●終活のイギリス式赤道儀2018/02/06 05:27

●30年ほど様々な仕様で使い倒して、最後は「イギリス式赤道儀」に改造して星爺のベランダに置いてあった、宇治天体精機のスカイマックス赤道儀。 このたび、めでたくもらわれてゆき、 リストアが進んでいます。 星爺は、この先いつまで使えるかわからないので、いわゆる「終活」ですね(笑)

もらってくださったのはエイエフテック社長の笠原隆樹さん。 元三鷹光器のスタッフの笠原さんは、様々な天文機材に関わった豊富なご経験を活かし、エイエフテックで天文や光学関係のお仕事をされている非常に技術の高い人です。 弊社のPanhead EQやE-ZEUSⅡのヘビーユーザーです。

青く塗られてCelestron35cmシュミットカセグレンを仮に搭載してみたところ。 赤緯体の取り付け位置は鏡筒に応じて上下に動かせるようになっています。 北側の支柱は60kgもあるので軽量に作り直すのかと思ったら、なんとそのまま使って、しかも移動用赤道儀にされるそうです。 極軸の最北端には大きな雲台や経緯台を付けると星野写真用の特等席になります。
自動導入モータードライブE-ZEUSⅡ(←クリック)を取付けて、鏡筒は40cmくらいにされるそうです。
こちら(←クリック)やこちらの笠原さんのブログ「宙(そら)を見上げて」に、たくさん写真があります。

スカイマックス赤道儀は企画の段階で星爺の要望に応えてくれて、左の写真のように赤緯体を外して極軸だけの大型ポータブル赤道儀にもなる仕組みです。 イギリス式は赤緯体の嵌合部を利用してφ100のアルミパイプを延長しています。 右の写真は星爺のベランダにあった昨年の雪景色。

仕事で天体写真を撮っていた頃は失敗は許されないので、300~400mm望遠レンズをノータッチ追尾で30分以上の露出をするために、追尾精度の良い宇治天体精機スカイマックス、昭和機械製作所20E赤道儀、ミカゲ光器210赤道儀などをチューンナップして、大型の星野撮影用ポータブル赤道儀として使っていました。 これらの赤道儀と同等の大きなウォームホイールを採用し、同様に400mm近い望遠をノータッチ追尾できる、軽量/高精度のポタ赤に仕立てたのがJILVA-170です。

これは据付型でピラーの大きなタイプのスカイマックス赤道儀。 中古のE-ZEUSⅡ改造も数台やりました。 最近は出荷時にE-ZEUSⅡ仕様にしています。 追尾精度の素晴らしい赤道儀です。

こちらは笠原さんが整備を担当している、元国立天文台堂平観測所(現在は宿泊施設のある一般公開の堂平天文台になり埼玉県ときがわ町に移管)のニコン91cmイギリス式赤道儀(←クリック)。
イギリス式は頑丈で精度も高く、一時期(本機は1962年製)は研究者用の赤道儀としてたくさん作られました。  国立天文台岡山天体物理観測所にも口径188cmのイギリス式赤道儀(←クリック)があります。 英国グラブ・パーソンズ製で1960年の完成時には世界第7位の大口径でした。
アマチュア用の据付式赤道儀として、これからもっと普及してほしいと思います。  フトコロを大きくすれば、子午線を越えても鏡筒の東西を入れ替えずに済むのも利点。
古い赤道儀を有効利用して改造するのが得策ですが、そんなに大型の赤道儀の必要はないので、トータルコストもかなり安く上がります。

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●終活のイギリス式赤道儀--その後2018/02/21 06:27

◆最近の健康状態
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両足の激痛で歩けなくなることはなくなりました。 JILVA-170は、日本仕様の試作品の受注を再開して順次製作していますが、その他の特殊な機材が遅れて申し訳ありません。
 左眼は調子が悪いと かなり歪んで暗く見え、メールなどの文字列を見ると嘔吐して、頂戴したメールになかなか返信できず、大変失礼をしております。 深く お詫び申し上げます。
このブログは代打ちしてもらって作っています。
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笠原隆樹さんのリストアで蘇ったイギリス式赤道儀
前回ブログの笠原さんにもらわれていった、宇治天体精機スカイマックス赤道儀をベースに改造した「イギリス式赤道儀」は、なんと! 1ヵ月ちょっとで錆びて動かない部分やベアリングなどを直して実用されています。 笠原さんの技術(←クリック)に感服! 下の写真は撮影中の様子です。 バッテリーなど全て込みの重量250Kgを移動してお使いです。

鏡筒は口径30.5cm F4 ニュートン式の市販品ですが、笠原さんの改良/強化により全くの別物になっています。 自動導入システムは大きめな5相ステッピングモーターを用いた大型用E-ZEUSⅡ(←クリック)。 ワゴン車に積んで移動します。

●津村光則さんのイギリス式赤道儀
星爺がイギリス式を作ったのと同じ頃、『天文ガイド』誌の彗星コーナーでおなじみの津村光則(←クリック)さんも偶然同じような赤道儀を作られたのには、顔を見合わせて笑ってしまいました。
天体ドームに納められていて、鏡筒は宇治天体精機の35cmカセグレン望遠鏡です。
津村さんのイギリス式
ベースの赤道儀は同じくスカイマックス。 イギリス式の極軸は星爺のよりもずっと長くて、北端の軸受けはφ100の巨大なピローブロックベアリングです。
イギリス式は、このように南端と北端の軸受けの強度/精度の役割分担を同じくらいにする設計もあれば、南端の軸受けが主役で北端は小さかったり、さらに略して「支えられればOK」という感じの設計もあります。 極端に言えば南端でがんばれば北端は極軸の丸棒をVブロックで受けるだけでもOKです。 研究者用の大きなイギリス式赤道儀も、南端と北端の軸受けは様々な仕様があります。
津村さんの自動導入システムは、かなり昔に『天文ガイド』誌の自作記事でご紹介した、ビクセン製スカイセンサー2000PCのモーターの信号を利用して、別の大きなステッピングモーターを回す手法。
カセグレン望遠鏡は主鏡35cm F3.5、 副鏡:10cm 合成焦点距離5000mm F=14 (田阪鏡)。
彗星を観測するときは、冷却CCDカメラSTL11000M(3x3ビニングで使う)で、1フレーム60~180秒で撮影しておられます。

●高橋製作所のMeridianシリーズ
イギリス式の利点は圧倒的に頑丈なことと精度の高さです。  もう一つ見逃してはならない大きな利点が、望遠鏡が子午線を通過してしばらく経っても架台や脚にぶつからないことです。 昨今の星野写真では「超多数枚コンポジット」する手法が流行して、同じ被写体を一晩中撮影することが多くなりました。 その場合は、鏡筒をどこに向けても架台などとぶつからない赤道儀が便利です。
タカハシのMeridian(メリディアン=子午線)赤道儀は、同社の赤道儀の極軸を長くして、子午線から東西にかなり離れた方向でも下側を回っても、鏡筒がぶつからないようにしたもの。 星野撮影用に想像以上に快適な赤道儀です。 このように極軸が北側に長い赤道儀を「エルボータイプ」と呼ぶこともあります。 さすがにタカハシさんは対応が早いですね!
画像をクリックすると拡大されます。 左から、EM11、EM200、EM400のメリディアンタイプ。 これを見ていると、極軸を北側に継ぎ足してイギリス式にしたくなるのは星爺だけでしょうか?(笑)

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