●アポクロマートという用語2015/09/05 06:50

早起きしてこのページの文字校正をしていたら大失態! 全部消してしまいました。
ブログの画面に直書きしているので元原稿はありません(泣)。
とりあえず思い出しながら書き直してみます。いただいたコメントも一緒に消えました。思い出してお返事したいと思います。
半日経って----おかげさまで何人かの読者の方から本文を送っていただきました。書き直したのと一部を一緒にして新原稿としました。どうもありがとうございました。

●吉田正太郎先生の訃報
天文学者で光学設計や歯車の理論でも日本の技術の発展に多大な功績を残された、吉田正太郎(よしだしょうたろう)東北大学名誉教授が、7月30日に永眠されました。享年102歳でした。心からご冥福をお祈りいたします。
吉田先生は1934年に東京帝国大学(現東京大学)理学部天文学科を2年飛び級で進級して卒業後、東京帝国大学、東北帝国大学(現東北大学)を経て、1960年から東北大学教授として、天体測定や光学、歯車などをご研究されました。
「日本の光学の父」 とも言える吉田先生は 「明るい単玉非球面レンズ」 も発明され、CDやDVDの読み取りレンズとして世界中で使われています。星爺が「特許を取っていたら大金持ちでしたね!」と不遜なことを申し上げると 「税金で研究させてもらっている国立大学の研究者にとって特許は国民のものなので取得しません」 と言われました。光学設計の基礎や裏話も教えてくださり、『天文アマチュアのための望遠鏡光学』『光学機器大全』(誠文堂新光社)などの書籍を作らせていただきました。
今回は吉田正太郎先生のご遺志でもあるアポクロマートのお話です。

●3色色消しレンズがアポクロマート
若人の皆さんは、屈折率と分散が異なる硝材(しょうざい--レンズの材料)を組み合せると色収差の少ない 「色消しレンズ」 ができることはご存じと思います。
凸レンズと凹レンズ1枚ずつの2枚玉では、紫色~赤色までの白色光に含まれる光のうち2つ(2色)の波長で結像位置を一致させることができ、このようなレンズが「アクロマート色消しレンズ」ですね。双眼鏡や望遠鏡の対物レンズに多用されています。
通常は赤いC線と青いF線のC/F色消しで、入射する光線の球面収差の平均が最小になるように、中心から70%付近で正と負の球面収差を交差させます(下の図を拡大してください)。
下の設計例の図を見ると補正されていない紫色の g 線が ずいぶん後方にずれていて、このためアクロマートは像にボケた青~紫色がまとわりついて見えます。
       赤いC線と青いF線で2色色消しにした一般的なアクロマート対物レンズ。
       紫色のg線が取り残されたように後方に2mmほども離れていてます。
       口径10cm F10の例で黄色のd線が基準です(以下、収差図は同様)

アクロマートをもっと進歩させて、3つ(3色)の波長で色収差が補正され、2つの波長で球面収差とコマ収差が補正される等の条件を満たす高性能なレンズを3色色消しの 「アポクロマート」 と言います。3つの波長で色収差が補正されているだけでもアポクロマートと言うことがあります。
光学理論は奥が深い(吉田先生によると天文学並みの数学が必要らしい)ですが、通常は2色色消しは2枚のレンズ、3色色消しは3枚のレンズでないと補正できません。
 ・2色色消し=アクロマート
 ・3色色消し=アポクロマート
今は知りませんが、昔の工業高校の教科書には色消しレンズの定義は載っていて、常識とされる知識ですから、アクロマートとアポクロマートの違いを覚えておいてください。

●2枚玉でもアポクロマート
2枚玉の対物レンズでもフローライトやいわゆるED硝材を使ったアポクロマート天体望遠鏡というのが多数販売されています。3色色消しアポクロマートではないので、これらのレンズが登場したころ星爺は 「これはマズイなぁ」 と思ったのですが、カタログなどをよく見ると必ず 「フローライト・アポクロマート」「ED・アポクロマート」 と記されています。これは“○○硝材を使ったアポクロマート並みの高性能レンズ”という意味であり、商品名に含まれる冠称のようなものと解釈しました。
吉田正太郎先生にご相談すると、異常分散硝材を使用した2枚玉の対物レンズは、2色色消しではあるが通常の硝材を使った3枚玉のアポクロマートよりも色消し性能は高いほどなので、アポクロマートの表現は許しましょうということになりました。それからの記事では必ず「いわゆるEDアポクロマート」などと、いわゆる付きで記載することにしました。

2色色消しのアクロマートは一般的に凸レンズにBK7硝材を凹レンズにF2硝材を使います。他の硝材でもっと色消し性能の良いのはできないのか? と誰しも思いますが、ほんの少し良くなる例はあってもそんなに好都合な硝材はありません…というところに登場したのが異常分散硝材なのです。2枚玉でも一 足飛びに総合的な色収差補正が通常の硝材の3枚玉アポクロマートに匹敵またはそれ以上になるのですから、こんなに好都合でウマイ話はありません!
     左が古いタイプのED硝材を使ったEDアポクロマートで紫色のg線が過修正の球面
     収差を伴って後方にズレています。右は3枚玉のフローライトアポクロマートです。
     左のEDでもアクロマートに比べると色収差は1/5、右の3枚玉は1/10くらいです。

●断然すごい異常分散硝材の2枚玉

凸 レンズに使われるフローライトやEDは 「部分分散性をもった異常分散硝材」で、設計者は異常分散と言うことが多いです。カタログに 「特殊低分散ガラス」 などと書かれることがあるのは“異常”のイメージを嫌ったからでしょうか? 異常なほど個性的な硝材で相反する個性的な硝材の凹レンズと組み合せると、2色色消しでも総合の色収差はアポクロマート並で、問題のg線は中央は結像位置に近く過修正の球面収差を伴うため少しだけずれる高性能な対物レンズになります(上左の図)。
眼視ではこのg線が他の色と混ざって、青緑がかった独特の色収差が少し見えます。ほんの少しなのでかえって濃く見えます。このことが本来は2色色消しの悲しさと言えるかもしれません。
Fの明るめの望遠鏡を望遠レンズの代用として直焦点で星野写真を撮影すると、青い色の明るい星が少しにじんだ雰囲気の良い(と思っているのは星爺だけ?)写真が撮れます。

フローライトはガラスではなく螢石(ほたるいし、ケイセキ、CaF2)の結晶です。理科で習うモース硬度は4で方解石よりもやや硬い程度のとても柔 らかい硝材です。そこで代替品として登場したのが、いわゆるEDガラスです。いわゆると書いたのは、EDは製品になった時の商品名であり、UD、 LD、SDなどと記されることもあるからです。さらに、いわゆるEDにはおおまかに2種類があります。
フローライトと同等の性能のED硝材は、日本のオハラでは FPL53、HOYAでは FCD100と言いドイツのSCHOTTには同等品は無いようです。これらはスーパーEDとかSDなどと称されることもあります。
過去にたくさん使われたのが性能がやや劣るタイプのED硝材で、オハラでは FPL51、HOYAでは FCD1、SCHOTTでは PK52Aと言います。たとえば同じ口径のFPL51系でFPL53やフローライトのF8と同等の色消し性能を得るにはF10程度に暗くしないとなりません(ざっくりとした比較ですが)。

いわゆるEDアポクロマートの黎明期に、ニコンの10cm EDアポクロマートはセオリー通りに暗くして余裕を持ったF12でした。ペンタックスが 口径75mm~125mmまで全部 F6.4にしたのは(P.S.読者の方からご指摘をいただきました。75mmと105mmはF6.7でした。書きなぐってアップしてから校正して何度も手直しするので完成原稿は数日後になってしまいます。すみません)、望遠レンズとしても使用するため F5.6とF8の中間のF6.4にしたくて、承知のうえで高倍率の眼視性能を犠牲にしたのではないでしょうか。しかし、天下のペンタックスがやったからOKと思ったか? その後の他メーカーのいわゆるEDアポクロマートが、Fの明るいものばかりになるという悪影響を与えたかもしれません。
2枚玉EDを検討する際には、FPL51か? FPL53 か? とF値に注目する必要があります。

●3枚玉アポクロマート
いわゆる2枚玉アポクロマートは、上記のようにg線の色収差が少しだけ残っていますが、価格の安いことや軽量なこと、製品にバラツキが少ないことや温度順応が早いことなどから見直される傾向にあるようです。タカハシさんや五藤テレスコープさんからもFの暗めの新製品が出ましたね。
星爺はビクセンさんが20年以上前に販売していたフローライトの9cmと10cmで F9と暗めの天体望遠鏡を2本、今でも愛用しています。 凹レンズに理想的なKzF5硝材を使用した名機です。
9月4日にタカハシさんから口径10cm F9のFC-100DLが発売されました。凹レンズの硝材は未発表ですが、わかりやすい収差図が発表されています。眼視に特化させるなら球面収差が総合的に交差する場所をもっと中央に寄せて、g線をもっと離して淡く見えにくくしてしまう味付けもアリです。が、FC-100DLはその逆でレンズを少し厚くして(推測ですよ。色収差はわずかに広がります)g線をできるだけ寄せているので青紫のニジミがかなり少なく、星野や月面写真などが相当シャープに写りそうなことが読み解けます。FC-100DLは純然たる眼視用望遠鏡ですが、F9と暗めな恩恵もあって各色の球面収差が非常に少なく高性能なので、写真撮影用にも味付けする余裕があったのでしょう。

正真正銘の3枚玉のアポクロマートにも異常分散硝材が投入されるようになりました。3枚玉になると他の硝材の選択など設計の自由度が大きくなるのでFPL51とFPL53の差はあまりなくなります。硝材の選択肢が多いので設計を推測することはまず不可能になります。
3枚のレンズをオイルで貼り合せたタイプは貼り合せ面が無反射になるのでクリアーな視界で温度順応も早いです。しかし設計の自由度が少ないためか近年は姿を消して分離式(エアースペース)がほとんどになりました。設計上の性能はどの望遠鏡も素晴らしいはずですが、とくにFの明るいものは研磨や組立調整に敏感なので信用あるメーカーの製品を選びたいものです。

3枚玉の間隔を離すとさらに設計の自由度が増して、もっと高性能な天体望遠鏡を作ることができます。アストロフィジックスの製品やタカハシさんのTOA、ビクセンさんのAX103Sがそれです。収差補正に敏感になるので組立調整はものすごい精度が必要になると思います。
      タカハシさんのフラッグシップ機TOA150。口径150mm F7.3 焦点距離1100mm。
      3枚のレンズ間隔を離していて同社では「TOA型アポクロマート」と称しています。

●眼視/写真兼用のペッツバール
眼視/写真兼用(フォトビジュアル)のペッツバールタイプの望遠鏡も高性能で人気です。原型は日本は江戸時代の190年も前にオーストリアのペッツバールが発明したもので、望遠鏡が像面の平坦性が重要なカメラレンズに進化する第一歩と言えるレンズです。2枚玉が前後に配置された4枚玉です。なんと! 星爺が小学生の頃までダルメヤー3Bなどのペッツバールが使われていました。像面を平坦化したと言ってもまだまだ不足なため、かなりの大判で人物のポートレートを撮ると 「周辺がきれいにボケる」 ため、写場では重宝されたのです。モノクロ専用で人像玉とかバカ玉と言われていました。

天体望遠鏡に採用したのはテレビュー社が最初だと思います。現代の設計なので当然3色色消しアポクロマートでFも明るくできます。視界の中央しか撮影しない天体写真には像の平坦性は充分で、ほとんど望遠鏡に近いので眼視性能も優れた二刀流の高性能望遠鏡になります。
タカハシさんのFSQはペッツバールタイプのフォトビジュアルです。昔のペンタックスさんのSDP望遠鏡も(色収差がけっこう残っていた2枚玉+フラットナーのEDHFやSDHFから一挙に進化した)ペッツバールです。たいてい原型とは大きく異なる設計なので、独自の設計とするメーカーさんもあれば、先達に敬意を表してペッツバールと称するメーカーさんもあります(後者のほうが好感が持てますねぇ)。
      ペッツバールタイプの原型。望遠鏡レンズが写真レンズ寄りに進化したもの
      高橋製作所のFSQ106型 口径106mm F5(FL530mm)のペッツバールタイプは
      FPL53系の硝材を2枚採用した贅沢な設計で、天体写真ファン垂涎の望遠鏡

P.S.専門家の方から情報をいただきました。ビクセンさんの 「ネオアクロマート」 という望遠鏡は、異常分散硝材でないペッツバールですね。設計を推測して検証したら高性能なフォトビジュアル望遠鏡ですね! 口径140mmで焦点距離が長いのに一世代前の高級な300mm F2.8望遠レンズ程度のかなりのシャープさです(青ニジミは出ますが)。低倍率専用ということでアクロマートのFを無理に明るくした廉価品とは全然モノが違う! ネオアクロマートという誠実な名称で損をしたかも? 生産中止になったようなので、異常分散硝材のお手頃価格のペッツバールが登場するのでしょうか?

●便利なレデューサー
アクセサリーとして人気のある「レデューサー」についても簡単に説明しておきます。焦点距離を縮めるレデューサーは結像全体を小さくするので、星像は縮めた分だけシャープになる傾向があります。周辺減光や像の平坦性は縮めた分だけ悪くなりますが最近のレデューサーは平坦性もある程度は保ちます。無理なく縮める限度は0.7倍くらいです。2枚玉との組合せが良いですね。
望遠鏡は口径が大きくなると比例して収差も増えます。鏡筒の断面図を拡大コピーする感じをイメージしてください。たとえば口径50mm F10が口径100mm F10になれば収差は2倍になります(本来は口径が大きいとFを暗くする必要がある)。凹面の像面弯曲は2倍ゆるやかになります。設計にもよりますが、屈折望遠鏡は焦点距離が1000mmを超えれば35mm判フルサイズでも平坦化レンズはほぼ不要です。平坦化レンズは小口径(像面弯曲の強い短焦点)ほど良い物が必要になります。
たんなる平坦化レンズ(フラットナー)ならば、パワーのない(少ない)分厚いメニスク単レンズが収差に影響を与えないので良いです。タカハシさん等には別売のフラットナーがあり、ビクセンさんのAX103Sや昔のペンタックスさんのEDHFなどは最初からこの類のフラットナーが入っています。

黎明期のレデューサーは双眼鏡の対物レンズを使った「ナンチャッテ」がありました。対物レンズの焦点距離が長ければ充分実用になるので、まがい物と言うわけでもありませんが、平坦性が悪いものも散見されました。最近のレデューサーは本物が多いですが、あんまりしっかり設計されたレデューサーは、指定の望遠鏡以外に装着すると周辺像が悪くなることもあります。周辺像が悪くなる原因はコマ収差と思われることが多いようですが、屈折望遠鏡は非点収差のサジッタルとメリディオナルが重なって星像に尾が生えたり三角形になったりすることが多いです。

ナンチャッテ・レデューサーでよければ、双眼鏡の対物レンズやカメラ用のクローズアップレンズでも適当に代用は可能です。Rの強い面を望遠鏡の対物レンズに向けてください。光学設計をして平坦性や非点収差を確認すれば、かなり良いものを自作できます。
本気で設計するなら前群と後群に分けて間隔を広げます。そんなのを作ったら望遠鏡より高価だろう…と思ったら、あったのですね! BORGの EDレデューサーF4DG。今は生産中止ですが。

●最後に諸々を箇条書き
・ペッツバール望遠鏡が人気なので、さらに写真レンズ寄りに進化したエルノスタータイプなどの天体望遠鏡も当然のように登場してきました。ただし、とくに眼視性能はまだ様子見の段階と思います。高詳細になったデジカメに対応するシャープな星像を結ぶかどうかも注目ですね。

・アポクロマートでもFが暗い方が高性能なことは変わりません。口径が大きいほどFを暗くする必要があります。色収差以外に、焦点像が大きい(アイピースで強拡大しない)、光線の角度が小さい、組立て誤差などの影響が少ない等、Fが暗いと様々な面で有利で 「Fの暗さは七難隠す!」 。

・メーカーのインフォメイションに 「優れたレンズ設計が云々」 と記されていることがありますが、単純な2枚玉の場合は硝材を決めたらレンズ設計はたんなる幾何学計算なので答えは同じですから、味付け程度の違いしか出すことはできません。設計云々は宣伝文句ととらえるべきでしょう。

・デジカメ用の高性能ズームなどはすごい設計ですが、望遠鏡用対物レンズの設計はけっこう簡単です。2枚(3枚)玉の無限遠だけの設計ですからね。しかし、実際の生産現場と連携した精度の維持やテスト法、さらにコストを鑑みると多くのノウハウがあり、設計だけ優秀でも片手落ちです。

・アクロマートでも高性能品は良く見えると言う人がいますが、上記のように設計は同様なので粗悪品でなければアクロマートの性能は全部同じと考えてください。色収差については、いわゆるアポクロマートとは雲泥の差です。Fの明るいアクロマートはがっかりする見え味のことが多いです。

・アクロマートでも小口径で Fが暗ければ星像はずいぶんシャープに見えて、とくに二重星の観測は満足できます。しかし、月面や惑星はシャープに見えるからと倍率を上げると、強拡大された像が薄暗く見えて不愉快です。シャープさ以前に口径が大きいと像が明るくて見やすいです。

・アクロマートの紫色のg線の色収差は、はなはだしく後方にズレてピンボケで拡散して薄れるので、暗い天体を見る場合には気になりません(怪我の功名?)。昼間に遠くの樹の枝などを見ると青紫色がものすごく不愉快に感じます。星野写真を撮ると青い星が“巨大”に写ります。

・反射望遠鏡は入射した光の角度が倍になって反射しますが、屈折望遠鏡は入射した光は屈折率(BK7硝材なら1.51633)の分しか曲がらないので、研磨の精度は圧倒的に寛容です。なので屈折望遠鏡は 「匠の研磨した○○鏡」 と言われることはありません。そう言う人がいたら勘違いですね。

・クルマで望遠鏡を観測地まで運搬したら、レンズを外気温になじませるため、すぐに外に出しましょう。気温の違いでレンズが微妙に変形するだけでなく、フローライトやEDは温度で屈折率も変わる性質があります。レンズの離れた分離式やレンズ枚数の多い望遠鏡はとくに要注意です。

※いただいたコメントは消えてしまいました。覚えている範囲でまとめて書きたいと思います。

コメント

_ 星爺 ― 2015/09/05 15:57

ヘマをして、せっかくいただいたコメントを消していましいたので、思い出してお返事を書いてみます。

◆やまね様
ペッツバールの後群の2枚のレンズはレデューサーかというご質問については、4枚の総合的な設計なのでレデューサーではありません。
市販の汎用平坦化レンズについては、こういうものはナンチャッテでも充分なことがあるので汎用できる可能性は高いですが、レンズのRや撮像素子までの距離が大きく影響するので、市販の望遠鏡ごとの装着位置の一覧表があったら本物と思います。
カメラレンズ1本の中にFPL51と53の2種類が使われているのは、少しの違いの硝材と周辺のレンズの相性を高度なレベルで合せてあるためでしょう。
10年前までの「デジタル対応」というカメラレンズは、フィルム時代と何も変わっていないようなのもありましたが、最近のレンズは信じられないほどシャープですね。そのシャープさを一番わかっているのが天文ファンでしょう。

◆ムササビ様
暗い天体に合せた色補正の話題だったと思います。その場合はe線で色補正すれば良いですが、暗い天体は低倍率で見るものだし明るい日中の色補正である一般的なアクロマートレンズと大きな違いはないように思います。

◆はじめちゃん@望遠鏡工房 様
お問合せは、このブログで「検証事項」などの議論をされたいとのご趣旨だったと思います。下書きがあったので以下に掲げます。

はじめちゃん@望遠鏡工房 様 コメントをありがとうございました。

3色の波長はCF補正にgを加えたものと考えています。実際にそういう製品しか無いのと、メーカーの人に話しを聞くとそう考えている(らしい)という前提に立っています。

このブログは中学生向けなので、レンズ設計のプロの方や詳しい方には全然頓珍漢に見えると思います。「検証事項」などというむずかしいことは不向きと思います。
私はシュミットカメラは簡単なので何本も作りましたが、対物レンズは自分の設計で作ったことはたった一度しかありません。まったく門外漢です。まぁ、元編集者の生態として古書や海外の書籍も含めて、日本で一番本を読んでいなくては…の努力目標は今でも持っていて、レンズ製作の現場の実態などはよく知っていますけどね。なので、はじめちゃん@望遠鏡工房さんのお話にはついて行けないと思いますし、ブログの読者も同様と思います。

このブログだけでなく、雑誌を作っている時も内容は中学生向け、吉田正太郎先生と書籍を作っている時も数学が得意な中学生向け、と考えていました。『光学機器大全』という書籍は難しすぎると言われましたが、大正デモクラシーの文化を受けた技術の高い人達は、昭和初期にもっとむずかしい理工学書を出版していたし、この本のたたき台にしたのは山田幸五郎先生の『光学機械器具』(1940年、誠文堂新光社刊)です。とっくの昔に枯れた技術や解説を中学生向けにアレンジしただけで、当然ながら難しい内容は全部省いた入門書です。
ただ、そういう書籍などを読んで大人になった天文ファンが「自分の方が詳しいぜ!」と議論をふっかけてくることがあるのには困惑しました(笑)。勘違いされちゃっているんですね。
※はじめちゃん@望遠鏡工房さんのことではないですよ。天文ジジイ達のことです。

ストールレシオやMTFなんていう“らしい”言葉が理解もされずに一人歩きします。ちゃんと理解していれば収差図を見ればほとんど暗算ができることなんですけどね。
反射鏡の「λ/○」という言葉が一人歩きして、しまいにはλ/200なんて公称のが登場して、それを買ってしまう“光学系に詳しい人”が大勢いたとか…。まぁ、そういう部分が趣味として可愛らしいところでもあるのですが、繰り返しますが「検証事項」などというのは、このブログはもちろん天文趣味の世界に持ち出しても理解はされないと思いますよ。

ご承知のように、光学設計は定義や理論云々を超越して、高等数学も超越して、コンピュータのロボット計算みたいになり、たんなるオペレーティングで専門技術になっています。なので昔は悪いレンズの代名詞だったサードパーティーのカメラレンズも最近はカメラメーカーを凌駕するほどの性能になったのです。おそらくカメラメーカーさんも近い将来にはレンズ設計は専門の会社に依頼するようになるでしょう。それほど光学設計は趣味や個人研究から逸脱した世界になっています。もちろん天体望遠鏡は単純なので趣味的な世界ですが。

顕微鏡と望遠鏡はよく似ていますが、顕微鏡は使用者の大半は仕事(プロ)なのにくらべて、天体望遠鏡は趣味の道具です。良く言えば高級な模型で悪く言えば玩具です。玩具のわりにはよくぞここまで素晴らしい望遠鏡になったと褒めてあげるべきだと思います。

端的な例では、星野写真の撮影はドイツ式赤道儀にカメラを乗っけて手動(または自動)ガイドせよ、と書籍には書かれていますが、これはプロの天体写真家が“小中学生向け”に書いた初歩の解説書です。夏休みの宿題のやり方みたいなものですね。現代の中学生なら「著者の先生はこんな方法で天体写真を撮っているはずはない」と一発で見抜きますが、昔の若人は純情で先生も同じだと信じちゃったんですね。それを真に受けてパクった書籍までぞろぞろ出版されました。そういう書籍を読んだ人がオヤジになってウンチクを垂れる(それなりの努力は認めたいですが)わけですから、これにも困惑してしまいます。
このブログでは一人歩きしている変な情報を少しずつ直していけたら良いなと思います。

_ はじめちゃん@望遠鏡工房 ― 2015/09/06 09:47

拝啓、
はじめちゃん@望遠鏡工房です。


コメントをありがとうございます。

● アポクロマートという用語、というタイトルにつき1点、
質問させて頂きます。(中学生の方、難解で申し訳ありません)


アポクロマートの定義は、3色・色消し、とされていますが、
そもそも3色とは、どう定義されるのか? というのが先の
質問でした。カメラメーカー・望遠鏡メーカー等の回答では、
C線・d線・g線、とするのが主流でした。
(参考) ビクセン、特許情報
http://astamuse.com/ja/published/JP/No/2014203057

ただ、「色消し」という物理現象を、定量的に規定した方は
少ないので、その定量数値等を、お尋ねしたいと思います。

宜しくお願いします。敬具。




(参考) 
タカハシ、FC-100DL 発売のご案内 etc
http://www.takahashijapan.com/ct-news/news_150904_fc-100dl.html
http://www002.upp.so-net.ne.jp/bob-k/hosi1.4x4b.htm

タカハシは、新製品につき、435~656nm のストレートレシオ
(標準比視感度・11線?)で評価していますが、約 90%
前後を、定量判定基準にするのが適正と思われます。

_ 星爺 ― 2015/09/06 17:28

はじめちゃん@望遠鏡工房 様 コメントをありがとうございます。

>カメラメーカー・望遠鏡メーカー等の回答では、
>C線・d線・g線、とするのが主流でした。
◆メーカーさんがどこまで正式な返答をしたかは存じませんが、d線は通常は焦点位置の基準とするだけで補正色にはしないので、C/Fとgの間違いではないかと思います。

これは肉眼用の色消しの話で、ご承知のように「写真色消し」というのもあります。自動設計のソフトをお持ちでしたらC線とg線で走らせてみれば、青紫ニジミのない写真色消しができると思います。しかし、これはレギューラー乾板用の青しか感じないモノクロ乳材用の設計ですから、肉眼よりも広範囲に色収差を補正しなくてはならないカラー写真用のレンズという意味ではありません。

◆光学設計や特許については私は全く素人です。編集の一環として少し勉強したにすぎません。くだらない特許を二度出願した経験しかありません。一度めは40年近く前で小遣いがなかったので出願のみ。二度目は2007年でこれは取得してから100万円で売って一杯呑むことができました(笑)。特許庁の資料を検索すると出てくると思います。
長男夫婦が特許の仕事をしているので実情にはそこそこ詳しいつもりです。

ビクセンさんはお子様用の機材も作っているので誤解されがちですが、ものすごく技術の高い会社で特許にも熟達しているものと思います。
レンズ設計はやり尽くされてるので、単純な構成では特許になる部分はほとんどありませんが「望遠鏡」の括りをつければ通ることがあるので、そういうつもりの特許申請と思います。
ただ、本当に熟達していると、範囲をうまく定めてうまい表現にして、他社に特許を避けたつもりの製品を作らせて、あとから訴訟にして利益を得るのが大手のやり方です。その方が手間がかからないですからね(笑)。そういう可能性も高いのではないでしょうか? なので特許の資料でご研究をなさっても徒労になる場合もあります。

◆タカハシさんも非常に技術が高いです。初心者がデータを見る場合、スポットダイヤグラムだとわかりやすいので最近は流行っています。ストレールレシオも専門的な感じでかっこいいので流行っているみたいですが、こういうのは「広報宣伝の資料」ですから、良さそうに見えるデータにしているにすぎないことは、タカハシさんも百も承知でしょう。と言っても決して大げさでなく嘘もないところが同社の誠実なところです。
(標準比視感度・11線?)とうのも、もっと増やせばかっこいいとなれば増やすのではないでしょうか?
ストレールレシオは目安の数値です。定義するようなものではないと思います。

_ HUQ ― 2015/09/07 12:49

こちらでははじめまして。(笑)
HUQです。

星爺さんのコメントを大雑把に、ホントに大雑把に要約すると、

「良く見える、良く写る望遠鏡(あるいはカメラレンズ)」(どういう特性が『良い』のかはあえて定義しない)というものを測る絶対的にな基準なり表現なりは、文献を調べてみた限りでは見当たらなかった。」

ということでしょうか。

メーカーが公表する図表や数値、論文に記載されている内容等、いずれも「その光学系をある目的に対して使用した場合の性能」の「一部」を表したものでしかなく、「この数値が他より圧倒的に優れているからこの製品がNo.1」と言えるものではない、ということ理解しました。

目的が何か、その目的のためにはどんな数値を重視すべきかは、開発者と買い手の両方が理解していて初めてハッピーになれるものであるけれど、大部分のユーザーにそこまでの知識を求めることは事実上不可能なので、世の中で流行っている数値を公表する、あるいはそういった数値に特化して設計する、という流れがあるのだと思います。

その結果、その数値に関していえば No.1 であるけれど、だからといって星を見る・撮る上でのあらゆる使い方で No.1 になるとは限らない。

そういう意味で、「数値で表現されるものが、自分の目的にとって重要かどうかは、自分が求めるものをハッキリさせた上で文献を調べないと判らない」と仰っているのかな、と思いました。

_ はじめちゃん@望遠鏡工房 ― 2015/09/07 20:02

星爺 様 へ


> d線は通常は焦点位置の基準とするだけで補正色にはしないので、
> C/Fとgの間違いではないかと思います。


C線・d線・g線、が主流です。3色基準。
上記に添付した、ビクセンVSD-100系 の、特許情報もそうです。
ペンタックス、ニコン、etc メーカー の、特許情報も同様です。

この件は、以下のストレール・レシオの方が遥かに重要なので、
詳細な説明は省略します。(アポクロマート、定量的定義の項)




> ストレールレシオも専門的な感じでかっこいいので流行っている
> みたいですが、こういうのは「広報宣伝の資料」ですから・・


この件は、詳細に説明致します。

ストレール・レシオ(ストレール比)は、流行ではなく、1980年代
には既に、望遠鏡・望遠レンズ等の設計における重要な基準でした。

例えば、ツアイスAPQ・蛍石アポクロマート望遠鏡の検査基準として、
3色のストレール比、95%以上という数値を公開していました。
http://www2.odn.ne.jp/~ccr61210/www2.odn.ne.jp/image90.gif

タカハシも、広告宣伝資料として、2006年春には採用していました。
既に10年弱です。ツアイスは30年以上の歳月。




極めて重要な事項ですので、二度説明します。

望遠鏡・望遠レンズの性能、特に軸線上(中心像)のシャープネスを、
定量かつ相対的に記述する際、ストレール・レシオは、極めて重要です。
アポクロマートの定量的定義を論じる際にも、この数値が判定基準です。

中心像のシャープネスが満たされれば、周辺像は適正なフラットナー
を挿入することで、コマ・非点・湾曲・軸外色収差等が補正されます。
(2~3枚玉)

アポクロマートの定量的定義  
≒ 435~656nm のストレールレシオ、約 90%(標準、11線程度)

を、定量評価基準にするのが適正と思われます。


・・ご意見を、宜しくお願いします。




HUQ 様へ


> 目的が何か、その目的のためにはどんな数値を重視すべきかは、
> 開発者と買い手の両方が理解していて初めてハッピーになれるもの


工業製品は、購入価格相当の「顧客満足度」を得る必要性があります。
アポクロマート鏡筒を呼ばれるモノを購入する顧客は、大部分の方が、
購入価格相当のシャープネスを求めます。

しかし、過去の3枚玉アポクロマート等は、そうではありませんでした。

タカハシ・FCT、スポットダイヤグラム
http://www.cloudynights.com/uploads/gallery/album_4807/gallery_210261_4807_46354.jpg
下の2枚玉の、2~3倍の星像肥大(ピンボケ)が発生していました。


(参考)タカハシ FC-100 DL 、改良版シミュレーション。
http://www002.upp.so-net.ne.jp/bob-k/hosi1.4x4b.htm
ストレールレシオ(標準比視感度)約 98%

現代の望遠鏡・望遠レンズメーカーは、定量的数値、精度保証、
+適正な名称、を表示する必要があると考えますが、如何でしょう?

_ はじめちゃん@望遠鏡工房 ― 2015/09/07 20:58

>(標準比視感度・11線?)とうのも、もっと増やせば
> かっこいいとなれば増やすのではないでしょうか?
> ストレールレシオは目安の数値です。定義するようなものでは
> ないと思います。


タカハシの基準は、恐らく明所比視感度のみの評価と推測されます。

しかし、暗い天体を観測する場合は、比視感度が500nm、程度短い
暗所比視感度になり、かなり違った分布となります。
(参考) http://www.sci.toho-u.ac.jp/bio/column/080602.html

肉眼観測だけではなく、デジタルカメラでの使用頻度を考慮すれば、
暗所・明所、双方の比視感度の平均評価が、適正と思われます。


また、肉眼の比視感度は、435~656nm(g~C 線)の外側にもあり
出来れば、380nm~720nm、20線が理想です。


かっこいい悪いの次元ではなく、科学的な定量評価です。

_ 星爺 ― 2015/09/08 05:24

HUQ様 コメントをありがとうございました。

「胎内星まつり」ではSB工房のブースに来てくださって、ありがとうございました。
さすがに京大工学部のご出身だけあって、モノ作りの哲学に破天荒(本来の意味です=今まで誰もしなかったような事をすること)な才能を感じました。
コメントいただいた内容もそのとおりだと思います。

試供品のJILVA-170をお預けして厳しいご意見をいただいたので、製品に反映したしますね。Pモーションのテストもしていただいて、±3.5″ということでひと安心しました。
そのうち購入してくださいね(笑)

「星爺から若人」へは中学生向けに情報を発信して参りますが、大人の人も読んでくださっていることは認識しています。
「オレの方が詳しいぜ!」というマニアが質問と称していろいろ言って来る(吉田正太郎先生の著書に対してもそうだったくらいですから--笑)かもしれないのが面倒くさいから「中学生が対象」としていることもありますが、ネット時代になって「まことしやかな」変なウワサ話が蔓延するようになったので、そういうのを初心者向けにわかりやすく解くことを目的としています。
まぁ、私の実力では頑張っても中学生しか相手にできないということはありますけどね。

過去の変なウワサの一例をご紹介しますね。
フローライトの望遠鏡が登場したころ、タカハシさんは口径50mm、65mmなどでしたがビクセンさんは少し大きな55mm、70mmなどでした。すると、ある光学系に詳しいベテラン(もちろん自称)の人が、
----------------------------------------------------------------------
・フローライトは結晶で育てて大きくして作るので(注:ここまでは正しい)
・ビクセンは外側の結晶の変な部分まで使うので口径がやや大きいのだ。
----------------------------------------------------------------------
と言い出して、そのウワサがかなり広まったことがあるのです。

ユーザーの知識レベルが向上した現在では信じられないギャグみたいな話ですが、現在でも同様なまことしやかなウワサはずいぶんあります。むしろネットでひどくなりましたね。
天体写真なら結果が明確なので変なウワサもすぐに収まりますが、眼視とか屁理屈は長く蔓延することが多いです。

仕事柄、写真雑誌にも知り合いが多かったですが、一般写真は写り具合があまり明確でないので何倍も変なウワサが多かったようです。「オレは写真を一目見ればレンズの銘柄がわかる!」なんてベテラン(?)もいたようですよ(笑)
オーディオ雑誌も管理していたことがありますが、こちらは音を聞く感性の話になるので、もっと変なウワサが多かったです。

_ はじめちゃん@望遠鏡工房 ― 2015/09/08 20:40

HUQ 様


> 目的が何か、その目的のためにはどんな数値を重視すべきかは、
> 開発者と買い手の両方が理解していて初めてハッピーになれるもの


アポクロマート鏡筒を購入する顧客は、大部分の方が、
価格相当のシャープネスを求めます。

しかし、過去の3枚玉アポクロマート等は、そうではありませんでした。

(参考1)タカハシ・FCT、スポットダイヤグラム
http://www.cloudynights.com/uploads/gallery/album_4807/gallery_210261_4807_46354.jpg
2枚玉比、2~3倍の星像肥大(ピンボケ)が発生。


(参考2)タカハシ FC-100 DL 、改良版シミュレーション。
http://www002.upp.so-net.ne.jp/bob-k/hosi1.4x4b.htm
ストレール・レシオ(標準比視感度)約 98%


現代の望遠鏡・望遠レンズメーカーは、顧客がシャープなレンズを
選択出来るよう、性能の数値、名称(アポ・セミアポの区分)等を、
明瞭に表示する必要があると考えますが、如何でしょう?




(備考) ストレール・レシオ、について


ストレール・レシオ(ストレール比)は、流行ではなく、1980年
代には既に、望遠鏡・望遠レンズ等の設計における重要な基準でした。

(参考3)ツアイス・蛍石アポクロマート望遠鏡、検査基準。
http://www2.odn.ne.jp/~ccr61210/www2.odn.ne.jp/image90.gif
3色ストレール比、95%以上の数値を公開。

タカハシも、広告宣伝資料として、2006年春に採用しました。(TSA-102)
既に10年弱、ツアイスは30年以上の歳月。


望遠鏡・望遠レンズの性能、特に軸線上(中心像)のシャープネスを、
定量かつ相対的に評価する際、ストレール・レシオは、極めて重要です。
アポクロマートの定量的定義を論じる際にも、この数値が評価基準です。

中心像のシャープネスが満たされれば、周辺像は適正なフラットナー等
を挿入することで、コマ・非点・湾曲・軸外色収差等が補正されます。
肉眼・写真、双方で性能を発輝します。(フォト・ビジュアル鏡)


アポクロマート、定量的定義 ★
≒ 435~656nm のストレールレシオ、約 95%(標準、11線程度)


・・を、定量評価基準にするのが、適正と思われます。

_ 星爺 ― 2015/09/10 10:59



はじめちゃん@望遠鏡工房様 何度もコメントを頂きありがとうございました。

貴殿が趣味の光学設計者なのかプロやメーカーの方かは存じませんが、このブログは議論の場ではないし対象は中学生なので、ご高説はメーカーにお話いただくのが有効と思います。このブログにはハイレベル過ぎてご期待に沿うコメントはできません。
学会などで発表されるのも良いと思います。暗所視についてはちょうど来週に下記の学会で講演があります。貴殿が満足できるレベルかどうかは知りませんが。

http://spstj.org/event/nissya_e_syosai_129.html

吉田正太郎先生の著書にも、暗所視の感度を入れようということになって、C/F色消しよりもC/e線の色消しのほうが良いと、3~4行ですが入れることにしました。
暗所視については、30年ほど前に雑誌に小さなコラムを書きました。確かタイトルは「柳の枝が幽霊に見える理由」でした。夜は青緑系の暗所視感度が高い他に動体感度が高く、星を見て経験するように眼の視界周辺が暗所視感度が高いことを、夜中に歩いていると道端で揺れる柳の枝が幽霊に見える、と初心者向けに解説しました。「e線や柳の葉っぱの色は暗所視感度から少しずれている」なぁんて言い出す人もいるかもしれませんけどね(笑)
一連の雑誌や書籍はあくまでも中学生向きなのですが、それを読んだマニアの人が理工学書も読んで、業界人から得た情報(たいていガセ)から「オレのほうが知ってるぜ」「吉田先生も大したことはない」。誤字や省略した部分などがあると、さっそく「吉田先生でも間違っている」などと言って来ることがあるのには困惑し(呆れ)ましたよ。
そこそこ勉強していないと自分の立ち位置がわからなくて、書籍を出版した著者も編集者も書籍と同じレベルの自分と同類項と思ってしまうのでしょうかね?

ただ、そういう実際は中学生レベルの知識の「自称 望遠鏡ハカセ」のオジサンを嫌いではないです。大事な読者だったわけだし、優秀な人は当然いろいろなことを教えてくれますが、優秀でない人や変な人も同じくらいいろいろなことを教えてくれると思っています。
※以上は貴殿のことではありません。一部の天文マニアのことです。

物事の説明は内容を省いて簡素にすべきと思うのですが、たとえば「2枚玉でも3色色消しにできる可能性がある」とか「異常分散は間違いで低分散が正しい」とか「ペッツバールはバカ玉なんだよ」とか言い出す“オレのほうが知ってるぜオジサン”がいるかも知れず、そんな話を若人が又聞きして誤った知識を持ってはまずいと思います。それで文章が無駄に長くなるなぁと思いつつもダラダラしてしまいます。さすがにセミアポクロマートのことは省略しましたけどね。

色消しの色の基準については、設計者の流儀で何だって良いわけですが、3色以上になれば当然d線は意識する必要はあるでしょうね。
ストレールレシオは望遠鏡の採点みたいで便利ですが、こういうのが一人歩きをするのは警戒する必要があるでしょう。昔のλ/○みたいなことになると思います。
それと、3枚玉12.5cmでF5.6と明るい写真用に偏重させた昔のアポクロマートを論っても意味は無いと思います。おっしゃるようなことを知らないで作ったわけではないでしょうしね。この望遠鏡は30年前に仲間と作った観測所で使っていますが、とても便利なフォトビジュアル系と思います。

レンズは研磨や組立精度のほうがよほど重要なので、誤差に鈍感とか誤差を修正しやすい設計にすることが肝心です。もっと言及すれば、「安い硝材が大量にあったので、うまく設計して利用した」などということも現実にはあります。
数値の追い込みは誰でもできます。肝心なのは目的に合った良く見える(写る)快適な望遠鏡になるかどうかです。Fが暗い方がシャープに見えるからといっても、使うのが億劫なほど長大な望遠鏡になっても困ります。

誤差の表現法に干渉計のデータがありますが、参照面の小さな干渉計の誤差の大きいデータでは「かっこういいから宣伝材料になる」的な意味しかないと思います。日本のメーカーさんは誠実なのでデータを出さないのでしょう。ビクセンさんは日本では珍しい超大型の干渉計を導入したようですから期待できます(データを出すかどうかはわかりませんが)。

ツアイスについてはとても優秀なメーカーと思います。「作れるものなら作ってみろ」という感じで設計データや検査法を公開するのは大した自信だと思います。が、吉田先生によると、多くの人が安易に参考にするので発展性がなくなる弊害もある、との由でした。日本の優秀なカメラレンズの設計現場では、すでに参考にしていないようです。

貴殿に於かれましては高性能な天体望遠鏡のご研究の成果が出ることを祈念しています。

_ 小鉄 ― 2015/09/10 12:04

”ツァイスの広告の挑戦的な意味合い、望遠鏡はプロ相手の顕微鏡とくらべれば玩具、光学設計はコンピュータのロボット計算、望遠鏡は構成枚数が少ないので単純、レンズは研磨や組立精度のほうがよほど重要”

など、業界の実際の現場のお話は目から鱗でした。マニア達は都市伝説の信者が多いので、これからもまことしやかな通説を痛切に批判、正しい方向へ啓蒙してください。ブログの更新を楽しみにしております。

_ (未記入) ― 2015/09/10 23:52

パソコンの性能が向上して、それこそ誰でもが複雑な天体の軌道計算やレンズ設計のシミュレーションができるようになった今、望遠鏡メーカはどういった領域に開発の力を注いでいるのでしょうか?カメラレンズなら近距離から無限遠までクリアーなフォーカスを結び、アウトフォーカスのボケ味まで問われるのでそれなりにノウハウが必要かもしれませんが、無限遠の点光源をいかに小さな点に収束させるかといった厳しいながらも単純(に見えるだけ?)な条件であれば、どこのメーカーも同じような解を導き出すように思うので、もっと他の点で他メーカーとの差をつけなくてはいけないように思うのですが・・・それともやはりレンズ設計というものは一筋縄ではいかないものなのでしょうか?
ちなみに以前3枚玉セミ・アポクロマートレンズ望遠鏡を所有していた者としては、セミアポについても説いてほしいです。

_ 星爺 ― 2015/09/12 01:33

小鉄様、未記入様 コメントをありがとうございました。

お褒めいただいて恐縮です。でも、そんなに大上段に構えているつもりはないんですよ。当然の知識としてのアポクロマートの定義なのですが、「高性能…」の修飾語の代わりになっているので裏話も含めて経緯をご紹介しました。蛇の道はヘビで本当のアポクロマートは業界人なら知ってると思います。
アイピースのことなど話題はたくさんありますが、あまりにも身も蓋もない実情をご紹介すると、がっかりしてしまう人も多いと思うので自重します(笑)
趣味の世界ですから、都市伝説とか秘密の裏情報とか、そういうのがホントだとかウソだとか、他人の望遠鏡の「明るい悪口」を言い合うとか、ワイワイガヤガヤ…そういうのが楽しいですよね。

業界の裏話といえば私は運が良くて(最近はネットで名前が特定されるようなのでざっと書くと)小中学校の同級生が東大を出てカメラメーカーのレンズ設計の責任者だったとか、大学の同級生がカメラメーカーの特許の部門長だったとか、親戚の叔父さんが国際的な硝材メーカーの工場長だったとか、情報には事欠かなかったことはあります。
でも、本当の裏話は墓まで持ってゆくので公開はしません。

昔はアマチュアの天文研究家(自称)に話を聞くと、研究の内容というのは新聞などの切り抜きを集めてスクラップすることだったりしました(笑) 。最近はネットの情報を集めて研究する人がいますが、新聞の切り抜きとあんまり変わらないと思いますよ。
ある程度クローズドなネットの掲示板などでは有効な熱い議論がなされる場合もあるようですが、オープンだと「オレのほうが知ってるぜ!」と発言する他人の話を聞かない人が多くなって、議論から何かが生まれる可能性は少ないように思います。なので、このブログでは議論はしないつもりです。

光学設計ソフト(自動設計でない場合は“光学検証ソフト”とも言います)はフリーのもあるので、趣味としては小中学生でも楽しめる分野になりました。単純な対物レンズは誰が設計してもほとんど同じ結果になりますが、実際にその設計をモノにするには多くのノウハウがあります。肝心なのは数字の追求でなくテストや修正法などの生産性を鑑みた設計になりますかね。
天体の軌道計算もノウハウの塊です。在野でも大学の研究者より優れた中野主一先生は、数多く集まる観測データを「この観測所は等級を暗く見積もる傾向がある」「この人の観測は精度が低いので他のデータが増えたら割愛しよう」とか、観測者の性格まで鑑みて見事な予報をします。計算すれば予報ができるわけでもないんですね。

セミアポクロマートは存在価値が無くなったと思います。異常分散硝材の2枚玉で一足飛びにいわゆるアポクロマートになるのですからね。双眼鏡は低倍率なのでセミアポでも充分なのですが、手軽に作れる異常分散硝材のアポクロマートがずいぶん多くなってきました。
アクロマートレンズはユーザーがびっくりするほど原価が安いので当分は入門用として存続すると思いますが、双眼鏡がそうであるように案外早いうちに「天体望遠鏡は普及品でも2枚玉アポクロマート」になるのではないでしょうか? そのトレンドはおそらく中国からやってくるでしょう。

_ はじめちゃん@望遠鏡工房 ― 2015/09/12 15:29


>> 中高校生、及びレンズ愛好者様へ。


現在の光学業界(カメラレンズ、望遠鏡レンズ etc)の問題点は、
ユーザーの立場になって、適正な情報を提供する人、サイト等が
極めて少ないことだと思います。

勿論、ユーザーの立場になる意思があるにも関わらず、経験等が
少ない、あるいはスポンサー(広告主)の圧力に負けて、メーカー
の言いなりになる人が多いことは百も承知ですが、出来るだけ
一ユーザーとして、重要な情報を提供したいと思います。




まず基本ですが、レンズ光学に興味を持った方は、設計ソフトを
自分で書いて、自分で研磨して、自分のレンズ(カメラ・望遠鏡
etc )を所有してください。ここからが本当のスタートです。

自作レンズ研磨は、本当に多くの生きた知識を得ることが出来ます。
ちなみに、レンズ研磨に特別な機械 ※1 は、基本必要ありません。
マイクロメーターのみ用意出来れば、後は時間との格闘です。

(参考)アクロマート 対物レンズ研磨
http://www002.upp.so-net.ne.jp/bob-k/hosi1.4h.htm

実際に研磨・運用すれば、たかが2枚玉レンズでも、その設計の
バリエーションは、無数にあることが理解出来るでしょう。




ユーザーの立場に立った、業界の話を、少々しておきますと・・

基本、光学メーカーは、一般人に貴重な情報も、優良レンズも与え
てはくれません。多くは、特定の人のみの「御紹介」となります。

カメラメーカー業界は、特に酷いと言えるかもしれません。
カメラレンズのマニアは、望遠鏡メーカーですら公開している
スポット図 etc ※2 を、なぜカメラ業界が、談合して公開し
ないかを、知っているでしょうか?

とりあえず、問題提起しておきました。




※1 残念ながら、レンズの研究家、設計家、評論家、専門家 etc
と呼ばれる方で、自分の手で研磨したレンズを実際に使用している
方に会ったのは、自分を除けば、僅か1名のみです。

上記の、吉田正太郎氏においても、光学入門書等、多くの功績が
ありました。が、屈折天体望遠鏡光学入門(誠文堂新光社)等に
おいても、大きな誤謬がありました。

249p、「対物レンズの各面の曲率は、反射望遠鏡の主鏡より
ずっと深いので、共摺法では磨けません」と、机上の空論を述べ
られて居られますが、大きな誤りです。


※2 レンズ購入の際、その判断基準になるのは、その重要度から
スポット図、球面収差図、(周辺)光量図、MTF図、etc となります。

勿論、画像処理前の作例写真も良好です。


(参考)望遠鏡・掲示板 ☆★
http://cz-telesco.bbs.coocan.jp/

_ 星爺 ― 2015/09/14 07:49

はじめちゃん@望遠鏡工房様 またまたコメントを頂きました。

貴殿がアマチュアであろうことは、紹介される収差図にOSCが無かったりお考えが偏重しているので分かりました。そういう論調でメーカーに問合せなどをしても、なかなか相手にはしてもらえないことと思います。
しかしながら、在野の研究者は応援したいと思います。中野主一先生や さかなクン(実態は知りませんが)のように在野にも天才が現れることがあるからです。

「ネットのヨタ話を見ると企画がブレるので見るな!」と弊社のネット担当から言われていますが、貴殿のHNやアポクロマートでgoogle検索してみました。
貴殿はホームページも持っておらるようなので、「適正な情報を提供する人、サイト等が極めて少ない」と思われるなら、ご高説はそこで展開されるのが良いと思います。貴殿の書き込みが他のサイトで疎ましがられている様子も拝見しましたので。
検索で引っかかった掲示板では、「星爺から若人へ」を見たという、ペッツバールのことを全く知らない人の書き込みや、誤字を見つけて「オレのほうが知ってるぜ!」という例の輩がいたのには大笑いしました。こういう変人は昔からいますがネットの中で強い生命力で生き残っているようですね(笑)

レンズの材料はレンズ型に整形されて供給されますが、貴殿のように丸板からマイクロメータのみで作るのは、たとえば「金槌と鋸だけで家を建る」のと同じで、時間と格闘すれば可能で面白い趣味ですし、得られる知識が役に立つことも多々あると思います。が、そういう手法が建築学や優良な家を作る技術を生むことにはならないと思います。

家と違って光学系は、完成後の能率的なテスとそれに応じた能率的な修正が重要です。望遠鏡のレンズは通常はカメラレンズの3~4倍の精度が必要なので、設計よりも研磨よりも「完成した後のテストと修正」がキモですから、貴殿のご研究には、ぜひフェゾー型干渉計やオートコリメーションのテスト機材を加えてください。
台湾製や中国製の望遠鏡を自前の装置で大量にテストしたことがあります。良い物もあれば粗悪品も混じっていました。粗悪品でもほとんどがちょっと修正すれば直ると思われました。実際に直すのかそのまま安売りするのかはわかりませんが、せっかく良いレンズを作ってもテストをしなかったり修正をしないと「仏作って魂入れず」ですね。

スポット図やMTFやストレールレシオは設計時の有効な判断材料です。しかし、ユーザーがそんなことにかまけて完成品を検証する眼を養ったりテスト法を知ることがないと、ずっと以前に反射鏡がλ/○云々にかまけておかしな事態になったことの二の舞いです。反射鏡は簡単にフーコーテストができますが、それをやらない(できない)のが残念ながらユーザーの実態なのだとは思いますけれど。
そんなことをしているうちに、他国の反射鏡メーカーの多くが自動研磨で正確な放物面鏡を生産できるようになり、今や入門者向けの反射鏡でもすごい精度です。
前回のコメントに書いたように、異常分散硝材のアポクロマートも、値崩れを嫌ってすぐにはやらないでしょうが、早い時期に入門者向けにも投入されることでしょう。

_ 小鉄 ― 2015/09/14 19:41

球面収差図の見方を教えてください。

はじめちゃん@望遠鏡工房 さんのFC100DLの球面収差曲線とスポット図の関係ですが、

http://www002.upp.so-net.ne.jp/bob-k/hosi1.4x4b.htm

g線は入射高の違いで焦点に横軸2目盛り=0.4mmの幅があります。他の線も0.4mm以内の幅があります。ということは、線の強度分布による拡がりを仮に無視しても、スポット像の直径は0.4mmになるはずですが、計算されたスポットの直径は5-12μmです。

一桁も大きさが違うのはなぜでしょうか?入射高が小さい方が大きい所よりも寄与度が大きいのでしょうか?それとも球面収差図の読み取り方を間違えているのでしょうか?

ブログ主様でも、はじめちゃん@望遠鏡工房様でもお教え頂ければ幸いです。

_ ナマステ ― 2015/09/15 01:25

こんばんは。星爺さんとは昨年山梨のとあるペンションでご一緒させていただいたものです。あの時は良い三脚を見せていただきありがとうございました。

やり取り読ませていただいています。
おそらく、はじめちゃんさんは、「色消し」(複数波長の焦点距離一致)と色収差「補正」(許容範囲内に収めること)をごちゃ混ぜにしているのでは、と思います。

以下は私の理解です。もし間違っていたらご指摘ください。
あるガラスによる、波長に対する屈折率の違いは直線的なので、単レンズでは、ある焦点距離値との交点は1点。

(屈折率と曲率の異なる)レンズ2枚の組合せでは、波長対焦点距離の曲線は2次関数的になるので、ある焦点距離値との交点(一致する点)は2点になる。それが、2波長「色消し」、つまりアクロマートと呼ぶ。

レンズ2枚(2次関数)ではどうやっても交点を3点にはできないので、3波長「色消し」(アポクロマート)ではない。

(互いに違う)レンズ3枚では、その曲線は3次関数的にできるので、その交点は3点になり、3波長「色消し」となる。この場合のみ正しくはアポクロマートと呼ぶ。

レンズ4枚ではその曲線は4次関数的にできるのでその交点は4点になり、4波長「色消し」となる。この場合はスーパーアクロマートと呼ぶ。

一方、メーカーのチラシを真に受けてしまったはじめちゃんさんは、2次曲線でも係数が浅くて可視光の範囲内で交点からの差分があまり遠くなく許容範囲に収まっている「補正」を持って、アポクロマートと呼んでいる(そしてそれが高級品の証しの名誉ある称号と信じている)と思います。

でも正しくは3次関数による「3波長焦点距離一致」でないならアポクロマートではないですね。
それは商品の高い安いや満足するしないとは関係ない学術上の話ですよね。

タカハシのチラシにはとうとうスーパーアポクロマートと言う言葉が登場していますがなんなんでしょう?(^^; とても高級の色補正レンズという程度の意味に捉えていますが。

_ はじめちゃん@望遠鏡工房 ― 2015/09/15 19:03

>> 中高校生、星爺様、及びレンズ愛好者様へ。


>紹介される収差図にOSC が無かったり


OSC ≒ SIN条件(正弦条件)※

正確には、Offence against the Sine Condition
正弦条件不満足量

タカハシ FC-100 DL 、改良版シミュレーション。
http://www002.upp.so-net.ne.jp/bob-k/hosi1.4x4b.htm
の球面収差図は、コマ収差図も兼ねています。

― ― SIN条件、と明記していますが、何か問題でも?

上記図では、像高、0.7~1.0 に、僅かな破線が見えます。
※ OSCは、単波長(d 線)表示。


以上、御説明を、宜しくお願いします。Ta 様?




※ 望遠鏡のシャープネス(中心像)≒ ストレートレシオ
を論じる際、コマ収差は直接関係ありません。
問題ないレベルに補正するのが、原則です。
上記図でも、問題ないレベルです。

自作レンズは、いろいろと関係しますが、
その話は、別の機会に・・

_ (未記入) ― 2015/09/15 22:09

このブログがIE10をサポートしていないためか名前が(未記入)となってしまうようですが、「とっぱー」です。
ブログの管理者である星爺様が「ここは議論の場でjはない」とおっしゃっているのですが、少しだけ書かせていただけますか?
アポクロマートの定義について、私もいろいろなサイトを参照してみましたが、Wikipediaをはしめ、多くのサイトで「3つ(又はそれ以上)の波長での色消しと2つ(又はそれ以上)の波長での球面収差が補正されたもの」と定義されています。はじめちゃん@望遠鏡工房様はメーカーが高ストレール比のレンズをもってアポクロマートと称している事実からストレール比でアポクロマートが定義できるとおっしゃているように思いますが、それはアポクロマートの定義を満足した上で高ストレール比を謳っている、すなわち「ストレール比が95%なのでアポクロマートレンズです」と言っているのではなく「ストレール比が95%あるアポクロマートレンズです」と言っているのではありませんか?ストレール比はレンズ性能を測る基準の一つであってアポクロマートの定義とは無関係でしょう。
又、はじめちゃん@望遠鏡工房様はレンズメーカーがストレール比やスポットダイヤグラムを公表していないことを嘆いていらっしゃいますが、理想的点光源の描写が気になるユーザはほんの一握りの天文ファンくらいで、多くのレンズユーザは夕暮れ時の街並みの自然さやバックのボケ味の方が興味があるので、カタログなどの少ないスペースにはスポットダイヤグラムよりも美しいポートレートの写真を記載するのは当然のことと思います。「アストロニッコール」とか言って天文ファン用にレンズを発売するときはストレール比からスポットダイヤグラムまで、点光源評価のオンパレードでしょうね。

_ n2068dd ― 2015/09/17 04:14

 はじめまして。なんだか私の投稿したクラウディナイトのコピー写真が引用され、しかも意図しない使われた方をされたので、ちょっと気になったのでコメントしたいと思います。

1. タカハシでは、FCTの設計に際しては3色だけの色収差やアプラナート性能の計算をしている訳ではなく、もっと多くの色域について検討してFCTを開発したと聞きました。図はd,c,F,g線のスポットだけですが、設計では可視光も含めた全波長域の合成のストレール比を0.89以上となるようにしていたそうです。

2. 昔の天文雑誌で、ツァイスの干渉計で計測した単波長の波面収差の比較記事が雑誌に掲載されていましたが、ストレール比0.6あたりの商品でも高級アポクロマートとして謳われていて、僕は「まあそんなものか」と思ったものです。タカハシは単波長では、設計に近い値だったですね。(全波長合成よりも単波長では上回っているはず)

3. ドイツのローア氏が干渉計やフーコーテスト、ロンキーの写真とともにストレール比の計測を公表していますが、どの製品もおしなべて高い値のものばかりで、 「実態とは異なる」 と評価する人は海外にも多いです。また、 「単波長ごとのストレール比だけでレンズを評価することはできない」 という認識も海外の方は共通しています。 「参考にはするけどそれが全てではない」 というところでしょうか? 特に台湾製のリッチークレチアンは、ロンキーもフーコーもストレールも特に良い訳ではないのに、実際撮影すると非常に高性能なのは、ローア氏も認めていますね。

4. TOAとFCTは、中心部の幾何学的なトレース結果だけを見ると十倍以上も集光の度合いは異なりますが、実際見ると数値ほどの差はないと感じます。個体によっては逆転するという経験者の話を聞いたこともあります。タカハシ社内でもどちらが良いという評価fは割れていると聞いてます。FSQもスポット比ほどの差はなくむしろFCTの方が見やすいという方も多いですね。FCTは、当時個体差が非常に大きくしかも光軸が狂いやすかったとある販売店の方から聞きました。それでタカハシに返品するので少し険悪になったようです。それでも当時国内ではもっとも実性能が良かったので推薦してもらい購入しました。私の個体も光軸は狂いやすかったですが。

5. 星の撮影では、ペンタックスが中心部のシャープさを捨てて周辺のコマ、非点収差を重視した望遠鏡を先駆けて販売開始しましたが、その時からアッベさんの定義したアポクロマートとは全然異なる世界になっていると思います。FCTは望遠鏡の世界に未練を残していたので、周辺のサジッタルコマは銀塩の時代でも気になりました。

6. FCTは限界倍率を超えて惑星を見てもシャープなままでした。当時2.8ミリの接眼レンズが供給されていましたが、それを使っても 「まだまだ拡大できる」 と歯がゆく感じたものです。センサーがデジタルに置換わると、肉眼より遥かに上回るディティールが得られるようになって 「実際はこんなに見えていたんだ。」 と思ったものです。

7. シンチレーションの良い夜、火星を15cmのマクフトスと10cmのフローライトトリプレットで比較すると、何度見ても10cmのトリプレットの方がシャープでコントラスト良く見えます。球面収差はマクフトスって屈折より不利ですよね。ところが動画撮影して画像復元すると、ディティールの描写性能は明確に逆転します。 「やはり口径由来の物理法則には逆らえないんだなあ」 と強く実感します。

 1970年代からすでに何色もの色について幾何学的なトレースが行われ、波動光学的な回折も反映して設計されているので、アマチュアが単純なアポクロマートの定義をふりかざしても何の意味もないように感じます。個人的には、目的として十分な性能が出ていればそれでよろしいと考えています。心情的にはいくら中国製が安く高性能となってもできれば国産の望遠鏡を購入したいとは思います。しかし最近の国産のハイエンド機はおいそれとは手が出ませんからそんなこと考えても仕方ありませんけどね。

_ 星爺 ― 2015/09/17 07:17

小鉄様、ナマステ様、とっぱー様、n2068dd様 コメントをありがとうございました。
まとめてのコメントをお許しください。

小鉄様のご質問については、収差図(各色の球面収差図)はブログの一番上の図に示したように対物レンズの上半分のグラフで、中心からレンズの端まで入射した各色が、焦点(基準はd線)に対してどの位置に結ぶかを示しています。各色の線の曲がりが球面収差です。
したがって、乱暴な暗算で良いなら焦点距離を鑑みてF9ならば「色収差と球面収差の幅÷20」が星像の直径になるので、各色を重ねて0.4mmの幅があれば各色総合の星像は20μmほどになります。眼視の精度はレイリーリミテッドで写真の精度は撮像素子の分解能や鑑賞距離であることを鑑みてください。

「アポクロマートという用語」の原稿は、吉田正太郎先生のご意見を残しておこうと思って書いたのですが、他のことにも言及する必要が生じて長文になってしまいました。趣旨は異常分散硝材の威力で2枚玉でもアポクロマートと称してOKでしょう、ということです。
先達のツアイスやアッベの定義は尊重すべきですが、現代の設計はそういうことは超越しているし、独自に定義してみるのも良いことだと思います。

n2068dd様の解説とご経験の確かさには感服いたしました。ユーザーのレベルが高くなれば自ずとメーカーのレベルも高くなるのは、サミュエル・スマイルズの「自助論」にある「その国の政治は国民の知的レベルに比例する」セオリーと同様と思います。

趣味の会話では「本当の裏情報を知っている」「あの著者は間違っている」「メーカーも大した技術はない」などのネタで盛り上がるのは醍醐味で楽しいことと思います。本気で議論しているつもりではないでしょうしね。中には自尊心の強い人もいるでしょうが自尊心は勉学の発露でもあります。
「メーカーに教えてあげた」「あの望遠鏡はオレの発案なんだ」という人はあちこちにいますが、メーカーさんが素人を相手にするわけはないですよ。私も中学生向けの雑誌や書籍を作っていたのに、妙にライバル心を燃やす人がいるのは知っています。中学生の学年誌なら読者が編集者(著者)に対して「オレのほうが知っているぜ!」と思うことはあり得ないですが、中学生向けに噛み砕いた内容を読んだ大人が勘違いするのでしょうかね?
若人達が天文趣味に参入して来なくなったと言われて久しいですが、若い人は勘が良いので妙にとんがった大人達を見て、気味悪がって参入しないということもあると思います。

_ はじめちゃん@望遠鏡工房 ― 2015/09/17 23:18

>> とっぱー 様

コメント、ありがとうございます。


> アポクロマートの定義について、「3つ(又はそれ以上)の波長での
> 色消しと2つ(又はそれ以上)の波長での球面収差等が補正されたもの」
> と定義。


アッべ氏の定義ですね。では、定量的な定義(基準)はご存知でしょうか?

ツアイス、APQ フローライト・アポクロマートの検査証明書等で、
3色、それぞれの波長の定義は

赤 R ( C′= 644 nm)
緑 G ( e = 546 nm)
青 B ( F′= 480 nm)

3色全てで、ストレール強度・95%を基準としています。

また、光学系の最も重要な性能指針は、ストレール強度・80%以上で、
回析制限のみを受けた像質(ジフラクション・リミテッド)としています。

ちなみに、アポクロマートを最初に定義したとされる、アッべ氏は、
ツアイス社の創業者の一人です。

(参考)ツアイス・アポクロマートレンズ 検査証明書 etc
http://www2.odn.ne.jp/~ccr61210/www2.odn.ne.jp/image90.gif
http://www2.odn.ne.jp/~ccr61210/www2.odn.ne.jp/image164.gif




> はじめちゃん@望遠鏡工房様は、メーカーが高ストレール比のレンズをも
> ってアポクロマートと称している事実からストレール比でアポクロマート
> が定義できるとおっしゃているように思いますが、それはアポクロマート
> の定義を満足した上で高ストレール比を謳っている、すなわち「ストレール
> 比が 95% なので、アポクロマートレンズです」と言っているのではなく
>「ストレール比が 95% あるアポクロマートレンズです」と言っているの
> ではありませんか?


・・核心部分ですね。

(ツアイス社)、アポクロマートの定量的定義(基準)は、
3色全てで、※  ストレール強度・95%を基準。(※ 480.546.644 nm)
(可視光全域 ※)ストレール強度・80%を基準。(※ 380~780 nm 全域)

2種類の定量的定義があるが、実態は、ほぼ同一と解釈していいのか?、

他の方は「定量的な異論」があるのかを、お聞きしたいと思いました。




>> 中高校生、星爺様、及びレンズ愛好者様へ。

> レンズの材料はレンズ型に整形されて供給されますが、貴殿のように
> 丸板からマイクロメータのみで作るのは、「金槌と鋸だけで家を建る」
> のと同じで、・・・


レンズ・反射鏡は、特注(1品オーダー)が珍しくありません。

レンズ・反射鏡製作の名人、苗村氏は、2000枚を越える作品を
世に送り出しましたが、研磨の基本は、自分の手とマイクロメーター
(簡易コリメーター・フーコーテスター etc)でした。

(参考)苗村氏サイト  http://www.eonet.ne.jp/~namurakyo/

世界的コメットハンター、関 勉氏の望遠鏡対物レンズは、苗村氏・NO1
レンズであることは有名ですが、もしこのレンズが無かったら?
想像してみてください。関彗星、関ラインズ彗星の発見の後、数多くの彗星
ハンター、小惑星ハンター、天文学者、そして天文雑誌等が生まれました。

たった1組2枚のレンズが、どれだけこの世界を変えたでしょうか・・?




さて現在、1組2枚のレンズを一般業者に特注すると概ね、100万円
に近い費用が掛かります。一番高いのは、研磨皿4面分の製作費用です。
その他にも、高価な機械の使用料、技術者への報酬 etc

自分で研磨すれば、費用は1/10 以下で済みますし、生きた光学知識も得ら
れます。研磨時間は概ね、40時間は掛かりますが、3連休を利用すれば
何とかなるレベルです。


(参考)望遠鏡・掲示板 ☆★
http://cz-telesco.bbs.coocan.jp/

_ はじめちゃん@望遠鏡工房 ― 2015/09/17 23:34

>> 小鉄 様

コメント、ありがとうございます。


> 球面収差図の見方を教えてください。
> スポット像の直径は 0.4mmになるはずですが、
> 計算されたスポットの直径は 5-12μmです。


タカハシ FC-100 DL 、改良版シミュレーション(収差図)
http://www002.upp.so-net.ne.jp/bob-k/hosi1.4x4b.htm

C-d-e-F、  4線スポット直径約、7 μm
C-d-e-F-g、 5線スポット直径約、25 μm

計算基点は 0.000 、d 線像高0%です。F9。
像高 100%(50mm)焦点距離差を、F値で割ると、

e 線 → -0.065/9 ≒ -7 μm
g 線 →  0.229/9 ≒ 25 μm

と、ほぼ一致します。

(d線 スポット径、約 12μm ~波動光学)




>> ナマステ 様

コメント、ありがとうございます。


> メーカーのチラシを真に受けてしまったはじめちゃんさんは、
> 2次曲線でも係数が浅くて可視光の範囲内で交点からの差分があまり遠くなく
> 許容範囲に収まっている「補正」を持って、アポクロマートと呼んでいる


・・核心部分ですね。

とっぱー 様への、返答と重複しますが、

> アポクロマートの定義について、「3つ(又はそれ以上)の波長での
> 色消しと2つ(又はそれ以上)の波長での球面収差等が補正されたもの」
> と定義。

ツアイス社の創業者の一人である、アッべ氏の定義です。

ツアイス、APQ フローライト・アポクロマートの検査証明書等で、
3色、それぞれの波長の定義は

赤 R ( C′= 644 nm)
緑 G ( e = 546 nm)
青 B ( F′= 480 nm)

3色全てで、ストレール強度・95%を基準としています。

(参考)ツアイス・アポクロマートレンズ 検査証明書 etc
http://www2.odn.ne.jp/~ccr61210/www2.odn.ne.jp/image90.gif


はじめちゃんは、ツアイス社の定義とほぼ一致する、エアリーディスク
への集光比率95%を、(3色・5線 etc )色消しと呼んでいます。
(参考) http://www002.upp.so-net.ne.jp/bob-k/hosi1.2f.htm

タカハシも、ストレール比の計算を、集光比率で計算しています。
(回折限界以内に、何% の光が収束するか)
(参考)http://www.kyoei-tokyo.jp/shopdetail/002002000009/


上記3例共に、エアリーディスク内に、可視光線の大半が集光することで、
誰でも容易に、シャープネスを確認出来ます。(スポットダイヤグラム)


他の方は「定量的な異論」があるのかを、お聞きしたいと思いました。




(追伸)

アポクロマートの定義について、議論する理由は、ツアイスを除く
市場に出回る(自称)アポクロマート・レンズの多くが、
シャープネスに欠けた、残念な製品だからです。

タカハシ FC-100 DL 、改良版シミュレーション(収差図)
http://www002.upp.so-net.ne.jp/bob-k/hosi1.4x4b.htm

・・を、 「正統」アポクロマートの、標準スペックと考えました。


はじめちゃんの、基準テスト鏡筒は

APQ-150
FC-150
FC-76
FCT-76
TSA-102
FL-102
FL-80

の7本です。


(参考)望遠鏡・掲示板 ☆★
http://cz-telesco.bbs.coocan.jp/

_ はじめちゃん@望遠鏡工房 ― 2015/09/17 23:56



>> ナマステ 様

コメント、ありがとうございます。(2回目)


> レンズ4枚ではその曲線は4次関数的にできるのでその交点は4点になり、
> 4波長「色消し」となる。この場合はスーパーアクロマートと呼ぶ。

> タカハシのチラシにはとうとうスーパーアポクロマートと言う言葉が登場
> していますがなんなんでしょう?(^^; とても高級の色補正レンズという
> 程度の意味に捉えていますが。


例えば・・

5線が全然交わらないが、エアリーディスクに、100%集光するレンズ。
5線が全て交わるが、エアリーディスクに、80%のみ集光するレンズ。

どちらがシャープでしょう?


この問いに関する答えが、アポクロマートの本質を物語ると思いますが、

如何でしょう?


(参考)タカハシ FC-100 DL 、改良版シミュレーション
http://www002.upp.so-net.ne.jp/bob-k/hosi1.4x4b.htm

_ n2068dd ― 2015/09/18 14:37

恐縮です。高名な星爺さんに、そのように言っていただけるほどの者ではございません。
私は、オーディオも趣味で細々とやっているのですが、海外のサイトですと、ジョンカールとかネルソンパスのような有名なサーキットデザイナーが普通に掲示板に登場するので面白くてついつい読んでしまいます。その中でジョン・カール(最初のマークレビンソンのデザイナーで、ブランドイメージに決定的な影響を与えた人)が、「僕はサーキットデザインで生計を立てているから、自分の回路図を公開することはない。」と断言しています。けれども、一度だけ雑誌に彼の回路図が公開されたことがありました。実は彼はその回路図のいくつかを修正して、絶対成立しない回路図として雑誌社に提供しました。30年以上過ぎてからある掲示板に中国人が「ジョン、あなたの回路図ではこことここが矛盾していて、このままだとポジティブフィードバックになって発振してしまう。」と彼に質問しました。ジョンは、「そのとおりだ、どこが問題か考えてみてくれ。あれは、僕が雑誌社に原稿を渡す前にマークレビンソンが書きかけのものを持って行ってしまったので、間違っているんだ。」ととぼけていました。頭の良い中国人は、「ここの抵抗とあそこの結線を修正すると成立しそうだ」と回答して、ジョンは「いいんでないかな?」と答えています。
 なんでこんな話をしたかというと、レンズ設計でも同じようなところがあって、特許公開情報のレンズデータも各社同じようなことをしています。特にカールツァイスの特許には巧妙に罠がしかけられていて、公開情報どおりにレンズを組むと想定より収差の多いレンズになってしまうようにしているとのことです。そうでないとみんなにコピーされてしまうからですが、最近は中国人がそのようなことをするのが目に見えているので特にそうしていると思います。この話は先に亡くなったキャノンのレンズデザイナーの高野栄一さんの著書にあったのですが、一般にレンズ設計者は過去の特許情報を読んで勉強するところから始まるとのことでした。そうするとそういう矛盾に突き当り、それを解決する手段を見つけられる人になるのが第一歩とのことです。実際には商品をバラして解析しますから、最終的には良いレンズ設計は丸裸になってしまうのだろうとは思います。
 以前、星爺さんが編集していた雑誌で、タカハシの秦さんが、「FCTの設計を終えて実際に試作品を作ってみると、設計と矛盾する結果が出てきてその原因究明と解決に膨大な時間を費やした。」旨の記述がありましたね。我々は知る由もありませんが、設計と現実は異なるようです。
 面白いことに、そのタカハシの初期のレンズ設計プログラムを設計したのが、たぶん高野栄一さんで、彼は国内の天体望遠鏡メーカーに売込むことを部長から命じられたそうです。当時ほとんどの会社が購入したそうです。フローライトレンズと一緒に。その部長がフローライトを販売したのは、部長の息子がタカハシの望遠鏡を使っていたという話は確か雑誌に掲載されていましたね。
 さきほどのジョンカールの回路図の話ですが、事後談がふたつあります。一つは、最近香港の中国人がジョンカール回路のコピーとして基盤販売をしていること。回路の矛盾は無事解決してコピーが完成したようです。もうひとつは、日本の大手オーディオメーカーでは当時マークレビンソンの製品を分解して回路を解析し、それを上回る実特性・歪率の商品を試作したそうです。視聴の結果は「大敗。足元にも及ばなかった。」とのことです。ジョンは秘密を守り通せたようです。そして、私はその中国人の基盤は買わないと思います。

_ n2068dd ― 2015/09/19 13:23

 間違った事を書いていたら嫌だなあと思いまして、高野さんの記述を確認してみたところ、確かに 「光学プログラムはT社も購入した」 とありました。これは1970年代初期の話ですから、今は全然違うプログラムを使っていることでしょうね。
 その高野さんの記述の中で 「クック・アンド・サンのテイラーが3枚構成のアポクロマートを発明した。」 というのがありました。調べてみると確かに「テイラーが30歳の時に世界で初めてフォトビジュアル天体望遠鏡を発明した。」 とあります。しかも、 「ショット社の最新レンズを使った世界で初めての3枚玉のアポクロマートレンズだった。」 ダイアメーターは5インチでF18とのことです。1892年に全て手計算でフローライトも使わず3枚玉のアポクロマートを設計して製造していたのですから凄い事です。真ん中のメニスカスの厚さは、0.07インチで2ミリを下回っていたそうです。私は今まで知りませんでした。

http://www.europa.com/~telscope/hdtaylor.txt

僕は、日本で最初の3枚玉アポというと、五藤と高橋で1977年頃に出たのしか知りませんが、僕が知らないだけで、研究用でどこかにすでにあるでしょうね。

よく、クラウディナイトでも2枚玉が良いか3枚玉が良いか議論になりますが、サーマルイナーシャが大きくても僕は3枚玉が好きですね。

_ 小鉄 ― 2015/09/19 17:29

星爺 様、はじめちゃん@望遠鏡工房 様

F9の入射角をtanの逆関数で求め、基準位置(d線)でのボケ具合を⊿h=⊿f・tan入射角で計算したところ星爺様の仰るようにおよそ20μmになりました。

焦点というと中学、高校の物理では像を結ぶ位置であると教わったため、光軸上の異なる位置で像が出来るものと勘違いをしていました。思い込みとは恐ろしいものですね。

稚拙な質問に解答頂き、ありがとうございました。

_ n2068dd ― 2015/09/19 21:17

興味が沸いて、ハロルド・デニス・テイラーのトリプレットのパテントを見てみました。
TOAに良く似たレンズ構成ですね。
http://www.photo-china.net/column/pat/us568052.html
硝材もカーブも間隔も異なるので、全く別のものですが、発想は似たところに収斂したのかもしれません。
0.07インチのメニスカスのなんたるかが良く分かる図です。

彼の凄いところは、コマの形状もちゃんと計算して描いているところですね。
https://en.wikisource.org/wiki/Page:Harold_Dennis_Taylor_-_A_System_of_Applied_Optics.djvu/259
計算機のない時代であることを考慮すると全く感服してしまいます。
この時の日本は、まだツァイスのコピーしかできなかった時代ですから、本当に凄い方だったのですね。

フォトビジュアルな天体望遠鏡と言うのは分かるような気がします。F18だったとしても。
高野さんは、NHKに納品するカメラレンズの研究のために、彼の論文を読んでも難解で理解できなかったと述べていました。

星爺さん 調べるきっかけを作ってくれてありがとうございました。

_ 星爺 ― 2015/09/21 00:25

●小鉄様 コメントをありがとうございました。

その計算方法で合っています。自然とピントの良く合っている位置(d線付近)で見ることになります。なので、恒星の見え具合は収差図から暗算でも見当がつくわけです。それにしてもメーカーが発表する収差図の幅はもっと広げて欲しいものです。図の幅が狭いと線が寄り添って「シャープな印象を与える」というのでは困りますよね。
一般撮影のデータはMTFが直感的にわかりやすいですが、星野写真はスポットダイヤグラム(出し方にもよりますが)が実際に写る星像と似ているのでわかりやすいですね。


●n2068dd 様 コメントをありがとうございました。

レンズ設計の特許を見ると初心者の頃は「すごい資料だ!」と思うものですが、検討してみると怪しいと気が付きますよね? すぐに気が付くようでなければ才能はない、とキヤノンの高野栄一さんはおっしゃりたかったのだと思います。片やニコンといえば副社長にもなられた鶴田匡夫さんですね。名著『光の鉛筆--光技術者のための応用光学』を第7巻まで執筆されましたが、第1巻はエッセイ風で文学的にも優れているので、中学生以上の人には一読をお勧めします。技術の高い企業には社員の中に必ず「名物○○さん」がおられますね。
私も中学生以上向けばかりでなく鶴田先生にも理工学書の執筆をお願いしたかったです。実は天文系ばかりではなく、IT系や女性向けの書籍なども作っていたんですよ。

編集者を早期に退職してから10年経ちますが、その何年か前の「しし座流星群の大出現」前年から天文雑誌担当を離れて、オーディオやデザインやフラワーや農業や囲碁の雑誌などの面倒を見ていました。名簿などの資料を後輩にあげて天文とは縁を切って清々したと思っていたら、数年後に半年だけ天文雑誌兼任に戻されました。「ちゃんとテコ入れしてます」という人事部のスタンドプレーですね。バカバカしくなって退職したわけです(笑)

雑誌の面倒を見るからには少しは勉強して、オーディオは今でもアルニコのJBLをA級パワーアンプで鳴らしています。オーディオは天文よりも平均年齢が高く同じような道を辿っていますね。スピーカーケーブルで音が変わるのがウソかホントかとか、パワーアンプに抵抗をつないでウオームアップして火災が起きたとか、あるご老人が普通の自作アンプの中を“金線”で配線したら伝説を産んでかなり売れたとか、今では笑い話になっていることがあるのも天文趣味と似ている気がします。
フラワーといえば、向日葵(ヒマワリ)の販売の80%はサンリッチなどの小型のヒマワリなのはご存じですか? あれは義弟の発明で勤める種苗会社に莫大な利益をもたらしたそうです。その後、オレの方が知っている、オレがヒントを与えてやった、オレはもっと前から考えていた、なんて連中があちこちから出てきたそうです。が、今年の3月に秋篠宮様から表彰されて決着がつきました。
「バイクの本を作れ」と言われたこともあります。バイク遍歴は現在56台めですが、趣味を仕事にするのは懲り懲りなので断りました(我が家はカミさんも含めて4人全員が自動二輪の免許を持っています)。バイクも少しは修理できないと、ツーリングに行っても帰って来られないような、不完全な時代の方が趣味性が高くて熱くなれましたね。キャブのスクリューの戻し量に悩んで夜中に飛び起きて調整した時代が懐かしいです。
天文趣味の世界にはオカシナ人やガセネタも多いですが、そういう不完全な時代は楽しい時代なのだと思います。


●最後になってしまいましたが訃報です。
アマチュア天文家で元熊本県民天文台々長の宮本幸男さんが9月18日に永眠されました。享年92歳でした。心からでご冥福をお祈りいたします。
40年以上前の『天文ガイド』で読者の工作レポートという投稿企画が始まり、私のポータブル赤道儀が初回だったのですが、宮本さんは二回め以降から木製の大きな赤道儀(材木屋さんだったので)やライトシュミットカメラの自作記事を数多く投稿され、アマチュア天文界に貢献されました。オールドファンならお名前を覚えておられると思います。
私が高校生で宮本さんが40代後半の頃から、記事がご縁で長年の文通が始まりました。親子ほどの年齢差なのに敬語で対応され、光学設計の議論をしても決して偉ぶらず、むしろ「お教えください」と質問をされてくることに人格の高さを感じました。アマチュアの分をわきまえておられ、投稿はされても単行本の執筆は丁重に断られました。“実るほど頭を垂れる稲穂かな”自分も宮本さんのような、分に応じ分をわきまえる人物にならないといけないと教えられました。もちろん、そんな人格者にはなれませんが、「星爺から若人へ」は宮本幸男さんの生き方を参考に始めたものです。ブログを始めてから4箇月後に訃報の文面を書かねばならないとは、なんとも残念でなりません。

_ n2068dd ― 2015/09/21 02:15

今、裏庭で写真撮影しながら見ていました。

>片やニコンといえば副社長にもなられた鶴田匡夫さんですね。

そうですね。名著「光の鉛筆」は、私も読みました。私の持っているのは、3巻だけですが、これも内容がとても面白いですね。この巻は、サンプリングに関する章があったので、本屋で取り寄せました。 残りは今でも販売しているでしょうか?少し不安。それにしても鶴田匡夫さんの知識の豊富さ、高度な数学の扱いを見ていると半端ではない頭脳の方ですね。高野栄一さんも同様で、どちらも私には半分も理解できないです。

私の学生の頃はオーディオの全盛期だったので、活気があって楽しかったです。今は、結局あの頃登場したものに再び戻してしまいました。私は癖のないニュートラルな音が好きなので、スチューダー、EMT、アムクロン、JBLの業務用のセットで変更がないです。私にとっては日本のオーディオ雑誌は宗教系の雑誌にしか思えないですね。K式DCアンプとか.....。NON NFBアンプとか....。何とか型FETアンプとか....。(笑 それぞれ信者が沢山いますよね。 ケーブルの類に関してはもうノーコメントです。

バイクも僕の若い頃は全盛であちこちにライダーを見掛けました。ユースホステルという世界もありました。僕が峠でテンロクで走っていた頃は、地面に火花を出しながらコーナーを走っている連中が沢山いましたよ。車だと、電子燃料噴射の時代なのにツインキャブのテンロクに改造して、気圧と湿度と高度によってノズルを交換しながら走っている連中もいました。ガソリンもヘリコプター用のオクタン価の高い燃料にしたりとか。私は282度だったかのハイリフトカムでポートを盛って9000回転まで回る仕様にしたりとか。ずいぶん無駄なガソリンを使ったものです。(笑 富士山の五合目で星を見ていると下のほうでスキール音がいつも聞こえていました。今はそんな走り屋はだいぶ少ないでしょうね?

_ やまね ― 2015/09/25 22:59

そろそろ新しい記事が出ているかな~と思いながらページを開いたら・・・  あら、びっくり。

ものすごい数のコメントで、一瞬2チャンネルかと思ってしまいそうなやり取りや難しそうな専門的ぽい内容・・・
中学生レベルの中年である自分は思わず斜め読みしてしまいました(笑) 
物語の類は楽しく読ませて頂きました!

今の世の中、ネットの普及でDeepな趣味人の方々の活躍の場がいろいろとありそうなものですが、実は正面向かって問答したり、教授したりと、その能力を発揮できる場所が少ないのかもしれません。

趣味の楽しみ方はひとそれぞれ。
深いところがある人には楽しく、またある人にはふかいと感じることもあるかもしれません。

このブログの星爺様が伝えて下さる情報でより多くの皆さんが天文の楽しさに触れられるといいですね。

ということで、初心者レベルにも為になる次の記事、
そしてJILVA-170を楽しみにしていま~す(笑)

_ 星爺 ― 2015/09/27 05:01

●n2068dd様、やまね様 コメントをありがとうございました。

JILVA-170はご注文の順番に逐次出荷しています。来週にはお送りする(改良を施した)JILVA-170と試作の専用三脚の写真をブログでお見せできると思います。

今回のブログで色消しレンズに興味のある人が多いことがわかりました。が、他の人のコメントに対して「データの出処を明確にせよ」「あなたの考えは違う」というコメントは、このブログは議論の場ではないので、非公開にしましたので悪しからずご了承ください。

2チャンネルについては、ポータブル赤道儀のところは1~2カ月に1回程度は参考のためにのぞくようにしています。
それで、先ほどのぞいてみたら下地さんという人の日食写真の盗作について書かれていて「Taも同罪」(Taは私の編集者時代の執筆のイニシャルです)みたいなことが書かれていました(笑)
私が誠文堂新光社さんを退職して2~3年後のことでした。天文を忘れてのんびりしていたので『天文ガイド』さんは読んでいないで、毎号贈呈していただいている『星ナビ』さんの表紙が皆既日食だったので、どこかで皆既日食があったことを知りました。この写真が盗作だったのですね。それを知ったのは新聞記事になった半年後くらいでした。とても悲しいニュースでした。
皆既日食の写真にはバックに恒星が写っていて、それを印刷所が製版フィルムの汚れと思って消してしまうので、校閲の時に星図とにらめっこしなから「これは汚れ、これは星」と指定するので、撮影時間が少しでも違えばわかると思うのですが、月刊誌は〆切で時間がなかったのかもしれませんね。誠文堂新光社さんの場合は『天文年鑑』の表紙になったらしいですが、雑誌と書籍は部門が違い書籍担当は専門性が低いのでチェックが甘かったのかもしれません。
……こう書いてもネットの住人という人達は「騒げば楽しいのだから“OBのTaも悪い”と言い出すよ」と友人が言っていましたが…(笑)
年齢詐称やペンネーム(写名とも言う)については、そういう人はけっこう多かったです。一般の写真雑誌の投稿作品も同様のようです。
写真の応募用紙に実際の年齢と異なる記載をするのは、テレがあるのか お年寄りや女性に多く、女性の常連入選者で20歳もサバを読んでいた人もいましたっけ(笑)
ペンネームについては「作家」を自己意識することで、作品作りのモチベーションになるなら、ウソの名前の投稿と批判することでもないと思います。個人的には、天体写真は科学写真の一種と思うので、撮影者のデータも本当のことを記すべきとは思っています。しかし、応募用紙に運転免許やパスポートのコピーを添付せよとするわけにも行きませんよね。

_ 小鉄 ― 2015/10/01 08:41

よく像質が暖色系とか寒色系といいますが、球面収差図から読み取れる僅かな線同士の幅や各線の形で判別できるものでしょうか?人間の目はどこまで色の情報に対して敏感なのでしょう?

_ 星爺 ― 2015/10/02 23:31

●小鉄様 コメントをありがとうございました。

レンズのコーティングの色とか先入観による「記憶色」を無視して色収差と球面収差だけを考えてみます。

以前ご質問をいただいたように、たとえば各色の球面収差の幅が0.4mmある場合、乱暴な言い方をすれば、この範囲ならピントが合っているように感じられます。が、自然と肉眼で快適に見える色の球面収差が少ない位置にピントを合わすようになると思います。
ほとんどの望遠鏡は、焦点の前方が暖色(赤系)で後方が寒色(青系)ですね。なので、前方に寄ったところにピントを合わせれば、周囲に青がまとわりついて寒色に見え、逆だと暖色に見えるのではないでしょうか?
球面収差のオーバー/アンダーの影響で焦点内像と外像で色ごとに星像の「拡散具合」が異なるので、収差補正の味付けや元々の球面収差の個性によっても、倍率によっても異なると思います。

わずかな色収差は「像に縁取りをもたらす」ので、TV画像ならエンハンス効果、印刷処理ならアンシャープマスキング、フィルム現像なら希釈現像液みたいに、縁取りのおかげでハッキリ見えるように感じます。なので、アクロマートは色収差が多いからダメだとは一概には言えないし、望遠鏡の口径や倍率や対象によっても縁取り具合は変わると思いますし、暖色寒色も違って見えるのではないでしょうかね?

_ 小鉄 ― 2015/10/04 19:23

星爺様

お答えいただきありがとうございます。なかなか無コートの望遠鏡というのは今時、見かけないので実視ができませんが、異なるメーカーの望遠鏡の色合いの違いというのはコーティングによる透過波長によるものなんでしょうね。

_ 星爺 ― 2015/10/04 20:18

コーティングはほとんど関係ないと思います。色フィルターの色と違って反射の色で僅かに透過の弱い色が反射して見えます。その色の逆の色がより透過する訳です。が、多層膜コートの場合は必ずしも反射の色で判断はできないと思います。
人間の目の色補正順応は幅広いので、寒色/暖色というのは私は先入観か、もっとも考えられるのはピンボケになった色収差の像の縁取りや乱反射かな? と思います。

_ 小鉄 ― 2015/10/04 22:30

具体的な例で言いますと、テレビューとタカハシの屈折望遠鏡で木星を眺めた時に色調の違いがあるのです。その理由は何だろうと疑問に思った次第です。

_ n2068dd ― 2015/10/05 12:54

どんなレンズでも白い紙の上に置くと何がしかの色がついて見えるので、固有の着色はありますね。
古いカールツァイスのレンズやロシア製のレンズにはそのほとんどに黄色い色がついていたものです。一説には屈折率を高めるための重稀金属が原因であるとか言われてますね。また古いフジノンやペンタックスの異常部分分散レンズやアポランターは黄変していくので有名でした。レンズ内部の放射性元素が原因とのことです。実際にガイガーカウンターでチェックした方も多いと思います。異常部分分散や屈折率を上げようとするとどうしても稀金属の含有量が多くなるので、着色は仕方ないような気がします。逆にあまり着色のつかないのがプラスチックレンズで、レンズ断面は真っ白で目立ちます。樹脂は紫外線で架橋ポリ構造が破断して黄変するので、そのあたりの対策をした樹脂や酸化チタンを練りこんだものでないと長時間は使えないですね。レンズ枚数が多くなるとコーティングの特性も馬鹿にならないと聴きます。
TMBなどの海外のアポレンズは、青と赤のストレール比がタカハシより低い設計なのでその領域の集光が拡散して、そのあたりも色の違いになっているようです。
http://www.astrotreff.de/pop_printer_friendly.asp?ARCHIVE=true&TOPIC_ID=98314
TMBのトーマス・バックは、F線とC線は1/4波長、G線は1/2波長のエラーを許容する設計にするとし、実際の計測でもそれが綺麗に現れていますね。計測を見るとアストロフィジックスのローランド・クリステンもそういうチューニングにしているようですね。
http://astro-foren.de/index.php/Thread/12633-TOA-150-1100-ein-Sahnest%C3%BCckchen/
このローア氏の計測ではタカハシは可視光全域にわたりストレール比を高くするチューニングとなっていることが分かります。
また上のフォーラムのカート氏の計測ではタカハシFCT-76の頃からすでにそういうチューニングでしかもストレール比が猛烈に高いのにびっくりします。そういうレンズと海外のレンズはチューニングが異なるのでガラス材、コーティング、許容エラーのさまざまな面で色が異なっていると推測されます。

_ 小鉄 ― 2015/10/06 00:33

n2068dd様

詳しい解説と資料の添付ありがとうございます。しかし、ドイツ語が読めません。(泣)

_ n2068dd ― 2015/10/07 12:50

小鉄さま
グーグルかBINGの翻訳機能にページ全体を翻訳機能がありますので、利用してみてください。
たとえば、
https://translate.google.co.jp/translate?sl=de&tl=en&js=y&prev=_t&hl=ja&ie=UTF-8&u=http%3A%2F%2Fwww.astrotreff.de%2Fpop_printer_friendly.asp%3FARCHIVE%3Dtrue%26TOPIC_ID%3D98314&edit-text=

https://translate.google.co.jp/translate?sl=de&tl=en&js=y&prev=_t&hl=ja&ie=UTF-8&u=http%3A%2F%2Fastro-foren.de%2Findex.php%2FThread%2F12633-TOA-150-1100-ein-Sahnest%25C3%25BCckchen%2F&edit-text=
のように図版以外は英訳してくれます。日本語訳はめちゃくちゃに精度が悪く使い物にならないので、英訳機能が便利です。これを使えばイスパニョールでもイタリアーノでもなんでも読めるようになってたいへん便利です。ドイツ語→英語も妙なところが多いですが読めるようになるだけでもよろしいかと思います。

ところで、ローア氏のTOA-150に使われているcream piesの訳が未だにわかりません。何のたとえなのか。たいていの翻訳だとてんでもない意味になるので。(笑)

ローア氏の計測で明らかなように、中国製の製品の調整精度の低さ、磨きの粗さは際立っていて、いくらカタログに優秀なスポット図や収差曲線を掲載したとしても実性能は非常に悪く理屈と現実は異なりますね。そんな中では、スカイウォッチャーのMKとGSOのRCはまともな部類で好評でした。冗談で「私も全部これにする」とまで言っています。(笑)
タカハシは偏芯問題が時々議題になっていて、これは昔からですが、特にエアスペーストリプレットは大なり小なりあるようです。計測ベンチでは良くても、鏡筒の向ける方向で悪化するとFCTの時代に良く言われていました。ほんのわずかズレてしまうと、FCTよりFCの方がシャープに見えたものです。逆にシンチレーションの良い日にしっかり合うと底なしの解像度で、これは凄いと感じました。何をもっとそういう違いがあるかは分かりませんが、惑星の立体感に関しては常にFCTはマクフトスより優れていると感じます。MTFの低周波成分の値が高いせいなのだろうとは思います。TOA130や150は廻りの人に持っている人が何人もいるので、比べてはいますが、肉眼で見る限りスポット図ほどの差はほとんどないと感じます。高周波成分の解像度だけで言えば反射系の25cmクラスが簡単に上回りますよね。屈折は肉眼限定の玩具かな?といつも思います。あと写真カメラとか。そうでなければ、惑星観測者は屈折だらけになってしまうはずですが、ほとんどいませんよね。屈折であまり熱くなっても意味ないのではないかと昔から感じています。(笑)

_ 星爺 ― 2015/10/09 11:12

●n2068dd 様 コメントをありがとうございました。

昔、吉田正太郎先生や冨田弘一郎先生から「フォア・チャイナ」という言葉をお聞きしました。記事にしたこともあったと思います。ドイツ、フランス、イギリスの光学製品が優秀だった頃、最終段階でどうしても不良品が出るので、その処分先としてレベルの低い東洋の中国や日本へ輸出されたと言います。そういうことにならないためにも、日本のアマチュアも目利きにならねばいけませんね。

スポットダイヤヤグアラムについては、眼視の場合はアイピースで有効最高倍率まで強拡大して分解能の限界まで観察するため、その口径のレイリーリミットが基準になるので、
 ・望遠鏡のF×1.22μm(F5ならば約6μm、F8ならば約10μm)
以下ならスポットはパーフェクトで、それ以上は過剰品質で必要ない理屈になります。が、どうもスポットのシャープな望遠鏡ほど、良く見えるような気がしています。
写真の場合はプリントサイズの鑑賞距離が基準になるので直焦点の実像の大きさがスポットを見る場合の基準です。フィルム時代は約30μmでパーフェクトでした。詳細な撮像素子の現代でも鑑賞距離で見るなら同じくらいですが、PC画面で強拡大することがあるので、15μmくらいを基準にした方が良いと思います。
ユーザーの間では眼視と写真の精度がごっちゃになっている感じもありますね。

>屈折であまり熱くなっても意味ないのではないかと昔から感じています。(笑)
そうかもしれませんね。現代の高級な望遠鏡はとくに小口径は素晴らしいですが、眼視の解像度や色収差の無い写真、そして迷光の少ないクリアーな視界を求めるならば、やはりニュートン式反射望遠鏡に帰結するでしょう。最近はWinnyタイプのコマ補正レンズもたくさん登場していますし、早晩、ハイエンドアマチュアは頑丈なニュートン反射を使うようになると予想しています。でもニュートン反射で頑丈なのは売っていないか?(笑)

_ 小鉄 ― 2016/03/20 13:16

n2068dd様

所要で延び延びになっていましたが、紹介していただいた英訳を読みました。

トーマス・バックによればアポクロマートとは、
1.コマ収差がない
2.緑から黄色でストレールレシオが95%かそれ以上
3.C-F線では波面誤差が1/4λかそれ以下
4.g線では1/2λ

であれば、多少の波面誤差があり、スポットから外側に収束しても現代のアポクロマートとしての性能を発揮する

ということでしょうか。

タカハシにはタカハシのアポクロマートの基準があり、TOAを完成させたと思いますが、他の望遠鏡と実際に差異を感じたことがありません。

客観的な評価であるMTFを見れば、明らかに口径の大きさが周波数帯の良し悪しを決定するので、中口径の屈折望遠鏡というのは、屈折眼視派のオモチャの範疇をでないのかもしれませんね。

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