紫金山・アトラス彗星の話題など2024/10/07 05:13

紫金山・アトラス彗星(c/2023 A3)
期待の紫金山・アトラス彗星の近日点通過は9月28日。 近地点通過は10月13日です。 10月7日現在、太陽観測探査機SOHOの広視界カメラ(←クリック)の写野にも入って来ました。 
東京大学アタカマ天文台(←クリック)でも観測が行なわれています。
星爺の拙い経験では「彗星の本体(頭)が崩れるとボワーッと尾が長く明るくなる」ようです。 これを記事では「化ける」と表現していました。 なので太陽に温められた近日点通過後に期待ですが、彗星の振る舞いは予想できません。
編集者時代は国立天文台の彗星の研究者の言質を取って、予想記事を作りました(今は知りません)。 出所不明な大袈裟な情報も出ることがあるので要注意。 でも、紫金山・アトラス彗星の近日点通過前の見え方は、オフィシャルな予想よりも明るく大きいような気がします。
近日点通過後は下の図のように西空の低空に見えます。 双眼鏡は必携! 観測/撮影に条件の良いのは、地平線から離れて折からの月明りを受けない10月23日以降になるでしょうか。 しかし、何が起こるかわからないのが彗星なので、条件の悪い20日前の薄暮中にも注目。 薄暮中の写真撮影は彗星を撮るよりも「空を撮る」ようなものなので、カメラを空に向けて自動露出が良く写ることもあります。
紫金山・アトラス彗星の見え方
近日点通過前の写真を掲げます。 図版提供:アストロアーツ

近日点通過前の9月26日の様子。 6cm 300mm望遠鏡+デジイチ 写真提供:笠原隆樹さん(←クリック)
笠原さんは元三鷹光器で天文機材の設計/製作に従事された方で、独立され、今でも天文関係に多大な貢献をされています。
山本さん望遠
山本さん広角
近日点通過後の9月30日の長い尾! ズームレンズ300mm望遠で撮影(上) 10月1日ズームレンズ50mm標準で撮影(下) 写真提供:山本幸司さん
山本幸司さんの撮影風景。 ご友人のJILVA-170(←クリック)と2台体制です。


以下は星爺の全くの素人の見解と希望的予測なことをご了承ください。
彗星の明るさや見事さは、
①太陽に近い
②地球に近い
③頭が大きい
④ダストが多い
⑤分裂や崩れが起きる
----以上で決まるようです。
紫金山・アトラス彗星は、オールトの雲からやって来て、初めて太陽に接近する「バージンコメット」です。 長年公転して「枯れた」彗星ではないので、固まっていないダストがたくさんあるはず。 ダストの尾が長く伸びた見事な姿が期待できます。 反面、太陽に近づくと雲散霧消してしまうのではないかとの予測もありました。 9月28日の近日点通過を過ぎても元気なので、まんまと生き残ったのは良かったですね。
①②のバランスが良く、見やすい位置で見事な大彗星の姿を見せたのはウエスト彗星でしょうか?
①②のバランスがほどほどで、③の頭がとても大きな彗星の代表がヘール・ボップ彗星で、長い間明るい姿を楽しませてくれました。
紫金山・アトラス彗星は①②のバランスはまずまずですが、太陽に近い方向に見えるので観測はしにくそうです。 ③の頭は小さいようでも ④のダストはバージンコメットなので多そう。 太陽から離れても⑤の分裂が起きれば、予報光度は暗くても実際は明るく大きく見えるかもしれません。 ウエスト彗星を暗くしたイメージに見え、尾がうんと伸びる感じになるのではないでしょうか? ⑤が大規模に起こって突然明るく「化ける」ことに期待したいです。
※各彗星の画像はネットで検索してみてください。

クロイツ群の彗星が発見された
①の極端に太陽に近づいた例が1965年11月の池谷・関彗星です。 東京でも淡いけれど長い尾が見えました。 池谷・関彗星は「クロイツ群の彗星」です。 ドイツの天文学者ハインリヒ・クロイツが、数百年前に分裂した巨大な彗星がそれぞれ類似の軌道になって、太陽の近くをかすめるように通過する説を唱え、 サングレーザー彗星と言われるのがクロイツ群です。

先日発見されたアトラス彗星(C/2024 S1)はクロイツ群のようです。 極端なほど太陽に近づき、10月~11月には大彗星になるかもしれません。 未だ正確な位置観測がされていないので、どのような軌道をたどるかはこれから判明します。
まとめて二つの彗星がやって来そう。 期待したいですね!


20世紀最大とも言われた百武彗星
星爺は池谷・関彗星以降のコホーテック彗星を除く全ての彗星を見ています。 1996年3月26日の百武彗星(1996B2)は、間違いなくダントツで一番の大彗星だったと思います。 小さな彗星が地球に異常接近したので大彗星に見えたのですね。 
②については過去200年間で地球に最も近づいた彗星で、しかも真夜中に天頂付近に見えたので観測条件は最高。 尾の長さは100度! 頭は0等級以上で、雄大な姿は天空の大蛇を連想させました。
3月26日の2~3日前に、⑤の分裂や崩れが起きたことが大彗星を生んだようです。 26日の明け方には見る見るしぼんでゆきました。
シュミットカメラで頭部の大写しと、頭の一部が崩れて後方へ飛んで行く様子が100mmレンズで写せたのでお目にかけます。

1996年3月26日の百武彗星の頭部付近。 自作25cm F2.2シュミットカメラ。 奥日光にて。
構図を上にズラしてもっと尾を写したかったのですが、下の100mm望遠レンズと交換したので写せず、ちょっと後悔しています。
同夜にオリンパス100mm F2望遠レンズで撮影。 3枚撮影したのを尾の模様を基準にコンポジット合成したもの。 上の方の左の尾の濃い部分が2~3日前に分裂した塊の名残です。 この分裂がダストをまきちらして彗星を明るく尾を長くしたようです。

コメント

_ 渡辺信夫 ― 2024/10/08 19:48

彗星の光度の予想・・・難しいですよね

高槻さんは①から⑤の 明るくなら条件をあげておられますが
私はもうひとつ大切な条件があると思います。

それは彗星のカタチです。

彗星の光度や振る舞いの予測がこれほど難しいのは
そもそも「彗星モデル」に何か 考慮していないものがあるのではないでしょうか?

ハレー彗星以降、いくつもの探査機が彗星核を撮影してきました。

どうやら彗星核は いくつもの複数の小さな彗星核の集合体のようです。
しかも、どのように合体しているかは 彗星核によって まちまちで、ひとつとして同じものはないようです。

これでは予想しても 当たるわけはないですよね。

これからはテイルを撮影するだけでなく、長い焦点距離で核近傍の様子を撮影することに もっと重点をおくようにするべきだと思います。

_ 星爺より ― 2024/10/08 21:50

渡辺さん。お元気でご活躍のご様子、何よりです。
彗星核は集合体なので注目ですか。ナルホドー。
彗星の写真は、尾の長さで撮影レンズを決めてしまいがちですが、後から「うんと拡大しておけばよかった」と思うことは多いですよね。

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