●板垣公一さんがFRC-300を手放されます2017/01/28 17:29

●板垣公一さんがご愛用の準RCのFRC-300望遠鏡を手放されます。
超新星発見家として有名な板垣公一さんが、機種変更のため愛用のタカハシFRC-300型 30cm F7.8 焦点距離2348mm の準リッチー・クレチアン式反射望遠鏡を手放されます。
「有効に使ってくださる人にお譲りしたい」ということで、このブログでのご案内を頼まれました。
イメージサークルがφ90もあり像面が平坦で、本来は中判カメラでも隅々まで鋭い星像を結ぶ写真撮影用の光学系です。周辺光量も充分でFも比較的明るく、デジタル一眼レフや冷却CCD(CMOS)には、最適の星野撮影用望遠鏡と思います。

FRC-300鏡筒と光路図。 高橋製作所様のご厚意により写真と図を転載させていただいています。

FRC-300は、昔、天ガで「徹底的に良い望遠鏡を作ろう」と、機材頒布企画の一環としてタカハシ製作所と相談して完成した懐かしい望遠鏡です。
決して性能が不満で手放されるのではなく、板垣さんがご使用の冷却CCDカメラの画素が25μmと大きいため、特性の適したもっともっと長い焦点距離が必要になったため惜譲されます。ちなみに、もっと長い焦点距離の望遠鏡とは Celestron C14型シュミット・カセグレンのことです。
板垣スペシャルとも言えるこのFRC-300望遠鏡は、板垣さんの地元山形でタカハシの赤道儀に搭載して使われ始め、現在は北関東の観測所に設置されていて、山形からリモートコントロールしています。
写真の南側にある片持ちフォーク式赤道儀に搭載されたのがFRC-300で北側がC14です。
南側がFRC-300。北関東のスライディングルーフにあり、山形からリモートコントロールします。
観測所や望遠鏡の様子は複数のモニターカメラ(モノクロ)で確認。この画像はモニターカメラのもの。
下の写真は山形の制御センター。 観測所は日本各地にあり 6台のパソコンを使用されています。

90万円でお譲りするとのことで、お問合せは「SB工房」の「ご購入とお問合せ」からお願いします。
↓SB工房のホームページ(株式会社輝星)
http://www.ne.jp/asahi/sky/bird/index.html

◆FRC-300とは?
RC(リッチー・クレチアン)式反射望遠鏡は、カセグレン式に広義で使われる名称です。 純粋なRCの光学設計、すなわち係数に応じた双曲面の主鏡/副鏡を使った純RCの他に、変形タイプもいろいろあり、変形タイプは「RC」とも「準RC」とも称されることがあります。 放物面主鏡と双曲面副鏡の純カセグレン式も「RC」と呼ばれることがあります。 観測目的や写真撮影の被写体によっては、生粋の純RCが必ずしも優れているわけではありません。
ちなみにタカハシBRC望遠鏡は口径20cmでF5と明るい純RCです。FRC-300は準RCで、フラットフィールド・リッチー・クレチアンの略号のFRCです。 以下の説明がされています。
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像面を完全に平坦化するフラットナーレンズに合わせて、主鏡/副鏡の非球面率を決定しています。このような準リッチークレチアンでは、純粋な(オリジナル)リッチークレチアンよりも非球面率が強く、より高度な設計となっています。したがって純リッチークレチアン+フラットナーレンズよりも中心球面収差、周辺のコマ、非点、像面湾曲全てに収差が小さくでき、FRC-300では、イメージサークルφ90mmの隅にまで10μm以下というBRC-250と同等の完璧な星像が得られます。また、合焦機構はBRCと同じ方式で確実に固定できる温度補正機構(±5°C)も内蔵しております。
オプションで冷却CCD用のF5.9となるレデューサーも用意しており、これも冷却CCD用としては十分な10~20μmの星像が得られます。
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◆主要データ
FRC式アストロカメラ
有効径=φ300mm
副鏡径=φ125mm
合成焦点距離=2348mm
合成口径比=1:7.8
イメージサークル=φ90mm
メタルバックフォーカス=106.2mm
鏡筒径=φ324mm
鏡筒全長=1030mm(筒先からヘリコイド面まで)
重量=約30kg
※レデューサーはありません。焦点距離を伸ばすオリジナルのエクステンダーは差し上げますとの由。
↓参考URL(高橋製作所)
http://www.takahashijapan.com/ct-products/products/FRC-300.html

●本年もよろしくお願い申し上げます2017/01/02 09:00


年末のオーストラリア遠征の直前に2人めの孫が生まれました。上の大マゼラン雲が2歳の長女、下の小マゼラン雲が次男のように見えました。祖父としての責任をひしひしと感じます。
キヤノンEOS KissX5 ISO1600 シグマ17mm~50mm F2.8~F4ズーム 17mm F4で撮影。
オルゴール赤道儀(←クリック)MusicBox EQⅡにて露出各2分を3枚コンポジット合成。
超広角~標準の星景写真はオルゴール赤道儀で充分です。電動のポータブル赤道儀やドイツ式赤道儀を使うのも面倒なので、星景写真にはもっぱらオルゴールを使っています。

●JILVA-170の出荷が遅れて大変申し訳ありません
JILVA-170やユニテック社のSWAT-300/350は、全品のPモーション・テストをして合格品だけ出荷しています。合格するのは全体の70%。念のために公称の精度よりも厳しく測定しています。
しかしながら、一晩に数台までのテストしかできず、昨年に引き続きこれほど悪天候になるとは予想していなかったため出荷が遅れに遅れて皆様にご迷惑をおかけしています。本当に申し訳ありません。最近は天候が良くなったので、逐次テストをして出荷をしております。ご注文をいただいたお客様には進捗を個別にメールでお知らせしています。今少しお待ち下さい。

JILVA-170BT38三脚(←クリック)の格安販売期間を延長します
今年はJILVA-170を常に在庫するようにいたします。3月までは今までどおりパーツの余ったバーゲン品や試作品の受注生産といたし、格安販売の期間を延長しますのでお問合せください。

【格安販売の価格】
・JILVA-170輸出用バーゲン品----90,800円(税別)
・JILVA-170日本仕様試作品-----108,000円(税別)
・BT38-1三脚(直脚)------------18,200円(税別)
・BT38-2三脚(2本つなぎ)--------21,000円(税別)
(株)輝星 (←クリック)のホームページの 「ご購入とお問合せ」 からお問合せください。

JILVA-170の日本仕様試作品とは、大きな望遠鏡を搭載されるユーザー様も多いことから、その対策として15kg程度の搭載まで耐える、SWAT-350(ユニテックでOEM)の頑丈なフローティングウォームホイール式のターンテーブルに換装したモデルです。
専用のBT38三脚は三脚の欠点である「開く」機構を省略し回してたたむようにしたため、小型軽量なのに驚くほどの強度があります。普通のドイツ式赤道儀を搭載されるお客様も多いです。
左がSWAT-350のターンテーブルに換装した「日本仕様試作品」、右が「輸出用バーゲン品」です。

BT38三脚に左はSWAT-350を搭載。右はふつうのドイツ式赤道儀を搭載(ユーザー様の例)

●ポータブル赤道儀(ポタ赤)のコンセプトはノーガイド撮影
ポタ赤の誕生と経緯は過去のブログ「ポータブル赤道儀という用語」に書かせていただきました。
星爺は12年前まで天文雑誌の編集を30年ほどやっていて、レンズテストの記事などで大量の星野写真を撮影していました。撮影失敗は許されないので、本来は据付用の30~50キロもある赤道儀に手を加えて高精度化したり、極軸のみにした架台を何台か運搬して使っていました。もちろん400mm望遠レンズ程度まではシャッターを切って「ほっぽりっぱなし」するノーガイド(ノータッチガイド)撮影です。書籍を執筆される著者の先生方も、大型の赤道儀にカメラを搭載してノーガイド撮影をしていました。

「エッ? 小型の赤道儀にカメラを搭載してガイド撮影するのではないの?」 と思う人もいるかもしれませんが、そのような撮影法は元々は天文雑誌の対象読者である小学校高学年から中学生用に考えられたもので、大量に撮影する仕事に使える手法ではありません。雪原に穴を掘ってその中でガイド撮影をしている表紙の写真が大ウケしましたが、天文少年に向けた夢のある演出ということですね。
しかし、大きく重い赤道儀の運搬は大変なので、同様な追尾精度を保ったまま運搬しやすいポータブル赤道儀に仕立てたのが大きめなJILVA-170で、φ162のウォームホイールを使っています。135mm望遠以下用にはデジタル一眼レフボディと同程度の大きさのPanHead EQをご用意しています。
追尾精度の命であるウオームギヤセットをギヤメーカーに依頼すると、JILVA-170と同じくらいの大きさは10万円以上かかります。それでも満足な精度のギヤはなかなか作れません。そこでウオームギヤは特殊な製法で自製して安価に高精度を達成しました。

今回ご紹介するユーザーの皆さんはノーガイドで撮影されています。もちろん弊社は世界で初めてポタ赤にオートガイダー端子を設けたくらいで、ほっぽりっぱなしノーガイドばかり推奨するものではありませんが、ノーガイドでもかなり使える追尾精度を有することはポタ赤の必須条件と考えています。

◆ぎょしゃ座中央の散光星雲 IC405とIC410◆ JILVA-170で撮影:加藤 利仁さん
ペンタックスSDUF天体望遠鏡(口径100mm  焦点距離400mm F4) キヤノンEOSKissX5カメラ(天体改造) ISO3200 露出4分と2分 ノーガイドで22枚撮影してコンポジト合成。

フィルム時代の中判カメラ用のこのレンズは、色収差が激しくて強調処理をすると明るい星の周囲にリングができます。
しかし微光星はずいぶんシャープなので正確な追尾がよくわかります。 ノーガイドでも400mm望遠が撮影できるのはとっても楽ですよね?
JILVA-170にビクセンGP赤道儀の赤緯軸を付けてお使いです。上の写真に搭載しているのは作例写真のペンタックスSDUF 天体望遠鏡ではなくカメラレンズの300mm F4 です。


◆オリオン座の馬の首暗黒星雲付近◆ JILVA-170で撮影:大野 浩之さん
BORG 77ED2 天体望遠鏡 0.7×レデューサ使用(口径77mm 焦点距離357mm F4.6) フジX-T1カメラ(ノーマル) ISO感度不明  ノーガイドで2分露出を4枚コンポジット合成。
望遠レンズよりもシャープな大きめのED天体望遠鏡をお使いです。全面に見られる赤いモヤモヤはカブリではなく淡い分子雲です。このカメラはノーマルでも赤いHα星雲がよく写るようです。
JILVA-170にベンチバーを取り付け、タカハシの赤緯軸パーツを取り付けてドイツ式にしています。


◆ケフェウス座のガーネット・スターとIC1396◆ PanHead EQ PH-1sで撮影:桐山 伸一さん
BORG 36ED 天体望遠鏡 1.1×フラットナー(口径36mm 焦点距離220mm F6.2) キヤノンEOSM3カメラ(天体改造) ISO3200 ノーガイドで露出6分を8枚コンポジット合成。
135mm望遠レンズをノーガイドできるというPanHead EQの公称値よりも長い焦点距離の望遠鏡での撮影ですが、比較的長い6分露出でも追尾エラーが見えないので、製作者としてはヒヤヒヤした後でホッとしています。この星雲は非常に淡いのでかなり難物ですが素晴らしい描写ですね。
PanHead EQ PH-1“s”は、軽量化に留意して単3形乾電池2本(またはUSB電源)で動くモデルです。アルカスイス互換プレートで大きな鏡筒を載せておられますが、ちょっと荷が重い感じもします。今後は左側に見える小型のオートガイダーを使ってさらに長焦点長時間露出を目指すそうです。
PanHead EQでもオートガイドさえすれば1000mmクラスの望遠鏡も使用可能なので、ご要望にお応えして頑丈なターンテーブルに換装したPanHead EQも計画しています。

◆南十字とコールサック付近◆ PanHead EQ PH-1で撮影:村松 俊和さん
70mm F2.8 カメラレンズ 絞りF3.5 キヤノン6Dカメラ(天体改造SEO-SP4) ISO1600 ノーガイド露出3分を12枚コンポジット合成。
南半球に遠征して撮影した南十字星付近の星野です。光害のない夜空での撮影はとくにバックグランドが美しいですね。 虫の這った跡のように見える暗黒星雲の筋が見事です。

●2017年の生産計画
◆PanHead EQ ポータブル赤道儀 PanHead EQ (←クリック) PH-1は隠れた人気のある超小型のポータブル赤道儀です。雲台の感覚で使えるのでパンヘッド EQ(Equatoria)です。 ベテランの人のご購入が多く、上の写真のようにターンテーブルにアルカスイス互換クランプを搭載したモデルや、極軸を強化したモデルなど特注にお応えします。今年はそれらの特注品を標準品として機種を増やします。

◆JILVA-170ポータブル赤道儀 JILVA-170は、Pモーションテストの能率を向上させて、たくさん作り置きして常に在庫を持っておくようにします。

◆オーソドックスなドイツ式赤道儀 JILVA-170のウオームギヤの調子が良いので、同じパーツを使って圧倒的に強度を高めた普通のドイツ式赤道儀を発表する予定です。自動導入対応やそうでないシンプルなモデルも作ります。

◆オートガイダーセットと電子極望 もうすぐポータブル赤道儀に適したオートガイダーセットや電子極望のPoleMasterも取扱を開始します。

◆JILVA-300 ポータブル赤道儀 ウォームホイールφ300で歯数540歯のJILVA-300を発表する予定です。ウォームホイールの自社生産の研究はJILVA-300用で始めたのですが、やっとお披露目できます(下はテスト用の極軸)。

●汎用自動導入モータードライブE-ZEUSⅡ
年末はJILVA-170のPモーションテストで多忙だったため、ご自分で装着されるユーザー様に自動導入装置のE-ZEUSⅡ(←クリック)を何台か出荷しました。皆さんうまく装着されて快調に動いています。
左はタカハシJ型赤道儀に取付けた標準型寒冷地仕様のE-ZEUSⅡ。右は昭和機械製作所 SHOWA25E 赤道儀に取付けた標準型寒冷地仕様のE-ZEUSⅡ。

左は宇治天体精機スカイマックスに取付けたドライバが特別仕様のE-ZEUSⅡ。右は昭和機械製作所SHOWA20E 赤道儀に元々内蔵されていたドライバ回路を流用した標準型E-ZEUSⅡ。

左は宇治天体精機スカイマックスに取付けた標準型E-ZEUSⅡ。右はミカゲ光器の大きな360N型赤道儀に大型用E-ZEUSⅡを取付けるために整備をしているところ。

※株式会社輝星の運営する「SB工房」はこちらです。

JILVA-1702016/11/03 20:20

JILVA-170の出荷が遅れに遅れてお客様に御迷惑をおかけしております。謹んでお詫び申し上げます。
今はとんぼ返りのスケジュールで、オーストラリアに来ています。北半球のポタ赤の精度が南半球で同じかどうかのテストです。
ポータブル赤道儀のPモーションテストが悪天候で進まないのに後ろ髪を引かれる思いです。ACアダプターを忘れてノートPCの電池が心細いので、とりあえずの文面をブログに上げて加筆は帰国後に行います。メールの返信も遅れますが、ご容赦ください。

JILVA-170やユニテック社のSWAT-300/350は、全品のPモーション・テストをするため天候に影響されますが、昨年に引き続きこれほど悪天候になるとは予想しておりませんでした。関東の中でも弊社のある東京の多摩地区はとくに夜間は晴れないようです。
昨年は6月に本ブログを開設いたし、JILVA-170のPモーション・テストが順調に行なえたのは11月の「関東の馬鹿っ晴れ」の次期になってからでした。
今年は10月下旬の晴れ間に、Pモーションの撮影テストがかなりできました。昨年ほどお待たせはしないともいますので、納品は今少しお待ち下さい。ご注文を頂いた皆様方には、個別にメールをお送りさせていただきます。

               左が日本仕様、右が輸出仕様バーゲン品のJILVA-170
               バーゲン期間は今年いっぱいに延長します。

目の前にテスト待ちの個体がズラリと並んでいるのは精神的にも辛いです。これからは晴れの夜が多くなると思います。一晩に5台ほどテストできるので、晴れればテスト作業はすぐに終わり、
その後にターンテーブルや周辺パーツを取付けて仕上げとなります。
よろしくお願い申し上げます。

                       JILVA-170の説明

               
                        撮影法と応用例など

               左が上のぎょしゃ座中央付近を撮影したJILVA-170です。
               ビクセンSPD赤道儀の赤緯軸を搭載しています。
               右はセレストロンの小型シュミットカセグレンを搭載。これ
               にはエンコーダをつけてNEXUSにてスマホに向けた方向
               星図を表示させるため改造中です。


●赤道儀の追尾精度2016/04/06 00:17

●赤道儀の回転の仕組みと必要な精度
写真は20cm赤道儀用のウォームホイールとウォームネジ、それと極軸を支えるベアリングです。その下の図はピリオディックモーション(以下PM)の原因を示した図です(以前の記事の再掲載)。
このように赤道儀はウォームホイールを、ウォームネジ(ウォームはWarmでイモムシの意味)で1日約1回転の超低速かつ超高精度で日周運動で動いて行く星を追尾しているわけですね。

赤道儀に使用されるウォームホイールとウォームネジは、一般品の高速でガンガン回すための減速ギヤとは似て非なる物で、精度が一桁も優秀な専用品ということを念頭に置いてください。
30~40年前の 「赤道儀を購入する人の90%は星野写真撮影に使う」 と言われた時代。星野写真撮影に使える追尾精度がない赤道儀の量産メーカーは姿を消したように思います。それが理由で手を引いたメーカーばかりではないでしょうが、高精度のビクセンさんとタカハシさんだけ残ったのかな?
両社にギヤの精度や製作法をお聞きすると、それはもう通常の機械加工のレベルではなく、夢の様な匠の技や精密加工機械を結集して素晴らしい高精度を達成していることに驚きます。
ビクセンさんは独自の装置でウォームネジの偏芯をテストして合格品を極軸に使っています。それを星爺も真似してウォームネジを数百本作り偏芯テストをして、良い物だけを合格品として極軸に用いるようにしています。※不合格品はこれから作る赤緯軸や微動雲台などに用います。


●追尾精度=追尾の進み遅れの幅=ピリオディックモーション
赤道儀のモーターは通常は水晶発振で動くので、クォーツ時計のように正確に回転します。しかし、モーターだけ正確に回っていても、ギヤなどの精度不足で追尾速度は「速くなったり遅くなったり」を繰り返します。望遠鏡の視界の星(撮影中の星)が、ゆっくり西に動いて行ったら いったん止まった感じになって、今度は東に動いて行って再び西に動く振る舞いを繰り返すわけですね。
この周期的な動きをPM(Periodic Motion)と称し、 PE(Periodic Error)とか、たんに「追尾精度」とも言われます。PMのデータは東西(日周運動方向)の振れ幅の角度で±○″と示します。原理的にふつうはウォームネジ1回転の周期で、ほとんど同じPMの振る舞いが繰り返されます。
PMの振れ幅が星を撮影するレンズの 「最小星像±○″」 より大きいと、そのレンズを追尾できる精度は無いわけですから、PMは星野写真撮影に使う赤道儀のもっとも重要な性能です。

PMの原因には主に上の図と下記に示した4種類があります。各々がウォームネジ1回転の周期を持ち、これらが赤道儀に組み上げた際に全部重なってPMとなって現れます。
信じられないかもしれませんが、長い望遠レンズの星野写真撮影に使用できる追尾精度の赤道儀には、各々の原因になる加工精度に計算上は1/1000mm以下の、一般的な機械加工精度をはるかに超越したものすごい精度が必要です。

①ウォームネジのピッチ誤差(乱れ)によるヨロメキ運動
ウォームネジのピッチが乱れていると追尾速度の進み遅れが生じます。たとえば小型赤道儀の直径70mm程度で歯数144枚のウォームホイールでは、ウォームネジに1/100mmのヨロメキがあると1回転10分の周期で±30″程度のPMとなって現れます。50mm標準レンズの追尾許容誤差は±40″ほどなので追尾可能ですが、長い望遠レンズを追尾できる赤道儀のウォームネジは突拍子もない高精度なのです。

②ウォームネジ軸受けの精度によるスラスト方向のブレ
ウォームネジを支える軸受け部が図の左右にブレると、ネジのピッチ誤差と同様にPMとなって現れます。ピッチ誤差や軸受けの誤差は、慣らし運転(エージング)をしてもほとんど良くなりません。

③ウォームネジの芯出し誤差による1回転毎のトルク変動
これがもっとも強烈なPMの原因なことが多いです。非常に繊細なウォームネジに芯出し誤差(偏芯)が僅かでもあると、ウォームホイールへの押し付けは強くなったり弱くなったりを繰り返します。
強く押し付けられる部分では回転が渋くなるため、モーターは定速回転していてもウォームネジに達するまでのギヤヘッド他のたくさんのギヤの隙間などが縮んでトルクを吸収して回転が遅くなります。弱く押し付けられる部分にさしかかると吸収が反発して速くなって1回転毎のPMが生じます。
トルクの吸収と反発は主にギヤヘッド部で生じますが、モーターの取付部のたわみや伝達ギヤ部でも生じます。ベルト駆動は反対側のベルトとの張力差が大きなPMとなって現れます。

④ウォームネジに付けたスパーギヤの偏芯による速度変動
ウォームネジに付けたスパーギヤが偏心していると、1回転毎にスパーギヤの直径がほんの少しですが大きくなったり小さくなったりを繰り返すので、やはりウォームネジ1回転毎のPMが生じます。
また、スパーギヤ以外のピニオンギヤなどが偏心していると、ウォームネジ1回転のPMとは別に そのギヤの周期のPMが生じます。ギヤ同士の噛合せがキツ過ぎるとトルク変動も発生します。

参考=※バックラッシュを嫌ってウォームネジの押し付けを強くする人がいますが、強くし過ぎるとPMを増長させてしまいます。極軸のウォームネジは優しく緩めに押し付けるべきです。
PMの原因はモーターからウォームネジ/ウォームホイールの摺動部間にあるので、ウォームホイールの大きさに比例してPMは少なくなり  「ウォームホイールの大きさは七難隠す!」 のです。

このようにPMは主に4種類の原因が重なるのですから、偶然に原因同士が相殺されるように赤道儀が組立てられれば、PMは各々の原因の加工精度よりずっと 良くなる場合があります。逆に原因が相乗されて悪くなってしまう場合もあります。なので、PMは設計段階やパーツの加工精度から類推することは難しく、どうしてもアタリ/ハズレが出てしまいます。赤道儀に組立ててからPMの測定をしてみないと追尾精度はわかりません。「追尾精度は赤道儀に聞いてくれ!」って感じですね。
時間をかけて組立てとPMテストを繰り返し、各々の原因をうまく相殺する組立てをすれば、かなり良い精度に追い込むことは可能です。メーカーさんはそれをやっているのかな??
※このようなことから、調子の良い赤道儀は調整やオーバーホールはしない方が無難です。

昔はあり得ないほどの高精度のPMを標榜するメーカーもありましたが、最近はカタログにPMを明記する大手量産メーカーはほとんどなくなりました。根拠の無いデータを出さないのは良心的と言えますが、PMを明記しないのは星野写真撮影の機材としては、いかがなものかとも思いますけどねぇ。

●PMを撮影してみよう!
星野写真を撮影する赤道儀のユーザーさんは、PMを撮影/測定してどれくらいのレンズをガイディング無しのノータッチで使用できるかを確認してみましょう! その結果、あまりにも追尾精度が悪かったらクレームの証拠写真にもなりますし、あり得ない高精度を喧伝するメーカーが出て来て初心者が翻弄されないようにするためにも、天文ファンはPMの測定を常識にするべきと思います。
今回は難しい話は一切省略します。 PMを撮影するレンズでそのまま追尾撮影をしたら、星がちゃんと点像に写るかどうかの簡単な確認だけしてみましょう。 PMの写真が撮れたらぜひ見せてください。ユーザーがPMの写真をたくさん発表すれば、赤道儀の精度向上に寄与すると思います。

上の図はPMの様子をグラフにしたものです。赤道儀の極軸をわざと東西のどちらかにズラして南の天の赤道付近の星空を10分程度露出をすると、星は赤緯方向(図の上下方向)に流れて、このグラフと同じような星の軌跡が写ります。下の上のPMの写真はそんな軌跡を描いていますね。
PMを撮影するレンズは、できるだけ望遠が望ましいです(弊社では1200mmで撮影しています)。 でも、今回は標準レンズでもズームレンズでも望遠鏡でも何でも構いませんので、とにかくPM撮影を体験してみましょう。光害も月明かりも関係ありません。北極星が見えなくてもなんとかなるでしょう。
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・露出時間が長いのでカメラの感度はISO100~ISO200にする。
・絞りは光害に応じてF5.6~F11くらいにする。
・極軸を東西のどちらかに2~3°ズラして赤道儀を設置する。
・星の動きの速い真南の天の赤道を付近を写す。地上高度なら55°くらいのところ。
・夏や冬の天の川の中なら、適当にどこを撮影しても星がたくさん写る。
・今の季節は真南に星が少ないので、他の場所の明るい星を写してもまぁOK。
 ですが、星の動きの速い赤道を離れると測定結果がどんどん甘くなります。
・露出時間は10分程度。光害で露出オーバーならもっと短くする。
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極軸の東西のズラシが大きすぎると、星は赤緯方向にうんと流れて写るので、適宜に調整してみてください。極軸の東西のズレに加えて上下のズレがあると、それが追尾速度に反映されて下の写真の様に星が正しく上下(赤緯方向)に流ず斜めに流れて写りますが、これもまぁOKとしましょう。
◆ウォームホイール歯数144枚の赤道儀はPM(ウォームネジ1回転)の1周期は約10分です。歯数が180枚なら8分、288枚なら5分、360枚なら4分。 1周期分以上の露出でPMを撮影したいです。

300mm望遠で写した普及品のドイツ式赤道儀のPモーション。10分露出で歯数144枚のウォームホイールなので、ちょうどウォームネジ1回転分が写っている。300mm望遠は追尾できない精度であることが一目瞭然。85mm程度ならガイディング無しのノータッチ撮影ができそう。PMは±35″程度。

300mm望遠で写したポタ赤 SWAT-200のPモーション。完全に直線ではなく少し乱れているので、200mm望遠ならば完璧にノータッチ撮影できそう。測定するとPMは±10″以下で公称値のとおり。

このようにPMを撮影してみると、所有する赤道儀の追尾精度の悪さにガッカリする人の方が多いと思います。 安価なポタ赤は標準レンズでもPMが写るほど精度の悪い場合もあると思います。
でもまぁ、上下の星の流れが完全に直線に写らなくても、星の軌跡の太さの2倍程度のPMなら明るい星は滲んで大きく写り、うんと暗い星は流れて淡くなって写らないので、案外使えてしまうものですよ。 もちろん北の方向を写す場合は、日周運動の動きが少ないのでPMの影響はだいぶ減ります。

実際の星野写真の撮影では、ISO1600ならば光害の少ない星空でF2.8で適正露出は1分くらいでF4では2分くらいです。したがって、露出中にうまい具合に上のPMのグラフの星の移動方向が反転する部分に当たれば、追尾精度の良くない赤道儀に望遠レンズを載せても星は点像に写ることがあります。短めの露出で何コマも撮影すると、流れたカットと流れないカットが得られます。なので、追尾の成功率が50%以上あるなら 「それで充分に実用になる!」 という考え方はアリですよね? 
ポータブル赤道儀と露出時間が短くて済む高感度なデジカメの登場で、星野写真はずいぶん気楽なものになりましたね。 感材にお金がかからないことも大きな利点です。

●最後に諸々の補足です
ウォームホイールは高精度なギヤに見えても、実際はそれほど精度は必要ありません。しかし、極軸を取付ける際にウォームホイールが偏心して、1日1回転の間にウォームネジに強く押し付けられる部分と弱く押し付けられる部分が生じ、強く押し付けられる部分でPMを増長することがあります。
そこで弊社では、ウォームホイールの母形を極軸に取付けて赤道儀のダミーに組み込み、実機さながらに極軸を回して歯切りとエージングをするので、ウォームホイールの偏芯はほぼゼロです。

前回の拙稿http://tentai.asablo.jp/blog/2016/03/27/8058123)の補足。
「追尾精度の良くない赤道儀にオートガイダーを常用するのもアリ」と書きましたが、赤道儀の追尾精度があまりにも悪いとオートガイダーが働きにくかったり、ガイド星を雲が通過したりするとガイド星を見失うなどのトラブルが出てしまいます。 やはり赤道儀は追尾精度が命です。

オートガイダーを使う場合は極軸設置もある程度は正確でないと、露出時間が長い場合はガイド星を中心に画面が回転して写ってしまいます。広角でも望遠でも回転角は同じなので厄介です。

三脚などの強度(これが見過ごされていることが多い)が完璧で、追尾精度が完璧で、極軸設置が完璧でも、大気差による天球の歪で長い望遠レンスの追尾が完璧にできるわけではありません。オートガイダーの適宜な投入は面倒ではありますが とても有効な手段です。
 
北極星は歳差で動くので極望のスケールパターンには、2000年、2010年、2015年などの北極星の導入位置のマークが印されていることが多いです。では、古い極望は2016年以降の北極星の位置マークが無いからダメかというと、過去の位置マークが直線的に印されている場合は、その延長上にだいたいの見当で歳差の分だけズラせば、実用上は問題ないと思うのですが、いかがでしょうか?
北極星以外の星も使うスケールパターンの場合も、プラネタリウムソフトの「視位置」で各星の位置を検証してスケールパターンに印すか、だいたいの見当でズラして使うことは充分可能と思います。

●極軸設置のアレコレ2016/03/27 06:22

●極軸設置の必要精度などをまとめます
PoleMaster という極望(極軸望遠鏡)の代わりをするレンズの付いたデジタルカメラが発売されました。パソコンが必要ですが便利な電子極望で、JILVA-170にお使いのユーザー様もおられます。ポータブル赤道儀への装着は簡単なので、ご希望があれば取付金具の製作を請け賜ります。
ふつうのドイツ式赤道儀には 赤緯軸のどこか、通常は極望の穴の上に取付けるようです。その場所に付ける極望(天頂プリズム付きの眼視用)は、1970年ころに高橋製作所から供給されたことがあります。当時高校生だった星爺より1歳年上の九州のYさんがタカハシさんに進言したアイデアです(Yさんはその後ニコンに就職され木曽観測所の105cmシュミットカメラなどを担当されました)。
星爺はまだ使っていませんが、PoleMaster はDPPA法(基礎的な手法はこちらを見てください)のような手法で極軸との平行を校正するので信頼性は高いようです。元々赤道儀に付いている極軸内蔵の極望の校正や据付式赤道儀の設置に使うのにも重宝すると思います。
 しかし、極望の信頼性が高ければ極軸設置が完璧になって、長い望遠レンズの長時間露出ができるわけではありません。 この機会に極望の基本を考えてみましょう。

●撮影レンズと露出に応じた極軸設置の精度
こうした計算は複雑な座標変換を行なって検討しますが、ここでは簡単な図でザックリと説明します。
下の図のように南の星を追尾する場合に注目すると、極軸の方位(東西)の設置ミスは追尾速度と赤緯のズレに影響を与えます。そのため星野写真を撮ると赤緯方向に流れて写ってしまうのです。追尾速度のズレはPモーションがあるので観察しにくいですが、赤緯のズレはガイド鏡の眼視でも撮影でも星を見て観察できます。その星のズレを見て、方位の極軸設置を修正(上下の修正は東北か西北の星を見る)する手法はドリフト法とも呼ばれます(説明は別の機会に)。

図のように極軸設置の東西のズレによる赤緯方向の星の流れ(ズレ)は6時間後に最大になります。
ということは(あくまでも簡略図によるザックリですが)、露出時間が1時間なら赤緯方向の流れは極軸設置ズレの1/6です。正確に計算して念のために もっと厳しく見積もると、1分露出の場合は極軸設置ズレの1/200ほど赤緯方向に流れて写ると考えてください(ぜひ暗記しましょう!)。
たとえば50mmレンズの追尾誤差の許容が±40″とすると、4分露出なら最悪のケースを想定してかなり厳しく見ても極軸設置は1°ズレていてもまったく問題はありません。
JILVA-170に300mm望遠を搭載する場合でも、極軸設置は10′の精度で大丈夫です。

どうも天文ファンは基礎的な計算をしないで機材に凝る傾向がありますね。星爺が編集者時代に計算の記事は嫌われるというので、ちゃんとした記事を怠ったことが原因かもしれませんね。
このように、広角~標準レンズならば極軸設置に高価な極望は無用で、極望代わりの素通しの覗き穴で済むほどラフなものです。200mmくらいの望遠レンズまでなら、15′(月の直径の半分)くらいズレていても無問題なんですよね。それでも追尾に失敗することがあれば、赤道儀の追尾精度がとても悪かったり、撮影中に三脚やカメラがジワッ~と動いてしまうのが原因なことが多いです。
教訓! 撮影失敗を極軸設置のせいにするのは戒めましょう!

●大気の屈折による影響がある
極望や極軸設置の精度とは別の問題になります。
地上から見上げる天球は下の図のように大気による光の屈折で歪んでいます。地平に近づくほど星の光が通過する大気が厚くなるので星は浮き上がって見えます。日の出や日没の太陽は上下が縮んで楕円に見えますよね? それほど大気の屈折は大きいので赤道儀の回転のとおりに星は動きません。長焦点の望遠レンズによる長時間露出では、追尾エラーになって流れて写ってしまいます。
大気の影響は想像以上で、天頂付近以外はかなりの高度でも追尾速度と赤緯方向のズレの両方に影響を与え、全天のどの場所でも長焦点(広角は無問題)を正確に追尾することは不可能です。

下に西空に沈む星の動きと赤道儀の動きの図を示します(星が昇る東側でも同じです)。 これでおわかりのように、低空になるほど星は浮き上がるので極軸を上に向ける必要が生じます。
極軸設置の目安にする北極星も大気の影響で 1.5′くらい浮き上がって見えています。なので、極軸は北極星の見える方向よりも下げなければならないか?…というと、そうではなくて天頂付近はそのままか下げる必要はあり得ますが、全天のあちこちの方向の平均なら逆に 1′弱ほど極軸を上げた方が追尾が正確になります。もちろん、この程度の小さな数値は各誤差に吸収されるので明確には実感できません。しかし、東西の低空の場合はけっこう思い切って上げる必要があります。
            大気の屈折によるに星の軌跡は、うんと誇張して描いてあります

このように大気による屈折で天球が歪んでいることから、正確な極軸設置をしたつもりでも赤道儀の追尾が完璧に高精度でも、長い望遠レンズの場合は追尾はうまく行きません。だいたい500mm以上の長い焦点距離での長時間露出は念のためにガイディングが必要になります。

大気の影響を補正して少しでも正確な追尾をするためには、全天の平均値を鑑みて追尾速度をやや遅くして極軸もやや上げる必要があるわけです。 JILVA-170SWATPanHead EQなどのポタ赤は、キングさんが提唱した「キングスレート」と呼ばれる恒星時の日周運動よりも 0.003%遅い追尾速度を採用しています。 もっと低空の撮影のための、さらに遅い速度設定や極軸の上下の最適化を縦横無尽に行なうのは面倒なので無視していますが…(笑) ていうか、各部の精度はそれなりのバランスで作らないと、一部分だけが無用の過剰品質になってしまいます。

「ボクの極軸設置は正確なので赤緯は全然流れないよ」とか「1000mmや2000mmの望遠鏡でもノータッチで長時間露出の撮影ができるよ」 と言う人はいますが、それは偶然の成せる結果やシーイングの乱れなどで星像がボケて流れが認めにくいからでしょう。 極望で正確な極軸設置を行なって正確に駆動をしたら、天頂付近以外はむしろ赤緯方向(赤経方向も少し)に流れるのが正しいのです。
当然ながら、ドリフト法で極望の光軸を正確に校正することはできません。

●撮影レンズや露出時間によって様々な極軸設置が考えられる
以上のことを鑑みると、星野撮影用赤道儀の極望や機材全体の必要精度のバランスが見えてきます。 極望だけ頑張ってもしょーがないし、いっそ機材の精度は追求しないでノータッチのほっぽりっぱなしで撮影するのはヤメて、広角レンズでもオートガイダーを常用する選択肢だってアリですよ。その反面オートガイダーは面倒なので、とことん各部の精度を追求した機材をノータッチで使用する真逆の選択肢もアリですよね(星爺はコレが好き! 固定撮影並みの気楽さでないと使う気はしません)。

広角~標準レンズによる撮影なら、極望代わりの素通し覗き穴でも充分だし、極軸の方位は方位磁石で上下は分度器などで能率的に行なうことも可能です。 長焦点の場合は電子極望が正確で良いという結論や、ふつうの極望が総合的に最適との結論もあり得ますね(星爺は極望が好き!)。
覗き穴については、JILVA-170のユーザーさんでもある Kojiro さんが、ポラリエを例にして正しくわかりやすい解説をしておられるので、ぜひこちらをご覧ください。
※覗き穴に丸パイプ(ストロー等)を挿して精度アップを試みる人がいますが、そういうものではなくて離れて覗くことがコツであることも、Kojiro さんのブログを見るとわかりますよ!

これは世に出ることのなかったポタ赤 PanHead EQ の最初期型です。フライス加工の精密な筐体で、横に分度器を下げ、方位磁石(コンパス)を置くスリットもあります。方位磁石は取付けたままだとポタ赤やカメラなどの磁力や鉄部で狂うので、周囲に指針を狂わせる鉄骨などのない場所で、赤道儀から50cm以上離して指針を確認し、指針の動きを見て校正しながら赤道儀に近づけ そっと置かないとダメです。
極望は目安のための口径1cm 2.2倍のガリレオ式(スケールパターン無し)を内蔵しました。
こうした極軸設置法を実用に即して改良してゆくのもポタ赤の正常進化と思います。

●3月23日。今晩は半影月食だそうですね2016/03/23 08:04

●半影月食は確認できるでしょうか?
「半影月食は月食とは言わない」 と書いてある書物を何十年か前に読んだ覚えがあります。星爺もそうだろうなぁ…と思います。 なので今晩は半影月食を見るつもりはありません。
図のように半影月食は地球の濃い影(本影)の周囲の 「半影」 と呼ばれる淡い影の部分を月が通過します。が、この部分の影はずいぶん淡いです。月の光度をきちんと測定すれば暗くなっていることが判明すると思います。しかし、肉眼では 「ふつうの満月」とまったく変わらず煌々と輝いて見えるだけです。
満月の端っこが少しでも本影の濃い影に入れば、その部分が少し暗いことはわかりますが、今晩の半影月食は本影からかなり遠い場所を通過します。
           今回は本影からかなり離れたところを満月が通過する半影月食です
       いつの月食だったか忘れましたが、本影に1/4ほど入った皆既月食の写真です

●星爺は大恥をかいた経験があります
50年ほど前の中学生のとき、理科の先生と一緒に 「半影月食を見る会」 を開催したことがあります。その時は本影を少しだけかすったので、意識して見れば確かに満月の端が少しだけ暗く見えたのですが、参加した人達から 「何も起こらないじゃないか!」  「どうなっているんですか?」 と非難轟々で、まったく穴があったら入りたい恥ずかしい思いをしました。 以来、半影月食は月食とは思いません。

天文関連のサイトを見ると、多くは 「半影月食は気が付かないかもしれない」 と但し書きがあります。しかし、せっかくの天文イベントだから(?)でしょうか、けっこう見栄えのする天文現象であるかのような記述も見受けられます。そうした記事を孫引きして情報が一人歩きを始めると、夕方のTVニュースなどで「半影月食を楽しみましょう」 などと放送されかねませんね。 TV中継があったりして(笑)
もちろん若人の人達は、半影月食はほとんど変化無し!と 確認することは大いに意義があります。
半影月食は一人静かに 「満月が半影を通過しているんだなぁ」 と宇宙の動きに思いをはせながら、いつもと変わらない満月を見物するのが良いと思いますよぉ。

●長らく更新していませんでした2016/03/12 00:42

●ピリオディックモーションのテストで体調を崩していました
超高性能ポータブル赤道儀JILVA-170は、1台ごとにピリオディックモーション(以下PM)の測定をして±4~±5″以下を合格品として出荷しています。PMのベンチテスターも所有していますが、現実的な性能を見るために実際の星空を1200mmレンズで撮影して測定しています。
JILVA-170を発売してから未曾有の悪天候が続いて、毎晩徹夜態勢で準備をしても全く晴れません。還暦をとうに過ぎた身にはきつい作業で、とうとう体調を崩してしまいました。
製品の出荷の遅れたことを深くお詫び申し上げます。このところやっと生産が納期に追いつき健康に戻りました。4ヶ月更新していなかったこのブログも精力的に更新してまいります。

輸出用バーゲン品のJILVA-170は早々に完売となり、後半はターンテーブルに次期国内用モデルのパーツを前倒しで投入した中間的な仕様のモデルを供給しました(在庫もあります)。下の写真の左側がそれで、極軸の強度が中型ドイツ式赤道儀の赤緯軸並みにアップされています。
       輸出用バーゲン品のターンテーブルは、ユニテック社のSWAT-200と同じベアリング
       無しの簡単な仕組みです。ポタ赤としては軽量で背が低いので適してますが、重い
       機材を載せると粗動回転の使い心地が悪いので、国内用の試作品は粗動回転部
       に大きなベアリングを2個用いた大型赤道儀と同じ仕組のターンテーブルに換装し
       ています。※輸出用のターンテーブルを国内用に交換するサービスは検討中です。
       
PMとは、赤道儀の日周運動追尾がギヤの精度不足などの複数の要因が重なり 「進み遅れ」を繰り返す現象です。 PMの1周期はウオームネジの1回転になります。±○″と角度で表記します。
たとえば100mm望遠レンズで星を点像に写す追尾エラー許容は約±20″なので、PMがこれに収まっていないと100mm望遠は追尾できません。JILVA-170のPMが控えめに±5″あったとすると300mm望遠レンズ(±7″のエラー許容)をガイディング無しで追尾できます。この性能がポタ赤としてはもちろん、高級な据付式大型赤道儀をも凌駕するものであることは、ベテランの人はよくご存じと思います。
下にPMの図と実際に撮影したJILVA-170のPMのテスト写真を掲げます。
       ウォームホイール歯数144丁のウォームネジが10分で1回転する様子のPM図と、
       右は市販の赤道儀の歯数144丁のPMの写真です。極軸をわざと狂わせて星が
       赤緯方向に流れるようにして得られる写真です。 PMは±20″程度でなかなか
       優秀ですが、ギヤ面の乱れと思われるギザギザが写りました。
       この図からわかるように、2~3分の露出で運良く 「進み遅れ」 が反転するところ
       に当たると、精度の悪い赤道儀でも望遠レンズの追尾ができることもあります。
  
       左はJILVA-170の今までの最低のPMで±8″あります。当然作り直ししました。
       右は今までの最高のPMで±2″以下の滅多にないお宝の個体です。
       なお、JILVA-170は個々にPMの測定写真を添付する予定でしたが、不公平にな
       ったり、「一番良い個体がほしい」とのお客様も多いため、PMの写真は添付しない
       ことにしました。データは保存してあるので、ご要望があればお見せします。

JILVA-170ご愛用者様のブログ 
ご愛用者のブログをお二方ご紹介します。みなさん300mm望遠(エラー許容±7″程度)をガイディング無しのノータッチでコンスタントにお使いいただいています。PM±4~±5″以下を合格として出荷しているのですから当然なのですが、とりあえずほっとしています。
「300mm望遠程度まではノータッチで固定撮影並みに気楽に撮影できる」 そうでなくては星野写真撮影装置としてのポータブル赤道儀の意味が無い…というコンセプトは達成されました。


五藤光学研究所のMARK-X
五藤光学研究所製のマークX赤道儀といえば現在でも人気の高い名機で星爺も所有しています。先日はMARK-Xの極軸のみを愛用している友人のインドネシア日食遠征のために、JILVA-170用の部分微動付赤緯軸の試作品を急遽MARK-X用に仕立てて持って行ってもらいました。
       この赤緯軸は改良を施してJILVA-170用として発売予定です。手動式とオートガイド
       のためのステッピングモーター付きの2種類です。ユニテックのSWATとはコンパチな
       ので使用できます。 マークXやビクセンさんのポラリエ用も作っちゃいましょうか?
       この他、自動導入にも対応するウォームホイールの全周微動も試作中です。

◆MARK-X赤道儀用2軸モータードライブ(期間限定募集)
天体望遠鏡 天体観測機器等の製造・販売、天体望遠鏡ドームの保守・修理、五藤光学研究所製 小型天体望遠鏡の修理・サポート業務を行なっている「五藤テレスコープ株式会社」から、30年以上前に販売され今でも名機の誉れ高いMARK-X赤道儀用の赤経・赤緯2軸モータードライブ装置の「期間限定募集」が行なわれています。http://gototelesco.co.jp/md_for_mx_2.html ←〆切になったそうです。
一昨年に販売されたものと同じで、価格は少しアップしたようですが、予定価格 68,000円(送料込・消費税別)と非常に安いです。
旧来のPM型ステッピングモーターではなく、最新の2相ハイブリッド型ステッピングモーターのマイクロステップ駆動です。そのため50倍速でも回ります。普通に五藤光学さんや他のメーカーさんが作ったら、間違いなく15万円以上はするでしょう。 JILVA-170用にも使わせてもらえませんかねぇ?
----と書くと、「最近は中国製と思しき駆動回路が2000円程度で出まわっているからねぇ」 「ギヤヘッド無しのモーターならバッタ品で1000円くらいだよねぇ」 と電気に詳しい人は思うかもしれませんが、このシステムがどこの研究所でどう作られたか等、蛇の道は蛇で星爺にはだいたい分かるんですよね(笑)。
赤道儀用に完全に新設計された国産の駆動回路で、モーターもマイクロステップ間隔の優秀な物が採用されています。モーターハウジングの中身は、五藤光学さん お家芸の能率の良い減速ギヤが組み込まれています。
不思議なほど安価で優秀な、この「MARK-X赤道儀用2軸モータードライブ」、期間限定募集は3月までなので必要な人はお早めに!

●JILVA-170の進捗2015/11/11 11:54

●たくさんのご注文をいただきました
輸出用の余剰パーツを使った特別価格のJILVA-170は驚くほど好評でした。多数のご注文に対して出荷がまったく追いつかず、大変ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。
必需品の上下方位微動台座が付いて税込み98,000円が安価なのかもしれませんが、「大きなウォームホイールは正義!」 「ウォームホイールの大きさに比例して強度も精度も向上する」 という、実にシンプルなJILVA-170のコンセプトを理解していただいたからと思います。
余剰パーツはすぐに無くなって2回も増産しました。増産したモデルはユニテックのSWAT-350のターンテーブルに換装したさらに頑丈な設計です。年末に発表する 「国内仕様」 を鑑みた量産試作で、少し割増料金を頂戴しています。このモデルなら現在もご注文を受け付けています。

       お名前を貼って出荷を待つJILVA-170。個体ごとに実際の星でPモーションを
       測定して、毎日2台ほど仕上げて出荷しています。ご注文をくださったお客様に
       は完成をメールでご連絡の上、逐次出荷させていただいております。
       取説の一部です。クリックすると拡大されますので仕組みの概要をご覧ください。     
       ユーザー様のJILVA-170です。このくらい丈夫な三脚に搭載すると快適です。
       微動付の自作赤緯軸を取り付けて立派なドイツ式赤道儀にされて、星野写真
       だけでなく普通の赤道儀として太陽観測などにも使用されているようです。
       大きな画像をアップしましたので、クリックして拡大しシャープな星像と追尾精度
       の完璧なことを確認してください。とも座のM46とM47(NGC2242)です。
       JILVA-170に自由雲台一つで200mmF2.8望遠レンズを載せて4分露出しました。
       JILVA-170にはオートガイダーの端子もありますが、大きなウォームホイールで
       バランスの崩れにはことのほか強いので、「雲台一つをポンと付け」 てガイディ
       ングはしない、固定撮影並みのお手軽撮影も得意です。


●国内用のモデルは2種類作ることにしました
下左の写真は輸出仕様(Export Version)のJILVA-170です。右はターンテーブルをSWAT-350用に換装した国内仕様の試作モデル(モックアップなので電装品などは付いていません)です。
SWAT-350のターンテーブルは外見からはわかりにくいですが、大型の据え付け式赤道儀と同様のベアリングレイアウトで過剰品質なほど頑丈です。かなり重くなるのが欠点ですが実際に使用するととても快適で、赤緯軸や大きな望遠鏡を搭載する目的にはとくに適しています。
       右は国内仕様のJILVA-170のモックアップモデルにSWAT-350のターンテーブル
       を載せ、ベンチバーに雲台を取り付けてバランスを確認しているところ。

一方、ザックにポータブル赤道儀を詰めて遠征する天文ファン用に、輸出仕様をベースに徹底的に軽量化したモデルも年末の発表に向けて鋭意開発中です。現行JILVA-170の約半分の重量です。
  (1)国内仕様のJILVA-170--Japanese Version
  (2)軽量仕様のJILVA-170--Ultra Light
新製品は以上の2種類になります。
量産試作の最中なので、今のうちにご希望などをお寄せいただければ幸いです。
       Ultra Lightのパーツです。現行JILVA-170の本体円盤の厚さ23mmに対して13.2
       mmで、周囲に衝撃吸収のためのゴムリングが付き((赤いリングにするかも?)、
       外形は10mm小さくなります。極軸は同じですが薄型ベアリングを使います。
       市販のアルカスイス互換のキャッチャーは強度不足なので、「3点トラス締め」 の
       頑丈なアルカスイス互換キャッチャーを作り(写真は黒アルマイト無しの試作)、
       これを標準装備します。
       上下方位微動台座を取外し式の別売にすることで、低価格と現行JILVA-170の
       半分の重量を目指します。


※株式会社輝星の運営する「SB工房」はこちらです。

●JILVA-170出荷しています2015/10/02 21:03

●頑丈なBT三脚の試作が完成しました
(株)輝星が新発売する天文用三脚は、BT (Breakthrough…障壁となっていた問題の突破)) 三脚と称します。 直脚がBT38-1で 2本つなぎがBT38-238はアルミパイプの直径38mmのことです。
非常に頑丈で三脚の根本のヨジレが少ないことが大きな特長。JILVA-170用にも最適です。

天体望遠鏡は観測地で移動や設置を繰り返すことはないので、三脚の開脚/折りたたみは頻繁には行ないません。しかし、天体望遠鏡の三脚は測量用やカメラ用が起源のため(?) 三脚の根本がヒンジの開脚式です。このヒンジ部が大きな障壁(Break)となって強度不足でヨジレが発生します。
BT三脚には開脚のヒンジはありません。三脚パイプの斜め断面を直接強固に固定するため、ヨジレに対する強度は圧倒的です。カメラ三脚とは比較にならず望遠鏡三脚よりも頑丈です。脚の1本を固定しておき、他の2本をくるりと回してたためるので可搬性も良好。約2.5kgと軽量です。
石突(スパイク)を上下微動スパイクと交換すれば、ポータブル赤道儀などの極軸上下調整も接地部分で簡単に行なうことができます。
※トップディスクに左右(方位)微動をつけたモデルも近日中に発表します。南側の脚に上下微動スパイクを付けて併用すれば、極軸上下左右微動台座の無いポータブル赤道儀用にも便利です。
       ●画像をクリックすると拡大します。
       φ40パイプのビクセン互換三脚との比較。互換三脚の地上高は650mm、
       左の2本つなぎ式のBT38-2は600mm、BT38-1は870mmの地上高です。
       BT三脚の重量はビクセン互換の約5kgに対して半分の約2.5kgと軽量です。
       脚の1本だけ固定しておき、他の2本をくるりと回すと3本の脚が平行になります。
       BT38-2のパイプつなぎは想像以上に頑丈で直脚と大差はありません。
       φ38アルミパイプの楕円の縁がトップディスクに押し付けられて安定します。
       中心の止めネジはM8キャップボルトで横に補助のM4止めネジ穴があります。
       脚の1本を2本のネジで固定しておき、脚2本を回してレンチで締め付けます。
       石突(スパイク)はコストダウンのため袋ナットと高ナットで、約20mmの高さ調
       節ができます。右は上下微動付きスパイクに交換したところで、ポタ赤の極軸
       設置用上下微動として(地面に近く少々使いにくいですが)強度はピカイチです。
       スパイクのネジはGITZO互換の3/8インチです。左はGITZOのスパイクを付けた
       ところ。中央が標準品の袋ナット+高ナットのスパイク。右が上下微動のスパイク
       でハンドルでスムーズに動きます。脚3本とも上下微動をつけるのもお勧めです。
       別売の「スタビライザー」を併用すると、トップディスクと一体の強固なトラス・
       ラーメン構造になります。BT三脚は元々が頑丈なので小型ポタ赤には強いて
       必要ではありませんが、大きな赤道儀を搭載する場合はとても有効です。
       左は数年前の試作の原型に試みにタカハシEM200赤道儀と127mmの屈折望
       遠鏡を搭載したところ。脚パイプの太さは強度にはあまり関係がないので快適
       に実用できました。右はJILVA-170とSWAT-350を搭載したところ。

●BT三脚のモニター募集!
量産試作を兼ねて先着10名様のモニターを募集します。下記予定価格の30%引きでご提供します。
ご購入後に「厳しいお叱りやご意見」 を一言賜ることを条件とさせていただきます。
モニターは(株)輝星 のホームページの 「ご購入とお問合せ」 からお申し込みください。
納期は11月中旬になります。
モニター様のご意見を参考に脚の長さやスパイクの規格を最終決定することが目的のため、モニター用のご注文分は脚の長さはオーダーで承ります。

JILVA-170はそのまま取付けられます。他の赤道儀にはアダプターで対応します。アタプターはサービス価格で添付させていただきます。多くの赤道儀用に量産試作をしてみたいです。

BT三脚の予定価格とスペック(モニター様には予価の30%値引きでご提供)
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BT38-1----予価:26,000円 (直脚、長さ指定870mm以下)
BT38-2----予価::30,000円 (2本つなぎ脚、トータル長さ指定870mm以下)
上下微動スパイク----予価:3,000円、3本セットは7,000円。
スタビライザー---------予価:3,000
重 量:BT38-1、BT38-2とも約2.5kg
外 観:φ38脚アルミパイプはサンドブラスト+化学研磨+白アルマイトの美品。
     高ナット以外のネジはステンレス。トップディスクとスタビライザーは削り出しママ。
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●JILVA-170の出荷状況
超高性能ポータブル赤道儀JILVA-170は実際の星空でPモーションを測定するため、未曾有の悪天候で出荷がずいぶん遅れています。たいへん申し訳ありません。
このところの晴天で、ご注文分のPモーション測定はほぼ完了いたしました。ご注文をいただいた順番に、メールでご連絡させていただいた上で逐次発送を行なっております。
※今回の輸出用JILVA-170のバーゲン品は完売となりましたが、2~3台の余剰部品が出ましたので、なお若干のご注文を承れます。ご入用のお客様は早めにお問合せください。    

JILVA-170は歴史的名機である三鷹光器GN-170やタカハシNJP赤道儀の 「大きなウォームホイールの極軸部だけ切り取ったような高性能ポタ赤があったら良いな」 「300mmくらいの望遠レンズまではガイディング無しで撮影したい」 という天体写真ファンの夢を実現した、ウォームホイールがφ162mmもある大型のポータブル赤道儀です。
今回のJILVA-170は、今年初めに生産した輸出用の余剰パーツを利用して組み立てます。そのため、かなりのバーゲン価格になっています(98,000円)。 年末にデビューする国内用JILVA-170のモニター用でもあり、ユーザーの皆様のご意見を反映して製品開発をして参ります。 
      JILVA-170をBT三脚に搭載したところ。ターンテーブルの上の東西にカメラを
      搭載したアルミバーは 「ベンチアーム」という名のアクセサリーです。 必需品
      なので、ご注文されたお客様には標準品として添付させていただいています。
      外付け極望は、弊社のナンチャッテ正立極望、ユニテックさんのSWATシリーズ
      用極軸望遠鏡ポラリエタイプなどを付けられます。取り付け位置は4箇所。
      電源は標準添付の単3型乾電池6本で一晩動きます。DC-DCコンバータ内蔵
      で、入力は4V~12VなのでUSB電源やカーバッテリーも使えます。

すべての個体を実際の星でPモーションの撮影をして、±4~5″以下を合格として出荷しているため、納期が天候に左右されることをご了承ください。±5″は詳細画素になったデジカメにかなりシャープな300mm望遠レンズを搭載して、ある程度長い時間をノータッチ追尾できる精度です。
ユニテック(株)様のポタ赤 SWAT-300/350も弊社の製作で、同様に全ての個体でPモーションテストをして±7″以下を合格品としています。10月13日のブログに、SWAT-350による焦点距離540mmを3分間ノータッチ追尾した作例がありますのでご覧ください。
※撮影する天空により、極軸設置や大気差による追尾エラーが発生することはあります。

それにしても今年の夏の天候の悪さは、23年前にペルセウス座流星群が極大の8月13日のたった1日しか晴れなかった夏以来ではないでしょうか? 9月を過ぎて昼間は晴れても夜になると曇って星の見えないのは、もしかしたら数十年ぶりのことかもしれません。

●JILVA-170の同軸親子ネジ式上下微動
輸出用のフォーク式上下左右微動台座の上下微動は、左右の押しネジと引きネジで行なっていました。これは三鷹光器さんが好んで採用する方式で、低コストで頑丈な良い仕組みなのですが、その構造から軽量化を図ると上下だけでなく左右も少し動いてしまう欠点がありました。出荷中のJILVA-170は、オリジナルの親子ネジを使った同軸の微動装置で、大きなハンドルが押しネジで内側の小さなハンドルが引きネジになっています。このため、きわめてスムーズな極軸設置が可能になりました。
      ステンレス製フォークの形状をリメイクし、左右一対だった上下微動の押し引き
      ネジを同軸の親子ネジにしました。中央の小さなハンドルの引きネジは最終固定
      用で、通常は大きなハンドルの操作だけでスムーズに上下調整ができます。

●望遠鏡三脚と専用三脚
JILVA-170はカメラ用三脚に取り付けられるようになっていますが、あくまでも“臨時”のためのものです。実力を発揮させるには、BT三脚や望遠鏡用の頑丈な三脚をお使いください。
フォーク式上下左右微動台座の下側の円盤は、フランス製GITZOシステム三脚の3型に嵌合できるようになっています。カメラ用三脚をお使いになる場合は同形式のGITZOをお勧めします。 GITZOの5型や他の望遠鏡三脚に搭載するには、ご注文に応じてアダプターで対応いたします。
      左は市販品のビクセンコンパチ三脚でパイプの太さφ50mmのもっとも頑丈なも
      のに取り付けたところ。 この程度の三脚だと中型赤道儀並みの強度になります。
      右はこの記事の先頭でご紹介した JILVA-170に最適なBT三脚と上部のトップデ
      ィスク構造。BT三脚のアルミパイプはφ38mm t1.5mm。

※株式会社輝星の運営する「SB工房」はこちらです。

●アポクロマートという用語2015/09/05 06:50

早起きしてこのページの文字校正をしていたら大失態! 全部消してしまいました。
ブログの画面に直書きしているので元原稿はありません(泣)。
とりあえず思い出しながら書き直してみます。いただいたコメントも一緒に消えました。思い出してお返事したいと思います。
半日経って----おかげさまで何人かの読者の方から本文を送っていただきました。書き直したのと一部を一緒にして新原稿としました。どうもありがとうございました。

●吉田正太郎先生の訃報
天文学者で光学設計や歯車の理論でも日本の技術の発展に多大な功績を残された、吉田正太郎(よしだしょうたろう)東北大学名誉教授が、7月30日に永眠されました。享年102歳でした。心からご冥福をお祈りいたします。
吉田先生は1934年に東京帝国大学(現東京大学)理学部天文学科を2年飛び級で進級して卒業後、東京帝国大学、東北帝国大学(現東北大学)を経て、1960年から東北大学教授として、天体測定や光学、歯車などをご研究されました。
「日本の光学の父」 とも言える吉田先生は 「明るい単玉非球面レンズ」 も発明され、CDやDVDの読み取りレンズとして世界中で使われています。星爺が「特許を取っていたら大金持ちでしたね!」と不遜なことを申し上げると 「税金で研究させてもらっている国立大学の研究者にとって特許は国民のものなので取得しません」 と言われました。光学設計の基礎や裏話も教えてくださり、『天文アマチュアのための望遠鏡光学』『光学機器大全』(誠文堂新光社)などの書籍を作らせていただきました。
今回は吉田正太郎先生のご遺志でもあるアポクロマートのお話です。

●3色色消しレンズがアポクロマート
若人の皆さんは、屈折率と分散が異なる硝材(しょうざい--レンズの材料)を組み合せると色収差の少ない 「色消しレンズ」 ができることはご存じと思います。
凸レンズと凹レンズ1枚ずつの2枚玉では、紫色~赤色までの白色光に含まれる光のうち2つ(2色)の波長で結像位置を一致させることができ、このようなレンズが「アクロマート色消しレンズ」ですね。双眼鏡や望遠鏡の対物レンズに多用されています。
通常は赤いC線と青いF線のC/F色消しで、入射する光線の球面収差の平均が最小になるように、中心から70%付近で正と負の球面収差を交差させます(下の図を拡大してください)。
下の設計例の図を見ると補正されていない紫色の g 線が ずいぶん後方にずれていて、このためアクロマートは像にボケた青~紫色がまとわりついて見えます。
       赤いC線と青いF線で2色色消しにした一般的なアクロマート対物レンズ。
       紫色のg線が取り残されたように後方に2mmほども離れていてます。
       口径10cm F10の例で黄色のd線が基準です(以下、収差図は同様)

アクロマートをもっと進歩させて、3つ(3色)の波長で色収差が補正され、2つの波長で球面収差とコマ収差が補正される等の条件を満たす高性能なレンズを3色色消しの 「アポクロマート」 と言います。3つの波長で色収差が補正されているだけでもアポクロマートと言うことがあります。
光学理論は奥が深い(吉田先生によると天文学並みの数学が必要らしい)ですが、通常は2色色消しは2枚のレンズ、3色色消しは3枚のレンズでないと補正できません。
 ・2色色消し=アクロマート
 ・3色色消し=アポクロマート
今は知りませんが、昔の工業高校の教科書には色消しレンズの定義は載っていて、常識とされる知識ですから、アクロマートとアポクロマートの違いを覚えておいてください。

●2枚玉でもアポクロマート
2枚玉の対物レンズでもフローライトやいわゆるED硝材を使ったアポクロマート天体望遠鏡というのが多数販売されています。3色色消しアポクロマートではないので、これらのレンズが登場したころ星爺は 「これはマズイなぁ」 と思ったのですが、カタログなどをよく見ると必ず 「フローライト・アポクロマート」「ED・アポクロマート」 と記されています。これは“○○硝材を使ったアポクロマート並みの高性能レンズ”という意味であり、商品名に含まれる冠称のようなものと解釈しました。
吉田正太郎先生にご相談すると、異常分散硝材を使用した2枚玉の対物レンズは、2色色消しではあるが通常の硝材を使った3枚玉のアポクロマートよりも色消し性能は高いほどなので、アポクロマートの表現は許しましょうということになりました。それからの記事では必ず「いわゆるEDアポクロマート」などと、いわゆる付きで記載することにしました。

2色色消しのアクロマートは一般的に凸レンズにBK7硝材を凹レンズにF2硝材を使います。他の硝材でもっと色消し性能の良いのはできないのか? と誰しも思いますが、ほんの少し良くなる例はあってもそんなに好都合な硝材はありません…というところに登場したのが異常分散硝材なのです。2枚玉でも一 足飛びに総合的な色収差補正が通常の硝材の3枚玉アポクロマートに匹敵またはそれ以上になるのですから、こんなに好都合でウマイ話はありません!
     左が古いタイプのED硝材を使ったEDアポクロマートで紫色のg線が過修正の球面
     収差を伴って後方にズレています。右は3枚玉のフローライトアポクロマートです。
     左のEDでもアクロマートに比べると色収差は1/5、右の3枚玉は1/10くらいです。

●断然すごい異常分散硝材の2枚玉

凸 レンズに使われるフローライトやEDは 「部分分散性をもった異常分散硝材」で、設計者は異常分散と言うことが多いです。カタログに 「特殊低分散ガラス」 などと書かれることがあるのは“異常”のイメージを嫌ったからでしょうか? 異常なほど個性的な硝材で相反する個性的な硝材の凹レンズと組み合せると、2色色消しでも総合の色収差はアポクロマート並で、問題のg線は中央は結像位置に近く過修正の球面収差を伴うため少しだけずれる高性能な対物レンズになります(上左の図)。
眼視ではこのg線が他の色と混ざって、青緑がかった独特の色収差が少し見えます。ほんの少しなのでかえって濃く見えます。このことが本来は2色色消しの悲しさと言えるかもしれません。
Fの明るめの望遠鏡を望遠レンズの代用として直焦点で星野写真を撮影すると、青い色の明るい星が少しにじんだ雰囲気の良い(と思っているのは星爺だけ?)写真が撮れます。

フローライトはガラスではなく螢石(ほたるいし、ケイセキ、CaF2)の結晶です。理科で習うモース硬度は4で方解石よりもやや硬い程度のとても柔 らかい硝材です。そこで代替品として登場したのが、いわゆるEDガラスです。いわゆると書いたのは、EDは製品になった時の商品名であり、UD、 LD、SDなどと記されることもあるからです。さらに、いわゆるEDにはおおまかに2種類があります。
フローライトと同等の性能のED硝材は、日本のオハラでは FPL53、HOYAでは FCD100と言いドイツのSCHOTTには同等品は無いようです。これらはスーパーEDとかSDなどと称されることもあります。
過去にたくさん使われたのが性能がやや劣るタイプのED硝材で、オハラでは FPL51、HOYAでは FCD1、SCHOTTでは PK52Aと言います。たとえば同じ口径のFPL51系でFPL53やフローライトのF8と同等の色消し性能を得るにはF10程度に暗くしないとなりません(ざっくりとした比較ですが)。

いわゆるEDアポクロマートの黎明期に、ニコンの10cm EDアポクロマートはセオリー通りに暗くして余裕を持ったF12でした。ペンタックスが 口径75mm~125mmまで全部 F6.4にしたのは(P.S.読者の方からご指摘をいただきました。75mmと105mmはF6.7でした。書きなぐってアップしてから校正して何度も手直しするので完成原稿は数日後になってしまいます。すみません)、望遠レンズとしても使用するため F5.6とF8の中間のF6.4にしたくて、承知のうえで高倍率の眼視性能を犠牲にしたのではないでしょうか。しかし、天下のペンタックスがやったからOKと思ったか? その後の他メーカーのいわゆるEDアポクロマートが、Fの明るいものばかりになるという悪影響を与えたかもしれません。
2枚玉EDを検討する際には、FPL51か? FPL53 か? とF値に注目する必要があります。

●3枚玉アポクロマート
いわゆる2枚玉アポクロマートは、上記のようにg線の色収差が少しだけ残っていますが、価格の安いことや軽量なこと、製品にバラツキが少ないことや温度順応が早いことなどから見直される傾向にあるようです。タカハシさんや五藤テレスコープさんからもFの暗めの新製品が出ましたね。
星爺はビクセンさんが20年以上前に販売していたフローライトの9cmと10cmで F9と暗めの天体望遠鏡を2本、今でも愛用しています。 凹レンズに理想的なKzF5硝材を使用した名機です。
9月4日にタカハシさんから口径10cm F9のFC-100DLが発売されました。凹レンズの硝材は未発表ですが、わかりやすい収差図が発表されています。眼視に特化させるなら球面収差が総合的に交差する場所をもっと中央に寄せて、g線をもっと離して淡く見えにくくしてしまう味付けもアリです。が、FC-100DLはその逆でレンズを少し厚くして(推測ですよ。色収差はわずかに広がります)g線をできるだけ寄せているので青紫のニジミがかなり少なく、星野や月面写真などが相当シャープに写りそうなことが読み解けます。FC-100DLは純然たる眼視用望遠鏡ですが、F9と暗めな恩恵もあって各色の球面収差が非常に少なく高性能なので、写真撮影用にも味付けする余裕があったのでしょう。

正真正銘の3枚玉のアポクロマートにも異常分散硝材が投入されるようになりました。3枚玉になると他の硝材の選択など設計の自由度が大きくなるのでFPL51とFPL53の差はあまりなくなります。硝材の選択肢が多いので設計を推測することはまず不可能になります。
3枚のレンズをオイルで貼り合せたタイプは貼り合せ面が無反射になるのでクリアーな視界で温度順応も早いです。しかし設計の自由度が少ないためか近年は姿を消して分離式(エアースペース)がほとんどになりました。設計上の性能はどの望遠鏡も素晴らしいはずですが、とくにFの明るいものは研磨や組立調整に敏感なので信用あるメーカーの製品を選びたいものです。

3枚玉の間隔を離すとさらに設計の自由度が増して、もっと高性能な天体望遠鏡を作ることができます。アストロフィジックスの製品やタカハシさんのTOA、ビクセンさんのAX103Sがそれです。収差補正に敏感になるので組立調整はものすごい精度が必要になると思います。
      タカハシさんのフラッグシップ機TOA150。口径150mm F7.3 焦点距離1100mm。
      3枚のレンズ間隔を離していて同社では「TOA型アポクロマート」と称しています。

●眼視/写真兼用のペッツバール
眼視/写真兼用(フォトビジュアル)のペッツバールタイプの望遠鏡も高性能で人気です。原型は日本は江戸時代の190年も前にオーストリアのペッツバールが発明したもので、望遠鏡が像面の平坦性が重要なカメラレンズに進化する第一歩と言えるレンズです。2枚玉が前後に配置された4枚玉です。なんと! 星爺が小学生の頃までダルメヤー3Bなどのペッツバールが使われていました。像面を平坦化したと言ってもまだまだ不足なため、かなりの大判で人物のポートレートを撮ると 「周辺がきれいにボケる」 ため、写場では重宝されたのです。モノクロ専用で人像玉とかバカ玉と言われていました。

天体望遠鏡に採用したのはテレビュー社が最初だと思います。現代の設計なので当然3色色消しアポクロマートでFも明るくできます。視界の中央しか撮影しない天体写真には像の平坦性は充分で、ほとんど望遠鏡に近いので眼視性能も優れた二刀流の高性能望遠鏡になります。
タカハシさんのFSQはペッツバールタイプのフォトビジュアルです。昔のペンタックスさんのSDP望遠鏡も(色収差がけっこう残っていた2枚玉+フラットナーのEDHFやSDHFから一挙に進化した)ペッツバールです。たいてい原型とは大きく異なる設計なので、独自の設計とするメーカーさんもあれば、先達に敬意を表してペッツバールと称するメーカーさんもあります(後者のほうが好感が持てますねぇ)。
      ペッツバールタイプの原型。望遠鏡レンズが写真レンズ寄りに進化したもの
      高橋製作所のFSQ106型 口径106mm F5(FL530mm)のペッツバールタイプは
      FPL53系の硝材を2枚採用した贅沢な設計で、天体写真ファン垂涎の望遠鏡

P.S.専門家の方から情報をいただきました。ビクセンさんの 「ネオアクロマート」 という望遠鏡は、異常分散硝材でないペッツバールですね。設計を推測して検証したら高性能なフォトビジュアル望遠鏡ですね! 口径140mmで焦点距離が長いのに一世代前の高級な300mm F2.8望遠レンズ程度のかなりのシャープさです(青ニジミは出ますが)。低倍率専用ということでアクロマートのFを無理に明るくした廉価品とは全然モノが違う! ネオアクロマートという誠実な名称で損をしたかも? 生産中止になったようなので、異常分散硝材のお手頃価格のペッツバールが登場するのでしょうか?

●便利なレデューサー
アクセサリーとして人気のある「レデューサー」についても簡単に説明しておきます。焦点距離を縮めるレデューサーは結像全体を小さくするので、星像は縮めた分だけシャープになる傾向があります。周辺減光や像の平坦性は縮めた分だけ悪くなりますが最近のレデューサーは平坦性もある程度は保ちます。無理なく縮める限度は0.7倍くらいです。2枚玉との組合せが良いですね。
望遠鏡は口径が大きくなると比例して収差も増えます。鏡筒の断面図を拡大コピーする感じをイメージしてください。たとえば口径50mm F10が口径100mm F10になれば収差は2倍になります(本来は口径が大きいとFを暗くする必要がある)。凹面の像面弯曲は2倍ゆるやかになります。設計にもよりますが、屈折望遠鏡は焦点距離が1000mmを超えれば35mm判フルサイズでも平坦化レンズはほぼ不要です。平坦化レンズは小口径(像面弯曲の強い短焦点)ほど良い物が必要になります。
たんなる平坦化レンズ(フラットナー)ならば、パワーのない(少ない)分厚いメニスク単レンズが収差に影響を与えないので良いです。タカハシさん等には別売のフラットナーがあり、ビクセンさんのAX103Sや昔のペンタックスさんのEDHFなどは最初からこの類のフラットナーが入っています。

黎明期のレデューサーは双眼鏡の対物レンズを使った「ナンチャッテ」がありました。対物レンズの焦点距離が長ければ充分実用になるので、まがい物と言うわけでもありませんが、平坦性が悪いものも散見されました。最近のレデューサーは本物が多いですが、あんまりしっかり設計されたレデューサーは、指定の望遠鏡以外に装着すると周辺像が悪くなることもあります。周辺像が悪くなる原因はコマ収差と思われることが多いようですが、屈折望遠鏡は非点収差のサジッタルとメリディオナルが重なって星像に尾が生えたり三角形になったりすることが多いです。

ナンチャッテ・レデューサーでよければ、双眼鏡の対物レンズやカメラ用のクローズアップレンズでも適当に代用は可能です。Rの強い面を望遠鏡の対物レンズに向けてください。光学設計をして平坦性や非点収差を確認すれば、かなり良いものを自作できます。
本気で設計するなら前群と後群に分けて間隔を広げます。そんなのを作ったら望遠鏡より高価だろう…と思ったら、あったのですね! BORGの EDレデューサーF4DG。今は生産中止ですが。

●最後に諸々を箇条書き
・ペッツバール望遠鏡が人気なので、さらに写真レンズ寄りに進化したエルノスタータイプなどの天体望遠鏡も当然のように登場してきました。ただし、とくに眼視性能はまだ様子見の段階と思います。高詳細になったデジカメに対応するシャープな星像を結ぶかどうかも注目ですね。

・アポクロマートでもFが暗い方が高性能なことは変わりません。口径が大きいほどFを暗くする必要があります。色収差以外に、焦点像が大きい(アイピースで強拡大しない)、光線の角度が小さい、組立て誤差などの影響が少ない等、Fが暗いと様々な面で有利で 「Fの暗さは七難隠す!」 。

・メーカーのインフォメイションに 「優れたレンズ設計が云々」 と記されていることがありますが、単純な2枚玉の場合は硝材を決めたらレンズ設計はたんなる幾何学計算なので答えは同じですから、味付け程度の違いしか出すことはできません。設計云々は宣伝文句ととらえるべきでしょう。

・デジカメ用の高性能ズームなどはすごい設計ですが、望遠鏡用対物レンズの設計はけっこう簡単です。2枚(3枚)玉の無限遠だけの設計ですからね。しかし、実際の生産現場と連携した精度の維持やテスト法、さらにコストを鑑みると多くのノウハウがあり、設計だけ優秀でも片手落ちです。

・アクロマートでも高性能品は良く見えると言う人がいますが、上記のように設計は同様なので粗悪品でなければアクロマートの性能は全部同じと考えてください。色収差については、いわゆるアポクロマートとは雲泥の差です。Fの明るいアクロマートはがっかりする見え味のことが多いです。

・アクロマートでも小口径で Fが暗ければ星像はずいぶんシャープに見えて、とくに二重星の観測は満足できます。しかし、月面や惑星はシャープに見えるからと倍率を上げると、強拡大された像が薄暗く見えて不愉快です。シャープさ以前に口径が大きいと像が明るくて見やすいです。

・アクロマートの紫色のg線の色収差は、はなはだしく後方にズレてピンボケで拡散して薄れるので、暗い天体を見る場合には気になりません(怪我の功名?)。昼間に遠くの樹の枝などを見ると青紫色がものすごく不愉快に感じます。星野写真を撮ると青い星が“巨大”に写ります。

・反射望遠鏡は入射した光の角度が倍になって反射しますが、屈折望遠鏡は入射した光は屈折率(BK7硝材なら1.51633)の分しか曲がらないので、研磨の精度は圧倒的に寛容です。なので屈折望遠鏡は 「匠の研磨した○○鏡」 と言われることはありません。そう言う人がいたら勘違いですね。

・クルマで望遠鏡を観測地まで運搬したら、レンズを外気温になじませるため、すぐに外に出しましょう。気温の違いでレンズが微妙に変形するだけでなく、フローライトやEDは温度で屈折率も変わる性質があります。レンズの離れた分離式やレンズ枚数の多い望遠鏡はとくに要注意です。

※いただいたコメントは消えてしまいました。覚えている範囲でまとめて書きたいと思います。