カメラの性能は新製品のたびに変化しているので、新製品の発表には常に注目していてください。性能の変化に多大な影響をあたえるのが 「ペテン師」 なのです。

●デジタルカメラの性能を決定するのは以下の三要素になります。

  ①撮像素子の本来の性能
  ②周辺電子部分の品質と性能
  ③メモリに保存する際の画像処理(画像エンジン--ペテン師)

①②③が相互に作用しあって画像を形成しますが、もっとも肝心で常に改良されるのが③です。撮影した画像を瞬時に保存する際のカメラ本体の画像処理で 「やるのは当たり前」 ですから、黎明期にはこの機能に画像エンジンDIGICと命名したキヤノンに対し、カメラ評論家で 「名称を付けて付加価値を出しているだけ」 との見解の人もいました。画像エンジンの威力がどのメーカーのカタログにもうたわれている今は、若人の皆さんはその大切さは理解していますよね? 画像エンジンで性能のほとんどが決まるんですよ。

撮像素子は光子のカウンターであることから、本来の感度はだいたいISO125程度しかありません。なのでカメラファンの話題になる 「高感度特性」 と言うのは本当はあり得なくて、③の画像エンジンでごまかして高感度に見せた結果です。しかし、その画像処理性能たるや 「まるで魔術師!」 「ペテン師!」 です。
あたかも本当に感度が高くなったような画像が保存されます。撮像素子のノイズは原理的に簡単には消せないはずなのに見事に消します(ノイズと一緒に星も消しちゃうカメラもありますが)。画素が詳細になれば1画素の光子カウンターの容量が少なくなってノイズが増えるはずなのに、人間の細胞よりも小さい詳細画素のカメラでも気になるほどのノイズはありません。③のペテン師のワザは①や②の要素の特質など全部蹴散らしてしまうほどスゴイのでしょうね。
撮像素子が生産メーカーから他メーカーにOEMされると、「供給されたメーカーのカメラも同じ性能になる 」と思う人が多いようですが、三要素で肝心なのは③ですから、③も撮像素子と一緒に供給されるのでなければ、やはり性能差や個性の違いは、かなり大きくなると思われます。

●常に進化を続け、突然化けて高性能になることもある!
星爺はペンタックスのデジイチを使って、あまりの星野写真性能の悪さに本気でドブに捨てようと思ったことがあります。オリンパスのカメラはフォーサーズ( 約23×15mmと小さいAPS-Cより小さな17.3×13mm )で撮像素子が小さい分だけ詳細画素のため、ノイズがひどくて星野写真には適さないと信じられていた時代もあります。
しかし、③の画像エンジンが高性能化されると、オリンパスは突然化けたように星野写真に適したカメラになりました。ペンタックスは3年ほど前からイイ味で星野写真を撮れます。両者ともそこそこHαの赤色星雲が写るのは、感度を上げるために赤の透過域をやや長波長側に広げたからかもしれませんよ。 こういうことが年中あるので新製品からは眼が離せません。
P.S. こいつはいくらなんでも長波長側に広げ過ぎかな?

星野写真の高性能ぶりで天文ファンに人気のあるカメラはキヤノンですが、この1~2年でどのメーカーの画像エンジンも進化して、決定的な差はなくなってきました。富士フイルム、オリンパス、ペンタックスの健闘が光ります。詳細画素のうえHα光が写る天文用のニコンの810Aも素晴らしいカメラです。
これらの高性能の要因はほとんど画像エンジンなのですが、ソニーからもうすぐ裏面照射型の撮像素子を採用したα7RⅡが登場します。三要素の①が根本的に進化するので絶対注目ですね!(P.S.ペテン師さんは期待したほど変わらなかったみたいですね)。
こんなめまぐるしいほどの状況なので、目上の人を尊敬することは大切ですが、古い情報はアテにせず必ず自分で、メーカーの宣伝文句にも疑問を持ちつつデジカメを購入してください。

●撮影法や赤道儀の仕様も変わる!
ISO感度の設定を高くし過ぎると、見かけの感度が高く見えるだけで、ノイズばかりの汚い画像になったり画像エンジンが暗い星を消したりしてしまいます。が、最新型の各社のデジカメはISO1000~1600でもノイズの少ない星野写真を撮影できるようになりました。こうなると、光害の少ないかなり暗い空でもJPG保存では適正露出時間はISO1600ならF2.8で1分、F4で2分ほどですから、追尾性精度の良くない赤道儀でも使うことができるし、当然オートガイダーも無用になります。

短時間露出でバンバン撮って多数枚のコンポジット合成をする。たとえば同じレンズでISO200設定で8分露出したのとISO1600で1分露出を8枚コンポジトしたのは、ほとんど同じ品質の画像が得られるので、そのような撮影法も奨励できます。もちろん、こうした撮影法はすでに行なわれていますが、今まではあくまでも追尾精度の悪い赤道儀の 「救済処置」 として行なわれる場合が多かったです。

さらに詳細画像を目指すなら、高価なフルサイズの高詳細画像のカメラを使わずに、高性能なAPS-Cやフォーサーズのカメラを使い、2コマ以上のパノラマ撮影を常用する手もあります。
そんな撮影法に便利なポタ赤を提供する必要が出てきたので、弊社のPanHead EQ も大改良をして近々新しい仕様のバージョンを発表します。

●最後に補足です
原理から言えば詳細画素の撮像素子は1画素で光子をたくさん捉えることができないので、結果的にノイズが多くなって高感度に見せる画像処理はやりにくいです。
先日、キヤノンから超高感度多目的カメラME20F-SHが発表されました。1画素の大きさは最近のデジカメの5μm(ミクロン)以下に対して19μmで面積は15倍にもなります。ただし300万円もします。
星爺は研究者用の裏面照射型冷却CCDを所有していたことがあり、これは1画素が25μmでした。 800万円もするもので、2005年度に編集者を早期退職した際に売却してクルマになりました(笑)
本当の高感度を求めるには、やはり画像エンジンに頼る以前に画素が大きいことが重要です。もしかしたら、どこかのメーカーから一転して大きな画素のデジカメが登場するかもしれませんよ!

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●業務連絡とE-ZEUSⅡのお知らせ2015/07/21 12:16

今回は「星爺から若人へ」ではなくて、ご連絡とご案内です。

●JILVA-170の出荷状況
超高性能ポータブル赤道儀JILVA-170(輸出バージョン)につきましては、多数のご注文をいただきありがとうございました。輸出品の予備在庫のパーツで組み上げるバーゲン製品のため、そろそろ売り切れとなりますので、ご入用のお客様はこちらからお早めにご注文ください。

JILVA-170は1台ごとに実際の星空でピリオディック(P)モーションを撮影して追尾精度をテストし、公称値の±4~5″の高精度をクリアした個体のみ出荷しています。そのため納期は天候に左右されますが、今年の梅雨は極端で6月4日以降は、本日(7月21日)まで一晩晴れただけです。やっと関東地方の梅雨明け宣言が出たので、今晩からはPモーションテストが進捗するものと思われます。ご注文の早い順から出荷いたしますので、いま少しお待ちくださいますようお願い申し上げます。

           2軸オートガイド用の赤緯軸や専用三脚なども鋭意開発中です

●Pモーションテストが必要な理由
Pモーションとは 「赤道儀の赤経ウオームネジ1回転周期の追尾速度の進み遅れ」 のことで、Pモーションが小さいほど長い望遠レンズまで追尾することができます。だいたいの基準として、100mm望遠レンズを追尾するためには±20″以下のPモーションであることが必要です。
Pモーションはウオームネジ周辺の加工精度が原因で発生します。その原因は一つではなく、主に下記の四種類から各々振る舞いの異なるPモーションが発生し、これらが重なりあって増長したり相殺したりします。したがって①~④の総合である最終的なPモーションは偶然の産物みたいなもので、各々の加工精度よりも悪くなることも良くなることもあり予測がつきません。個体ごとのバラツキが大きくなるわけですね。オーバーホールなどで組立直すと当然Pモーションも変わります。
  ①ウオームネジのピッチ誤差(乱れ)によるヨロメキ運動
  ②ウオームネジ軸受けの精度によるスラスト方向のブレ
  ③ウオームネジの芯出し誤差による1回転毎のトルク変動
  ④ウオームネジに付けたスパーギヤの偏芯による速度変動

昨今、赤道儀のメーカーはPモーションのデータを公表しなくなりました。個体ごとに測定しないのであれば、架空のようなデータを公表するよりずっと良心的といえると思います。しかし、ポータブル赤道儀はPモーションが生命です。Pモーションが不明では何mmの望遠レンズを搭載できるかもわかりません。そのため弊社では全個体をテストして合格品を出荷しています。
                クリックすると画像が大きくなります

●ただいまPモーションの測定中です
久しぶりの晴天でJILVA-170の出荷前のPモーション測定をしています。1回めは下の写真で12分露出のため、2週期分ちょっとのPモーションが写っています。撮影レンズは1200mmですから、500mm程度の望遠レンズならばガイディング修正無しで使えそうな精度があることが見て取れます。測定結果は下記のとおり±4.5″でした。
この後、ウォームホイールの場所を変えて再度測定します。JILVA-170の公称値は±4~5″としていますが、±5″以上の場合は不合格にして再組立てします。再組立てをすると(前述のように偶然の産物なので)一転して良くなることは多いです。悪い場合は早めに諦めて破棄処分にしています。
一晩中晴れそうなので、朝までに4台くらいは測定できそうです。


●自動導入モータードライブE-ZEUSⅡの販売
SB工房のホームページに E-ZEUSⅡの直販サイトがオープンしました。E-ZEUSⅡ用のモーターさえ取付けることができれば、小型から大型の赤道儀まで様々な赤道儀を便利な自動導入にすることができます。
今まで複数の望遠鏡ショップ様を通じて百数十台の装着実績があるので、ノウハウの蓄積もあります。10年以上ご愛顧をいただいているE-ZEUSは、今年から赤緯駆動にバックラッシュ補正機能を追加するなどの改良を施したE-ZEUSⅡになりました。
たくさんの赤道儀メーカーが精度を競い合った30年ほど昔の据付式赤道儀には、とくに適合性が良く、古色蒼然とした赤道儀を低予算で最新型に生まれ変わらせることができます。

     タカハシNJP赤道儀に取付け(左)、ビクセン ニューアトラクス赤道儀に取付け
     アスコSE型赤道儀に取付け。E-ZEUSの回路はピラーのパネルに取付け
            最近装着した60cm赤道儀用のドライバ回路と制御ボックス

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●中国の望遠鏡メーカー2015/07/10 10:22

「星爺から若人へ」は中学生くらいを対象としています。

●星爺は最近テレビ放送で多くなった日本礼賛の番組が大好きです。
『所さんのニッポンの出番』 『cool japan発掘! カッコいいニッポン』 『Youは何しに日本へ?』 や、町工場のスゴイ技術を紹介する番組等など。その根底にあるのは夏目漱石に端を発する白人コンプレックスと思わないではないけれど、番組を見れば気分が良いですからね!

未来学者ハーマン・カーンを尊敬していた時期もあるし、社会学者エズラ・ヴォーゲル著の『ジャパン・アズ・ナンバーワン』には心が踊りましたね。日本ガンバレです。

小学生の頃は、銭湯で鉄工所や溶接工場のオヤジ達から空襲の体験やシベリア抑留の話をマジメに聞いて可愛がられ、工場へ遊びに行って教わったことが天体望遠鏡の自作にとても役立ちました。タダでたくさんモノを作ってもらったし,以来、町工場には憧れています。
「町工場のオヤジって頑固なだけで理論付けされた技術は無いな」 と思っても、下町ボブスレーを見て 「勝負の世界は甘くはねーよ」 と思っても、中小企業や町工場は応援したいです。

『永遠の0』にも感動! クリスティーナ・ロセッティの詩とからめるなんて粋な脚本だ! ゼロ戦はパイロットを銃弾から守る分厚い鉄板を省略したから、軽量で性能が良かっただけなんて説もあるらしいけど、そんな理屈は不問にしましょう。

新幹線の安全神話というのも、「ガソリンを簡単に持ち込めて安全もクソもねーだろ」 と思っても、やっぱり新幹線は世界一ですよね! 新幹線開業の1964年は東京オリンピック。星爺は前夜祭で鼓笛隊の太鼓を叩いてました。次の東京オリンピックまで、なんとか生きていられたら良いなぁ。

はやぶさ(第20号科学衛星MUSES-C)は失敗したことの方が多かったのだから、礼賛するばかりでなく、せめて科学雑誌や天文雑誌は公平な記事を作らないのか? と思っても、「失敗のことなど記事にする必要はないか…?」 と思い直しますね。 とにかく星爺は日本人だし、我が国は好きですからね。 愛国心かな? でも愛国心は近隣諸国をバカにする傾向がありますね。

……と、ここまで書くと 「下手な前振りをするな!」 とバレてしまいそうですが、本心は日本人や日本の技術はスゴイなんて、浮かれたり礼賛番組を作っている場合ではないと思っています。
日本の半導体技術が近隣諸国に後れを取っていることは、かなり前から工業新聞には載っていて、最近は経済新聞も同じ論調。日本の自動車は安全性で韓国に抜かれたみたいですしね。
それなのに、なにゆえ自画自賛、手前味噌、我田引水の日本礼讃か?

長々と書いたのは、心地よい報道に隠れて軍靴の足音が聞こえる気がしてならないからです。町工場をおだてるのは戦前に貧しい工場労働者を「工場戦士」言ったのと同じ、「竹槍でも戦える」と喧伝したのと同じだと警戒してしまいます。ジャパン・アズ・ナンバーワンも戦前の 「日本人は一等国民」 と同じ……?

業界の人はとっくに知っていることですが、今回は天文少年少女の皆さんに、天文ファンには粗悪品と思われている(実際に今はそうなのですが)中国の望遠鏡メーカーの技術をご紹介します。秘密のこともあるので、双眼鏡メーカーと望遠鏡メーカーの4社のスナップを、ごちゃ混ぜにしてご紹介します。この業界でも日本の優位性が失われていることが如実にわかると思いますよ。
※なお、天体望遠鏡は今も昔も日本製も海外製も主流は玩具で、トンデモ望遠鏡もたくさん出まわっています。今回ご紹介するのは玩具系ではない、しっかりした光学メーカーです。
     中国でもっとも大きい望遠鏡専門メーカー。総合大学のような建物でレンズや反
     射鏡の研磨から金属加工まで一貫生産するのが中国のメーカーの特徴です。
     無塵室専用服を着せられて対物レンズ組立てセクションに入るところの星爺です。
     オートコリメーションテストのセクションでは普通の服装が許されています。
     左に少し写った建物が機械加工の建物で右側がレンズの研磨などを行なう建物。
     右の写真は敷地内の従業員の宿舎。従業員はすいぶん厚遇されているようです。
     異なるメーカーのショールーム。両社とも自社ブランドより相手先ブランドの製品
     の方が多いらしい。日本でお馴染みの望遠鏡もたくさん見かけます。
     口径25cmと30cmのリッチー・クレチャン望遠鏡。これは試作品で、相手先ブランド
     はこの時点では未定。どこかの国から売り出される(た)のでしょうか?
     30cmマクストフカセグレン望遠鏡。右は15cm屈折望遠鏡の豪華な接眼部でプロ用
     の顕微鏡とよく似た遊星ギヤ式微動のラック&ピニオンギヤはスムーズでした。     
     左は小さなパーツを作るNC加工装置。右は倒立型のコリメーターで、アイピースの
     チェックをしているところ。どのメーカーも検査機器はひじょうに充実しています。
     このような大型のコーティング用真空蒸着釜がズラリと並ぶ。日本では珍しい低温
     蒸着釜もあります。右は多層膜コーティングが完了した20cmニュートン反射鏡。
     アイピースの組立て現場にはファナックのコンピュータがズラリと並んでいます。
     アイピースのレンズを落とし込みで組んだ後で芯出し調整の精度はコンピュータ
     の画面に表示されます。右は組立て前のレンズの傷のチェックです。
     アイピースも相手先ブランドが多いようです。超ワイドアイピースもあります。
     オートコリメーションテスターは極望の芯出しを行なうためのものらしい。右は3枚
     玉FCD-1硝材の本物のアポクロマート対物レンズ。これは小型の口径80mmです。
     対物レンズや反射鏡は干渉計による精度チェックを行ないます。反射鏡は数値制
     御によリ正確な放物面を研磨する技術を多くのメーカーが確立しています。
     中国の望遠鏡展示会には世界中からバイヤーが集まります。右は大学系のメーカ
     ーが出品した口径50cmのリッチー・クレチャン式望遠鏡の主鏡です。

●中国の望遠鏡メーカーの製品が、とくに赤道儀の追尾精度などでは、日本製よりも劣ることは周知の事実です。工場の規模は大きくて数百人~千人以上の社員がいますが、末端の労働者の質が高くないので、なんでもない仕上げの部分にミスや不良が散見されます。他社の製品を真似するだけで設計を吟味していないとも思います。検査設備は優れていても、不合格品はどこに流れていくのだろうか? と心配にもなりますね。
しかし、中国のメーカーが少数派のハイアマチュアに向けた製品を作り始めたら、コワイですよ~。
どのメーカーにも、お約束のように若くて優秀な管理職の技術者がいます。たいてい日本やアメリカへの留学経験がありますが、国費留学をするためには最高学府を2年飛び級する必要があるそうで、とにかく皆さん頭が良くて猛勉強する青年たちです。
日本の将来を担う若人は、諸外国に負けないように一生懸命勉強をしてくださいね。戦後に飛躍的な発展を遂げた 「光学日本」 を支える人材の出現にも期待します。
 もちろん日本人の誇りを持つことは大切ですが、日本礼讃の番組にも何事にも流されず、常に批判的な目を向けることが大切だと思います。再び 「一億火の玉」 にならないためにも……。

●極望の調整について22015/06/25 00:35

●好評だったので調子に乗って今回も極望のお話です
前回は、鏡筒の根本のネジによる対物レンズの無限焦点調整と、スケールパターンを押しネジで動かす光軸調整と、視度をスケールパターンに合せる調整のある 「上等な仕組みの極望 」の場合、仕組み(理屈)を知らずに調整したらしい、ひどすぎる光軸の極望が出まわっていて、これによりポータブル赤道儀が 「追尾精度の悪い機材」 と思われたら心外だ…という話題でした。
極望代わりの穴で極軸設置した方が正確なほど光軸が狂っていたのがたくさんあったのはショックでした。が、でもまぁ、ふつうは露出5~6分以下で撮影するので、200mm望遠レンズでも20′の精度で極軸設置ができればほぼ完璧です。追尾エラーの原因のほとんどはPモーションのせいです。

極望は単体で調整してから極軸の内部や外部に取り付けます。極軸内部に装着する場合は極軸を回しならが再度調整できるので、より正確な光軸調整ができます。といっても、極軸は意外にミソスリ運動をすることもあり、粗動回転部が追尾時に回る部分と(同軸だけれども)違う赤道儀もあるので、外付けの極望よりも極軸内蔵の極望の方が高精度に調整できると一概には言えません。。

鏡筒の根本に対物レンズの無限焦点調整ネジのある極望の場合、その根本の曲がりで肝心要の対物レンズのセンタリングが狂うなら、無限焦点の調節をした後にネジ部をしっかり固定して、鏡筒を旋盤にくわえて 「取付け基準面」 を精密に削り直せば良いのです。カメラマウントなどはみんなそうやってありますよね? それをしないなら、対物レンズもスケールパターンも「落とし込み」で装着するだけで光軸調整のない簡単な極望の方が、よほど安定して信頼性も高いかもしれません。
極望を下側から極軸に挿入するために、やむおえず現行の仕組みにした事情もあるでしょうが…。
本気で高精度の極望を作ったら10万円もしそうなので、まぁ、現行の極望は良い落とし所で作られていると言えるとは思います。
     オートコリーメーションの極望調整装置と右は調整中の赤色LED暗視野照明の
           スカイメモ式スケールパターン。マークX式も併用されている

      無限調整、光軸調整、視度調整の仕組みの付いた、もっとも多いタイプの極望
     単眼鏡を改造した ナンチャッテ正立極望は対物レンズ枠前部を削って光軸調整


●いろいろなスケールパターンがあります
北極星は天の北極から40′ちょっと離れた位置にあるので、極望の視界には北極星を離角に合った位置に導入するためのスケールパターンが必要で、様々な工夫のものがあります。スケールパターンは、大きさをはじめとする精度が充分に高い必要があります。以下に簡単に説明します。
       左がマークX式。右がナンチャッテ正立極望の調整中でコリメータの緑の指標が見える

(1) 半径40′ほどの円の周囲に目盛りを入れた(変なマーク?)だけのスケールパターンは、視界が狭くても良いので倍率を高めて精度を上げることもできます。このタイプはタカハシさんが 好んで採用しています。離角は星座早見や内装または外装の時角目盛で確認し、所定の目盛りの位置に北極星を導入するので、強いて極望を回す必要はありません。水準器を併用することもあります。

(2) 北半球では北極星を含めた3つの星をスケールパターンに合せる(南半球も類似の手法)のが、いわゆる「スカイメモ式」です。同時に離角も合せられるので、時角目盛りや水準器が不要なのが大きな利点です。広視界を得るために倍率はかなり低くせざるを得ません。

(3) 天空のカシオペヤと北斗の位置を目視して離角を合せるのが、五藤光学さんが普及させた、いわゆる「マークX式」です。時角目盛りや水準器は不要です。片方の星座しか見えない場合はやや不正確になるかもしれませんが、倍率を低くする必要がないので精度の高い方法と思います。

(4) 輝星はオリジナル極望(品切れ中)とナンチャッテ正立極望に、「こぐま座β星」で離角を目視する方法を採用しました。手前味噌ですが北極星を時計の中心に、こぐま座の線つなぎとβ星を時計の針に見立てると、かなり正確に離角の方向が目視できます。マークX式も併用しています。
光軸調整はコロンブスの卵的な発想で対物レンズ枠の前面を斜めに削って行ないます。


●カーチスデジカメ極望(DPPA法)
星爺が10年ほど前から極軸設置に興味のある天文ファンに配っているパンフを見てください。
昔、リック天文台の天文学者 HEBER D. CURTISが1922年に発表した「写真による赤道儀の調整」という論文があります。これをデジカメに応用して 「デジカメを極望の代わり」 にします。
先達に敬意を表して、英語の表記は「Digital Photographic Polar Alignment (Curtis Method)」としました。略すとDPPA(デー・ピー・ピー・エー)またはデッパ(笑)です。
パンフには、あえてヒントだけの基本的な考え方しか記していないので、これを元に応用してください。工夫次第でひじょうに高精度な極軸設置ができる可能性があります。ポタ赤用に素早く作業する工夫をして実用している人も多数おられます。極望のない赤道儀の極軸設置にも重宝です。
カメラの背面液晶には、星々の円弧の回転中心(センターマーク)を見つけるための多重円パターンや、極望と似たスケールパターンを透明シールで作って貼ると便利です。これらのパターンを液晶にオーバーレイ表示して、上下・左右・回転・拡縮の微調整ができたら理想的です。カメラの画像をパソコンに転送すれば、オーバーレイのソフトを作ることができそうですね。

星爺はDPPA法で極軸設置をするのは(信頼性は高いが)面倒なので極望の方が好きです。DPPA法は極望の代わりにするのも良いですが、装着された極望の光軸の確認と調整にも最適です。
北極星を液晶画面の離角の位置でなく「回転中心」に合せた後、極望のスケールパターンの中心に北極星が合っているか確認し、合っていなければ極望の光軸調整をして一瞬で完了します。
その極望が前述 (1) の回さないスケールパターンなら、鏡筒の曲がり、ミソスリ運動、、スケールパターンのセンタリング、極望の取付け精度、に関連する不具合は発生しようがない! すなわち、望遠鏡のファインダーのように、どこかにしっかり固定するだけでOKということになります。

すでに気付かれたと思いますが、既存の極望の定番になっている、
 ・極望を回して光軸調整を行ない、
 ・スケールパターンを回して離角設定も行なう。
 ・そのためには極軸に内蔵されていると良い。
という手法は、一石二鳥~三鳥の便法であることに間違いはありませんが、実は加工精度の高い極望が必須で呪縛も多い手法です。着想を変えれば、スケールパターンを回さない極望、極軸と一緒に回らない極望、外付けの極望は、別の意味で圧倒的な便法であることが分かりますね?
DPPA法が天文ファンの常識になったら…? 極望の将来の姿が見えてきませんか?(笑)

●蛇足ですが、「GPSで極軸設置はできないか?」との質問が何件か寄せられたのでお答えします。そのような赤道儀は20年以上前からあり便利そうなので期待されましたが、低倍率の望遠鏡で見ている天体がある程度の時間は視界から外れない程度の極軸設置精度しかありません。
GPSはカーナビのように走りながら三角測量をすれば方位も正確に出せるのですが、一箇所にとどまる場合は方位センサーを使います。方位センサーは5度程度の精度しかないので極軸設置には使えません。ペンタックスさんのアストロトレーサーにも「精度5度」と明記されています。アストロトレーサーの撮像素子を動かす追尾と赤道儀の極軸回転の追尾は異なるので、赤道儀に応用しても魚眼レンズの極軸設置精度が出るかどうか? でしょうね。方位磁石を用いた方がはるかに正確です。
しかし、赤道儀を背負って走れば可能かも…というのは冗談ですが、赤道儀からかなり離れた場所にコーナーキューブを置いてレーザー測距すれば、将来的には可能かもしれませんよ。

●極望の調整について2015/06/14 20:59

「星爺から若人へ」は中学生くらいを対象としています。

●SB工房に、「ポタ赤用の極望の光軸調整をして欲しい」との依頼が10件ほど来ました。極望は3種類ありました。で、星爺は唖然としました! みんな光軸(スケールパターンの位置)が大きく狂っていたのです! 素通し穴で極軸設置をした方がマシなほど! そこで今回は中学生向けでない極軸望遠鏡(極望)のお話です。光軸調整も請け負いますので、ご希望の方は文末をご覧ください。

「ポタ赤で追尾できるのは100mm望遠くらいまで」とか「外付け極望は精度が低い」とか「ポタ赤にも赤緯軸がないとダメ」とか「ポタ赤にもオートガイダーが必須」とかの経験談やうわさ話に、「そんなはずはない! 超簡単に写せるよ!」 と思っていましたが謎が解けた気がします。あまりにも光軸の狂った極望が出まわっている…が “オチ” だったってか?(笑)  極軸設置が大きく狂っていると、いくら短時間露出でも,、赤経・赤緯の両方向に大きく流れて写ってしまいますからネ。
(株)輝星は世界で初めて極軸だけのポータブル赤道儀にオートガイダーの端子を付けたくらいで、オートガイダーは奨励します。しかし、ポタ赤の価値はどのくらいの望遠レンズまでノータッチの放っぽりぱなしで追尾できるかで決まります。それには正確に光軸調整された極望が必要不可欠です(今回のがひどすぎるのであって、露出が短ければある程度の精度で良い)。
市販のドイツ式赤道儀には、慎重にメーカー調整された極望が内蔵されています(そう願いたい?)。
輝星の供給する極望は専用の器具を使ってしっかり光軸調整済みです。なので星爺は、デジカメの星野写真撮影は長い望遠レンズでも赤緯修正の必要は感じないし、いつも放っぽりぱなしで撮影しています。もちろん追尾精度が悪い赤道儀では根本的にNGですけどね。
ポタ赤用の極望は単品のパーツとして供給されているためか? 調整をしていないか調整が下手クソすぎるのが多いようです。極望は簡単に見えても「星の位置測定器」なのですけどねぇ。
極望には様々な仕組みがありますが、今回の10件はみんな下の図のような各部が独立して調整できる上等な仕組みでした。それだけに、ちゃんと仕組みを理解して正しい手順で調整しましょう。
調整の項目は下記の2つになります。
(1) 対物レンズの無限焦点を正確にスケールパターンに合せる
まず最初にこの調整を行ないます。上の断面図の鏡筒の根元にある「対物レンズのピント調節ネジ」でやります。上の写真(クリックで拡大)は極望の光軸調整用に作ったオートコリメーション装置で見た今回調整した一例ですが、暗視野照明の赤いスケールパターンの反射像がボケボケ(そのうえ光軸がずいぶんズレてます)なのは、対物レンズの無限焦点がスケールパターンに合っていないからです。
この例では無限焦点の位置が3mm接眼部側にズレていたので、接眼レンズをのぞくと25~30cmの明視距離(下図)で見ていることになるため、星はスケールパターンよりも3~4cm手前に見えるのと同じになります。そのため眼を横にズラすと視差が生じて30′くらいは星が動いて見えました。これでは次の (2)の手順のスケールパターンの光軸調整をする以前にダメだったということです。
無限焦点位置合せの許容は厳密には0.1mm以下なのでシビアで大切な調整です。星を見てピントを合せればOKな理屈ですが、接眼レンズの倍率が低いため肉眼のオートフォーカスの影響を受けやすく、しっかり合せたつもりでもけっこう違ってしまいます。オートコリメーションでないと正確に無限に合った焦点調整はできないかもしれません。
この対物レンズの無限焦点位置の調整は、接眼レンズを前後させて見る人の視度をスケールパターンに合わせるのとは全く別ですから、誤解のないように調整してください。

(2) 風景を見てスケールパーターンを調整…鏡筒根元の焦点調整ネジが大問題

これから風景を見ながら極望を回して、スケールパターンの押しネジで風景の中心とスケールパターンの中心を合せる光軸調整を行ないます。が、その前に基礎の勉強…。
スネルの法則で対物レンズの中心を通過した光は直進します。対物レンズのセンタリング(中心合せ)が少しでも狂っていると光軸はそのままスケールパターン上の狂いになり、0.1mmの狂いは約3′と決して少なくありません。また、センタリングがかなり合っていれば、後述の光軸調整時の視界の風景は極望を回してもそんなに動きまわらないので、光軸調整は難しくはありませんが、対物レンズのセンタリングが大きく狂っていると、ほとんどお手上げになってしまいます。
(1)の説明のように今回の極望は取付基準面と一体になった接眼部から「鏡筒が生えて」いて、根元のネジで対物レンズの焦点調整ができる便利な仕組みです。しかし、鏡筒がこの調整ネジ部で曲がりやすいのが大問題です。運搬中に曲がる可能性もあります。とくにブラスチック製の鏡筒は曲がりやすく、先端の対物レンズのセンタリングが1~2mmも狂っているのがたくさんありました。スケールパターン上で1°、接眼レンズをのぞくと数cm(!)も狂って見える、とてつもなく大きな狂いです。
極望の光軸調整をするためには遠くの風景を見て(下のイメージ画像)取付の基準面で回します。このとき、鏡筒が曲がっていると先端の対物レンズは大きく首を振ります。視界の風景は対物レンズの首振り(センタリングの狂い)の量に応じて、太陽系を上から見た惑星の公転のように大きく円運動をします(いわゆるミソスリ運動)。ミソスリ運動が大きくても、動きまわる風景の中心に追従するようにスケールパターンの中心を合せればOKなのですが、そもそも視界に見える風景の光学的中心がどこなのかよくわからないし、スケールパターンの方も自転をしながらミソスリをするので、2つのミソスリ運動をピッタリ合せるなんて神業に近い調整です。
こんな状態に加え(1)の無限焦点も狂っているのを中途半端に調整したら、かえって悪くなる可能性が高く、結果として唖然とするほど光軸の狂った極望が出まわっているのではないでしょうか?
●極望の調整は十字線を合せるだけの望遠鏡のファインダーの調整とは違います。今回の極望が未調整品か、知識も技術もない人が乱暴に調整した希な例であることを祈りたいです。
こんな惨状なので、外付け極望はステーの取付部で狂って精度が悪いという都市伝説も生まれるのでしょう。ポタ赤では望遠レンズは使えないとか赤緯軸が必須というのもまた然りです。
鏡筒の根元の曲がりが大問題なので、無限焦点の調整の際には「取付け基準面に正しく直角に鏡筒を固定」する工夫が必要です(メーカー調整ではやっている?)。または、光軸の精度は多少落ちても加工精度に依存した光軸調整無しの極望、無限焦点の調整をセンタリングに影響の出にくい箇所でやる極望、対物レンズ部を基準に回す極望(ナンチャッテ正立極望がコレ)、あるいは固定したまま回さない極望、の方が良いのかもしれませんね。実際にそのような極望も存在します。
極望の調整をご希望の方は、期間限定でやらせていただきますのでSB工房をご覧ください。極望単体に限ります。多少の手間賃はいただく予定です。来週からご案内できると思います。