●板垣公一さんがFRC-300を手放されます ― 2017/01/28 17:29
●板垣公一さんがご愛用の準RCのFRC-300望遠鏡を手放されます。
超新星発見家として有名な板垣公一さんが、機種変更のため愛用のタカハシFRC-300型 30cm F7.8 焦点距離2348mm の準リッチー・クレチアン式反射望遠鏡を手放されます。
「有効に使ってくださる人にお譲りしたい」ということで、このブログでのご案内を頼まれました。
イメージサークルがφ90もあり像面が平坦で、本来は中判カメラでも隅々まで鋭い星像を結ぶ写真撮影用の光学系です。周辺光量も充分でFも比較的明るく、デジタル一眼レフや冷却CCD(CMOS)には、最適の星野撮影用望遠鏡と思います。
超新星発見家として有名な板垣公一さんが、機種変更のため愛用のタカハシFRC-300型 30cm F7.8 焦点距離2348mm の準リッチー・クレチアン式反射望遠鏡を手放されます。
「有効に使ってくださる人にお譲りしたい」ということで、このブログでのご案内を頼まれました。
イメージサークルがφ90もあり像面が平坦で、本来は中判カメラでも隅々まで鋭い星像を結ぶ写真撮影用の光学系です。周辺光量も充分でFも比較的明るく、デジタル一眼レフや冷却CCD(CMOS)には、最適の星野撮影用望遠鏡と思います。

FRC-300は、昔、天ガで「徹底的に良い望遠鏡を作ろう!」と、機材頒布企画の一環としてタカハシ製作所と相談して完成した懐かしい望遠鏡です。
決して性能が不満で手放されるのではなく、板垣さんがご使用の冷却CCDカメラの画素が25μmと大きいため、特性の適したもっともっと長い焦点距離が必要になったため惜譲されます。ちなみに、もっと長い焦点距離の望遠鏡とは Celestron C14型シュミット・カセグレンのことです。
板垣スペシャルとも言えるこのFRC-300望遠鏡は、板垣さんの地元山形でタカハシの赤道儀に搭載して使われ始め、現在は北関東の観測所に設置されていて、山形からリモートコントロールしています。
写真の南側にある片持ちフォーク式赤道儀に搭載されたのがFRC-300で北側がC14です。

南側がFRC-300。北関東のスライディングルーフにあり、山形からリモートコントロールします。
観測所や望遠鏡の様子は複数のモニターカメラ(モノクロ)で確認。この画像はモニターカメラのもの。
下の写真は山形の制御センター。 観測所は日本各地にあり 6台のパソコンを使用されています。
観測所や望遠鏡の様子は複数のモニターカメラ(モノクロ)で確認。この画像はモニターカメラのもの。
下の写真は山形の制御センター。 観測所は日本各地にあり 6台のパソコンを使用されています。

90万円でお譲りするとのことで、お問合せは「SB工房」の「ご購入とお問合せ」からお願いします。
↓SB工房のホームページ(株式会社輝星)
http://www.ne.jp/asahi/sky/bird/index.html
◆FRC-300とは?
RC(リッチー・クレチアン)式反射望遠鏡は、カセグレン式に広義で使われる名称です。 純粋なRCの光学設計、すなわち係数に応じた双曲面の主鏡/副鏡を使った純RCの他に、変形タイプもいろいろあり、変形タイプは「RC」とも「準RC」とも称されることがあります。 放物面主鏡と双曲面副鏡の純カセグレン式も「RC」と呼ばれることがあります。 観測目的や写真撮影の被写体によっては、生粋の純RCが必ずしも優れているわけではありません。
ちなみにタカハシBRC望遠鏡は口径20cmでF5と明るい純RCです。FRC-300は準RCで、フラットフィールド・リッチー・クレチアンの略号のFRCです。 以下の説明がされています。
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像面を完全に平坦化するフラットナーレンズに合わせて、主鏡/副鏡の非球面率を決定しています。このような準リッチークレチアンでは、純粋な(オリジナル)リッチークレチアンよりも非球面率が強く、より高度な設計となっています。したがって純リッチークレチアン+フラットナーレンズよりも中心球面収差、周辺のコマ、非点、像面湾曲全てに収差が小さくでき、FRC-300では、イメージサークルφ90mmの隅にまで10μm以下というBRC-250と同等の完璧な星像が得られます。また、合焦機構はBRCと同じ方式で確実に固定できる温度補正機構(±5°C)も内蔵しております。
オプションで冷却CCD用のF5.9となるレデューサーも用意しており、これも冷却CCD用としては十分な10~20μmの星像が得られます。
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◆主要データ
FRC式アストロカメラ
有効径=φ300mm
副鏡径=φ125mm
合成焦点距離=2348mm
合成口径比=1:7.8
イメージサークル=φ90mm
メタルバックフォーカス=106.2mm
鏡筒径=φ324mm
鏡筒全長=1030mm(筒先からヘリコイド面まで)
重量=約30kg
※レデューサーはありません。焦点距離を伸ばすオリジナルのエクステンダーは差し上げますとの由。
↓参考URL(高橋製作所)
http://www.takahashijapan.com/ct-products/products/FRC-300.html
●本年もよろしくお願い申し上げます ― 2017/01/02 09:00
年末のオーストラリア遠征の直前に2人めの孫が生まれました。上の大マゼラン雲が2歳の長女、下の小マゼラン雲が次男のように見えました。祖父としての責任をひしひしと感じます。
キヤノンEOS KissX5 ISO1600 シグマ17mm~50mm F2.8~F4ズーム 17mm F4で撮影。
オルゴール赤道儀(←クリック)MusicBox EQⅡにて露出各2分を3枚コンポジット合成。
超広角~標準の星景写真はオルゴール赤道儀で充分です。電動のポータブル赤道儀やドイツ式赤道儀を使うのも面倒なので、星景写真にはもっぱらオルゴールを使っています。
●JILVA-170の出荷が遅れて大変申し訳ありません
キヤノンEOS KissX5 ISO1600 シグマ17mm~50mm F2.8~F4ズーム 17mm F4で撮影。
オルゴール赤道儀(←クリック)MusicBox EQⅡにて露出各2分を3枚コンポジット合成。
超広角~標準の星景写真はオルゴール赤道儀で充分です。電動のポータブル赤道儀やドイツ式赤道儀を使うのも面倒なので、星景写真にはもっぱらオルゴールを使っています。
●JILVA-170の出荷が遅れて大変申し訳ありません
JILVA-170やユニテック社のSWAT-300/350は、全品のPモーション・テストをして合格品だけ出荷しています。合格するのは全体の70%。念のために公称の精度よりも厳しく測定しています。
しかしながら、一晩に数台までのテストしかできず、昨年に引き続きこれほど悪天候になるとは予想していなかったため出荷が遅れに遅れて皆様にご迷惑をおかけしています。本当に申し訳ありません。最近は天候が良くなったので、逐次テストをして出荷をしております。ご注文をいただいたお客様には進捗を個別にメールでお知らせしています。今少しお待ち下さい。
しかしながら、一晩に数台までのテストしかできず、昨年に引き続きこれほど悪天候になるとは予想していなかったため出荷が遅れに遅れて皆様にご迷惑をおかけしています。本当に申し訳ありません。最近は天候が良くなったので、逐次テストをして出荷をしております。ご注文をいただいたお客様には進捗を個別にメールでお知らせしています。今少しお待ち下さい。

●JILVA-170とBT38三脚(←クリック)の格安販売期間を延長します
今年はJILVA-170を常に在庫するようにいたします。3月までは今までどおりパーツの余ったバーゲン品や試作品の受注生産といたし、格安販売の期間を延長しますのでお問合せください。
【格安販売の価格】
・JILVA-170輸出用バーゲン品----90,800円(税別)
・JILVA-170日本仕様試作品-----108,000円(税別)
・BT38-1三脚(直脚)------------18,200円(税別)
・BT38-2三脚(2本つなぎ)--------21,000円(税別)
(株)輝星 (←クリック)のホームページの 「ご購入とお問合せ」 からお問合せください。
JILVA-170の日本仕様試作品とは、大きな望遠鏡を搭載されるユーザー様も多いことから、その対策として15kg程度の搭載まで耐える、SWAT-350(ユニテックでOEM)の頑丈なフローティングウォームホイール式のターンテーブルに換装したモデルです。
専用のBT38三脚は三脚の欠点である「開く」機構を省略し回してたたむようにしたため、小型軽量なのに驚くほどの強度があります。普通のドイツ式赤道儀を搭載されるお客様も多いです。
・BT38-1三脚(直脚)------------18,200円(税別)
・BT38-2三脚(2本つなぎ)--------21,000円(税別)
(株)輝星 (←クリック)のホームページの 「ご購入とお問合せ」 からお問合せください。
JILVA-170の日本仕様試作品とは、大きな望遠鏡を搭載されるユーザー様も多いことから、その対策として15kg程度の搭載まで耐える、SWAT-350(ユニテックでOEM)の頑丈なフローティングウォームホイール式のターンテーブルに換装したモデルです。
専用のBT38三脚は三脚の欠点である「開く」機構を省略し回してたたむようにしたため、小型軽量なのに驚くほどの強度があります。普通のドイツ式赤道儀を搭載されるお客様も多いです。

左がSWAT-350のターンテーブルに換装した「日本仕様試作品」、右が「輸出用バーゲン品」です。
BT38三脚に左はSWAT-350を搭載。右はふつうのドイツ式赤道儀を搭載(ユーザー様の例)
●ポータブル赤道儀(ポタ赤)のコンセプトはノーガイド撮影
ポタ赤の誕生と経緯は過去のブログ「ポータブル赤道儀という用語」に書かせていただきました。
星爺は12年前まで天文雑誌の編集を30年ほどやっていて、レンズテストの記事などで大量の星野写真を撮影していました。撮影失敗は許されないので、本来は据付用の30~50キロもある赤道儀に手を加えて高精度化したり、極軸のみにした架台を何台か運搬して使っていました。もちろん400mm望遠レンズ程度まではシャッターを切って「ほっぽりっぱなし」するノーガイド(ノータッチガイド)撮影です。書籍を執筆される著者の先生方も、大型の赤道儀にカメラを搭載してノーガイド撮影をしていました。
「エッ? 小型の赤道儀にカメラを搭載してガイド撮影するのではないの?」 と思う人もいるかもしれませんが、そのような撮影法は元々は天文雑誌の対象読者である小学校高学年から中学生用に考えられたもので、大量に撮影する仕事に使える手法ではありません。雪原に穴を掘ってその中でガイド撮影をしている表紙の写真が大ウケしましたが、天文少年に向けた夢のある演出ということですね。
しかし、大きく重い赤道儀の運搬は大変なので、同様な追尾精度を保ったまま運搬しやすいポータブル赤道儀に仕立てたのが大きめなJILVA-170で、φ162のウォームホイールを使っています。135mm望遠以下用にはデジタル一眼レフボディと同程度の大きさのPanHead EQをご用意しています。
追尾精度の命であるウオームギヤセットをギヤメーカーに依頼すると、JILVA-170と同じくらいの大きさは10万円以上かかります。それでも満足な精度のギヤはなかなか作れません。そこでウオームギヤは特殊な製法で自製して安価に高精度を達成しました。
今回ご紹介するユーザーの皆さんはノーガイドで撮影されています。もちろん弊社は世界で初めてポタ赤にオートガイダー端子を設けたくらいで、ほっぽりっぱなしノーガイドばかり推奨するものではありませんが、ノーガイドでもかなり使える追尾精度を有することはポタ赤の必須条件と考えています。
●ポータブル赤道儀(ポタ赤)のコンセプトはノーガイド撮影
ポタ赤の誕生と経緯は過去のブログ「ポータブル赤道儀という用語」に書かせていただきました。
星爺は12年前まで天文雑誌の編集を30年ほどやっていて、レンズテストの記事などで大量の星野写真を撮影していました。撮影失敗は許されないので、本来は据付用の30~50キロもある赤道儀に手を加えて高精度化したり、極軸のみにした架台を何台か運搬して使っていました。もちろん400mm望遠レンズ程度まではシャッターを切って「ほっぽりっぱなし」するノーガイド(ノータッチガイド)撮影です。書籍を執筆される著者の先生方も、大型の赤道儀にカメラを搭載してノーガイド撮影をしていました。
「エッ? 小型の赤道儀にカメラを搭載してガイド撮影するのではないの?」 と思う人もいるかもしれませんが、そのような撮影法は元々は天文雑誌の対象読者である小学校高学年から中学生用に考えられたもので、大量に撮影する仕事に使える手法ではありません。雪原に穴を掘ってその中でガイド撮影をしている表紙の写真が大ウケしましたが、天文少年に向けた夢のある演出ということですね。
しかし、大きく重い赤道儀の運搬は大変なので、同様な追尾精度を保ったまま運搬しやすいポータブル赤道儀に仕立てたのが大きめなJILVA-170で、φ162のウォームホイールを使っています。135mm望遠以下用にはデジタル一眼レフボディと同程度の大きさのPanHead EQをご用意しています。
追尾精度の命であるウオームギヤセットをギヤメーカーに依頼すると、JILVA-170と同じくらいの大きさは10万円以上かかります。それでも満足な精度のギヤはなかなか作れません。そこでウオームギヤは特殊な製法で自製して安価に高精度を達成しました。
今回ご紹介するユーザーの皆さんはノーガイドで撮影されています。もちろん弊社は世界で初めてポタ赤にオートガイダー端子を設けたくらいで、ほっぽりっぱなしノーガイドばかり推奨するものではありませんが、ノーガイドでもかなり使える追尾精度を有することはポタ赤の必須条件と考えています。

◆ぎょしゃ座中央の散光星雲 IC405とIC410◆ JILVA-170で撮影:加藤 利仁さん
ペンタックスSDUF天体望遠鏡(口径100mm 焦点距離400mm F4) キヤノンEOSKissX5カメラ(天体改造) ISO3200 露出4分と2分 ノーガイドで22枚撮影してコンポジト合成。
フィルム時代の中判カメラ用のこのレンズは、色収差が激しくて強調処理をすると明るい星の周 囲にリングができます。しかし微光星はずいぶんシャープなので正確な追尾がよくわかります。 ノーガイドでも400mm望遠が撮影できるのはとっても楽ですよね?
JILVA-170にビクセンGP赤道儀の赤緯軸を付けてお使いです。上の写真に搭載しているのは作例写真のペンタックスSDUF 天体望遠鏡ではなくカメラレンズの300mm F4 です。
ペンタックスSDUF天体望遠鏡(口径100mm 焦点距離400mm F4) キヤノンEOSKissX5カメラ(天体改造) ISO3200 露出4分と2分
フィルム時代の中判カメラ用のこのレンズは、色収差が激しくて強調処理をすると明るい星の周
JILVA-170にビクセンGP赤道儀の赤緯軸を付けてお使いです。上の写真に搭載しているのは作例写真のペンタックスSDUF 天体望遠鏡ではなくカメラレンズの300mm F4 です。

◆オリオン座の馬の首暗黒星雲付近◆ JILVA-170で撮影:大野 浩之さん
BORG 77ED2 天体望遠鏡 0.7×レデューサ使用(口径77mm 焦点距離357mm F4.6) フジX-T1カメラ(ノーマル) ISO感度不明 ノーガイドで2分露出を4枚コンポジット合成。
BORG 77ED2 天体望遠鏡 0.7×レデューサ使用(口径77mm 焦点距離357mm F4.6) フジX-T1カメラ(ノーマル) ISO感度不明 ノーガイドで2分露出を4枚コンポジット合成。
望遠レンズよりもシャープな大きめのED天体望遠鏡をお使いです。全面に見られる赤いモヤモヤはカブリではなく淡い分子雲です。このカメラはノーマルでも赤いHα星雲がよく写るようです。
JILVA-170にベンチバーを取り付け、タカハシの赤緯軸パーツを取り付けてドイツ式にしています。
JILVA-170にベンチバーを取り付け、タカハシの赤緯軸パーツを取り付けてドイツ式にしています。

◆ケフェウス座のガーネット・スターとIC1396◆ PanHead EQ PH-1sで撮影:桐山 伸一さん
BORG 36ED 天体望遠鏡 1.1×フラットナー(口径36mm 焦点距離220mm F6.2) キヤノンEOSM3カメラ(天体改造) ISO3200 ノーガイドで露出6分を8枚コンポジット合成。
135mm望遠レンズをノーガイドできるというPanHead EQの公称値よりも長い焦点距離の望遠鏡での撮影ですが、比較的長い6分露出でも追尾エラーが見えないので、製作者としてはヒヤヒヤした後でホッとしています。この星雲は非常に淡いのでかなり難物ですが素晴らしい描写ですね。
PanHead EQ PH-1“s”は、軽量化に留意して単3形乾電池2本(またはUSB電源)で動くモデルです。アルカスイス互換プレートで大きな鏡筒を載せておられますが、ちょっと荷が重い感じもします。今後は左側に見える小型のオートガイダーを使ってさらに長焦点長時間露出を目指すそうです。
PanHead EQでもオートガイドさえすれば1000mmクラスの望遠鏡も使用可能なので、ご要望にお応えして頑丈なターンテーブルに換装したPanHead EQも計画しています。
135mm望遠レンズをノーガイドできるというPanHead EQの公称値よりも長い焦点距離の望遠鏡での撮影ですが、比較的長い6分露出でも追尾エラーが見えないので、製作者としてはヒヤヒヤした後でホッとしています。この星雲は非常に淡いのでかなり難物ですが素晴らしい描写ですね。
PanHead EQ PH-1“s”は、軽量化に留意して単3形乾電池2本(またはUSB電源)で動くモデルです。アルカスイス互換プレートで大きな鏡筒を載せておられますが、ちょっと荷が重い感じもします。今後は左側に見える小型のオートガイダーを使ってさらに長焦点長時間露出を目指すそうです。
PanHead EQでもオートガイドさえすれば1000mmクラスの望遠鏡も使用可能なので、ご要望にお応えして頑丈なターンテーブルに換装したPanHead EQも計画しています。
◆南十字とコールサック付近◆ PanHead EQ PH-1で撮影:村松 俊和さん
70mm F2.8 カメラレンズ 絞りF3.5 キヤノン6Dカメラ(天体改造SEO-SP4) ISO1600 ノーガイド露出3分を12枚コンポジット合成。
南半球に遠征して撮影した南十字星付近の星野です。光害のない夜空での撮影はとくにバックグランドが美しいですね。 虫の這った跡のように見える暗黒星雲の筋が見事です。
●2017年の生産計画
70mm F2.8 カメラレンズ 絞りF3.5 キヤノン6Dカメラ(天体改造SEO-SP4) ISO1600 ノーガイド露出3分を12枚コンポジット合成。
南半球に遠征して撮影した南十字星付近の星野です。光害のない夜空での撮影はとくにバックグランドが美しいですね。 虫の這った跡のように見える暗黒星雲の筋が見事です。
●2017年の生産計画

◆PanHead EQ ポータブル赤道儀 PanHead EQ (←クリック) PH-1は隠れた人気のある超小型のポータブル赤道儀です。雲台の感覚で使えるのでパンヘッド EQ(Equatoria)です。 ベテランの人のご購入が多く、上の写真のようにターンテーブルにアルカスイス互換クランプを搭載したモデルや、極軸を強化したモデルなど特注にお応えします。今年はそれらの特注品を標準品として機種を増やします。
◆JILVA-170ポータブル赤道儀 JILVA-170は、Pモーションテストの能率を向上させて、たくさん作り置きして常に在庫を持っておくようにします。
◆オーソドックスなドイツ式赤道儀 JILVA-170のウオームギヤの調子が良いので、同じパーツを使って圧倒的に強度を高めた普通のドイツ式赤道儀を発表する予定です。自動導入対応やそうでないシンプルなモデルも作ります。
◆オートガイダーセットと電子極望 もうすぐポータブル赤道儀に適したオートガイダーセットや電子極望のPoleMasterも取扱を開始します。
◆JILVA-300 ポータブル赤道儀 ウォームホイールφ300で歯数540歯のJILVA-300を発表する予定です。ウォームホイールの自社生産の研究はJILVA-300用で始めたのですが、やっとお披露目できます(下はテスト用の極軸)。
◆JILVA-170ポータブル赤道儀 JILVA-170は、Pモーションテストの能率を向上させて、たくさん作り置きして常に在庫を持っておくようにします。
◆オーソドックスなドイツ式赤道儀 JILVA-170のウオームギヤの調子が良いので、同じパーツを使って圧倒的に強度を高めた普通のドイツ式赤道儀を発表する予定です。自動導入対応やそうでないシンプルなモデルも作ります。
◆オートガイダーセットと電子極望 もうすぐポータブル赤道儀に適したオートガイダーセットや電子極望のPoleMasterも取扱を開始します。
◆JILVA-300 ポータブル赤道儀 ウォームホイールφ300で歯数540歯のJILVA-300を発表する予定です。ウォームホイールの自社生産の研究はJILVA-300用で始めたのですが、やっとお披露目できます(下はテスト用の極軸)。

●汎用自動導入モータードライブE-ZEUSⅡ
年末はJILVA-170のPモーションテストで多忙だったため、ご自分で装着されるユーザー様に自動導入装置のE-ZEUSⅡ(←クリック)を何台か出荷しました。皆さんうまく装着されて快調に動いています。
左はタカハシJ型赤道儀に取付けた標準型寒冷地仕様のE-ZEUSⅡ。右は昭和機械製作所 SHOWA25E 赤道儀に取付けた標準型寒冷地仕様のE-ZEUSⅡ。
左は宇治天体精機スカイマックスに取付けたドライバが特別仕様のE-ZEUSⅡ。右は昭和機械製作所SHOWA20E 赤道儀に元々内蔵されていたドライバ回路を流用した標準型E-ZEUSⅡ。
左は宇治天体精機スカイマックスに取付けた標準型E-ZEUSⅡ。右はミカゲ光器の大きな360N型赤道儀に大型用E-ZEUSⅡを取付けるために整備をしているところ。
※株式会社輝星の運営する「SB工房」はこちらです。
※株式会社輝星の運営する「SB工房」はこちらです。
●赤道儀の追尾精度 ― 2016/04/06 00:17
●赤道儀の回転の仕組みと必要な精度
写真は20cm赤道儀用のウォームホイールとウォームネジ、それと極軸を支えるベアリングです。その下の図はピリオディックモーション(以下PM)の原因を示した図です(以前の記事の再掲載)。
このように赤道儀はウォームホイールを、ウォームネジ(ウォームはWarmでイモムシの意味)で1日約1回転の超低速かつ超高精度で日周運動で動いて行く星を追尾しているわけですね。
赤道儀に使用されるウォームホイールとウォームネジは、一般品の高速でガンガン回すための減速ギヤとは似て非なる物で、精度が一桁も優秀な専用品ということを念頭に置いてください。
30~40年前の 「赤道儀を購入する人の90%は星野写真撮影に使う」 と言われた時代。星野写真撮影に使える追尾精度がない赤道儀の量産メーカーは姿を消したように思います。それが理由で手を引いたメーカーばかりではないでしょうが、高精度のビクセンさんとタカハシさんだけ残ったのかな?
両社にギヤの精度や製作法をお聞きすると、それはもう通常の機械加工のレベルではなく、夢の様な匠の技や精密加工機械を結集して素晴らしい高精度を達成していることに驚きます。
ビクセンさんは独自の装置でウォームネジの偏芯をテストして合格品を極軸に使っています。それを星爺も真似してウォームネジを数百本作り偏芯テストをして、良い物だけを合格品として極軸に用いるようにしています。※不合格品はこれから作る赤緯軸や微動雲台などに用います。
写真は20cm赤道儀用のウォームホイールとウォームネジ、それと極軸を支えるベアリングです。その下の図はピリオディックモーション(以下PM)の原因を示した図です(以前の記事の再掲載)。
このように赤道儀はウォームホイールを、ウォームネジ(ウォームはWarmでイモムシの意味)で1日約1回転の超低速かつ超高精度で日周運動で動いて行く星を追尾しているわけですね。
赤道儀に使用されるウォームホイールとウォームネジは、一般品の高速でガンガン回すための減速ギヤとは似て非なる物で、精度が一桁も優秀な専用品ということを念頭に置いてください。
30~40年前の 「赤道儀を購入する人の90%は星野写真撮影に使う」 と言われた時代。星野写真撮影に使える追尾精度がない赤道儀の量産メーカーは姿を消したように思います。それが理由で手を引いたメーカーばかりではないでしょうが、高精度のビクセンさんとタカハシさんだけ残ったのかな?
両社にギヤの精度や製作法をお聞きすると、それはもう通常の機械加工のレベルではなく、夢の様な匠の技や精密加工機械を結集して素晴らしい高精度を達成していることに驚きます。
ビクセンさんは独自の装置でウォームネジの偏芯をテストして合格品を極軸に使っています。それを星爺も真似してウォームネジを数百本作り偏芯テストをして、良い物だけを合格品として極軸に用いるようにしています。※不合格品はこれから作る赤緯軸や微動雲台などに用います。

●追尾精度=追尾の進み遅れの幅=ピリオディックモーション
赤道儀のモーターは通常は水晶発振で動くので、クォーツ時計のように正確に回転します。しかし、モーターだけ正確に回っていても、ギヤなどの精度不足で追尾速度は「速くなったり遅くなったり」を繰り返します。望遠鏡の視界の星(撮影中の星)が、ゆっくり西に動いて行ったら いったん止まった感じになって、今度は東に動いて行って再び西に動く振る舞いを繰り返すわけですね。
この周期的な動きをPM(Periodic Motion)と称し、 PE(Periodic Error)とか、たんに「追尾精度」とも言われます。PMのデータは東西(日周運動方向)の振れ幅の角度で±○″と示します。原理的にふつうはウォームネジ1回転の周期で、ほとんど同じPMの振る舞いが繰り返されます。
PMの振れ幅が星を撮影するレンズの 「最小星像±○″」 より大きいと、そのレンズを追尾できる精度は無いわけですから、PMは星野写真撮影に使う赤道儀のもっとも重要な性能です。
PMの原因には主に上の図と下記に示した4種類があります。各々がウォームネジ1回転の周期を持ち、これらが赤道儀に組み上げた際に全部重なってPMとなって現れます。
信じられないかもしれませんが、長い望遠レンズの星野写真撮影に使用できる追尾精度の赤道儀には、各々の原因になる加工精度に計算上は1/1000mm以下の、一般的な機械加工精度をはるかに超越したものすごい精度が必要です。
①ウォームネジのピッチ誤差(乱れ)によるヨロメキ運動
ウォームネジのピッチが乱れていると追尾速度の進み遅れが生じます。たとえば小型赤道儀の直径70mm程度で歯数144枚のウォームホイールでは、ウォームネジに1/100mmのヨロメキがあると1回転10分の周期で±30″程度のPMとなって現れます。50mm標準レンズの追尾許容誤差は±40″ほどなので追尾可能ですが、長い望遠レンズを追尾できる赤道儀のウォームネジは突拍子もない高精度なのです。
②ウォームネジ軸受けの精度によるスラスト方向のブレ
ウォームネジを支える軸受け部が図の左右にブレると、ネジのピッチ誤差と同様にPMとなって現れます。ピッチ誤差や軸受けの誤差は、慣らし運転(エージング)をしてもほとんど良くなりません。
③ウォームネジの芯出し誤差による1回転毎のトルク変動
これがもっとも強烈なPMの原因なことが多いです。非常に繊細なウォームネジに芯出し誤差(偏芯)が僅かでもあると、ウォームホイールへの押し付けは強くなったり弱くなったりを繰り返します。
強く押し付けられる部分では回転が渋くなるため、モーターは定速回転していてもウォームネジに達するまでのギヤヘッド他のたくさんのギヤの隙間などが縮んでトルクを吸収して回転が遅くなります。弱く押し付けられる部分にさしかかると吸収が反発して速くなって1回転毎のPMが生じます。
トルクの吸収と反発は主にギヤヘッド部で生じますが、モーターの取付部のたわみや伝達ギヤ部でも生じます。ベルト駆動は反対側のベルトとの張力差が大きなPMとなって現れます。
④ウォームネジに付けたスパーギヤの偏芯による速度変動
ウォームネジに付けたスパーギヤが偏心していると、1回転毎にスパーギヤの直径がほんの少しですが大きくなったり小さくなったりを繰り返すので、やはりウォームネジ1回転毎のPMが生じます。
また、スパーギヤ以外のピニオンギヤなどが偏心していると、ウォームネジ1回転のPMとは別に そのギヤの周期のPMが生じます。ギヤ同士の噛合せがキツ過ぎるとトルク変動も発生します。
参考=※バックラッシュを嫌ってウォームネジの押し付けを強くする人がいますが、強くし過ぎるとPMを増長させてしまいます。極軸のウォームネジは優しく緩めに押し付けるべきです。
※PMの原因はモーターからウォームネジ/ウォームホイールの摺動部間にあるので、ウォームホイールの大きさに比例してPMは少なくなり 「ウォームホイールの大きさは七難隠す!」 のです。
このようにPMは主に4種類の原因が重なるのですから、偶然に原因同士が相殺されるように赤道儀が組立てられれば、PMは各々の原因の加工精度よりずっと 良くなる場合があります。逆に原因が相乗されて悪くなってしまう場合もあります。なので、PMは設計段階やパーツの加工精度から類推することは難しく、どうしてもアタリ/ハズレが出てしまいます。赤道儀に組立ててからPMの測定をしてみないと追尾精度はわかりません。「追尾精度は赤道儀に聞いてくれ!」って感じですね。
時間をかけて組立てとPMテストを繰り返し、各々の原因をうまく相殺する組立てをすれば、かなり良い精度に追い込むことは可能です。メーカーさんはそれをやっているのかな??
※このようなことから、調子の良い赤道儀は調整やオーバーホールはしない方が無難です。
昔はあり得ないほどの高精度のPMを標榜するメーカーもありましたが、最近はカタログにPMを明記する大手量産メーカーはほとんどなくなりました。根拠の無いデータを出さないのは良心的と言えますが、PMを明記しないのは星野写真撮影の機材としては、いかがなものかとも思いますけどねぇ。
●PMを撮影してみよう!
星野写真を撮影する赤道儀のユーザーさんは、PMを撮影/測定してどれくらいのレンズをガイディング無しのノータッチで使用できるかを確認してみましょう! その結果、あまりにも追尾精度が悪かったらクレームの証拠写真にもなりますし、あり得ない高精度を喧伝するメーカーが出て来て初心者が翻弄されないようにするためにも、天文ファンはPMの測定を常識にするべきと思います。
今回は難しい話は一切省略します。 PMを撮影するレンズでそのまま追尾撮影をしたら、星がちゃんと点像に写るかどうかの簡単な確認だけしてみましょう。 PMの写真が撮れたらぜひ見せてください。ユーザーがPMの写真をたくさん発表すれば、赤道儀の精度向上に寄与すると思います。
PMの振れ幅が星を撮影するレンズの 「最小星像±○″」 より大きいと、そのレンズを追尾できる精度は無いわけですから、PMは星野写真撮影に使う赤道儀のもっとも重要な性能です。
PMの原因には主に上の図と下記に示した4種類があります。各々がウォームネジ1回転の周期を持ち、これらが赤道儀に組み上げた際に全部重なってPMとなって現れます。
信じられないかもしれませんが、長い望遠レンズの星野写真撮影に使用できる追尾精度の赤道儀には、各々の原因になる加工精度に計算上は1/1000mm以下の、一般的な機械加工精度をはるかに超越したものすごい精度が必要です。
①ウォームネジのピッチ誤差(乱れ)によるヨロメキ運動
ウォームネジのピッチが乱れていると追尾速度の進み遅れが生じます。たとえば小型赤道儀の直径70mm程度で歯数144枚のウォームホイールでは、ウォームネジに1/100mmのヨロメキがあると1回転10分の周期で±30″程度のPMとなって現れます。50mm標準レンズの追尾許容誤差は±40″ほどなので追尾可能ですが、長い望遠レンズを追尾できる赤道儀のウォームネジは突拍子もない高精度なのです。
②ウォームネジ軸受けの精度によるスラスト方向のブレ
ウォームネジを支える軸受け部が図の左右にブレると、ネジのピッチ誤差と同様にPMとなって現れます。ピッチ誤差や軸受けの誤差は、慣らし運転(エージング)をしてもほとんど良くなりません。
③ウォームネジの芯出し誤差による1回転毎のトルク変動
これがもっとも強烈なPMの原因なことが多いです。非常に繊細なウォームネジに芯出し誤差(偏芯)が僅かでもあると、ウォームホイールへの押し付けは強くなったり弱くなったりを繰り返します。
強く押し付けられる部分では回転が渋くなるため、モーターは定速回転していてもウォームネジに達するまでのギヤヘッド他のたくさんのギヤの隙間などが縮んでトルクを吸収して回転が遅くなります。弱く押し付けられる部分にさしかかると吸収が反発して速くなって1回転毎のPMが生じます。
トルクの吸収と反発は主にギヤヘッド部で生じますが、モーターの取付部のたわみや伝達ギヤ部でも生じます。ベルト駆動は反対側のベルトとの張力差が大きなPMとなって現れます。
④ウォームネジに付けたスパーギヤの偏芯による速度変動
ウォームネジに付けたスパーギヤが偏心していると、1回転毎にスパーギヤの直径がほんの少しですが大きくなったり小さくなったりを繰り返すので、やはりウォームネジ1回転毎のPMが生じます。
また、スパーギヤ以外のピニオンギヤなどが偏心していると、ウォームネジ1回転のPMとは別に そのギヤの周期のPMが生じます。ギヤ同士の噛合せがキツ過ぎるとトルク変動も発生します。
参考=※バックラッシュを嫌ってウォームネジの押し付けを強くする人がいますが、強くし過ぎるとPMを増長させてしまいます。極軸のウォームネジは優しく緩めに押し付けるべきです。
※PMの原因はモーターからウォームネジ/ウォームホイールの摺動部間にあるので、ウォームホイールの大きさに比例してPMは少なくなり 「ウォームホイールの大きさは七難隠す!」 のです。
このようにPMは主に4種類の原因が重なるのですから、偶然に原因同士が相殺されるように赤道儀が組立てられれば、PMは各々の原因の加工精度よりずっと 良くなる場合があります。逆に原因が相乗されて悪くなってしまう場合もあります。なので、PMは設計段階やパーツの加工精度から類推することは難しく、どうしてもアタリ/ハズレが出てしまいます。赤道儀に組立ててからPMの測定をしてみないと追尾精度はわかりません。「追尾精度は赤道儀に聞いてくれ!」って感じですね。
時間をかけて組立てとPMテストを繰り返し、各々の原因をうまく相殺する組立てをすれば、かなり良い精度に追い込むことは可能です。メーカーさんはそれをやっているのかな??
※このようなことから、調子の良い赤道儀は調整やオーバーホールはしない方が無難です。
昔はあり得ないほどの高精度のPMを標榜するメーカーもありましたが、最近はカタログにPMを明記する大手量産メーカーはほとんどなくなりました。根拠の無いデータを出さないのは良心的と言えますが、PMを明記しないのは星野写真撮影の機材としては、いかがなものかとも思いますけどねぇ。
●PMを撮影してみよう!
星野写真を撮影する赤道儀のユーザーさんは、PMを撮影/測定してどれくらいのレンズをガイディング無しのノータッチで使用できるかを確認してみましょう! その結果、あまりにも追尾精度が悪かったらクレームの証拠写真にもなりますし、あり得ない高精度を喧伝するメーカーが出て来て初心者が翻弄されないようにするためにも、天文ファンはPMの測定を常識にするべきと思います。
今回は難しい話は一切省略します。 PMを撮影するレンズでそのまま追尾撮影をしたら、星がちゃんと点像に写るかどうかの簡単な確認だけしてみましょう。 PMの写真が撮れたらぜひ見せてください。ユーザーがPMの写真をたくさん発表すれば、赤道儀の精度向上に寄与すると思います。

上の図はPMの様子をグラフにしたものです。赤道儀の極軸をわざと東西のどちらかにズラして南の天の赤道付近の星空を10分程度露出をすると、星は赤緯方向(図の上下方向)に流れて、このグラフと同じような星の軌跡が写ります。下の上のPMの写真はそんな軌跡を描いていますね。
PMを撮影するレンズは、できるだけ望遠が望ましいです(弊社では1200mmで撮影しています)。 でも、今回は標準レンズでもズームレンズでも望遠鏡でも何でも構いませんので、とにかくPM撮影を体験してみましょう。光害も月明かりも関係ありません。北極星が見えなくてもなんとかなるでしょう。
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・露出時間が長いのでカメラの感度はISO100~ISO200にする。
・絞りは光害に応じてF5.6~F11くらいにする。
・極軸を東西のどちらかに2~3°ズラして赤道儀を設置する。
・星の動きの速い真南の天の赤道を付近を写す。地上高度なら55°くらいのところ。
・夏や冬の天の川の中なら、適当にどこを撮影しても星がたくさん写る。
・今の季節は真南に星が少ないので、他の場所の明るい星を写してもまぁOK。
ですが、星の動きの速い赤道を離れると測定結果がどんどん甘くなります。
・露出時間は10分程度。光害で露出オーバーならもっと短くする。
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極軸の東西のズラシが大きすぎると、星は赤緯方向にうんと流れて写るので、適宜に調整してみてください。極軸の東西のズレに加えて上下のズレがあると、それが追尾速度に反映されて下の写真の様に星が正しく上下(赤緯方向)に流ず斜めに流れて写りますが、これもまぁOKとしましょう。
◆ウォームホイール歯数144枚の赤道儀はPM(ウォームネジ1回転)の1周期は約10分です。歯数が180枚なら8分、288枚なら5分、360枚なら4分。 1周期分以上の露出でPMを撮影したいです。
・露出時間は10分程度。光害で露出オーバーならもっと短くする。
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極軸の東西のズラシが大きすぎると、星は赤緯方向にうんと流れて写るので、適宜に調整してみてください。極軸の東西のズレに加えて上下のズレがあると、それが追尾速度に反映されて下の写真の様に星が正しく上下(赤緯方向)に流ず斜めに流れて写りますが、これもまぁOKとしましょう。
◆ウォームホイール歯数144枚の赤道儀はPM(ウォームネジ1回転)の1周期は約10分です。歯数が180枚なら8分、288枚なら5分、360枚なら4分。 1周期分以上の露出でPMを撮影したいです。

300mm望遠で写した普及品のドイツ式赤道儀のPモーション。10分露出で歯数144枚のウォームホイールなので、ちょうどウォームネジ1回転分が写っている。300mm望遠は追尾できない精度であることが一目瞭然。85mm程度ならガイディング無しのノータッチ撮影ができそう。PMは±35″程度。

300mm望遠で写したポタ赤 SWAT-200のPモーション。完全に直線ではなく少し乱れているので、200mm望遠ならば完璧にノータッチ撮影できそう。測定するとPMは±10″以下で公称値のとおり。
このようにPMを撮影してみると、所有する赤道儀の追尾精度の悪さにガッカリする人の方が多いと思います。 安価なポタ赤は標準レンズでもPMが写るほど精度の悪い場合もあると思います。
でもまぁ、上下の星の流れが完全に直線に写らなくても、星の軌跡の太さの2倍程度のPMなら明るい星は滲んで大きく写り、うんと暗い星は流れて淡くなって写らないので、案外使えてしまうものですよ。 もちろん北の方向を写す場合は、日周運動の動きが少ないのでPMの影響はだいぶ減ります。
実際の星野写真の撮影では、ISO1600ならば光害の少ない星空でF2.8で適正露出は1分くらいでF4では2分くらいです。したがって、露出中にうまい具合に上のPMのグラフの星の移動方向が反転する部分に当たれば、追尾精度の良くない赤道儀に望遠レンズを載せても星は点像に写ることがあります。短めの露出で何コマも撮影すると、流れたカットと流れないカットが得られます。なので、追尾の成功率が50%以上あるなら 「それで充分に実用になる!」 という考え方はアリですよね?
ポータブル赤道儀と露出時間が短くて済む高感度なデジカメの登場で、星野写真はずいぶん気楽なものになりましたね。 感材にお金がかからないことも大きな利点です。
●最後に諸々の補足です
ウォームホイールは高精度なギヤに見えても、実際はそれほど精度は必要ありません。しかし、極軸を取付ける際にウォームホイールが偏心して、1日1回転の間にウォームネジに強く押し付けられる部分と弱く押し付けられる部分が生じ、強く押し付けられる部分でPMを増長することがあります。
そこで弊社では、ウォームホイールの母形を極軸に取付けて赤道儀のダミーに組み込み、実機さながらに極軸を回して歯切りとエージングをするので、ウォームホイールの偏芯はほぼゼロです。
前回の拙稿 (http://tentai.asablo.jp/blog/2016/03/27/8058123)の補足。
「追尾精度の良くない赤道儀にオートガイダーを常用するのもアリ」と書きましたが、赤道儀の追尾精度があまりにも悪いとオートガイダーが働きにくかったり、ガイド星を雲が通過したりするとガイド星を見失うなどのトラブルが出てしまいます。 やはり赤道儀は追尾精度が命です。
オートガイダーを使う場合は極軸設置もある程度は正確でないと、露出時間が長い場合はガイド星を中心に画面が回転して写ってしまいます。広角でも望遠でも回転角は同じなので厄介です。
三脚などの強度(これが見過ごされていることが多い)が完璧で、追尾精度が完璧で、極軸設置が完璧でも、大気差による天球の歪で長い望遠レンスの追尾が完璧にできるわけではありません。オートガイダーの適宜な投入は面倒ではありますが とても有効な手段です。
北極星は歳差で動くので極望のスケールパターンには、2000年、2010年、2015年などの北極星の導入位置のマークが印されていることが多いです。では、古い極望は2016年以降の北極星の位置マークが無いからダメかというと、過去の位置マークが直線的に印されている場合は、その延長上にだいたいの見当で歳差の分だけズラせば、実用上は問題ないと思うのですが、いかがでしょうか?
北極星以外の星も使うスケールパターンの場合も、プラネタリウムソフトの「視位置」で各星の位置を検証してスケールパターンに印すか、だいたいの見当でズラして使うことは充分可能と思います。
このようにPMを撮影してみると、所有する赤道儀の追尾精度の悪さにガッカリする人の方が多いと思います。 安価なポタ赤は標準レンズでもPMが写るほど精度の悪い場合もあると思います。
でもまぁ、上下の星の流れが完全に直線に写らなくても、星の軌跡の太さの2倍程度のPMなら明るい星は滲んで大きく写り、うんと暗い星は流れて淡くなって写らないので、案外使えてしまうものですよ。 もちろん北の方向を写す場合は、日周運動の動きが少ないのでPMの影響はだいぶ減ります。
実際の星野写真の撮影では、ISO1600ならば光害の少ない星空でF2.8で適正露出は1分くらいでF4では2分くらいです。したがって、露出中にうまい具合に上のPMのグラフの星の移動方向が反転する部分に当たれば、追尾精度の良くない赤道儀に望遠レンズを載せても星は点像に写ることがあります。短めの露出で何コマも撮影すると、流れたカットと流れないカットが得られます。なので、追尾の成功率が50%以上あるなら 「それで充分に実用になる!」 という考え方はアリですよね?
ポータブル赤道儀と露出時間が短くて済む高感度なデジカメの登場で、星野写真はずいぶん気楽なものになりましたね。 感材にお金がかからないことも大きな利点です。
●最後に諸々の補足です
ウォームホイールは高精度なギヤに見えても、実際はそれほど精度は必要ありません。しかし、極軸を取付ける際にウォームホイールが偏心して、1日1回転の間にウォームネジに強く押し付けられる部分と弱く押し付けられる部分が生じ、強く押し付けられる部分でPMを増長することがあります。
そこで弊社では、ウォームホイールの母形を極軸に取付けて赤道儀のダミーに組み込み、実機さながらに極軸を回して歯切りとエージングをするので、ウォームホイールの偏芯はほぼゼロです。
前回の拙稿 (http://tentai.asablo.jp/blog/2016/03/27/8058123)の補足。
「追尾精度の良くない赤道儀にオートガイダーを常用するのもアリ」と書きましたが、赤道儀の追尾精度があまりにも悪いとオートガイダーが働きにくかったり、ガイド星を雲が通過したりするとガイド星を見失うなどのトラブルが出てしまいます。 やはり赤道儀は追尾精度が命です。
オートガイダーを使う場合は極軸設置もある程度は正確でないと、露出時間が長い場合はガイド星を中心に画面が回転して写ってしまいます。広角でも望遠でも回転角は同じなので厄介です。
三脚などの強度(これが見過ごされていることが多い)が完璧で、追尾精度が完璧で、極軸設置が完璧でも、大気差による天球の歪で長い望遠レンスの追尾が完璧にできるわけではありません。オートガイダーの適宜な投入は面倒ではありますが とても有効な手段です。
北極星は歳差で動くので極望のスケールパターンには、2000年、2010年、2015年などの北極星の導入位置のマークが印されていることが多いです。では、古い極望は2016年以降の北極星の位置マークが無いからダメかというと、過去の位置マークが直線的に印されている場合は、その延長上にだいたいの見当で歳差の分だけズラせば、実用上は問題ないと思うのですが、いかがでしょうか?
北極星以外の星も使うスケールパターンの場合も、プラネタリウムソフトの「視位置」で各星の位置を検証してスケールパターンに印すか、だいたいの見当でズラして使うことは充分可能と思います。
●極軸設置のアレコレ ― 2016/03/27 06:22
●極軸設置の必要精度などをまとめます
PoleMaster という極望(極軸望遠鏡)の代わりをするレンズの付いたデジタルカメラが発売されました。 弊社でも取り扱っています。 パソコンが必要ですが便利な電子極望で、JILVA-170にお使いのユーザー様も大勢おられます。 ポータブル赤道儀への装着は簡単なので、ご希望があれば取付金具の製作を請け賜ります。
ふつうのドイツ式赤道儀には 通常は極望の穴の上に取付けることが多いようです(極望が見えなくなっちゃうのはご愛嬌?)。 この場所に付ける極望(天頂プリズム付きの眼視用)は、1970年ころに高橋製作所から供給されたことがあります。 当時高校生だった星爺より1歳年上の九州のYさんがタカハシさんに進言したアイデアです(Yさんはその後ニコンに就職され木曽観測所の105cmシュミットカメラなどを担当されました)。
PoleMaster はDPPA法(基礎的な手法はこちらを見てください)のような手法で極軸との平行を校正するので信頼性は高いです。 元々赤道儀に付いている内蔵の極望の校正や据付式赤道儀の設置に使うのにも重宝すると思います。
しかし、極望の信頼性が高ければ極軸設置が完璧になって、長い望遠レンズの長時間露出ができるわけではありません。 この機会に極望と追尾の基本を考えてみましょう。
PoleMaster という極望(極軸望遠鏡)の代わりをするレンズの付いたデジタルカメラが発売されました。 弊社でも取り扱っています。 パソコンが必要ですが便利な電子極望で、JILVA-170にお使いのユーザー様も大勢おられます。 ポータブル赤道儀への装着は簡単なので、ご希望があれば取付金具の製作を請け賜ります。
ふつうのドイツ式赤道儀には 通常は極望の穴の上に取付けることが多いようです(極望が見えなくなっちゃうのはご愛嬌?)。 この場所に付ける極望(天頂プリズム付きの眼視用)は、1970年ころに高橋製作所から供給されたことがあります。 当時高校生だった星爺より1歳年上の九州のYさんがタカハシさんに進言したアイデアです(Yさんはその後ニコンに就職され木曽観測所の105cmシュミットカメラなどを担当されました)。
PoleMaster はDPPA法(基礎的な手法はこちらを見てください)のような手法で極軸との平行を校正するので信頼性は高いです。 元々赤道儀に付いている内蔵の極望の校正や据付式赤道儀の設置に使うのにも重宝すると思います。
しかし、極望の信頼性が高ければ極軸設置が完璧になって、長い望遠レンズの長時間露出ができるわけではありません。 この機会に極望と追尾の基本を考えてみましょう。

●撮影レンズと露出に応じた極軸設置の精度
こうした計算は複雑な座標変換を行なって検討しますが、ここでは略図でザックリと説明します。
下の図のように真南の星を追尾する場合に注目しましょう。 極軸の方位(東西)の設置誤差は追尾撮影中の星空の赤緯(南北)方向のズレに影響して、赤道儀が正確に追尾をしても星は赤緯方向に流れて写ってしまいます。 真南でない方向の星を追尾すると、このズレに赤経(東西)方向のズレすなわち追尾速度の狂いが混ざってきます。 頭の中で想像してみてください。 追尾速度のズレはPモーションがあるので観察しにくいですが、赤緯のズレは眼視で星を見ても写真を撮っても観察できます。 その星のズレを見て、方位の極軸設置を修正(上下の修正は東北か西北の星を見る)する手法はドリフト法とも呼ばれます(説明は別の機会に)。
こうした計算は複雑な座標変換を行なって検討しますが、ここでは略図でザックリと説明します。
下の図のように真南の星を追尾する場合に注目しましょう。 極軸の方位(東西)の設置誤差は追尾撮影中の星空の赤緯(南北)方向のズレに影響して、赤道儀が正確に追尾をしても星は赤緯方向に流れて写ってしまいます。 真南でない方向の星を追尾すると、このズレに赤経(東西)方向のズレすなわち追尾速度の狂いが混ざってきます。 頭の中で想像してみてください。 追尾速度のズレはPモーションがあるので観察しにくいですが、赤緯のズレは眼視で星を見ても写真を撮っても観察できます。 その星のズレを見て、方位の極軸設置を修正(上下の修正は東北か西北の星を見る)する手法はドリフト法とも呼ばれます(説明は別の機会に)。
図のように極軸設置の東西のズレによる赤緯方向の星の流れ(ズレ)は6時間後に最大になります。
ということは、露出時間が1時間なら赤緯方向のズレは極軸設置誤差の1/6になります(重要!)。 概略計算なので完全ではありませんが、1分露出の場合は極軸設置誤差の1/200ほど赤緯方向にズレて写ると考えて差し支えありません(ぜひ暗記しましょう!)。
たとえば50mmレンズの追尾誤差の許容が±40″とすると、4分露出なら最悪のケースを想定してかなり厳しく見ても極軸設置は1°ズレていてもまったく問題はありません。
JILVA-170に300mm望遠を搭載して4分露出する場合でも、極軸設置は10′の精度で大丈夫です。
どうも天文ファンは基礎的な計算をしないで機材に凝る傾向がありますね。 星爺が編集者時代に計算の記事は嫌われるというので、ちゃんとした記事を怠ったことが原因かもしれません(反省)。
このように、広角~標準レンズならば極軸設置に高価な極望は無用で、極望代わりの素通しの覗き穴で済むほどラフなものです。200mmくらいの望遠レンズまでなら、15′(月の直径の半分)くらいズレていても無問題です。 それでも追尾に失敗することがあれば、赤道儀の追尾精度がとても悪かったり、撮影中に三脚やカメラがジワッ~と動いてしまうのが原因なことが多いです。
教訓! 撮影失敗を極軸設置のせいにするのは戒めましょう!
●大気の屈折による影響がある
極望や極軸設置の精度とは別の問題になります。
地上から見上げる天球は下の図のように大気による光の屈折で歪んでいます。地平に近づくほど星の光が通過する大気が厚くなるので星は浮き上がって見えます。日の出や日没の太陽は上下が縮んで楕円に見えますよね? それほど大気の屈折は大きいので赤道儀の回転のとおりに星は動きません。長焦点の望遠レンズによる長時間露出では、追尾エラーになって流れて写ってしまいます。
大気の影響は想像以上で、天頂付近以外はかなりの高度でも追尾速度と赤緯方向のズレの両方に影響を与え、全天のどの場所でも長焦点(広角は無問題)を正確に追尾することは不可能です。
このように、広角~標準レンズならば極軸設置に高価な極望は無用で、極望代わりの素通しの覗き穴で済むほどラフなものです。200mmくらいの望遠レンズまでなら、15′(月の直径の半分)くらいズレていても無問題です。 それでも追尾に失敗することがあれば、赤道儀の追尾精度がとても悪かったり、撮影中に三脚やカメラがジワッ~と動いてしまうのが原因なことが多いです。
教訓! 撮影失敗を極軸設置のせいにするのは戒めましょう!
●大気の屈折による影響がある
極望や極軸設置の精度とは別の問題になります。
地上から見上げる天球は下の図のように大気による光の屈折で歪んでいます。地平に近づくほど星の光が通過する大気が厚くなるので星は浮き上がって見えます。日の出や日没の太陽は上下が縮んで楕円に見えますよね? それほど大気の屈折は大きいので赤道儀の回転のとおりに星は動きません。長焦点の望遠レンズによる長時間露出では、追尾エラーになって流れて写ってしまいます。
大気の影響は想像以上で、天頂付近以外はかなりの高度でも追尾速度と赤緯方向のズレの両方に影響を与え、全天のどの場所でも長焦点(広角は無問題)を正確に追尾することは不可能です。

下に西空に沈む星の動きと赤道儀の動きの図を示します(星が昇る東側でも同じです)。 これでおわかりのように、低空になるほど星は浮き上がるので極軸を上に向ける必要が生じます。
極軸設置の目安にする北極星も大気の影響で 1.5′くらい浮き上がって見えています。なので、極軸は北極星の見える方向よりも下げなければならないか?…というと、そうではなくて天頂付近はそのままか下げる必要はあり得ますが、全天のあちこちの方向の平均なら逆に 1′弱ほど極軸を上げた方が追尾が正確になります。もちろん、この程度の小さな数値は各誤差に吸収されるので明確には実感できません。しかし、東西の低空の場合はけっこう思い切って上げる必要があります。
大気の屈折によるに星の軌跡は、うんと誇張して描いてあります
このように大気による屈折で天球が歪んでいることから、正確な極軸設置をしたつもりでも赤道儀の追尾が完璧に高精度でも、長い望遠レンズの場合は追尾はうまく行きません。だいたい500mm以上の長い焦点距離での長時間露出は念のためにガイディングが必要になります。
大気の影響を補正して少しでも正確な追尾をするためには、全天の平均値を鑑みて追尾速度をやや遅くして極軸もやや上げる必要があるわけです。 JILVA-170、SWAT、PanHead EQなどのポタ赤は、キングさんが提唱した「キングスレート」と呼ばれる恒星時の日周運動よりも 0.003%遅い追尾速度を採用しています。 もっと低空の撮影のための、さらに遅い速度設定や極軸の上下の最適化を縦横無尽に行なうのは面倒なので無視していますが…(笑) ていうか、各部の精度はそれなりのバランスで作らないと、一部分だけが無用の過剰品質になってしまいます。
「ボクの極軸設置は正確なので赤緯は全然流れないよ」とか「1000mmや2000mmの望遠鏡でもノータッチで長時間露出の撮影ができるよ」 と言う人はいますが、それは偶然の成せる結果やシーイングの乱れなどで星像がボケて流れが認めにくいからでしょう。 極望で正確な極軸設置を行なって正確に駆動をしたら、天頂付近以外はむしろ赤緯方向(赤経方向も少し)に流れるのが正しいのです。
当然ながら、ドリフト法で極望の光軸を正確に校正することはできません。
●撮影レンズや露出時間によって様々な極軸設置が考えられる
以上のことを鑑みると、星野撮影用赤道儀の極望や機材全体の必要精度のバランスが見えてきます。 極望だけ頑張ってもしょーがないし、いっそ機材の精度は追求しないでノータッチのほっぽりっぱなしで撮影するのはヤメて、広角レンズでもオートガイダーを常用する選択肢だってアリですよ。その反面オートガイダーは面倒なので、とことん各部の精度を追求した機材をノータッチで使用する真逆の選択肢もアリですよね(星爺はコレが好き! 固定撮影並みの気楽さでないと使う気はしません)。
広角~標準レンズによる撮影なら、極望代わりの素通し覗き穴でも充分だし、極軸の方位は方位磁石で上下は分度器などで能率的に行なうことも可能です。 長焦点の場合は電子極望が正確で良いという結論や、ふつうの極望が総合的に最適との結論もあり得ますね(星爺は極望が好き!)。
覗き穴については、JILVA-170のユーザーさんでもある Kojiro さんが、ポラリエを例にして正しくわかりやすい解説をしておられるので、ぜひこちらをご覧ください。
※覗き穴に丸パイプ(ストロー等)を挿して精度アップを試みる人がいますが、そういうものではなくて離れて覗くことがコツであることも、Kojiro さんのブログを見るとわかりますよ!
このように大気による屈折で天球が歪んでいることから、正確な極軸設置をしたつもりでも赤道儀の追尾が完璧に高精度でも、長い望遠レンズの場合は追尾はうまく行きません。だいたい500mm以上の長い焦点距離での長時間露出は念のためにガイディングが必要になります。
大気の影響を補正して少しでも正確な追尾をするためには、全天の平均値を鑑みて追尾速度をやや遅くして極軸もやや上げる必要があるわけです。 JILVA-170、SWAT、PanHead EQなどのポタ赤は、キングさんが提唱した「キングスレート」と呼ばれる恒星時の日周運動よりも 0.003%遅い追尾速度を採用しています。 もっと低空の撮影のための、さらに遅い速度設定や極軸の上下の最適化を縦横無尽に行なうのは面倒なので無視していますが…(笑) ていうか、各部の精度はそれなりのバランスで作らないと、一部分だけが無用の過剰品質になってしまいます。
「ボクの極軸設置は正確なので赤緯は全然流れないよ」とか「1000mmや2000mmの望遠鏡でもノータッチで長時間露出の撮影ができるよ」 と言う人はいますが、それは偶然の成せる結果やシーイングの乱れなどで星像がボケて流れが認めにくいからでしょう。 極望で正確な極軸設置を行なって正確に駆動をしたら、天頂付近以外はむしろ赤緯方向(赤経方向も少し)に流れるのが正しいのです。
当然ながら、ドリフト法で極望の光軸を正確に校正することはできません。
●撮影レンズや露出時間によって様々な極軸設置が考えられる
以上のことを鑑みると、星野撮影用赤道儀の極望や機材全体の必要精度のバランスが見えてきます。 極望だけ頑張ってもしょーがないし、いっそ機材の精度は追求しないでノータッチのほっぽりっぱなしで撮影するのはヤメて、広角レンズでもオートガイダーを常用する選択肢だってアリですよ。その反面オートガイダーは面倒なので、とことん各部の精度を追求した機材をノータッチで使用する真逆の選択肢もアリですよね(星爺はコレが好き! 固定撮影並みの気楽さでないと使う気はしません)。
広角~標準レンズによる撮影なら、極望代わりの素通し覗き穴でも充分だし、極軸の方位は方位磁石で上下は分度器などで能率的に行なうことも可能です。 長焦点の場合は電子極望が正確で良いという結論や、ふつうの極望が総合的に最適との結論もあり得ますね(星爺は極望が好き!)。
覗き穴については、JILVA-170のユーザーさんでもある Kojiro さんが、ポラリエを例にして正しくわかりやすい解説をしておられるので、ぜひこちらをご覧ください。
※覗き穴に丸パイプ(ストロー等)を挿して精度アップを試みる人がいますが、そういうものではなくて離れて覗くことがコツであることも、Kojiro さんのブログを見るとわかりますよ!

これは世に出ることのなかったポタ赤 PanHead EQ の最初期型です。フライス加工の精密な筐体で、横に分度器を下げ、方位磁石(コンパス)を置くスリットもあります。方位磁石は取付けたままだとポタ赤やカメラなどの磁力や鉄部で狂うので、周囲に指針を狂わせる鉄骨などのない場所で、赤道儀から50cm以上離して指針を確認し、指針の動きを見て校正しながら赤道儀に近づけ そっと置かないとダメです。
極望は目安のための口径1cm 2.2倍のガリレオ式(スケールパターン無し)を内蔵しました。
こうした極軸設置法を実用に即して改良してゆくのもポタ赤の正常進化と思います。
極望は目安のための口径1cm 2.2倍のガリレオ式(スケールパターン無し)を内蔵しました。
こうした極軸設置法を実用に即して改良してゆくのもポタ赤の正常進化と思います。
●JILVA-170の進捗です ― 2015/08/19 16:34
●JILVA-170をご注文のお客様へ
6月に3台のJILVA-170を納品させていただいて以来2日間しか快晴の夜に恵まれず、Pモーションのテストが滞っていました。まだご注文の半分に満たない数ですが、晴れ間を見つけて10台ほどの合格品が出ましたので、遅ればせながら来週から仕上げを再開してご注文順に納品させていただきます。お客様には納品前にメールを差し上げますので、よろしくお願い申し上げます。
JILVA-170は下の写真のように極軸の主要部だけでPモーションテストができるようになっています。これから合格品に周辺パーツを装着して仕上げとなります。
なお、納期が遅れたお詫びとして、ターンテーブルの上にカメラを2台搭載する 「ベンチアーム」 を贈呈いたしますので、どうぞお使いください。
6月に3台のJILVA-170を納品させていただいて以来2日間しか快晴の夜に恵まれず、Pモーションのテストが滞っていました。まだご注文の半分に満たない数ですが、晴れ間を見つけて10台ほどの合格品が出ましたので、遅ればせながら来週から仕上げを再開してご注文順に納品させていただきます。お客様には納品前にメールを差し上げますので、よろしくお願い申し上げます。
JILVA-170は下の写真のように極軸の主要部だけでPモーションテストができるようになっています。これから合格品に周辺パーツを装着して仕上げとなります。
なお、納期が遅れたお詫びとして、ターンテーブルの上にカメラを2台搭載する 「ベンチアーム」 を贈呈いたしますので、どうぞお使いください。

実際の星のピリオディックモーションテストで合格となったJILVA-170の極軸主要部

ベンチアームで東西にカメラを載せたところ。東西のバランスも合せられます。
●Pモーション測定器とSTAR-TREC
弊社ではPモーションのベンチ測定器は製作済みで、天候に左右されずに室内でPモーションを測定できます。しかし、実際の星空でユーザー様が使用されるようなカメラ機材でPモーションを撮影して測定した方がトラブルも見つけやすく確実なので、今のところはベンチ測定器を使用しないで頑張ろうと思います。下がPモーションをベンチ測定した結果のグラフです。
●Pモーション測定器とSTAR-TREC
弊社ではPモーションのベンチ測定器は製作済みで、天候に左右されずに室内でPモーションを測定できます。しかし、実際の星空でユーザー様が使用されるようなカメラ機材でPモーションを撮影して測定した方がトラブルも見つけやすく確実なので、今のところはベンチ測定器を使用しないで頑張ろうと思います。下がPモーションをベンチ測定した結果のグラフです。

なお、個体ごとのPモーションを測定したら、逆の位相をマイコンにメモリして相殺し精度を向上させることができます。Pモーションはウオームネジまわりで決まることから、搭載重量やバランスやウォームホイールの摺動箇所が変わっても使用年数が経っても、ほとんど変化しない性質があるからです。ユーザーがガイディングして設定するPECと呼ばれる手法ではなく、出荷時に設定済にする手法です。同様なシステムはビクセンさんのAXDという高級な赤道儀に搭載されているようです。
このシステムはSTAR-TREC(STrict ARchived TRackiong-Error Correction)として、まずは新型のPanHead EQに搭載します。Pモーションの精度は3倍程度は向上する見込みです。
●赤道儀には超高精度のウオームギヤセットが必要
この機会にブログの趣旨のとおり中学生向けに簡単にご説明します。
下の図は一般的な小型赤道儀用の半径35mm程度のウオームホイールとカメラを重ねた図です。ウオームネジとの摺動部は撮像素子の位置に描いてあるので動きを想像してください。
通常の機械加工のギヤの精度は良くて20~30μm(ミクロン)程度であると考えてください。 なので、ウオームネジのネジ部に20μmの乱れがあれば、撮像素子上の星は20μm動いてしまいます。ウオームネジ1回転の周期で乱れが繰り返されるのでピリオディックモーション(周期運動)と言われます。20μmはちょうど35mm広角レンズの追尾の許容量になり、Pモーションの表記では±60″(1′)になります。
広角レンズしか追尾できないとは、ずいぶん悪い値ですよね?

市販の赤道儀には、メーカーさんがそれはそれは大変な努力と技術で成し遂げた超高精度のウオームギヤセットが使われています(そうでもないメーカーさんもありますけどね)。夢のような高精度と言っても過言ではありません。それに比べてギヤメーカーから販売されているウオームギヤセットは、通常の加工精度のたんなる減速ギヤですから10倍も精度が悪く、赤道儀用とは似て非なるものです。
もちろん前々回のブログでお話ししたようにPモーションの主な原因は、
①ウオームネジのピッチ誤差(乱れ)によるヨロメキ運動
②ウオームネジ軸受けの精度によるスラスト方向のブレ
③ウオームネジの芯出し誤差による1回転毎のトルク変動
④ウオームネジに付けたスパーギヤの偏芯による速度変動
以上の4種類あって、各々から振る舞いの異なるPモーションが発生し、それらが重なって最終的なPモーションになるため、精度の悪いギヤでも①~④が偶然(または何度も調整して)相殺されれば、そこそこ良い精度になることはあり得ます。逆に高精度のギヤでも悪くなることもあります。
①~④の重なりがどうなるかは予測不能なので、赤道儀の精度は個体ごとに大きくバラツキます。そのため全ての個体でPモーションを測定しないと「Pモーション±○″」 と発表はできません。
JILVA-170だけでなくPanHead EQとSWAT-300/350も全機のPモーションを測定して合格品のみを出荷しています。
●弊社ではウオームホイールを社内生産しています
JILVA-170のウオームホイールとウオームネジのセットをギヤメーカーに依頼したら1セット10万円以下では作れないでしょう。そのうえ赤道儀用には不十分な精度になってしまうので、独自の手法で高精度のウオームホイールを生産しています。PanHead EQもSWATシリーズも同様です。
直径162mmのウオームホイールはジュラルミン製で厚さが3mmしかありません。ジュラルミンにしたのは加工性が良いことの他に、ボディなどのアルミ合金部と同じ膨張係数にして厳寒地で膨張率の違いから回転が渋くならないようにするためです。厳寒地ではグリースの硬化で回転が渋くなると思われていますが、それよりも金属同士の膨張率の違いの方が大きな原因です。
ウオームホイールは上下をアルミ合金でサンドイッチして、-30℃まで硬化しないオリジナルのグリースでべったり貼り付けています。これにより 「極軸にベアリングを入れなくても大丈夫かな?」 と思われるほど頑丈でしっくりと精度よく回転します(もちろんベアリングはちゃんと入れていますよ)。この手法を社内ではGDFWと呼んでいます(Grease Dumped Floating Worm wheel)。
まずレーザーカットでモジュールに応じたサイクロイドカーブの288歯のウオームホイールの母型を作って、それをJILVA-170と同じボディに組み込んで(これが肝心!)、独自のホブ盤で時間をかけて歯切りをします。次にウオームネジと同じ形状にしたS55Cの研磨用ネジを強烈に(煙が出るほど)押し付けて歯を研磨します。これでジュラルミン鍛造のウオームホイールが完成します。そして実機に組み込んでから実機のウオームネジを毎分2000回転で回して最終的なエージングを行ない、仕上げは日周運動の26倍の速度でゆっくりエージングを行なっています。1個作るのに5時間ほどかかります。
ウオームホイールはそれほど高精度の歯面に仕上げる必要はないのですが、ウォームホイールの極軸の芯出しを正確にして、どの場所でもウオームネジに安定して摺動させるためと、ウオームネジを軸受けになじませるために、実機でのていねいなエージングが必要です。
もちろん前々回のブログでお話ししたようにPモーションの主な原因は、
①ウオームネジのピッチ誤差(乱れ)によるヨロメキ運動
②ウオームネジ軸受けの精度によるスラスト方向のブレ
③ウオームネジの芯出し誤差による1回転毎のトルク変動
④ウオームネジに付けたスパーギヤの偏芯による速度変動
以上の4種類あって、各々から振る舞いの異なるPモーションが発生し、それらが重なって最終的なPモーションになるため、精度の悪いギヤでも①~④が偶然(または何度も調整して)相殺されれば、そこそこ良い精度になることはあり得ます。逆に高精度のギヤでも悪くなることもあります。
①~④の重なりがどうなるかは予測不能なので、赤道儀の精度は個体ごとに大きくバラツキます。そのため全ての個体でPモーションを測定しないと「Pモーション±○″」 と発表はできません。
JILVA-170だけでなくPanHead EQとSWAT-300/350も全機のPモーションを測定して合格品のみを出荷しています。
●弊社ではウオームホイールを社内生産しています
JILVA-170のウオームホイールとウオームネジのセットをギヤメーカーに依頼したら1セット10万円以下では作れないでしょう。そのうえ赤道儀用には不十分な精度になってしまうので、独自の手法で高精度のウオームホイールを生産しています。PanHead EQもSWATシリーズも同様です。
直径162mmのウオームホイールはジュラルミン製で厚さが3mmしかありません。ジュラルミンにしたのは加工性が良いことの他に、ボディなどのアルミ合金部と同じ膨張係数にして厳寒地で膨張率の違いから回転が渋くならないようにするためです。厳寒地ではグリースの硬化で回転が渋くなると思われていますが、それよりも金属同士の膨張率の違いの方が大きな原因です。
ウオームホイールは上下をアルミ合金でサンドイッチして、-30℃まで硬化しないオリジナルのグリースでべったり貼り付けています。これにより 「極軸にベアリングを入れなくても大丈夫かな?」 と思われるほど頑丈でしっくりと精度よく回転します(もちろんベアリングはちゃんと入れていますよ)。この手法を社内ではGDFWと呼んでいます(Grease Dumped Floating Worm wheel)。
まずレーザーカットでモジュールに応じたサイクロイドカーブの288歯のウオームホイールの母型を作って、それをJILVA-170と同じボディに組み込んで(これが肝心!)、独自のホブ盤で時間をかけて歯切りをします。次にウオームネジと同じ形状にしたS55Cの研磨用ネジを強烈に(煙が出るほど)押し付けて歯を研磨します。これでジュラルミン鍛造のウオームホイールが完成します。そして実機に組み込んでから実機のウオームネジを毎分2000回転で回して最終的なエージングを行ない、仕上げは日周運動の26倍の速度でゆっくりエージングを行なっています。1個作るのに5時間ほどかかります。
ウオームホイールはそれほど高精度の歯面に仕上げる必要はないのですが、ウォームホイールの極軸の芯出しを正確にして、どの場所でもウオームネジに安定して摺動させるためと、ウオームネジを軸受けになじませるために、実機でのていねいなエージングが必要です。

JILVA-170の本体部分。左上は直径40mmの極軸に圧入するベアリング
右はS55Cのウオームネジにモリブデングリースを塗布して歯を高速研磨中
右はS55Cのウオームネジにモリブデングリースを塗布して歯を高速研磨中
●ウオームネジユニットを低コストで作る手法
もっとも大切なウオームネジユニットは、タネ明かしをするとひじょうに安価な手法で作っています。JILVA-170と同程度のウォームホイールの赤道儀を生産するあるメーカーさんは、この部分に5万円のコスト(ウオームネジは別で) をかけているそうですが、とてもそんな手法は採用できません。
心臓部のウオームネジは精密な加工のできる快削黄銅で超精密加工専門の会社に特注しています。軸受けはボールベアリングでは精度に限界があるので、メタルベアリングを用いてウオームネジのハメアイ軸は研磨で仕上げます。反対側はニゲを得るために樹脂のドライベアリングです。モーターのピニオンギヤとウオームネジのスパーギヤも特注品で、軸挿入部は現物合わせで研磨しています。
ここまで徹底するのは、上記の①~④個々のPモーションの発生を少しでも抑えるためです。
ウオームネジユニット本体は一転して安価な手法で、下の写真のL字型の金具をを2個組み合せてユニットを作ります。軸受部は2個組み合せて旋盤加工しますが、調整機構などは一切ありません。各部を研磨しながら“勘”で組み立てて 「こんなにスムーズに回る回転部は経験がない」 ほどのタッチになるまで何度も組み直して、良いタッチにならない場合は破棄処分にします。精度の高いウオームネジユニットを作るためコストに苦しんだ末に生まれたコロンブスの卵的な職人技の手法です。
※下の写真はPanHead EQとSWAT用でJILVA-170はウオームネジやユニットが少し異なります。

PanHead EQとSWAT用のアルミ合金製のL金具と組み上がったウオームネジユニット
SWAT-300/350には、これにグリースバス(グリース溜め)のカバーが装着されます
このような手法で弊社のポータブル赤道儀は作られています。JILVA-170は±4~5″以下のPモーションの個体を出荷するため、Pモーション測定は省略するわけには参りません。ブログを見ていただいた方やJILVA-170のお客様には、なにとぞ厳しいお叱りやご指導をいただき、より完成度の高いポタ赤に発展させて行くことにご協力いただければ幸いです。
※株式会社輝星の運営する「SB工房」はこちらです。
SWAT-300/350には、これにグリースバス(グリース溜め)のカバーが装着されます
このような手法で弊社のポータブル赤道儀は作られています。JILVA-170は±4~5″以下のPモーションの個体を出荷するため、Pモーション測定は省略するわけには参りません。ブログを見ていただいた方やJILVA-170のお客様には、なにとぞ厳しいお叱りやご指導をいただき、より完成度の高いポタ赤に発展させて行くことにご協力いただければ幸いです。
※株式会社輝星の運営する「SB工房」はこちらです。
●ペテン師がデジカメの性能を変える! ― 2015/08/03 02:17
●最初に業務連絡です。天気予報では今日は一晩中快晴ということだったので、JILVA-170をずらりと並べてPモーションテストのために待機しましたが、明け方の薄明前に少し晴れただけでした。残念です。少しでも晴れ間があればテストできますので、ご注文をくださったお客様は、申し訳ありませんが今しばらくお待ちください。
「星爺から若人へ」は中学生くらいを対象としています。
●オリンパス光学がWindows95時代に販売していた画像処理ソフトに、
フォトジャグラーというのがありました。ジャグラーとは魔術師とかペテン師の意味ですが、画像処理の意味を考えると的を得た傑作な命名と思います。
……最初に歴史をさかのぼって、
戦後の日本は軍事産業や重工業を規制されたこともあって、平和産業の光学機器とりわけカメラは大発展を遂げました。日本製のカメラは世界一と言っても過言ではないでしょう。
1960年台前にはA~Zまでの頭文字では足りないほどのカメラメーカーが群雄割拠し、そこから淘汰されて残ったのが現在のカメラメーカーです。高性能なのは当然かもしれませんね。
「どのメーカーのカメラも同じように優秀」 な時代を経験したオジサンや爺さんは、若人の皆さんに好みのメーカーのカメラを買えば良いとアドバイスするかもしれません。昔の経験ではみんな同じように高性能だったのだから当然です。また中古のカメラを勧めるかもしれません。カメラのメカ部分は1960年頃から1990年台までほとんど変わらなかったのだから、これも当然です。
しかし、昔はカメラが写真を撮っていたというよりも 「フィルムが撮っていた」 のです。デジカメ時代は写真を撮るのはカメラそのものなので、カメラによってとくに星野写真に対する性能は驚くほど違います(違いました、ですね。後述参照)。そして常に変遷しています。星用には使い物にならないデジカメも過去にはたくさんあり、新型ほど高性能なことがほとんどなのでデジカメの中古は敬遠するべきです。
富士フイルムのカメラが一番良く写った時代もあり駄目になった時代もあります。星野写真はキヤノンの独壇場だった時代もあります。時代と言ってもせいぜい2~3年の期間なのですが…。
その時代を経験したオジサンや爺さんは、その時代に良く写ったメーカーを勧めるかもしれませんが、カメラの性能は新製品のたびに変化しているので、新製品の発表には常に注目していてください。性能の変化に多大な影響をあたえるのが 「ペテン師」 なのです。
●デジタルカメラの性能を決定するのは以下の三要素になります。
①撮像素子の本来の性能
②周辺電子部分の品質と性能
③メモリに保存する際の画像処理(画像エンジン--ペテン師)
①②③が相互に作用しあって画像を形成しますが、もっとも肝心で常に改良されるのが③です。撮影した画像を瞬時に保存する際のカメラ本体の画像処理で 「やるのは当たり前」 ですから、黎明期にはこの機能に画像エンジンDIGICと命名したキヤノンに対し、カメラ評論家で 「名称を付けて付加価値を出しているだけ」 との見解の人もいました。画像エンジンの威力がどのメーカーのカタログにもうたわれている今は、若人の皆さんはその大切さは理解していますよね? 画像エンジンで性能のほとんどが決まるんですよ。
「星爺から若人へ」は中学生くらいを対象としています。
●オリンパス光学がWindows95時代に販売していた画像処理ソフトに、
フォトジャグラーというのがありました。ジャグラーとは魔術師とかペテン師の意味ですが、画像処理の意味を考えると的を得た傑作な命名と思います。
……最初に歴史をさかのぼって、
戦後の日本は軍事産業や重工業を規制されたこともあって、平和産業の光学機器とりわけカメラは大発展を遂げました。日本製のカメラは世界一と言っても過言ではないでしょう。
1960年台前にはA~Zまでの頭文字では足りないほどのカメラメーカーが群雄割拠し、そこから淘汰されて残ったのが現在のカメラメーカーです。高性能なのは当然かもしれませんね。
「どのメーカーのカメラも同じように優秀」 な時代を経験したオジサンや爺さんは、若人の皆さんに好みのメーカーのカメラを買えば良いとアドバイスするかもしれません。昔の経験ではみんな同じように高性能だったのだから当然です。また中古のカメラを勧めるかもしれません。カメラのメカ部分は1960年頃から1990年台までほとんど変わらなかったのだから、これも当然です。
しかし、昔はカメラが写真を撮っていたというよりも 「フィルムが撮っていた」 のです。デジカメ時代は写真を撮るのはカメラそのものなので、カメラによってとくに星野写真に対する性能は驚くほど違います(違いました、ですね。後述参照)。そして常に変遷しています。星用には使い物にならないデジカメも過去にはたくさんあり、新型ほど高性能なことがほとんどなのでデジカメの中古は敬遠するべきです。
富士フイルムのカメラが一番良く写った時代もあり駄目になった時代もあります。星野写真はキヤノンの独壇場だった時代もあります。時代と言ってもせいぜい2~3年の期間なのですが…。
その時代を経験したオジサンや爺さんは、その時代に良く写ったメーカーを勧めるかもしれませんが、カメラの性能は新製品のたびに変化しているので、新製品の発表には常に注目していてください。性能の変化に多大な影響をあたえるのが 「ペテン師」 なのです。
●デジタルカメラの性能を決定するのは以下の三要素になります。
①撮像素子の本来の性能
②周辺電子部分の品質と性能
③メモリに保存する際の画像処理(画像エンジン--ペテン師)
①②③が相互に作用しあって画像を形成しますが、もっとも肝心で常に改良されるのが③です。撮影した画像を瞬時に保存する際のカメラ本体の画像処理で 「やるのは当たり前」 ですから、黎明期にはこの機能に画像エンジンDIGICと命名したキヤノンに対し、カメラ評論家で 「名称を付けて付加価値を出しているだけ」 との見解の人もいました。画像エンジンの威力がどのメーカーのカタログにもうたわれている今は、若人の皆さんはその大切さは理解していますよね? 画像エンジンで性能のほとんどが決まるんですよ。
撮像素子は光子のカウンターであることから、本来の感度はだいたいISO125程度しかありません。なのでカメラファンの話題になる 「高感度特性」 と言うのは本当はあり得なくて、③の画像エンジンでごまかして高感度に見せた結果です。しかし、その画像処理性能たるや 「まるで魔術師!」 「ペテン師!」 です。
あたかも本当に感度が高くなったような画像が保存されます。撮像素子のノイズは原理的に簡単には消せないはずなのに見事に消します(ノイズと一緒に星も消しちゃうカメラもありますが)。画素が詳細になれば1画素の光子カウンターの容量が少なくなってノイズが増えるはずなのに、人間の細胞よりも小さい詳細画素のカメラでも気になるほどのノイズはありません。③のペテン師のワザは①や②の要素の特質など全部蹴散らしてしまうほどスゴイのでしょうね。
撮像素子が生産メーカーから他メーカーにOEMされると、「供給されたメーカーのカメラも同じ性能になる 」と思う人が多いようですが、三要素で肝心なのは③ですから、③も撮像素子と一緒に供給されるのでなければ、やはり性能差や個性の違いは、かなり大きくなると思われます。

●常に進化を続け、突然化けて高性能になることもある!
星爺はペンタックスのデジイチを使って、あまりの星野写真性能の悪さに本気でドブに捨てようと思ったことがあります。オリンパスのカメラはフォーサーズ( 約23×15mmと小さいAPS-Cより小さな17.3×13mm )で撮像素子が小さい分だけ詳細画素のため、ノイズがひどくて星野写真には適さないと信じられていた時代もあります。
しかし、③の画像エンジンが高性能化されると、オリンパスは突然化けたように星野写真に適したカメラになりました。ペンタックスは3年ほど前からイイ味で星野写真を撮れます。両者ともそこそこHαの赤色星雲が写るのは、感度を上げるために赤の透過域をやや長波長側に広げたからかもしれませんよ。 こういうことが年中あるので新製品からは眼が離せません。
P.S. こいつはいくらなんでも長波長側に広げ過ぎかな?
星野写真の高性能ぶりで天文ファンに人気のあるカメラはキヤノンですが、この1~2年でどのメーカーの画像エンジンも進化して、決定的な差はなくなってきました。富士フイルム、オリンパス、ペンタックスの健闘が光ります。詳細画素のうえHα光が写る天文用のニコンの810Aも素晴らしいカメラです。
これらの高性能の要因はほとんど画像エンジンなのですが、ソニーからもうすぐ裏面照射型の撮像素子を採用したα7RⅡが登場します。三要素の①が根本的に進化するので絶対注目ですね!(P.S.ペテン師さんは期待したほど変わらなかったみたいですね)。
こんなめまぐるしいほどの状況なので、目上の人を尊敬することは大切ですが、古い情報はアテにせず必ず自分で、メーカーの宣伝文句にも疑問を持ちつつデジカメを購入してください。

●撮影法や赤道儀の仕様も変わる!
ISO感度の設定を高くし過ぎると、見かけの感度が高く見えるだけで、ノイズばかりの汚い画像になったり画像エンジンが暗い星を消したりしてしまいます。が、最新型の各社のデジカメはISO1000~1600でもノイズの少ない星野写真を撮影できるようになりました。こうなると、光害の少ないかなり暗い空でもJPG保存では適正露出時間はISO1600ならF2.8で1分、F4で2分ほどですから、追尾性精度の良くない赤道儀でも使うことができるし、当然オートガイダーも無用になります。
短時間露出でバンバン撮って多数枚のコンポジット合成をする。たとえば同じレンズでISO200設定で8分露出したのとISO1600で1分露出を8枚コンポジトしたのは、ほとんど同じ品質の画像が得られるので、そのような撮影法も奨励できます。もちろん、こうした撮影法はすでに行なわれていますが、今まではあくまでも追尾精度の悪い赤道儀の 「救済処置」 として行なわれる場合が多かったです。
さらに詳細画像を目指すなら、高価なフルサイズの高詳細画像のカメラを使わずに、高性能なAPS-Cやフォーサーズのカメラを使い、2コマ以上のパノラマ撮影を常用する手もあります。
そんな撮影法に便利なポタ赤を提供する必要が出てきたので、弊社のPanHead EQ も大改良をして近々新しい仕様のバージョンを発表します。
●最後に補足です
原理から言えば詳細画素の撮像素子は1画素で光子をたくさん捉えることができないので、結果的にノイズが多くなって高感度に見せる画像処理はやりにくいです。
先日、キヤノンから超高感度多目的カメラME20F-SHが発表されました。1画素の大きさは最近のデジカメの5μm(ミクロン)以下に対して19μmで面積は15倍にもなります。ただし300万円もします。
星爺は研究者用の裏面照射型冷却CCDを所有していたことがあり、これは1画素が25μmでした。 800万円もするもので、2005年度に編集者を早期退職した際に売却してクルマになりました(笑)
本当の高感度を求めるには、やはり画像エンジンに頼る以前に画素が大きいことが重要です。もしかしたら、どこかのメーカーから一転して大きな画素のデジカメが登場するかもしれませんよ!
※株式会社輝星の運営する「SB工房」はこちらです。
●業務連絡とE-ZEUSⅡのお知らせ ― 2015/07/21 12:16
今回は「星爺から若人へ」ではなくて、ご連絡とご案内です。
●JILVA-170の出荷状況
●JILVA-170の出荷状況
超高性能ポータブル赤道儀JILVA-170(輸出バージョン)につきましては、多数のご注文をいただきありがとうございました。輸出品の予備在庫のパーツで組み上げるバーゲン製品のため、そろそろ売り切れとなりますので、ご入用のお客様はこちらからお早めにご注文ください。
JILVA-170は1台ごとに実際の星空でピリオディック(P)モーションを撮影して追尾精度をテストし、公称値の±4~5″の高精度をクリアした個体のみ出荷しています。そのため納期は天候に左右されますが、今年の梅雨は極端で6月4日以降は、本日(7月21日)まで一晩晴れただけです。やっと関東地方の梅雨明け宣言が出たので、今晩からはPモーションテストが進捗するものと思われます。ご注文の早い順から出荷いたしますので、いま少しお待ちくださいますようお願い申し上げます。
JILVA-170は1台ごとに実際の星空でピリオディック(P)モーションを撮影して追尾精度をテストし、公称値の±4~5″の高精度をクリアした個体のみ出荷しています。そのため納期は天候に左右されますが、今年の梅雨は極端で6月4日以降は、本日(7月21日)まで一晩晴れただけです。やっと関東地方の梅雨明け宣言が出たので、今晩からはPモーションテストが進捗するものと思われます。ご注文の早い順から出荷いたしますので、いま少しお待ちくださいますようお願い申し上げます。


2軸オートガイド用の赤緯軸や専用三脚なども鋭意開発中です
●Pモーションテストが必要な理由
Pモーションとは 「赤道儀の赤経ウオームネジ1回転周期の追尾速度の進み遅れ」 のことで、Pモーションが小さいほど長い望遠レンズまで追尾することができます。だいたいの基準として、100mm望遠レンズを追尾するためには±20″以下のPモーションであることが必要です。
Pモーションはウオームネジ周辺の加工精度が原因で発生します。その原因は一つではなく、主に下記の四種類から各々振る舞いの異なるPモーションが発生し、これらが重なりあって増長したり相殺したりします。したがって①~④の総合である最終的なPモーションは偶然の産物みたいなもので、各々の加工精度よりも悪くなることも良くなることもあり予測がつきません。個体ごとのバラツキが大きくなるわけですね。オーバーホールなどで組立直すと当然Pモーションも変わります。
①ウオームネジのピッチ誤差(乱れ)によるヨロメキ運動
②ウオームネジ軸受けの精度によるスラスト方向のブレ
③ウオームネジの芯出し誤差による1回転毎のトルク変動
④ウオームネジに付けたスパーギヤの偏芯による速度変動
昨今、赤道儀のメーカーはPモーションのデータを公表しなくなりました。個体ごとに測定しないのであれば、架空のようなデータを公表するよりずっと良心的といえると思います。しかし、ポータブル赤道儀はPモーションが生命です。Pモーションが不明では何mmの望遠レンズを搭載できるかもわかりません。そのため弊社では全個体をテストして合格品を出荷しています。
●Pモーションテストが必要な理由
Pモーションとは 「赤道儀の赤経ウオームネジ1回転周期の追尾速度の進み遅れ」 のことで、Pモーションが小さいほど長い望遠レンズまで追尾することができます。だいたいの基準として、100mm望遠レンズを追尾するためには±20″以下のPモーションであることが必要です。
Pモーションはウオームネジ周辺の加工精度が原因で発生します。その原因は一つではなく、主に下記の四種類から各々振る舞いの異なるPモーションが発生し、これらが重なりあって増長したり相殺したりします。したがって①~④の総合である最終的なPモーションは偶然の産物みたいなもので、各々の加工精度よりも悪くなることも良くなることもあり予測がつきません。個体ごとのバラツキが大きくなるわけですね。オーバーホールなどで組立直すと当然Pモーションも変わります。
①ウオームネジのピッチ誤差(乱れ)によるヨロメキ運動
②ウオームネジ軸受けの精度によるスラスト方向のブレ
③ウオームネジの芯出し誤差による1回転毎のトルク変動
④ウオームネジに付けたスパーギヤの偏芯による速度変動
昨今、赤道儀のメーカーはPモーションのデータを公表しなくなりました。個体ごとに測定しないのであれば、架空のようなデータを公表するよりずっと良心的といえると思います。しかし、ポータブル赤道儀はPモーションが生命です。Pモーションが不明では何mmの望遠レンズを搭載できるかもわかりません。そのため弊社では全個体をテストして合格品を出荷しています。
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●ただいまPモーションの測定中です
久しぶりの晴天でJILVA-170の出荷前のPモーション測定をしています。1回めは下の写真で12分露出のため、2週期分ちょっとのPモーションが写っています。撮影レンズは1200mmですから、500mm程度の望遠レンズならばガイディング修正無しで使えそうな精度があることが見て取れます。測定結果は下記のとおり±4.5″でした。
この後、ウォームホイールの場所を変えて再度測定します。JILVA-170の公称値は±4~5″としていますが、±5″以上の場合は不合格にして再組立てします。再組立てをすると(前述のように偶然の産物なので)一転して良くなることは多いです。悪い場合は早めに諦めて破棄処分にしています。
一晩中晴れそうなので、朝までに4台くらいは測定できそうです。
●ただいまPモーションの測定中です
久しぶりの晴天でJILVA-170の出荷前のPモーション測定をしています。1回めは下の写真で12分露出のため、2週期分ちょっとのPモーションが写っています。撮影レンズは1200mmですから、500mm程度の望遠レンズならばガイディング修正無しで使えそうな精度があることが見て取れます。測定結果は下記のとおり±4.5″でした。
この後、ウォームホイールの場所を変えて再度測定します。JILVA-170の公称値は±4~5″としていますが、±5″以上の場合は不合格にして再組立てします。再組立てをすると(前述のように偶然の産物なので)一転して良くなることは多いです。悪い場合は早めに諦めて破棄処分にしています。
一晩中晴れそうなので、朝までに4台くらいは測定できそうです。

●自動導入モータードライブE-ZEUSⅡの販売
SB工房のホームページに E-ZEUSⅡの直販サイトがオープンしました。E-ZEUSⅡ用のモーターさえ取付けることができれば、小型から大型の赤道儀まで様々な赤道儀を便利な自動導入にすることができます。
今まで複数の望遠鏡ショップ様を通じて百数十台の装着実績があるので、ノウハウの蓄積もあります。10年以上ご愛顧をいただいているE-ZEUSは、今年から赤緯駆動にバックラッシュ補正機能を追加するなどの改良を施したE-ZEUSⅡになりました。
たくさんの赤道儀メーカーが精度を競い合った30年ほど昔の据付式赤道儀には、とくに適合性が良く、古色蒼然とした赤道儀を低予算で最新型に生まれ変わらせることができます。

タカハシNJP赤道儀に取付け(左)、ビクセン ニューアトラクス赤道儀に取付け

アスコSE型赤道儀に取付け。E-ZEUSの回路はピラーのパネルに取付け

●中国の望遠鏡メーカー ― 2015/07/10 10:22
「星爺から若人へ」は中学生くらいを対象としています。
●星爺は最近テレビ放送で多くなった日本礼賛の番組が大好きです。
『所さんのニッポンの出番』 『cool japan発掘! カッコいいニッポン』 『Youは何しに日本へ?』 や、町工場のスゴイ技術を紹介する番組等など。その根底にあるのは夏目漱石に端を発する白人コンプレックスと思わないではないけれど、番組を見れば気分が良いですからね!
未来学者ハーマン・カーンを尊敬していた時期もあるし、社会学者エズラ・ヴォーゲル著の『ジャパン・アズ・ナンバーワン』には心が踊りましたね。日本ガンバレです。
小学生の頃は、銭湯で鉄工所や溶接工場のオヤジ達から空襲の体験やシベリア抑留の話をマジメに聞いて可愛がられ、工場へ遊びに行って教わったことが天体望遠鏡の自作にとても役立ちました。タダでたくさんモノを作ってもらったし,以来、町工場には憧れています。
「町工場のオヤジって頑固なだけで理論付けされた技術は無いな」 と思っても、下町ボブスレーを見て 「勝負の世界は甘くはねーよ」 と思っても、中小企業や町工場は応援したいです。
『永遠の0』にも感動! クリスティーナ・ロセッティの詩とからめるなんて粋な脚本だ! ゼロ戦はパイロットを銃弾から守る分厚い鉄板を省略したから、軽量で性能が良かっただけなんて説もあるらしいけど、そんな理屈は不問にしましょう。
新幹線の安全神話というのも、「ガソリンを簡単に持ち込めて安全もクソもねーだろ」 と思っても、やっぱり新幹線は世界一ですよね! 新幹線開業の1964年は東京オリンピック。星爺は前夜祭で鼓笛隊の太鼓を叩いてました。次の東京オリンピックまで、なんとか生きていられたら良いなぁ。
はやぶさ(第20号科学衛星MUSES-C)は失敗したことの方が多かったのだから、礼賛するばかりでなく、せめて科学雑誌や天文雑誌は公平な記事を作らないのか? と思っても、「失敗のことなど記事にする必要はないか…?」 と思い直しますね。 とにかく星爺は日本人だし、我が国は好きですからね。 愛国心かな? でも愛国心は近隣諸国をバカにする傾向がありますね。
……と、ここまで書くと 「下手な前振りをするな!」 とバレてしまいそうですが、本心は日本人や日本の技術はスゴイなんて、浮かれたり礼賛番組を作っている場合ではないと思っています。
日本の半導体技術が近隣諸国に後れを取っていることは、かなり前から工業新聞には載っていて、最近は経済新聞も同じ論調。日本の自動車は安全性で韓国に抜かれたみたいですしね。
それなのに、なにゆえ自画自賛、手前味噌、我田引水の日本礼讃か?
長々と書いたのは、心地よい報道に隠れて軍靴の足音が聞こえる気がしてならないからです。町工場をおだてるのは戦前に貧しい工場労働者を「工場戦士」言ったのと同じ、「竹槍でも戦える」と喧伝したのと同じだと警戒してしまいます。 ジャパン・アズ・ナンバーワンも戦前の 「日本人は一等国民」 と同じ……?
業界の人はとっくに知っていることですが、今回は天文少年少女の皆さんに、天文ファンには粗悪品と思われている(実際に今はそうなのですが)中国の望遠鏡メーカーの技術をご紹介します。秘密のこともあるので、双眼鏡メーカーと望遠鏡メーカーの4社のスナップを、ごちゃ混ぜにしてご紹介します。この業界でも日本の優位性が失われていることが如実にわかると思いますよ。
※なお、天体望遠鏡は今も昔も日本製も海外製も主流は玩具で、トンデモ望遠鏡もたくさん出まわっています。今回ご紹介するのは玩具系ではない、しっかりした光学メーカーです。
●星爺は最近テレビ放送で多くなった日本礼賛の番組が大好きです。
『所さんのニッポンの出番』 『cool japan発掘! カッコいいニッポン』 『Youは何しに日本へ?』 や、町工場のスゴイ技術を紹介する番組等など。その根底にあるのは夏目漱石に端を発する白人コンプレックスと思わないではないけれど、番組を見れば気分が良いですからね!
未来学者ハーマン・カーンを尊敬していた時期もあるし、社会学者エズラ・ヴォーゲル著の『ジャパン・アズ・ナンバーワン』には心が踊りましたね。日本ガンバレです。
小学生の頃は、銭湯で鉄工所や溶接工場のオヤジ達から空襲の体験やシベリア抑留の話をマジメに聞いて可愛がられ、工場へ遊びに行って教わったことが天体望遠鏡の自作にとても役立ちました。タダでたくさんモノを作ってもらったし,以来、町工場には憧れています。
「町工場のオヤジって頑固なだけで理論付けされた技術は無いな」 と思っても、下町ボブスレーを見て 「勝負の世界は甘くはねーよ」 と思っても、中小企業や町工場は応援したいです。
『永遠の0』にも感動! クリスティーナ・ロセッティの詩とからめるなんて粋な脚本だ! ゼロ戦はパイロットを銃弾から守る分厚い鉄板を省略したから、軽量で性能が良かっただけなんて説もあるらしいけど、そんな理屈は不問にしましょう。
新幹線の安全神話というのも、「ガソリンを簡単に持ち込めて安全もクソもねーだろ」 と思っても、やっぱり新幹線は世界一ですよね! 新幹線開業の1964年は東京オリンピック。星爺は前夜祭で鼓笛隊の太鼓を叩いてました。次の東京オリンピックまで、なんとか生きていられたら良いなぁ。
はやぶさ(第20号科学衛星MUSES-C)は失敗したことの方が多かったのだから、礼賛するばかりでなく、せめて科学雑誌や天文雑誌は公平な記事を作らないのか? と思っても、「失敗のことなど記事にする必要はないか…?」 と思い直しますね。 とにかく星爺は日本人だし、我が国は好きですからね。 愛国心かな? でも愛国心は近隣諸国をバカにする傾向がありますね。
……と、ここまで書くと 「下手な前振りをするな!」 とバレてしまいそうですが、本心は日本人や日本の技術はスゴイなんて、浮かれたり礼賛番組を作っている場合ではないと思っています。
日本の半導体技術が近隣諸国に後れを取っていることは、かなり前から工業新聞には載っていて、最近は経済新聞も同じ論調。日本の自動車は安全性で韓国に抜かれたみたいですしね。
それなのに、なにゆえ自画自賛、手前味噌、我田引水の日本礼讃か?
長々と書いたのは、心地よい報道に隠れて軍靴の足音が聞こえる気がしてならないからです。町工場をおだてるのは戦前に貧しい工場労働者を「工場戦士」言ったのと同じ、「竹槍でも戦える」と喧伝したのと同じだと警戒してしまいます。 ジャパン・アズ・ナンバーワンも戦前の 「日本人は一等国民」 と同じ……?
業界の人はとっくに知っていることですが、今回は天文少年少女の皆さんに、天文ファンには粗悪品と思われている(実際に今はそうなのですが)中国の望遠鏡メーカーの技術をご紹介します。秘密のこともあるので、双眼鏡メーカーと望遠鏡メーカーの4社のスナップを、ごちゃ混ぜにしてご紹介します。この業界でも日本の優位性が失われていることが如実にわかると思いますよ。
※なお、天体望遠鏡は今も昔も日本製も海外製も主流は玩具で、トンデモ望遠鏡もたくさん出まわっています。今回ご紹介するのは玩具系ではない、しっかりした光学メーカーです。

中国でもっとも大きい望遠鏡専門メーカー。総合大学のような建物でレンズや反
射鏡の研磨から金属加工まで一貫生産するのが中国のメーカーの特徴です。
射鏡の研磨から金属加工まで一貫生産するのが中国のメーカーの特徴です。

無塵室専用服を着せられて対物レンズ組立てセクションに入るところの星爺です。
オートコリメーションテストのセクションでは普通の服装が許されています。
オートコリメーションテストのセクションでは普通の服装が許されています。

左に少し写った建物が機械加工の建物で右側がレンズの研磨などを行なう建物。
右の写真は敷地内の従業員の宿舎。従業員はすいぶん厚遇されているようです。
右の写真は敷地内の従業員の宿舎。従業員はすいぶん厚遇されているようです。

異なるメーカーのショールーム。両社とも自社ブランドより相手先ブランドの製品
の方が多いらしい。日本でお馴染みの望遠鏡もたくさん見かけます。
の方が多いらしい。日本でお馴染みの望遠鏡もたくさん見かけます。

口径25cmと30cmのリッチー・クレチャン望遠鏡。これは試作品で、相手先ブランド
はこの時点では未定。どこかの国から売り出される(た)のでしょうか?
はこの時点では未定。どこかの国から売り出される(た)のでしょうか?

30cmマクストフカセグレン望遠鏡。右は15cm屈折望遠鏡の豪華な接眼部でプロ用
の顕微鏡とよく似た遊星ギヤ式微動のラック&ピニオンギヤはスムーズでした。
の顕微鏡とよく似た遊星ギヤ式微動のラック&ピニオンギヤはスムーズでした。

左は小さなパーツを作るNC加工装置。右は倒立型のコリメーターで、アイピースの
チェックをしているところ。どのメーカーも検査機器はひじょうに充実しています。
チェックをしているところ。どのメーカーも検査機器はひじょうに充実しています。

このような大型のコーティング用真空蒸着釜がズラリと並ぶ。日本では珍しい低温
蒸着釜もあります。右は多層膜コーティングが完了した20cmニュートン反射鏡。
蒸着釜もあります。右は多層膜コーティングが完了した20cmニュートン反射鏡。

アイピースの組立て現場にはファナックのコンピュータがズラリと並んでいます。

アイピースのレンズを落とし込みで組んだ後で芯出し調整の精度はコンピュータ
の画面に表示されます。右は組立て前のレンズの傷のチェックです。
の画面に表示されます。右は組立て前のレンズの傷のチェックです。

アイピースも相手先ブランドが多いようです。超ワイドアイピースもあります。

オートコリメーションテスターは極望の芯出しを行なうためのものらしい。右は3枚
玉FCD-1硝材の本物のアポクロマート対物レンズ。これは小型の口径80mmです。
玉FCD-1硝材の本物のアポクロマート対物レンズ。これは小型の口径80mmです。

対物レンズや反射鏡は干渉計による精度チェックを行ないます。反射鏡は数値制
御によリ正確な放物面を研磨する技術を多くのメーカーが確立しています。
御によリ正確な放物面を研磨する技術を多くのメーカーが確立しています。

中国の望遠鏡展示会には世界中からバイヤーが集まります。右は大学系のメーカ
ーが出品した口径50cmのリッチー・クレチャン式望遠鏡の主鏡です。
●中国の望遠鏡メーカーの製品が、とくに赤道儀の追尾精度(こればかりは日本得意の匠の技が必要?)などでは、日本製よりも劣ることは周知の事実です。工場の規模は大きくて数百人~千人以上の社員がいますが、末端の労働者の質が高くないので、なんでもない仕上げの部分にミスや不良が散見されます。他社の製品を真似するだけで設計を吟味していないとも思います。検査設備は優れていても、不合格品はどこに流れていくのだろうか? と心配にもなりますね。 知っていても教えませんけど(笑)
しかし、中国のメーカーが少数派のハイアマチュアに向けた製品を作り始めたら、コワイですよ~。
どのメーカーにも、お約束のように若くて優秀な管理職の技術者がいます。 たいてい日本やアメリカへの留学経験がありますが、国費留学をするためには最高学府を2年飛び級する必要があるそうで、とにかく皆さん頭が良くて猛勉強する青年たちです。
日本の将来を担う若人は、諸外国に負けないように一生懸命勉強をしてくださいね。戦後に飛躍的な発展を遂げた 「光学日本」 を支える人材の出現にも期待します。
もちろん日本人の誇りを持つことは大切ですが、日本礼讃の番組にも何事にも流されず、常に批判的な目を向けることが大切だと思います。再び 「一億火の玉」 にならないためにも……。
ーが出品した口径50cmのリッチー・クレチャン式望遠鏡の主鏡です。
●中国の望遠鏡メーカーの製品が、とくに赤道儀の追尾精度(こればかりは日本得意の匠の技が必要?)などでは、日本製よりも劣ることは周知の事実です。工場の規模は大きくて数百人~千人以上の社員がいますが、末端の労働者の質が高くないので、なんでもない仕上げの部分にミスや不良が散見されます。他社の製品を真似するだけで設計を吟味していないとも思います。検査設備は優れていても、不合格品はどこに流れていくのだろうか? と心配にもなりますね。 知っていても教えませんけど(笑)
しかし、中国のメーカーが少数派のハイアマチュアに向けた製品を作り始めたら、コワイですよ~。
どのメーカーにも、お約束のように若くて優秀な管理職の技術者がいます。 たいてい日本やアメリカへの留学経験がありますが、国費留学をするためには最高学府を2年飛び級する必要があるそうで、とにかく皆さん頭が良くて猛勉強する青年たちです。
日本の将来を担う若人は、諸外国に負けないように一生懸命勉強をしてくださいね。戦後に飛躍的な発展を遂げた 「光学日本」 を支える人材の出現にも期待します。
もちろん日本人の誇りを持つことは大切ですが、日本礼讃の番組にも何事にも流されず、常に批判的な目を向けることが大切だと思います。再び 「一億火の玉」 にならないためにも……。
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